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zoom RSS 王道の野球マンガとは? (ワンナウツより)

<<   作成日時 : 2010/05/28 23:55   >>

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私は「“王道の野球”マンガ」が好きなのではない。「王道の“野球マンガ”」が好きなのだ。
前者が実際の野球をそのまま描いたようなもの、後者が実際ではあり得ないようなプレイをしたりするタイプだ。
ここで後者に共通するのが、“球が遅い”というものである。実際にはゼロコンマ何秒という時間の中で、登場人物たちは恐ろしいほど多くの思考を展開し、更には丁寧に解説を述べてくれたりしている。これが野球知識の乏しい私にとっては大助かりなのである。
動体視力の鈍い私にとって、実際の野球は投球も打球も目視できず、面白いものではない。前者のタイプのマンガもリアルを追求するために一瞬で投球や打球が繰り広げられてしまう。
もちろん正しいのは前者の方だ。しかし私は正しい野球を見たいわけではない。繰り返し言うが、野球知識が乏しく、動体視力も鈍い私にとって、正しい野球は見てても面白くないのである。いかに正しいかではなく、いかに面白いかを求めるのが私だ。
というわけで野球ファンに対して何ら含むところは無いということだけは断っておきたい。

前置きが長くなったが、今回紹介するマンガは「ワンナウツ」だ。
21世紀も数年を過ぎて、もう私の好きなタイプの“野球マンガ”は描きつくされたのではないかと思っていたときに出会った名作である。あの「ライアーゲーム」の甲斐谷忍が以前に描いていた作品であるが、これが予想の遥か斜め上をいく面白さだった。個人的には今のところ「ライアーゲーム」より評価は上である。
「巨人の星」、「野球狂の詩」、「メイプル戦記」、「ジャストミート」、「おおきく振りかぶって」の全てが好きという人ならば、確実に「ワンナウツ」にもハマると断言しておきたい。私がそうだったから皆そうだろうという思考は危険なのだが、それぐらい面白かったと言いたいわけだ。
大きく3部に分かれていて、ワンナウツ契約編、新・ワンナウツ契約編、Lチケット編と、それぞれ違った面白さがあって飽きさせない。プロローグの沖縄編からして既に熱い。亜熱帯だからではない。クールだけど熱い。(まるで黄純と赤雷の空炎氷弾のようだ。)

2巻の作者コメントで甲斐谷忍は「あらゆる野球マンガへのアンチテーゼとしてこの作品は作られています。」と書いているが、読んでみると確かにその通りだと思う。特に「巨人の星」へのアンチとして描かれている部分は大きいだろう。しかしアンチであると同時に後継作でもあると思うのだ。あらゆる野球マンガへのアンチテーゼでありながら、あらゆる野球マンガの要素を取り込んでいるのではないかという印象である。
この作者コメントも、作家的な目で見ると実に意地悪な物言い・・・別な言い方をすれば主人公の渡久地東亜と同じく極度のツンデレな物言いということになるだろうか。贔屓の球団にジャイアンツを挙げているし、やはり渡久地と同じく、物事に対して良い意味で割り切ることの出来る人物なのだろう。

さて、今回はリカオンズの戦力解析と推奨カップリングについて話そうと思う。
渡久地が来るまで3年連続最下位だったリカオンズが、如何にしてペナントレースで優勝することが出来たのか。その理由を戦力解析をしながら語っていこう。
ちなみに■が従来のリカオンズ、□を加えたのが新生リカオンズだ。


◎攻撃力
■■■□□ □□
従来の攻撃力はお世辞にも高いとは言えない。それは児島しか強打者と呼べるバッターがいなかっただけではない。渡久地に言わせれば、何としてでも点を取ろうというガッツが無い、そして勝負に迷い逃げ腰でカウントを悪くするということだろう。
新生リカオンズでは卓越した選球眼を持つムルワカが加わり、菅平や今井など他のメンバーたちが揃って打撃意識を向上させた。それ故に見た目よりも攻撃力は高くなっている。この辺りはバガブーズと共通する部分もあるだろう。

◎守備力
■■■■□ □□□□
やはり従来の数値は低い。攻撃力が低いのと同じく、ピッチャーがボールを連発してカウントを悪くしてしまうなど逃げ腰であることが挙げられる。
しかし潜在能力は決して悪くなく、渡久地の方式でボール球を投げないようにしたら最強と言われるマリナーズと五分に渡り合えた。更に新生リカオンズにはパーフェクトピッチャーの渡久地とスピードキングの倉井がいる。また、チーム全員が危機感を持って試合に臨むことで、併殺や三重殺も狙って行うことも出来た。実質的な力と精神的な力が噛み合った結果として最高クラスの守備力を弾き出している。

◎走力
■■■□□ □
走力に関しては実質的な底上げは乏しく、精神面の向上によるものが大きいだろう。何としてでも点を取ろうとする執念が、失敗を覚悟で盗塁など揺さぶりを繰り返し、相手の神経をすり減らすのである。もっとも、そこまでのレベルに達したのはかなり後半の話であり、実質的な戦力増強も特に無かった為に評価は辛めにした。

◎知力
■■□□□ □□
敵方の多くに誤解されているが、新生リカオンズは渡久地のワンマンチームではない。確かに一見してそのようなところもあるし、ある程度は当たっているだろう。しかし新生リカオンズの恐ろしさは、渡久地の勝負師としての能力がチーム全体に伝播しているところにあるのだ。
それによって最終的には渡久地がいなくても戦えるまでに力をつけていった。単純な力量ならばリカオンズはリーグ最強ではないが、勝負師としての能力を身に付けているという点において他を圧倒していたのだ。

◎結束力
■■■■□ □□
従来のリカオンズは児島を中心とした結束はあったものの、オーナーが金儲けのことしか考えておらず、監督もオーナーの忠実な部下でしかなかった。よって結束力は高いとは言えないだろう。
新生リカオンズは渡久地の大幅な改革により、必要最低限度でありながら決して崩れない強固なチームワークを築くことが出来た。それはオーナーから監督まで一丸となって優勝の為に力を尽くすということまで含めてのものだ。

◎特殊能力
■□□□□
従来はリーグ最下位にも関わらず集客能力は高いという程度でしかなかったが、渡久地が加わってからは事情が違う。彼のストレートは特殊で、速くはないものの緩急自在で打ちにくい軌道を描く。更に心理戦も上手で、試合においてもそれ以外においても相手の心理に揺さぶりをかける。
野球技術とは別の、勝負師としての能力は、彼の特殊なストレート以上に優勝に貢献したと言えるだろう。



このように新生リカオンズは、安定して高い能力を持つ強力な球団と言えるだろう。単純な戦力ではリーグ最強ではないが、トーナメントでなくリーグ戦だからこその戦略で見事に優勝の栄冠を手にすることが出来たのだ。

ちなみにライバルである新生マリナーズについても簡単に解析してみよう。
上記と同じく、■が従来、□を加えたのが新生マリナーズである。


◎攻撃力
■■■■■ ■■■■□

◎守備力
■■■■■ ■■□

◎走力
■■■■■ ■□

◎知力
■■■■■ ■

◎結束力
■■

◎特殊能力
■■□□


このように、実にバランスの悪いチームであると言える。元から打撃偏重でピッチャーがないがしろにされがちなチームだったが、強引にメンバーを増強したこともあって更に選手間の対立が大きくなっている。僅かな戦力増強の為に結束力を従来よりも悪くしているのではないかと思うくらいだ。
結果論だけで言えば、このチームこそ高見のワンマンチームであったと言ってもそんなに間違いではないだろう。渡久地を相手に渡り合った知力、ピッチングマシーンを導入するなどして結束力や特殊能力を上昇させたこと、そして攻撃力の何割かは彼の担当である。おそらく高見がいなければ、瓦解したマリナーズは立ち直ることが出来ず、新生リカオンズの圧倒的な勝利で99年のペナントレースは幕を閉じたであろう。
その高見だが、「リーグ戦よりもトーナメントで成績を残せる選手になりたい」と述べていたことがあった。おそらくトーナメントなら最強のチームであるマリナーズを牽引し、リーグ戦であるペナントレースに敗北したのは皮肉なことだろう。



主人公である渡久地東亜という人物について語っておこう。
投球技術に関して言えば、類似するキャラクターとして真っ先に思い浮かぶのは「おおきく振りかぶって」の三橋レンだろう。決して速くないが奇妙なストレート、体力の割に多い投球数、狙ったところに正確に投げることが出来る精密なコントロール。投球数の多さは「野球狂の詩」の岩田鉄五郎、精密なコントロールは「巨人の星」の星飛雄馬とも共通している。パーフェクトピッチャーということでは「メイプル戦記」の神尾瑠璃子や「ジャストミート」の橘二三矢を思い出させる。このように、いろんな要素を詰め込んだ実にオイシイ・・・もとい魅力的なピッチャーということになる。
流石はマンガだと言わんばかりの複数回パーフェクトだが、それについては投球技術よりも精神的なことや戦術の方面に関することの方が大きいだろう。彼の戦術は端的に言うと、「相手に揺さぶりをかけ、動揺したところへガスッと蹴りを入れる」というものである。これは「メイプル戦記」の広岡監督の戦術と通じるところがある。勝つ為ならルールの範囲内で何でもやるという姿勢は上記の岩田鉄五郎とも通じるものがあるし、勝利への執念や野球人としての誇りについては「巨人の星」の星一徹や「おおきく振りかぶって」のモモカンと共通している。クールでヒールで超ツンデレな性格も含めて、実にハァハァ・・・もとい魅力的な人物である。

リカオンズを代表するもう1人のピッチャー倉井一についても述べておこう。
彼の投球時速はMAX165キロ。恐ろしいスピードだ。作中では世界最高のスピードだと書かれていた。ちなみにフィンガースの河中が160キロ、「ジャストミート」のチャーリーが同じく160キロ、「メイプル戦記」の神尾が163キロ、「メジャー」の茂野が164キロである。
強力な技ほど使用回数は限られる、という言葉通り、残念ながら165キロのボールは1試合で30球程度しか投げることが出来ない。「おおきく振りかぶって」で安部君が「スピードは才能、コントロールは努力」と述べていたが、球数が制限されるのは、生まれ持った才能ゆえに努力では補えないということなのだろう。気弱だが真っ直ぐな性格も含めて、渡久地とは対照的なピッチャーである。

さて、この「ワンナウツ」という作品を渡久地と共に大いに盛り上げてくれた人物がいる。今までは純粋に野球のことしか語ってこなかったので名前すら出してないが、作品的な意味で彼の貢献度は大きい。
その名は彩川恒雄。彼なくして「ワンナウツ」という作品は成立しない。野球+ギャンブルという組み合わせの作品だが、ギャンブル方面を担当するのが、渡久地VS彩川という図式なのである。野球方面だけでも奇想天外な試合の数々を見せてくれるが、それに加えてギャンブルが絡んでいるというのでハラハラドキドキ。とにかく読者を飽きさせない。
彩川は実に見事な悪党である。まるっきり同情の余地が無く、そのやられっぷりが良い。まさに「やられ役」のお手本のような人物なのだ。私も最初は特に好きでもなかったが、次第に好感度が上がっていった(笑)。爽やかに胡散臭い笑顔や大人気ない振る舞いによって、常に笑いを振りまいてくれる貴重なキャラである。
ここで書いても彩川の良さは伝わらないので、未読の方は是非。




ちなみに殆ど女性キャラは出てこない。後半で渡久地が女と寝ていたり、田辺が秘書(?)に肩を揉ませていたりするが、主要な女性キャラは“ママ”と呼ばれている謎の女くらいだろう。出来ることならママ以外には女を出して欲しくなかったものだが・・・。せっかくの男ハーレムが・・・。もとい男祭りが・・・。
ぼやきはこれくらいにして推奨カップリングについて語ろう。


◎渡久地×彩川
まあ、王道というやつだ。多くは語らない。

◎彩川×渡久地(誘い受け)
実は渡久地の罠だったわけだし、これも超アリ。

◎彩川×渡久地(襲い受け)
渡久地の方から乗り込んでいったわけだし以下同文。

◎渡久地×部長(ヘタレ受け)
彩川の影に隠れがちだが、部長もいい感じなんですよ。

◎部長×彩川
もちろん部長のヘタレ攻めだ。普段は冴えない部長が輝く下克上なのだ。腐ヒヒ。

◎高見×渡久地
これは準公式のカップリング。顎骨折で描かれている。王道だね、王道。

◎渡久地×児島
多分こっちが王道だと思うけど、私としては渡久地が受けの方が好きだな。

◎児島×渡久地(ツンデレ受け)
渡久地がデレるのは主に児島に対してなんですよ。こういう限定デレは至宝だよね。いいよぉ、実にいいよぉ。



渡久地は攻めも受けも両方アリなのである。容姿や体格からは受けを連想させるが、冷酷で悪辣な性格や口の悪さから攻めキャラとしても大いに妄想できる。更に隠し要素として超ツンデレなので、ツンデラーにとってはたまらない。
そもそもツンデレとは“ギャップ萌え”の一種である。では、ギャップを生み出しているのは何か。デレを基調とするならば、ギャップを生み出しているのはツンに他ならない。つまりツンデレはツンが強いほど萌えるということである。むしろデレ部分は脳内補完でいいくらいだ。
今のところ賛同者がゼロのMY理論はさておき、他のカップリングとしては渡久地×出口、渡久地×今井、渡久地×胡桃沢、渡久地×菅平などもオススメだ。特に菅平はバッターボックスでの幻覚で真っ裸になって渡久地に見下ろされており、マニア好みのシチュエーションになっている。
「ライアーゲーム」も視点を変えればアキヤマによる女王育成シミュレーションだし、実にマニアック。はっはっは、甲斐谷さん、私は貴方が大好きだ。私に好かれても嬉しくないだろうけど。
考えてみれば、奇抜な発想や大胆な構成に加えて、マニアックな要素がヒットを生み出すのだろうと思う。かの「デスノート」も、少年マンガの三大原則と俗に言われる「友情・努力・勝利」を極めて歪んだ形で編みこんであるということは有名だろう。作者の思想は真逆だと思われるが、なかなかに雰囲気の似通った作品。読み比べてみるのも面白いかもしれない。

Lチケット編になって彩川が退場したのは残念である。新たに登場したラスボス田辺は私としてはイマイチだ。ぶっちゃけ萌えない。カップリング対象外。彩川は渡久地に負ければ自分も危機的状況に追い込まれるということで、敵ながら意地と根性を見せていた。スリルがあった。しかし田辺が賭けているのは彼の安っぽいプライドだけで、どうにもスリルが無い。戦術も面白みの無い力押しで、渡久地も半ば呆れたような発言をしている。渡久地をピンチに追い込むという面において、田辺は彩川に大きく劣る。
このように一発ドボンのスリルは実質上消滅した。契約上はオーナーの座がかかっているが、解任されないというのは読んでる方からすればわかりきっている。まあ物語も終盤、こういう安心感も悪くない。水戸黄門的な要素だ。
それに最後までダレないというのがポイント高い。終盤になってもLチケットや高見による渡久地攻略法、そしてラストの最終作戦・・・。
鮮やかに、そして綺麗に決まった。


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内 容 ニックネーム/日時
長い間、野球マンガには二つあると漠然と思っていた僕の疑問が解けました。“王道の野球”マンガにはどんなものがありますか。王道の“野球マンガ”のそれぞれについて、アッキーさんの評価を教えて下さい。ちなみにウチの息子は、「メジャー」と「大きく振りかぶって」と「ドカベン」を読んでいて、以前メジャーが好きだったのが、最近はドカベンの方がおもしろいと言っています。
ロットン
2010/06/02 04:50
>ロットンさん
そうですね、「メジャー」と「おおきく振りかぶって」は“王道の野球”をやっていると思います。「メジャー」は高校野球の頃の方が好きだったという記憶があります。「おおきく振りかぶって」はコミックス1、2巻の西浦VS三星戦や野球理論のところが特に興味を惹かれましたね。
私の記憶力の問題もあるのですが、“王道の野球”マンガでは、どうしてもキャラクターが増えすぎて話についていけなくなるときがあるのです。書き分けに関しても、王道を名乗るなら人間の形をしてなければならないわけですし。つまり奇天烈な顔は出せないという弱点(?)です。まして水島新司のマンガのようにゴリラとか出すわけにもいかないですから・・・。
アッキー
2010/06/02 23:38

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