佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘迷宮 71   闇のゲームからは誰も逃げられない

<<   作成日時 : 2014/06/29 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



すべての生物・物体は 元をただせば みんな“始まりの1枚”から生まれた

もちろん ヨシイくんだって例外じゃないんだよ?

1枚のカードから生まれたこの世界は デュエルモンスターズという名の法則に支配されている

ヨシイくんは デュエルモンスターズの契約的性質って聞いたことあるかな?

デュエルモンスターズの 契約的性質

それは 端的に言うならば デュエルを通して交わした約束は必ず守られなければならないというものだ

私がデュエルに勝ったら ○○してもらう

俺がデュエルに負けたら ××してやる

そんな 簡単な口約束でさえ デュエルを通せば絶対的な拘束力を持つ

決して 違反した者を罰するシステムが存在しているわけではない

だが 全員が全員 デュエルを通して結ばれた約束を“そういうもの”として捉えてしまうのだ

でもそれって 当然のことなんだよね 

デュエルの勝者こそが絶対の価値を持つ 

それは デュエルモンスターズの一番根本にある概念だもん

1枚のカードから生まれた世界が そういう“ルール”に支配されているのは 当たり前だよね

万有引力の法則 エネルギー保存の法則

そんな物理法則と同じようなものだと考えてみれば 分かりやすいかもね

デュエルの契約的性質を極限まで突き詰めた闘いは 「闇のゲーム」と呼ばれる

一度始まったデュエルは途中で止められず 勝者は敗者の命すら掌握できる―――――




◆ ◆ ◆



血溜まりが広がっていく。

それを見ながらチェルシーは、若さを取り戻しながら笑う。
せせら笑うのでもなく、にやけるのでもなく、ただただ安堵と脱力の笑み。

「終わった・・・。わたしは勝ったのだ・・・。クリムゾン・ドラグーン様、わたしは勝ちましたよ・・・。貴方様の言葉を覆してしまったのは遺憾ですが、褒めてくれますよね?」

沈黙が空間を支配する。
ダークネス・エイジの姿は無い。
消えてしまったのか、逃げてしまったのか、いずれにしても存在を感じられない。

「・・・!」

チェルシーは、何者かが向かってくるのを察知した。

(レベル5能力者・・・。)

「キング? それとも月島?」

落ち着いた声で、チェルシーは呼びかける。

そこへ現れたのは、どちらでもない。ショートヘアの少女。
華奢な体つきながら、出るところは出ている。少し腹が膨らんでいる。
彼女は母親譲りの黒球を爛々と輝かせて、得体の知れない表情で近付いてきていた。
“虚無”を形にしたら、きっとこんな感じだ。


「褒めるわけないだろう、チェルシー。デュエルで勝てないから暴力って、それでもデュエリストか?」


その声は、竜堂眸の声によく似ていた。
竜堂眸の声を少し幼くしたら、このようなものだろう。

少女は大河柾のところへ歩いてきて、微笑みを浮かべて瞼に触れた。
動揺してなければチェルシーは、さっきから柾の肉体が時間を止められていることに気付いていただろう。

「・・・・・・誰?」

チェルシーは震えながら言った。

「僕は弱いが、生憎と僕はしぶとい。弱いというのは、ただの事実で、それ以上でも以下でもないんだ。」

「・・・・・・誰なの?」

「この期に及んで何を言ってるんだい。僕だよ僕。君の大っ嫌いな竜堂神邪さ。忘れたはずはないだろう。」

「なんっ・・・・・・冗談っ・・・・・・・・竜堂神邪は木っ端微塵に吹っ飛んだはずだ!!」

目の前の少女が発するパルスは、確かに竜堂神邪そのものだった。
だが、性別の違いだけでなく、死という認識が事実を受け入れがたくしていた。

「ああ、まったくだよ。まるで無駄死にみたいで、かっこ悪かったなぁ。また黒歴史が増えてしまった。」

壊れた器のように、少女は焦点の合わない目を動かす。

「しかしチェルシー、僕が死んだと君が言ったときに、マサキに否定されたはずだ。そのときに僕が生きてる可能性を疑わないなんて、どうかしてるね・・・。」

「違う・・・・そんな・・・・・・木っ端微塵になって生きてる人間なんて、いるわけない・・・!」

チェルシーは震えながら首を振る。
動揺を噛み殺そうと、歯に力を入れている。

「何度もヒントは与えてきたつもりだったんだがね。」

彼女は失望したように左目を伏せた。
片方の目だけを伏せた状態というのは、ちぐはぐで不気味だ。

「そもそも母さんは言わなかったかい、僕のことを“失敗作”だと。」

「あぁ・・・・・・?」

「何年も付き合ってきて、おかしいと気付かないなんて、母さんを・・・竜堂眸を舐めすぎだ。凡人が10年かかることを1日で成すのが、君の敬愛するクリムゾン・ドラグーン様だぜ。失敗作を修理して、まともに使えるようにすることくらい、竜堂眸にとっては朝飯前だ。」

肌を突き刺すような威圧感。
透き通る闇色の声は、竜堂眸の娘として相応しいものだった。
チェルシーの中で、畏怖が嫌悪に並んだ。

「失敗作を失敗作のままで置いとく理由なんて、数えるほどしかないだろう? 竜堂眸は僕を、魔術の実験台にしたのさ。気兼ねなく使えるオモチャにね。そもそもの始まりが、僕は、僕“ら”は、死産でね。男女の双子だったんだけど、両方とも死んでいてね。これ以上の“失敗作”は無いよねぇ。」

告げられる真実は、チェルシーにとっては始めて耳にするものだった。
目の前にいるのは女なのか、男なのか。それもわからなくなってきた。

「ご存知《邪神アバター》は、魂を練り込んで吸収する、糊のような性質を持っている。竜堂眸は精霊界でアバターを捕獲し、僕らの魂を練り込んで、新たな1つの命を作り上げた。あたかも原子がバラバラにならないように繋ぎ止めるグルーオンのように、僕らの命を現世に繋ぎ止めたのさ。」

彼女は、伏せた目を元に戻して、唇を曲げた。
そこへ指を当てて、小首をかしげる。

チェルシーは思わず生唾を飲んだ。

「そうして、1つの魂に2つの肉体を持った、普通より死ににくい人間が誕生した。存在からして、男としても女としても中途半端なんだよねぇ。男でも女でもない、あるいは、男でも女でもあるのか? 今更どうでもいいことだが・・・まあ少なくとも、僕が生きてる理由は理解してもらえたと思う。ちなみに、使ってない体は、普段は闇の中だ。」

「・・・・・・魂は1つなのか?」

「そうだよ。竜堂眸のように魂が4つあるとかいうオチは無い。」

「どうやってレベル測定を誤魔化した?」

「あァ、半径30キロ以内の能力者の位置とレベルがわかるとかいうアレか。便利な能力だ。それについては僕も素直に褒めるしかない。竜堂眸も褒めるだろう。」

「どうやったんだって言ってんだろが!?」

チェルシーは歯を軋って、額に青筋を立てた。
それを見て神邪は、少し不愉快そうに眉を顰めたが、すぐに元に戻る。

「・・・純粋な絶対能力者は、魔王状態の天神美月ただ1人だよ。竜堂眸の“神炎”は2万人を犠牲にして得た無理筋の能力だし、僕の“壱”(シフトワン)は反則技みたいなものだ。元は“十一”(プラスワン)というレベル5能力を、レベルに1を足して手に入れた。」

十一(プラスワン) レベル5能力(所有者:竜堂神邪)
数値を元の値から+1出来る。


「元はと言えば、これも“一”(ザ・ワン)というレベル1能力を、竜堂眸のレベルMAX魔術でレベル5まで上げたものでね。失敗作も残しとくもんだって、重要な教訓だ。そこから更なる発展があるかもしれない。」

一(ザ・ワン) レベル1能力(所有者:竜堂神邪)
自分フィールド上のモンスターの元々の攻撃力と守備力は1ポイントアップする。


「もう説明はいいかな。そろそろデュエルがしたいんだが・・・。」

カツコツと音がする。
いや、記憶を辿れば神邪がステップを踏む音は、もう少し前から聞こえていた。

「・・・・・・。」

チェルシーは時間が欲しかった。
その理由は幾つかあるが、単純に動揺を立て直す意味が最も大きい。
流石にカンサーでA級9位を務めた実力者である。既に7割がた精神は持ち直していた。

「待てよ。まだわたしの質問は終わっちゃいない。」

だが、時間稼ぎというのは彼女の理性的な側面に過ぎない。
感情的な側面が、何よりも前に出ていた。

「どうして普段は男の体で過ごしている? 女の体の方が――」

「何だ、僕に惚れたのか? 気持ち悪い。」

「・・・っ!」

チェルシーは赤面して拳を握った。
それを神邪は冷淡な目で見る。

「女同士だから言ってるわけじゃないぜ。男のときは嫌悪をぶつけておきながら、性別が変わった程度で掌を返してくるのが気持ち悪いって言ってるんだ。」

取り付く島も無い、侮蔑と嫌悪の目つき。
チェルシーの顔に冷汗が浮かぶ。

(こいつは、クリムゾン・ドラグーン様じゃない・・・! なのに、何故、こんな・・・・・こんな・・・・・・・!)

神邪は肩を竦めて両手を開いた。

「・・・どっちかというと、性指向は四分六で女に向いてるんだけどね、君のような浅はかな奴は、男だろうと女だろうと願い下げだ。対象外の外だ。」

「・・・っ、ううっ・・・!」

「あァ、質問に答えようか。理由は3つある。」

神邪は6本のうち3本の指を立てた。

「1つ目は、男の体の方が過ごしやすいからだ。生理痛が無いってだけでも男の肉体は素晴らしい。・・・いや、君は生理痛が軽いらしいから、それはわからないか。」

「・・・・・・。」

チェルシーは腹を押さえた。
それと同時に、あることに気付いた。

「もちろん、ずっと男で過ごしてきたわけでもないから、女であることのメリットを知らないわけじゃない。大学デビューは女で行こうと思ったくらいだ。しかし、囲碁サークルに入ったら翌日には輪姦されて、仕方ないから闇の囲碁でそいつらを消した。次に将棋サークルに入ったら、また翌日には輪姦されて・・・そんなことの繰り返しだ。まったく、世の中には悪い奴がいるもんだよねぇ。」

ふぅ、と溜息をつく神邪の様子は、まるで他人事のようだった。
心が傷つくことに関しては敏感な彼女も、体が傷つくことに関しては異常なほど鈍感だ。

「最後に入ったデュエルのサークルでは、全身メッタ刺しにされて、その穴にペニス突っ込まれて精液を流し込まれるという大惨事。しかもサークル潰しの汚名まで着せられて、夏休み前に退学になったよ。ふざけんなよ。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

チェルシーとて、見てきた地獄の1つや2つはある。
だが、それでも言葉は出なかった。出る言葉が無かった。

「けれどまあ、そんなことよりも・・・・・・お前に吐かれた暴言の数々の方が・・・・・・


よおっっっっぽど痛かったぜぇええええええ、ちぇるしぃいいいいいいいい!!?


「ひっ・・・!?」

突如として凶悪な形相に変わったのを見て、チェルシーは思わず悲鳴をあげた。
しかし心のどこかで昂揚していた。

「・・・・・・。」

しかし神邪は優越の笑みを浮かべるどころか、不愉快そうに口元を歪めて、他を元に戻した。
口調も丁寧なものに戻り、あらためて仕切り直した。

「それで2つ目なんだけど、レイプされた結果として僕は、父親のわからない子供を妊娠している。

「・・・っ!」

「知っての通り、世界は僕に優しくない。基本的に胎教に悪いし、腹を蹴られたこともある。それでなくても、妊娠している肉体で過ごすことは疲れるし、ましてカンサーにケンカを売るには向かない。闇の中で静養させるに限る。」

そこまで話して、神邪は指を畳んだ。

「しかしまあ、3つとは言ったけど、今の2つは後付けみたいなものでね。3つ目が最も重要なんだ。」

「な・・・?」

「僕はマサキの親友でありたいんだ。男女の間で友情が成立しないと考えるほど幼稚じゃないが、やはり友情は同性の方が成立しやすい。僕はマサキと対等でありたいんだ。マサキに守られるだけのヒロインなんて、死んでも御免だ。もっと強ければ、男であろうが女であろうが、マサキの隣に立てると思うがね。もっと強くなりたいね、誰にも馬鹿にされない程に、世界を愛し抱き締められるように・・・。」

次第に彼女の狂気は、怒りや憎悪とは別の方向へ向かっていた。

「いや、それでも駄目だなァ。今言ったのは、マサキの側の事情だ。僕の側の事情があってね。やはり肉体に精神が引きずられるのか、女の体でいると、もう駄目だ。マサキに他の女が近付くだけでヘドが出そうになる。いやもうマサキに他の人間が近付くだけで殺したくなる。お前も例外じゃないぜぇ、ちぇえるしぃいいい!」

「・・・・っ、・・・・・ああ、それだ。わたじはずっと、その敵意が欲しかったんだ。何をやっても暖簾に腕押しで、なよなよして、ビクビクオドオド、キョドりやがって・・・人間味の無い、そんな態度が大っ嫌いだった・・・! だが、ついに目覚めたか! わたしを殺しに、ここまで来たか! それでこそクリムゾン・ドラグーン様の子供として相応しい! 逆らうものに容赦せず、敵を灰塵に帰すまで攻撃をやめない! そんな竜王として―――」


「ああ、そうですか・・・。」


「――っ!?」


凶悪な顔芸が一瞬で、冷めた人形になった。
使用済みのチラシでも見るかのような目つきで、神邪は首を傾けて眉に指を当てる。

「君は結局、竜堂眸の幻影しか見ていない。どうしてシルベスターとマリーが側に置かれて、君とギャシュリーが遠ざけられたかわかるか? それは君たちが、竜堂眸を神聖化して、おぞましき部分を見てないからだ。シルベスターも、マリー・ネーブルも、竜堂眸の汚さや不条理から目を逸らさなかった。それが存在するということを受け入れて、それでも竜堂眸を尊敬し続けたんだ。君とは違う。」

「あああ、そういう態度がムカツクんだよ! まだ現実から目を背けやがるのか!? それが駄目なんだって、何でわかんねえんだ! ここに来たってことは、それが答だろ!? ガキの頃の恨みを果たすべく、わたしに復讐しに来たんだろ!? 何の為にここに来たんだ、言ってみやがれ!!」

「・・・復讐という言葉も、誰が用いるかで重みが違うね。復讐心を醜いと言うほど無神経じゃないが、復讐をメインとして生きるほど空疎な人生じゃない。まあ、ここに来た3つの理由のうちの1つではあるが、メインではなくサブだ。当然お前は殺すとしても・・・・・・」

神邪の肉体から、ねっとりとした黒いものが出てくる。
それはカンサーの一員たるチェルシーにとっては、見慣れたもので、同時に見慣れないものだった。
闇の瘴気であることは理解できても、これほど濃いものは見たことがない。

「僕の本質は虚無だ。脳髄を含め、内臓や、筋肉、骨・・・肉体の大半を“虚空の闇の瘴気”に喰わせてある。君たちが苛んだ、あの哀れな子供は、もう何処にもいない・・・・・・。スワンプマンはオリジナルの全てを受け継いでるかもしれないが、オリジナルそのものではないんだなぁ。だから正確には、“実は生きていた”ってわけでなく、“とっくに死んでいた”ってこと・・・体をバラバラにされるまでもなく。」

「人間じゃ・・・・・・ない・・・・・・・・!?」

肉体から止め処も無く闇を溢れさせる彼女は、禍々しい怪物に見えた。

「何を以って人間と呼ぶかはともかく、今の僕は“虚空の闇の瘴気”が人の皮を被ったようなものでね。つまりそれが、3つの理由の2つ目だ。」

どっぷりと濃い闇の中で、神邪はピースサインを作る。

「僕は理性こそが人間の証だと思っている。勝手に人を軽く見積もって、嫌悪を吐き散らすような理性なき行為に対して、人間としての敬意を払う必要は無い。・・・いや、ちゃんと本筋だよ。僕の本質は虚無だって言ってるだろ。優しい言葉をかけられたら元気になるし、嫌悪されたら消耗する。特に、君のような、厳しさを勘違いしている輩のヘイトスピーチは、かなり消耗する。ここまで言えばわかるだろう。・・・わからないのか?」

「・・・回りくどい言い方はやめろっ!」

「これでも最短距離で話しているつもりなんだが。わからないというなら、危機感が欠落しすぎている。どうして自分と同じことを、相手がやれないと思うかな・・・。君しか出来ないわけでもあるまいに。」

「・・・・・・まさか。」

「時間を稼いで、部下が到着するのを待っているのなら、お門違いだと言っておこう。スタッフ9046人の魂は、闇のデュエルで勝利して喰った。残るスタッフは、チェスの駒と、月島泰斗とピースメーカーくらいだ。いずれにしても僕の敵じゃない。たとえ全員を同時に相手にしても、負けは無い。」

「・・・・・・。くだらないハッタリ・・・・・・。」

「ハッタリじゃないさ。魂を補充しなければ生きていけないのは、どう考えても弱点だろ? ハッタリで弱点を述べる馬鹿が、カンサーには多いのか?」

「・・・っ、どこまでも癪に障る・・・!」

「本気で怒ったこともない奴が、そんな言葉を使うなよ。君は野次馬が騒ぐように、対岸の火事でも見物するかのように、安全な場所でイイ気になって、嫌悪を吐き散らしてきただけだろうが。」

神邪の黒球は、いよいよ形容しがたい形に歪んでいる。
およそ人間の肉体の構造では不可能なほどに、蕩けて溢れ出している。

「・・・ええと、どこまで話したっけな。1つ目はカンサーへの報復。2つ目は食事としての魂の補充。僕らの様子をモニターしていたのなら、僕が食事を摂ってないことには気付けたと思うがね。」

「・・・・・・。」

「しかし当然、この2つはメインではない。カンサーへ報復するなら、もっと効率的なやり方は幾らでもあるし、魂の補充も、カンサーの連中なら食いやすいってだけの意味しかない。メインは3つ目・・・。」

「何だ。」

「マサキの為に決まってるだろ。彼も高レベル能力者の例に漏れず、立派な人格破綻者でね。普通の側でいる資格も十分に備えちゃいるんだが、最も輝ける場所は苛烈な戦いの場なのさ。僕はマサキに生きている充実感を与える為なら何でもするよ。竜堂眸に敗北して、生ける屍のようになった彼は、見てられなかった。マサキを生き返らせる為に、僕は彼に会うことにした。愉しかったぜぇえ、マサキが生き返っていくのを見るのはァ・・・。マサキは気づいていないみたいだが、元気になっていく彼を見てると僕は至高の愉悦を感じるのさ。マサキが笑っていてくれれば僕は満足だって、柄でもないことを思ってしまう。ふにゃふにゃだ。でも幸せだ。ククッ、アハハハハ!!」

「・・・・・・!!」

チェルシーが他人に恐怖を感じるのは、生まれて2度目だった。
1度目の恐怖は、使えるべき主への畏怖。
2度目の恐怖は、相手にされてない屈辱。

「わたしを無視するのも大概にしやがれってんだ!! そうやって人を前座扱いしやがって! わたしを舐めるな! わたしはチェルシー・チェックだ! “灰天使”チェルシー・チェック! “灰塵”のチェルシー! 気に入らねぇ奴は全て焼き尽くして、塵芥にしてやったぁ! かかってこいよ! 悔しいんだろクズ野郎があああああ!!! 美しく偉大なクリムゾン・ドラグーン様の、下卑た穢れの結晶があああああああ!!!」

髪を振り乱して激昂するチェルシーには、もはや天使としての面影は無かった。
あるいは、戦う者としての天使の、それだった。

神邪は、ようやく少し唇に笑みを浮かべた。

「少しはマシな怒り方をするじゃないか、ちぇるしぃいい・・・。君が僕に対して、本気で怒って欲しいと思っていたように、僕も君に似たようなことを思っていたさ・・・。だが、まだ足りないな。相手が反応しないのを責めるのは三流以下のやることだ。もっと本気で、心の底から、あァ、怒ってもらおうか? 僕に対する侮蔑や嫌悪だけじゃあ、前座ですらない通過点だ。」

「何だとっ・・」

「だからァ。」

神邪は指を突き出してチェルシーの言葉を封じた。

「人が喋ってるときは黙って聞けよ。」

神邪はゾッとするほど冷たい目を微動だにせず、指だけを下ろした。
まるで人形が関節を動かすように、カタンと下りたように見えた。

「どうして君が僕を目の仇にするのか、わかっているぜ。僕の存在そのものが気に食わないんだ。僕を見ると否応なしに、竜堂眸が男と交合わったことを知らされるからだ。」

「・・・っ、黙れ・・・っ!」

「だから黙って聞けと言ってるだろぉ。君が本当に惚れてるのは、竜堂眸だ。」

「・・・・・・!」

「まったく、竜堂眸は魅力的すぎる。男も女も惹きつける。性別の壁など問題にもならない。竜堂眸は愛されキャラだ。男にも女にも愛される。味方は勿論、敵にすら愛される。竜堂眸を愛するのに、性別人種国籍信条立場身分その他一切合財が関係ない。誰もが竜堂眸を愛するんだ。誰も彼もが竜堂眸を愛するんだ。」

「・・・・・・・・・。」

意図がつかめず眉をひくひくさせているチェルシーに、神邪は無表情で言い放った。


「さて、ここで問題です。僕の父親は既に亡く、亜依と繰夢の父親は遠くで平穏に暮らしている。三つ子の父親は鳥月風花に殺された。それでは、真名子の父親は、一体どこの誰でしょうか?」


その途端、チェルシーは全てを理解した。
理解し、そして景色が飛んだ。


「きぃさまあああああああああああああああああああああああ!!!!!」


「アハハ、竜堂眸のこととなると、途端に察しが良くなるね。これも愛ゆえかな。・・・だが、それが彼女の綺麗なところしか見てないって言ってるんだよ・・・!」


「ころしてやるううううううううう!!!」

チェルシーは、込められるだけありったけの魔力を右手に集め、灼熱の大火球を作り上げた。
それを投げるのも面倒だとばかりに、神邪へ飛びかかりながら、ぶつけるように放った。

「バーカ、デュエリストにリアルファイトが通用すると思っているのか?」

神邪は事も無げに火球を弾き、闇の瘴気で包んで消し去った。

「・・・っ!!?」

「どうしてマサキの危機に僕が都合よく現れたと思ってるのさ。闇のデュエルに負けた君が、マサキを殺そうとしたって、失敗するに決まってるじゃないか。決闘法則に反する行いなど、この世界じゃ成立しねェんだよ。勝利したエドモンドの危機にドリーが都合よく駆けつけたのは何故か? 勝利したマサキが水銀を注入されそうになったとき、タイミングよく波佐間が現れたのは何故か? 勝利したドリーにビショップの部下たちが味方したのは何故か? こうして僕が殺されずに生きているのは何故か?」

「・・・っ、あ・・・・・・・・・・」

「じゃあ、闇のデュエルを始めようか。“No one can be escape from the Game of Dark”・・・誰も、闇の、ゲームからは、の、が、れ、ら、れ、な、い!」



―――デュエル!



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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
今日の最強カードは《リンネ−永劫回帰の支配者》よ。
デュエルモンスターズの、本当の“始まり”。
契約的性質の絶対性。決闘法則という、“概念”。
それはリンネが死んでも、この世界を支配しているわ。
天神美月
2014/06/29 00:00
コング「口約束は絶対の拘束力を持つ。契約的性質は素晴らしい」
ゴリーレッド「そこに反応したか」
火剣「賭けデュエルもスリリングだが、やはり闇のゲームは命懸けの真剣勝負。燃えるな」
コング「負け=死って究極だ。だから負けそうになった時のヒロインの慌てふためく姿は美しい」
ゴリーレッド「美しい?」
コング「でも、本当に葬るのはかわいそうだから、命は許してあげないと。それがナイト」
火剣「滑ったな」
ゴリーレッド「神邪の知られざる世界。過去。何という経験をしてきたのか」
コング「囲碁サークルと将棋サークルとデュエルのサークルまでが。悪い奴がいるもんだ」
火剣「新入部員に輪姦って意味がわからねえ」
コング「新入部員だけに侵入されたか」
ゴリーレッド「全身メッタ刺しも全く意味がわからない」
火剣「神邪は嘘をつかないのかわかるが、聞いた人間も作り話と思ったんじゃないのか?」
コング「それにしても神邪の言葉は強烈だ。ちぇるしぃいい」
ゴリーレッド「シンヤは食事していなかったか」
火剣「チェルシーは心のどこかで昂揚?」
コング「まさかチェルシーはMか?」
ゴリーレッド「誰も彼も竜堂眸を愛する。誰も闇のデュエルから逃れられない」
火剣「チェルシー、葬られるのか」
コング「法則に守られ、悪いことをしても無効にされるのか」
ゴリーレッド「世の中もそう。国法から逃れられても宇宙の法則からは逃れられない」
火剣「自己中は国法には触れないが宇宙の法律では地獄行きが決定している」
コング「僕は自己中ではない。常に世のため人のためにヒロピンを推進している」
ゴリーレッド「意味不明」
火剣「神邪はもう止められないか」
コング「チェルシーの昂揚の部分をもっと掘り下げよう。凄く大事なことだ」
ゴリーレッド「終了」
火剣獣三郎
2014/06/29 13:42
この世界に横たわる決闘法則。デュエルこそが全てで、デュエルの勝者にこそ祝福が訪れる。そう考えると、「狙われたバーディー」で引き分けたからこそ、月島泰斗の暴力が幅を利かせたのか。あれは勝つ訳にはいかない戦いだったけれども…。
デュエリストがデュエルを捨てたら、待っているのは永遠の魂の敗北。チェルシーが勝つビジョンが何一つない。例え、月島泰斗が戻ってきても他のカンサーのメンバーが来てもきっとどうしようもない。

さて、神邪さんにはとても申し訳ないのですが、生きていると確信していました。色々痛い目に遭っている上に今現在も好き好んで「もう死んでいる」体になった訳じゃないので、今こうして生きてここまで来るのに随分と苦労したと思うのですが…私なんか絶対に来ると思っていました。だって、ヒーローは遅れて登場するものですから。どこかで言ったかもしれませんが、この決闘迷宮ではマサキさんがヒロインポジションで神邪さんがヒーローポジション。ヒーロー、それはこの場面で現れる者のこと。それに神邪さんは以前、自分は翼ちゃんが壊れた成れの果てみたいな感じと言っていた。だったらどんなピンチも必ず乗り越えてくる、と思っていました。
千花白龍
2014/06/29 14:00
さて、竜堂眸の失敗作の意味が明かされ、神邪さんの秘密が次々と明かされる。「からくりサーカス」でいうところの今までの謎の解けっぷりがいい!というやつですね。しかし、ザ・ワンの弱さ…!ただ、元々デュエリスト能力というのは持っていない者がほとんど。同じ攻撃力のモンスター同士なら勝てる能力となると、能力なしのデュエリストとザ・ワンがあるのとだったら…。思えば、たくさんのデュエリスト能力が出てきてデュエリスト能力が優れていることが全てみたいな感じの感覚に私は陥っていたのかもしれません。デュエルに勝った者が法則というのは分かりやすい反面、それ以外の色々なものを切り落としてきたのか。例え、どんな能力を持っていてもその人はその人。ただ、自分の能力を無いものとして扱ってはいけないし、恐れてもいけない。その能力があるおかげで失ったものがあるが得たものもある。それに出来ることも、能力が無い場合よりも増えたはず。それは自分の武器。その能力も含めて自分自身。
段々と会話を重ねるごとにジワリジワリと感覚が昂ぶって、火花が散り、冷たい感情も熱い感情も飛び交い、互いに相手に意識が向いて、ついに爆発!!闇のゲームからは誰も逃れられない!そしてこの二人の戦いを誰も止められない!

デュエルが、始まる。
千花白龍
2014/06/29 14:00
>火剣さん
契約的性質こそデュエルモンスターズの基本。それを純化させた闇のゲームの始まりです。止まらない止められない。
聞いた人が冗談かと思うような、神邪の過去。これが当たり前である人生を送ってきた人間は、どれほど歪むのか。
誰もデュエルモンスターズの法則からは逃れられない。それは神邪のような人間にとっては、優しい闇です。

佐久間「闇のゲームの世界に♪影ひとつ♪暗闇に包まれ♪現れる♪さだめの道ならば戦うだけさ♪誰だ、誰だ、俺様を呼ぶその声は♪」
八武「生きてたよ・・・。随分と可愛くなっちゃって。」
山田「そこは同意せざるを得ない。」
佐久間「死者の眠り♪踏み躙る者♪悪は許さない、絶つ♪燃えろ燃えろ♪燃えろ燃えろ♪」
山田「いつまで歌ってんだ。」
佐久間「燃えているのだ!」
八武「萌えているのだ?」
山田「しかし酷い目に遭っている・・。」
神邪「もう笑うしかないですよね。」
佐久間「痛い目に遭った奴ほど、よく笑うらしいな。」
山田「笑えない・・・。」
佐久間「笑ってる人が幸せとは限らないんだよ。」
神邪「けれど、痛い目に遭った人が不幸だとも限らない。」
八武「その痛みを快楽に変えるときに幸福を感じる。」
山田「お前が言うと別の意味に聞こえるが。」
八武「ある人は言う、人と違う道はしんどいと。しかし私は、こうも言おう。人と違う道は、そこでしか味わえない幸せもあると。」
佐久間「真っ直ぐな道は寂しいらしいからな。」
八武「チェルシーは、うん、もっと早くに強敵と出会うべきだった。そして敗北と是雑を味わい、屈服し・・」
山田「はい終了!」
八武「何故だ!」
アッキー
2014/06/29 23:08
>千花白龍さん

決闘法則と物理法則。前者が優先する世界ですが、勝利こそ全てであるならば、引き分けは全てではない・・・無法と暴力の街区だけに、暴力の餌食になっていました。
リンネ戦でも、引き分けにしたら再戦になるだけだと、豆戦士さんが言ってた!

そんなわけで、主役は遅れて現れる(?)な竜堂神邪、堂々の登場です。
きっと死ぬ死ぬ詐欺は多くの読者に見抜かれるだろうと思ったので、生き生き詐欺にしてみました。機能は闇の瘴気が補ってるとはいえ、医学的には脳死状態なんです。
私は精神病になってから、ジワジワと死んでるような気分で、それが反映されてますね。
絶対能力者とレベル5能力者、約束された絶対の結末。0.001パーセントも揺るがない。流石の月島泰斗も、ことデュエルとなれば神邪には勝てません。暴力で抹殺しようとしていたのも、デュエルで勝負するのを恐れていたことの裏返しですし・・・。
アッキー
2014/06/29 23:43
さて、物語も大詰め、だいぶ解けっぽい展開になってきました。私としても、いっそう気合が入ります。
オリジナルのキャラで勝負させる以上は、ただデュエルするのではない、前段や味付けが必要。デュエル本体よりも会話フェイズに力が入ってるような気もしますが、これも含めてデュエルなのだと思っています。
しかし、まだまだ今の段階では、プチ解けた程度です。次回で更に恐るべき事実が判明!

ザ・ワンは、最弱のレベル1能力かもしれないですね。無いよりはマシという程度。
同攻撃力では勝てるのですが、こちらは時代と共に弱くなっていく運命でしょうか。
とにかく「1ポイント」な、神邪の能力。竜堂眸のレベルMAX魔術は、「レベル5にする」のではなく「最大レベルにする」なので、そういう意味で神邪は擬似レベル5相当の実力はあると言えなくもないです。(生粋のレベル5にはだいぶ劣りますが)
アッキー
2014/06/29 23:44

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決闘迷宮 71   闇のゲームからは誰も逃げられない 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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