|
■■■■■■■■■■ 不穏な空を稲光が裂く。雷鳴が轟く夜の病院が不気味に照らし出される。 墓場よりも静かな田舎町に、潰れた病院が取り壊されもせずに残っている。 誰もいないはずの建物の中に、誰かがいる。 (ここは・・・どこだ?) 三日月千里は自分が建物の一室にいることに気付いた。 (確か自分の部屋で寝ていたはずだが・・・。) 外を透視してみると、見知らぬ土地が広がっていた。 豊かな田園地帯が遠くまで続いており、樹木が点在している。昼間ならば、のどかな光景なのだろうが、悪天候の夜は魔物の住処を思わせる気味の悪さだ。 (夢か?) 冷たい空気が肌を刺す。毛穴の奥まで冷気が染み渡るようだった。 肩が凝って首が回し辛い。着ている服の感触がある。 (とても夢とは思えない。たまにこういうリアルな夢を見る・・・。) することもなく立ち尽くしていると、再び稲光が走った。 それが部屋の中を照らし出して、千里は顔が引きつった。 (誰かいる!) 一瞬だけ誰かの顔が見えた。千里は超感覚を駆使して部屋の内部を探知した。 すると白衣を着た男が椅子に座っていた。 「やあ、見つかった。とりあえずは、ようこそと言っておこうか。」 白衣の男はメガネを指でクイッと上げると、唇をペロッと舐め回した。 何となく嫌な感じがした。 「私は八武死根也。最初に言っておく。私は変態だ。これから君は淫辱地獄に落とされることになる。」 「馬鹿馬鹿しい・・・。これは夢よ。ただの夢。」 「言ってはいけないことを口にしたね。」 白衣の男の顔色が変わった。 「君は・・・これは夢だから最後には目が覚めて助かると思っている。果たして本当にそうかな?」 「・・・・・・。」 「“これは現実だ”と君が認めるまで、この世界からは脱出できない。」 そう言いながら白衣の男は立ち上がった。 「さあ始めよう。たとえ千里眼の力を持っていても、か弱い女の子に過ぎないことを教えてやる。くひひひひ。」 「か弱い女の子ね・・・。」 千里は呆れた顔で呟いた。 「現実ならそうでしょうけど、ここは夢よ。こういうことだって出来る。」 千里が手をかざすと、空中に白い剣が現れた。 それを手に取って白衣の男に切りかかる。 「はあっ!」 「うひょおっ?」 白衣の男は驚いて後ろへ転がった。 すぐさま体勢を立て直して起き上がり、後ずさって壁に手をつく。 「何じゃそりゃあ?!」 「神剣“月下終焉”・・・。千里眼の能力者が夢をコントロール出来ないと思ってるの?」 「んなななな?」 「夢の中なんだから何でもありよ。いつでも目を覚ますことは出来るけど、暇潰しに遊んであげる。」 千里は白刃をぺろりと舐めた。 「・・・どうやら君を見くびっていたようです。こちらも本気を出しましょう。」 白衣の男がパチッと指を鳴らした。 すると扉が開いて大男が現れた。 (新手か。でかいな。) 千里の顔は男の胸よりも下の位置にあった。 縦だけでなく横にも大きい。圧巻だ。 「ぐはぐはぎひひい! 待ってました! 僕の名はコング。身長185センチ体重185キロ。鞠って言ったら泣かすよ。」 「剣を持つ相手に全く怯まないとは大した自信だ。」 「気の強い女の子は大好物だよん。裸で縛ってピストン運動してあげる。」 (相手の動きは読めている・・・。) 大男が次にどう動くか、予知能力で全てわかる。 「ぐひひ、その真っ白な剣で早く切りかかってきたらあ?」 「言われなくても。」 大男の余裕の態度が少し気になったが、千里は予定通りに胴体を狙うことにした。 「この白刃を貴様の血で染めてやる!」 素早く懐に飛び込んだ。 そして一刀両断! 上半身と下半身に真っ二つに分かれた。 「剣は肉よりも強し。名言ね。」 しかし次の瞬間、千里の顔は引きつった。 真っ二つにしたはずの大男の上半身が空中を飛んで下半身とドッキングしたのだ。 「次は千里とドッキングしちゃうよ。」 「化物め・・・。」 「ぐはぐはぎひひい、夢の中は何でもありだって自分で言ったの忘れた?」 「なるほど。これで終わっても楽しくない。」 「強気発言。ますます好み。」 「・・・今度は脳天から魔羅までぶった切る。それでも生きてられるか?」 千里は目を大きく見開いた。 そして高く跳び上がり、天井を蹴った反動で加速した。 白刃が大男の頭蓋を捉えた・・・しかし同時に大男の両手が剣を挟んで止めていた。 「ぐひひひひい、真剣白刃取り!」 「馬鹿な!」 相手の動きを予知できなかった。 千里眼のエスパーとしての自信が揺らぐ。思わず体が震えてしまう。 その動揺の隙を付いて手錠が2つ飛んできた。 「はっ!?」 両手が拘束され、右足も金属の輪に捕まった。 右足の拘束は部屋の隅にあるベッドに繋がっていた。 「ククク、私が戦わないと思いました?」 白衣の男が笑っていた。 両手を拘束され、逃げることも出来なくなった。 しかし千里は心の底から危機感を感じていなかった。何故なら、これは夢だからという思いがあったからだ。 「夢の癖に、やりすぎよ。消えなさい。」 千里が命ずると、白衣の男と大男の姿が消えた。 「ふう・・・。」 一息ついてから千里は、部屋の壁に大きな鏡が埋め込んであるのに気が付いた。 手足が伸びきって大人になった自分が両手を手錠で拘束されている。そして服装は何故か男物のワイシャツ上だけだった。靴下は履いているが、他に下着などは身に付けていない。 そのことに今更ながら気付いて千里は愕然とした。 (どうして今まで気が付かなかった?) それだけではない。大男に切りかかったとき、自分は高く跳躍して天井を蹴って・・・ 考えると冷や汗が出る。 「・・・・・・。」 「見えてたよ。」 「?!!」 消えたはずの大男の声がする。 恐怖で背筋が凍りついた。 「うむ。お尻も丸みを帯びて、腰も程よく引き締まって、胸も立派になりました。うひひひひ。」 白衣の男の声も聞こえてきた。 千里は体が震えた。 「どうして・・・?」 「ぐはぐはぎひひい。消えなさいと言われたから姿が消えただけだよん。」 「存在まで消えたわけじゃない。人類の夢、透明人間〜。」 流石に身の危険を感じた。 試しに手錠を消そうとしたが、やはり透明になるだけで拘束は外れない。 「三日月千里19歳! これで何をしてもいいんですよね。何をしても・・・。ぐひひひひひひ。」 「18歳未満には出来ないようなことをしてあげるよん。ずっこんばっこん・・・・・ぎひひひひい!」 男たちの笑い声の中、千里は恐怖で震えていた。 「そろそろ、これが現実だと認めた方がいいんじゃないのか?」 白衣の男でもなく、大男の声でもない。第3の声が聞こえてきた。若い女の声だ。 「誰だ?」 「私は佐久間闇子。お前のご主人様だ。」 「戯言を吐いてないで出て来い。」 「はーはっはっは、出て来いだって?」 その声に連動して白衣の男と大男も笑い出す。 「カッカッカッカ・・・!」 「ぎひひひひい!」 その意味を知ったとき、千里は今までになく顔が青くなった。 手の平から黒い物が這いずり出てきた。それは虫か何かではなく、千里の皮膚の内側を動いていたのだ。 その正体は凶々しい雰囲気の黒い目だった。 「ひっ?!」 「暗闇に目が慣れてきたか?」 目がしゃべった。 「ククククク・・・。お前の予知能力が通用しないのも、夢をコントロールできないのも、私が体の中に入り込んでいるからなのさ。おっと、夢じゃなくて現実だったな。」 「・・・これは夢よ・・・ただの夢・・・。」 千里は震えながら、自分に言い聞かせるように呟いた。 「まだ認めないのかね。」 黒い目が黒い閃光を発した。 すると白衣の男と大男の姿が現れた。 既に臨戦態勢、いつでもOKな状態だ。 「・・・!」 「死根也、コング。前も後ろも処女を貰ってやれ。」 「!」 黒い目の容赦ない言葉に、千里は怯えて動けない。 ワイシャツが肌に擦れる感触が妙にリアルだ。 (これは夢・・・これは夢・・・) そもそも千里は決して頭の回転は速くない。千里眼の力で常に先読みを繰り返しているからこそ、対応を考えておけるし、流暢に会話も出来るのだ。 千里眼を封じられた今、彼女は子羊も同然だった。 「ここで恒例の哀願ターイム!」 大男が意地悪な目つきで千里を見下ろす。 「僕ちゃんは優しいから、女の子には哀願タイムを設けてるの。これは現実です、私の負けです、降参しますから酷いことはしないでオネガイって言ってごらん。3回言えたら許してあげる。」 「・・・・・・。」 千里は唇を噛んだ。 「いくら気の長い僕でも3秒は待たないよ。ワン、ツウ・・」 「これはげん・・・」 「んん?」 大男が耳を傾ける。 「かくだ。」 「はい?」 「幻覚だと言ったの。幻覚。夢。これは夢。夢よ!」 「よーし、よく言った千里。死根也、コング、もう待ったなしだぜえ!」 次の瞬間、凄まじい痛みが千里を襲った。 「ああああああああ!!?」 (痛い!)(痛い!)(痛い!!) 体の中を真っ赤に焼けた鉄の棒で乱暴にかき回されるような感覚だ。 「どうかな千里ちゃん。前と後ろの処女を同時に奪われる感覚は? ええ?」 黒い目が楽しそうに笑う。 「うっ・・・ぐっ・・・夢よ・・・これは夢・・・!」 「おやおや〜、夢だというのなら、これはお前が望んだことになっちゃうよ。私や、死根也や、コング。これだって夢の中の存在に過ぎなくて、お前が自在にコントロール出来るということなのかな。だったら本来ならば完全に消してしまうことも可能だよねえ。そうしないのは心のどこかでこうなるのを望んでいたのじゃないのかな? ええ? 前から後ろから突っ込まれてガシガシ痛くされるのがイイのか? この変態! 変態! 変態! 変態!」 「言ってごらん、現実だって言ってごらん。」 「さもないと中に出すよ。」 痛みと恐怖で思考が麻痺した。 「ああ〜、現実です、これは現実です!」 次の瞬間、千里は清潔な病室で椅子に座っていた。 「えええ!?」 「どうしました?」 前を見ると、白衣の医者が座っている。 「熱っぽくて体がだるいということですが・・・。」 「あ、はい。」 苦痛の記憶はあるが、今は痛くない。 自分を透視してみたが、犯された痕跡は見当たらない。 (そうだ・・・私は熱を出して・・・。そして病院に来てたんだった・・・。) 「それじゃあ体温を測りますので、そこの診察台に横になってください。」 言われるままに体を横たえる。 千里は、この白衣の医者の顔をどこかで見たような気がしたが、どうしても思い出せなかった。 何だか頭がぼんやりしていた。 ガシャン! いきなり手錠で診察台に繋がれた。 「えっ?」 何が起こったか理解したときには両手両足を手錠で拘束されていた。更に胴体はベルトで固定された。 医者がメガネを指で上げて舌なめずりしながら笑っていた。 「お前は白衣の男!」 「その通り。八武死根也です。よろしく。」 「・・・・・・!」 「さあ体温を測りましょう。お尻でね。」 「やめろ変態!」 「おやおや知らないのですか。直腸検温と言いましてね、最も正確な体温が測れるのですよ。」 しかし彼の目的が別のところにあることは言うまでもない。 千里は身をよじって嫌がった。 「はーい、動かなーい。」 黒いスカートの中に手を突っ込まれる。 下着に手がかかった。 「くっ・・・あ!」 「おおっと、入れるところを間違えました。暴れるからですよ。」 白衣の男はニヤリと笑った。 「貴様・・・!」 「いけませんね、血が出ています。薬を塗ってあげましょう。もちろん媚薬入りですけれどねええ!」 「やめろ、触るな!」 「そう言われると触りたくなりますね。」 「ぺっ!」 顔面にツバを飛ばした。 しかし白衣の男は頬に付いたツバを舌で舐め取った。 「君のような美少女のツバなら、むしろ歓迎ですよ。ああ、美味い。何よりだ!」 白衣の男は目がおかしい。 (こいつ・・・本物の変態だ・・・。) 千里は目尻に皺を寄せた。 「はーい、千里ちゃん。お薬ぬりぬりしましょうねー。」 白衣の男が変な匂いのする薬を持ってきた。 「くっ・・・“月下終焉”!」 空中に白刃が出現する。しかし次の瞬間には霧散してしまった。 「何・・・まさか!」 自分を透視すると案の定、皮膚の下で黒い目が蠢いていた。 「はあい、佐久間闇子です!」 「うあ・・・」 絶望で眩暈がした。 白衣の男が薬を手にたっぷり付けてスカートの下に入れる。 もはや千里は成すがままになっていた。 「んくっ・・・・うう・・・」 薬を塗られた箇所がジンジン痺れる。 何だか変な気分になってきた。 「さあて、次はマッサージをしてあげよう。どうやら肩が凝っているみたいだからね。」 白衣の男は手馴れた動きでブラウスのボタンを外していく。 「ほほう、白ですか。白はいいですね。たわわに実った果実を包む純白の布地・・・。」 どうやら文学的表現を使おうとしているようだが、滲み出る変態性を全く隠せていない。 「見えてますかー。君は再び19歳になりました。ということは彼の登場ですよ。」 「!」 凄く嫌な予感がした。 「ぐひぐはぐひひい!」 予感的中。この声と口調は、あの変態大男だ。 「さて、三日月千里19歳。」 黒い目の声が聞こえる。 「マッサージなのにマッサージ師ではなくコングが出てきた理由はわかるかな? まずは死根也が拷問くすぐりマッサージを行い、同時にコングにペロペロしてもらう。それで気持ちよくなってもらったところで本番だ。痛みと快楽のダブルパンチが調教の基本だ。処女であることが重要なのではない、痛いことが重要なのだ。んっん〜、名言だな。」 「最低・・・!」 千里は透視で黒い目を睨みつけた。 「痛いのが嫌なら、“これは現実です”って言うんだな。」 「またそれか。」 「おっと、逆らったね。死根也、コング、やっちまいな。」 「「待ってました!」」 白衣の男が残りの薬を胸にぶち撒けて指を這わせ始めた。 それと同時に大男がスカートの中に頭を突っ込んだ。敏感になった所に舌の感触が伝わる。 「ひいいいいっ?!」 「そのセリフはまだ早いぞ三日月千里19歳! それとも感じやすいのか〜? それではこの先が大変だな。死根也が塗った薬は鬼灯棗が作った“鬼殺し”という媚薬でな。その名の通り、アレがハマると鬼でも悶絶するくらいの威力があるのだ。ちょっと早いが、そろそろ挿れてやろうか?」 「やめろ!」 「私に命令するな。コング、容赦はいらないぞ。」 「もちろんだよん。慈悲が無いのが僕のいいところ。」 大男が下着を剥ぎ取った。 千里は恐怖で鳥肌が立った。 「現実! “これは現実です”!」 千里は慌てて言った。 すると再び景色が変わる。 今度は海水浴場で水着姿だった。手足はスラリと伸びたままの19歳の肉体。 「ああ・・・・?」 疑問を感じている暇もなく、眼前にヒレが近付いてくる。 (鮫だ!?) しかも大きい。普通の鮫の数倍はある。 逃げようとしたときに周囲の水が盛り上がった。テラテラと光る8本の蛸足が千里の身長を超えて檻を作った。 「あっ?!」 逃げる間もなく蛸足に絡め取られてしまった。 さっきので敏感になっている体中を、ねっとりとした太い足が撫で回す。 「んああっ?!」 そのまま千里は水中に引きずり込まれた。 触手のような蛸足が上から下から体の中に入ってくる。 (ううっ・・・現実・・・これは現実!) またしても景色がチェンジ。 千里は森の中を裸で走っていた。胸には黒い目が這いずり回っている。 (とにかく逃げないと・・・!) 非現実的な悪夢の連続に、思考が単純化してきていた。 「ばあ!」 いきなり目の前に変態大男が現れる。 Uターンして逃げようとしたら、空間が裂けて4つの舌が飛び出した。 それらが素早く千里の手足を拘束する! チェンジ チェンジ チェンジ 次々と景色が変わっていく。 看護婦になっていて、医者に変な薬を注射されて、気付いたときには自分から服を脱いでいた。 カフェの店員になっていて、夜中の閉店間際にやって来た3人の男たちに押し倒された。 モデルになったときには、偏執的なファンに攫われて部屋に監禁された。 学校の保健室で、ベッドに縛られて大勢の男子生徒に囲まれていた。 探偵をやっていて犯人を追い詰めたはいいが、何と全員が犯人で囲まれてしまったこともあった。 剣を持っているときには、お約束のように空間を裂いていやらしい舌が出てきた。 殺し屋になっていたときは、逆にターゲットに捕らえられて拷問室へ運ばれた。 くノ一だったときには抜け忍で、組織からの追っ手に手裏剣で服を少しずつ剥がされた。 悪魔を滅ぼす天使だったときもあって、敵に捕まって魔法で悪魔にされたときは屈辱だった。 千里が「これは現実です」と言う度に、景色は変わる。 しかし、どの世界でも捕まって辱められるということに変わりはない。 最初は「これは現実です」とは言いながら、もちろん心の中では夢に違いないと思っていた。しかし何度も何度もピンチの度に「これは現実です」と繰り返すうちに、思考が引きずられていく。これは本当に現実で、救いの無い邪悪な世界に迷い込んでしまったのかもしれないと思うようになってきた。 すると、ずっと体の中を這いずり回っている黒い目が笑う。 「ははははは、どうだね千里。確かに“これは現実だ”と口にすれば、逃れられるかもしれない。しかぁし、それは一時しのぎに過ぎないことも十分わかっているだろう。これが本当に現実なのだと心の底から認めて、敗北を認めて、屈服して、変態どもに身も心も差し出すがいい。それで調教完了ってなぁ!」 「誰が・・・貴様らなどに・・・私の力が戻ったとき、ただで済むと思うな!」 暗黒空間の中で、千里は必死に逃げていた。逃げながら反撃の方法を考えていた。 しかし白衣の男が立ちはだかる。 「日頃から周囲の男たちの頭の中で、何度も何度も犯されていたでしょう? その妄想を全て具現化させてあげますよ。・・・本当は脳内でメチャクチャにされて、感じていたんではないですか〜?」 「誰が!」 「おやおや、ムキになって否定するのはどうしてかな〜。」 体の中を這いずり回る黒い目がニヤニヤ笑う。 しかし千里はそのとき気付いた。 「笑ってられるのもそこまでだ。私の体の中にいながら能力を封じるだけで操ることは出来ていない。それなら打つ手はある。このまま抉り出してやろうか!」 「なっ!?」 黒い目が慌てたのを見逃さない。 「立場が逆転したときのことを考えていなかったのか? 白衣の男が追いつくよりも貴様を抉り出す方が早いぞ。」 「貴様こそ能力が封じられているのを忘れているのか?」 「はっ!」 「ぐひひひひい!」 上から大男が降ってきた。 「しまった!」 「手加減しないよ。」 大男の拳が腹にヒットした。 「かはっ・・・・?!」 普段なら千里眼で当たり前に予知できたことも今では出来なくなっている。突然の奇襲に千里は対応できなかった。 「降参しないと、このまま殴り続けるよ。」 視界は真っ暗だが、どうやら素っ裸で大男に組み伏せられているようで動けない。 「降参したらどうなるか教えてあげる。変態たちに入れ替わり立ち代り休みなく犯され続けるの。降参する?」 「そんなこと言われて、降参すると思う?」 すると腹に再び拳の一撃! 「がふっ・・!」 「降参する?」 「しない!」 すると拳の連打! 「降参しないと止めないよ。」 「あぐ、あぐ、あぐああ・・・・・!!」 「流石はドSの名をほしいままにする男だ。おい死根也、お前も負けていられないぞ。」 「わかってますよ。」 白衣の男は注射器を取り出した。 「こいつは“鬼殺し”の媚薬成分を抽出したものでしてね、血管から注入することで3倍の威力があるのです。」 成すすべなく千里の腕に針が刺さる。 恐ろしいことに、痛みよりも快感が勝る。 「んんー!?」 大男の連打も段々と気持ちよくなってきた。 凄く痛いのに痺れるほどに気持ちいい。 更に黒い目の数が、いつの間にか9つに増えている。 「快感増幅!」 「1分ももつまい。」 「くああ・・・!」 必死に耐えるが、快感の波が後から後から押し寄せてくる。 「ああ、ああ、くあっ、あああああ!?」 「おやあ、ついに拷問調教で絶頂してしまったか。テレパシー能力で他人の感覚と同調した経験はあっても、実際に自分が経験するのは初めてじゃないかな? 心配要らない。これからもっともっと経験させてあげるからね〜。」 「降参する前に敗北しちゃったから、もう逃がさないよん。」 「変態の血が騒ぎますなあ。」 「死根也、コング、つまみ食いだけで逃げられて物足りないだろう。気をやってしまったから今度はキーワードを言っても逃げられないようになっている。前から後ろから存分に犯してやれ。犯しながら殴ると、よく締まるぞ。」 「ああああ!!」 もはや全ての退路は絶たれた。抵抗も出来ず、千里の体は男たちに侵略された。 白衣の男が痛覚を鋭敏にするツボに針を打つ。 大男が重い拳で腹部を連打する。 並の人間ならとっくに気絶する激痛の連続だが、薬と黒い目のせいで全て快感に変わっている。 どれだけ気をやっても、吹っ飛んだ意識が即座に戻ってくる。 気絶と覚醒の無間地獄だ。 (もう嫌ああああ!!) (ああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) 時間の感覚が無くなっていく。景色が黒く渦を巻いて、千里を呑み込んでいく。何か得体の知れない、形容できない音声が響き渡る。黒い地球と、白い少女と、片羽の天使と、褐色の時計と、双子と、たくさんの熊とが、黒く熱く輝く太陽に吸い込まれていく。暗黒世界を照らし尽くす太陽は、千里の目の前で際限なく大きくなっていった。 - - - - - - 「あああ!!」 起きると汗びっしょりだった。服から汗が滴り落ちるほどだ。 「どうしたの姉さん!?」 叫び声を聞きつけて、宙太が飛んできた。 「私は何歳だ?」 「なに言ってるの姉さん。12歳だよ。忘れたの?」 「ああ・・・・戻ってきた・・目が覚めたか・・・。」 「どういうこと?」 「何でもないわ。あっちへ行ってて。」 「う、うん?」 宙太が去っていった後、千里は下着も含めて服を全て取り替えた。 下着を脱ぐとき、ヌルッとした感触があった。 (・・・濡れている・・・・・・。) 時間と共に夢の内容は急速に忘れていくが、まだ何割かは覚えていた。 千里は顔が赤くなった。 『ぐはぐはぎひひい!』 「!?」 見回してみるが誰もいない。千里眼で探知してみても、あの大男はいない。 封じられていた千里眼の力も問題なく機能している。 (幻聴か・・・。) 眩暈がした。何だか頭と体が熱っぽい。 (風邪を引いていたのか。あの悪夢はそのせいで・・・。) 着替え終わっても、まだ生々しい感触が少し残っていた。 (本当に、夢だったのかしら・・・?) 暗黒夢想 了 |
| << 前記事(2011/04/30) | ブログのトップへ | 後記事(2011/04/30) >> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|
| << 前記事(2011/04/30) | ブログのトップへ | 後記事(2011/04/30) >> |