佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘迷宮 62.2   星たちの事情

<<   作成日時 : 2014/06/16 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



そもそも最初は、小森彩也香に会いに来たのだった。

薫をリーダーとする“スター”は、デュエルモンスターズを悪用する組織を検挙していく組織である。
しかし“セキュリティ”や“タスクフォース”などとは、やや趣が違う性格をしている。
例えば、“スター”の任務に、闇の組織に関わった人間のアフターケアがあることは、あまり知られていない。
特に、闇の力で心を操られ、無理やり仲間にさせられた人々。
闇の力の後遺症はもちろんのこと、自分が悪事に加担したという負い目や、恐怖や苦痛の記憶。
それらの有無を確認し、ケアに当たる。必要とあればデュエルも行う。
恐るべき闇の組織と戦うことに比べれば、遥かに簡単な仕事ではあるが、重要な任務である。

かつて《地の神−ブレイクライガー》は、小森彩也香の肉体をハッキングし、デュエリストたちを襲っていた。
最弱にして最強と言われた“地の神”は、恐るべき攻撃力と攻撃性能を誇っていたのだ。
雲井忠雄の活躍によって、《地の神−ブレイクライガー》は倒されたのだが、消滅したわけではない。
子犬の姿になったブレイクライガーは残り、雲井忠雄は“スター”の監視下に置かれることになったのだ。
もっとも監視といっても、既に闇の組織と戦った同胞であるし、実質は絆を深めたようなものである。
むしろ懸念材料としては、小森彩也香の後遺症の方が優先事項かもしれなかった。

薫はダークや牙炎の事件に関わった人々の様子を、定期的に確認することにしている。
“地の神”の事件以来、その名簿に小森彩也香の名も連ねられることになった。
事件が解決しても、被害者や関係者にとって本当の解決を見るまでには、時間と労力が必要なのだ。

とはいえ、先に書いた通り、死闘に比べれば簡単な仕事である。
体力的にも心情的にも、面倒なことではない。



―――はずだった。



『え、行方不明?』

『そうなんです、ソラ先生、もうすぐ締め切りなのに・・・。ああ、やっぱり仕事が嫌で逃げ出したんじゃ・・・。』

ソラというのは、小森彩也香のペンネーム“空歌夜真姫”のことである。
KOMORISAYAKAを入れ替えて、SORAKAYOMAKIという、いかにも作家らしい言葉遊びだ。

それはともかく、仕事が嫌で逃げ出したという推測は、どうも的外れに思えた。
仮に当たっているとすれば、それは彼女の精神に変調が生じたということでもあるだろう。

薫は胸騒ぎを覚えた。



◆ ◆ ◆



同じ頃、佐助とコロンはコンピューターネットワークから、闇のカードを追っていた。
“スター”の幹部である佐助は、デュエルこそ初心者だが、コンピューターの扱いに長けた人物である。
ただでさえ老けて見られるのが、寡黙さとブラックコーヒーを好む性格から、とても20代前半には思われない。

佐助の持つ“白夜の力”は、幹部の中で最弱であるが、それは彼が無能であることを意味しない。
むしろ彼は、ある意味“スター”の中で最も恐るべき人物である。

『アメリカ・アカデミアか。』

『うん。正確には、その地下・・・かな。』

遊戯王本社のデータベースには、闇のカードに関する情報も納められている。
ダークや牙炎の組織が使っていた“闇の世界”シリーズや、20年近く前にドーマが使用していた“オレイカルコスの結界”シリーズ、《邪悪なる鎖》や《五行封印−桔梗の陣》など、凶悪カードが目白押しだ。
当然のことながら、そうした闇のカードに関する情報は“閲覧禁止書庫”となっており、一般公開されていない。

その“禁止書庫”に、1ヶ月ほど前にハッキングがあったという。
遊戯王本社はシステムの強化に努めると共に、犯人を見つけ出すように“スター”に命じた。
コロンの特殊能力は、コンピューターネットワークを自在に移動できるというものであり、通常なら見つけることが出来ない痕跡でも、辿ることが出来るのだ。

敵もさるもので、見つけ出すまでに1ヶ月。
この名コンビを1ヶ月も苦労させるとは、大したものである。

『今度は、どんな闇の世界が・・・。』

コロンは恐ろしさに身を震わせていた。

オリジナルの《闇の世界》は、それなりの性能は持つものの、カード効果そのものは大した脅威ではない。
遊戯王本社では、数年内にはフィールド魔法を各プレイヤーごとに張れるように、ルール改正を行う案が持ち上がっているらしく、そうなれば《闇の世界》は著しく弱体化する。

《闇の世界》の上位互換である《真・闇の世界−ダークネスワールド》も、その真価は“闇の神”との組み合わせであり、単体のカード効果としては、強力であっても脅威と言えないレベルだ。
事実として、《真・闇の世界−ダークネスワールド》が脅威だったのは、ダークのデュエルのみである。

“闇の世界”シリーズの本領は、持ち主の心・・・特に欲望によって、効果が変質するところにあるのだ。
オリジナルの《闇の世界》を主に使っていたダークの組織と異なり、北条牙炎の組織や、星花高校の事件で闇に染まっていた人々は、多くが変質した“闇の世界”を用いていた。

その中には極悪と言えるほどの世界も存在していたのだ。

『・・・・・・。』

佐助はデュエルモンスターズについては初心者なので、カードテキストから脅威を読み取るのは難しい。
しかし、仲間の様子から、間接的に脅威を認識することは出来る。

変質した“闇の世界”の奇妙な特性として、持ち主のデッキと噛み合う効果になることは稀である。
それの意味するところは、もしもデータを元に複製が作られ、効果の噛み合ったデッキに投入された場合、更なる脅威として立ちはだかるということなのだ。

更に、この世界には“デュエリスト能力”というものが存在する。
わかりやすく言えば、“キャラクターカード”あるいは“デッキマスター能力”のようなもので、10代のデュエリストなら誰でも獲得する可能性がある。

“闇の世界”シリーズなど、闇のカードはデュエリスト能力を封印できるが、件の“闇の結晶”が闇に沈む罰ゲームを回避できるように、封印の性質を中和するアイテムが存在する。
また、レベル5+以上の能力は、それ自体が中和性質を持っており、他にも中和を内蔵する能力は存在する。
高位の魔術師であれば、魔術で中和することも可能だという。

仮に、デッキ、闇の世界、デュエリスト能力、それら全てが噛み合うことがあるとすれば?

欲望の大きなデュエリストほど、“闇の世界”の変質も激しい傾向がある。
そこに込められた思いが何であるにしろ、病んだ心は闇と親和する。

また、高位のデュエリスト能力者ほど人格が破綻している傾向にあるという。
この一致が偶然か必然かはともかく、恐るべき事実であることは間違いない。


アメリカ・アカデミアについて詳しく調べている間に、薫から悪い報せが届いた。

小森彩也香が、闇の組織に誘拐された可能性が高いというのだ。



◆ ◆ ◆



伊月弘伸は、星花高校に向かっていた。
自分たちと同じく“白夜の力”を持つ、中岸大助と朝山香奈。
そして“白夜の力”こそ持たないものの、決闘戦力として申し分ない弟子、雲井忠雄。
この3人を招集するべく、素早い行動を起こしていた。

しかし学校に3人はいなかった。
休日だとか放課後だとかいう話ではない。
来ていなければならないときに、来ていない。
そして本城真奈美や雨宮雫の姿も見えない。

『まさか―――』

伊月は、すぐに欠席者の家に連絡を取った。





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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「ケアは大事だ。操られていたら本人に責任はない。操った奴が主犯だ」
コング「操り人形の話といえば八武院長」
ゴリーレッド「操り人間の話なんかしていない」
コング「死闘に比べたら簡単な仕事の・・・はずだったか」
火剣「空歌夜真姫」
コング「ソラ先生か」
ゴリーレッド「佐助は初心者なのか」
コング「デュエルの試合よりも難しい。僕にはわからない」
火剣「重要な部分はここと見た。欲望の大きなデュエリストほど闇の世界の変質も激しい傾向にある」
ゴリーレッド「示唆に富んでいる言葉だと感じた。そこに込められた思いが何であるにしろ、病んだ心は闇と親和する」
コング「小森彩也香が闇の組織に誘拐された? そうこなくっちゃ」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「だあああ!」
火剣「本城真奈美、雨宮雫。どんどん出てくる」
コング「伊月弘伸は初めてか?」
ゴリーレッド「きな臭い」
火剣「勘か」
コング「何はともあれ、薫、彩也香。ヒロピン候補は多いほうが良い良い」
ゴリーレッド「軽い浅い」
火剣獣三郎
2014/06/16 17:48
>火剣さん
人の心に対して誠実であるかどうか。“英雄”の本質は、そこにあると思います。表層の強さしか見えてない人は、闇に魅入られやすい・・・なかなか私も人ごとではないですが。

佐久間「病んだ心は私と親和する。」
山田「お前が病んでるからな。」
佐久間「病んでるのではない! ヤンデレなのだ!」
八武「人を操りたいという欲望は、多くの人に存在するようだ。子供のワガママも、広く言えば含まれる。」
山田「それを包み込めるのが完練か。」
佐久間「確かに英雄は子供に優しい。」
山田「間違っても佐久間は英雄になれないな。」
佐久間「そうなんだよ。」
八武「意外と子供に優しい気はするが。」
佐久間「子供が好きなのと、子供に優しいのとでは、ちょっと違うんだなぁコレが。」
八武「私は女子が好きだ。愉快痛快誘拐犯♪」
山田「そろそろノックアウトいっとく?」
八武「子供を誘拐するよりも、美女を誘拐したいと思わないかね?」
佐久間「誘拐は前提なんだな。それでこそ死根也。」
山田「ダブルラリアット!」
八武「ごっ!」
佐久間「ぐっ!」
アッキー
2014/06/16 22:26

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