佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS デビルズ・ミーツ・ヒーロー

<<   作成日時 : 2014/12/13 00:00   >>

驚いた ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 2

◆ ◆ ◆



「ふざけんなよ畜生。」

色々あって大学デビューを失敗した僕は、デュエルディスクを片手に街を歩いていた。
こんなときは小説でも読むに限る。最寄の本屋へ急ぐのだ。

しかし外出というのは、リスクも大きい。

「お、かわい子ちゃん見っけ。」
「へいカノジョ、お茶しない?」
「つーか、やらせろよ。」

彼女・・・。
ああ、そうそう、今の僕は久々に女の肉体で行動しているんだった。
大学デビューは、そのせいで失敗したようなものだ。

いや、いけない。ネガティブになっている。
どうせ男の肉体でも、失敗したに違いない。
自分の選択が間違っていたと、あまり思わないようにしよう。

前向きになった僕は、早速デュエルディスクを展開した。



- - - - - -



ナンパ男たちの断末魔の叫びについては、詳しく語る必要もないだろう。
最寄の本屋に辿り着いた僕は、あるタイトルに目を引かれた。

「とある英雄の決闘伝」

英雄という単語を目にするのは、久しぶりだ。
そう言えば、小学生の頃、近所の英雄に殴られたっけ。芋づる式に思い出してきた。

あんなに悔しく惨めだったのに、どうして忘れていたんだろう?
もっと酷いことが幾らでもあったからかなァ。
思い出した今でも、当時の自分を他人のように冷静に見つめている僕がいる。

まあ、それはいい。せっかくだから、この本を買うことにしよう。
本を読む動機なんて何でもいい。僕ごときが高尚な動機を求めるなど、滑稽を通り越している。
そもそも子供の頃などは、目の前に本があるから読むという、動機すら不要の読書家だった。



- - - - - -



お も し ろ い

何だこれは。何なんだ。
英雄というものに対するネガティブなイメージが、瞬く間に払拭されてしまったではないか。

そうか、僕が子供の頃に出会ったのは、英雄でも何でもなかったんだ。
真の英雄を、僕は見つけた。


―――これは、一人の少年の物語。

―――馬鹿で、不器用で、普段はとても弱くて、格好悪い。

―――だけど、どんな最悪な運命も打ち砕く。


―――これは、そんな英雄の物語。



そう、見つけたんだ。
驚いたよ、まったく。小説の挿絵が抜け出して、実体化したのかと思った。
もしくは、自分が小説の中へ迷い込んでしまったのではないかと。

実際それは、僕にとっては現実的に可能なのだけれども、それはいい。今は置いておく。
やるべきことは、今やるべきことは、彼を・・・雲居忠雄を、ストーキングすることだ。

そう、僕は雲井くんのストーカーになることを決意した。
僕が考えたとは思えないほどナイスアイデアだ。考えれば考えるほど素敵で、珍しく自分を褒めてあげたい。


しかし僕は、この世界には警察という人々がいることを、すっかり忘れていた。

「おまわりさん、あの人です!」
「えー、こちら牛尾、不審者を発見したので連行します。」

ワイルドでセクシーな警官が、無線を片手に喋っている。
しかし不審者なんて、どこにいるんだろう。あたりを見回しても、挙動不審な人間は見当たらない。



- - - - - -



留置所に連れてこられた僕は、ストーカーとしての誇りを持って解説を始めた。

「僕は怪しい者じゃないですよ。ただのストーカーです。実は、雲井くんの布団を干そうと思っていましてね。ああ、心配することは何もありません・・・いかがわしいことに使おうなんて、思ってるはずないじゃないですか。彼のぬくもりを味わい、匂いを堪能するという、極めて健全な行動の末にムラムラしたいと思っているだけなのです。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

相手の警官は、無言で僕の話に耳を傾けてくれていた。
どうやら感銘を受けているようだ。真顔になっている。

僕は落ち着いて茶を飲み、ふと外を見・・・おや、雲井くんがデートをしている幻覚が見える。
これは幻覚だ、幻覚に違いない。くっ、小森彩也香め・・・羨まし・・・いや、これは幻覚、幻覚・・・ひぃい、来る来る助けて来る来る来ちゃいます姉系ヒロインが来るぁああああ!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

僕の放った殺気に恐れをなしたのか、相手の警官は冷汗を流していた。
ようやく僕も、人から恐れられるような風格を身につけたということだろう。
子供の頃など、一方的に暴力的な尋問をされるだけだったからなぁ。僕も成長したもんだ。偉い偉い。

「さて、続けましょうか。」

警官の眼に翳りが増したように見えたが、おそらく気のせいだ。

「そう、小森彩也香は色々とハイスペックで、しかもお揃いの高攻撃力デッキなのですよ! わかりますか、この敗北感が!? 畜生・・・畜生・・・とてつもなくチキショウ!」

恋愛は勝ち負けじゃないとか、能力を競う勝負じゃないとか、したり顔でほざいてる奴には、教えてやりたいぜ。
この世には、どうにもならない圧倒的なヒロインパワーの差というものが、あるってことをな。

「しかし、ひとつだけ言わせてもらえば、ツンデレ男は良いものです。異論は認めません。」

「・・・・・・・・・・・・病院の手配を。」

何ということだろう。僕の話に感銘を受けていたのではなかったのか。
それともツンデレに関する思想で、僕と相容れなかったのだろうか。悲しいことだ。
このままでは精神病院へ送られてしまう。どうしようかなァ。

「・・・く、雲井くんが、雲井くんが僕をムラムラさせるからいけないんです!」

僕は真正面から主張を述べた。

「ああ、わかったから、ゆっくり休め。」

刑事さんの、僕を見る目が生温かい。
こんな温かい目を向けられたのは、久しぶりだ。



- - - - - -



そんなこんなで釈放された僕は・・・・・・うん? そうだよ、釈放されたんだよ。何かおかしいことがあるのかい?
闇のデュエルを挑んで警察署を乗っ取ったとか、そんな事実は一切無い。どうか安心してほしい。
あの刑事さんたちも、僕の感覚で言えば、とても無事だ。無事すぎて眩暈がするほどだ。安心だ。

それで僕は家に帰ってきて、下着を穿き替えた。どうでもいい情報だったね。
他に語るべきことがあるだろう・・・例えば、そう、僕が彩也香さんに嫉妬しているとか何とか。
けれど同時に、彩也香さんのことを尊敬してるんだなぁ。

悔しいことだが、やっぱり僕にはヒロインは務まらないようだ。
畜生・・・あんた、イイ女だよ・・・・・・。小森彩也香・・・・・・。
あなたになら、雲井を任せられる・・・・・・!

「・・・・・・でも、雲井くんは、僕の嫁だからね!?」

自分でも驚くほどの爽やかな笑顔で、僕は男の肉体へチェンジした。


さあ、ヒーローに会いに行こう。






   デビルズ・ミーツ・ヒーロー   完

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2015/08/31 00:11

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「不思議な物語だ。創作意欲をかき立てられる」
コング「英雄の定義は、ヒロインをピンチに追い込むヒーローのこと」
ゴリーレッド「違うと思う」
コング「ムスカ君。君は英雄だ。素晴らしい功績だ!」
ゴリーレッド「部屋に本棚があり、たくさんの本がある。それだけで子どもにとっては良い環境なのだ」
火剣「親も本も読んでいる。子どもも幼少の頃より本の背表紙を見て育ち、気づいてみたら本を読んでいる」
コング「待て。テーマが不真面目だ。小森彩也香にストーカーする話だろ」
ゴリーレッド「全然違う」
火剣「小説の中へ迷い込んでしまいそうな物語。そういうのを制作してみてえ」
コング「ネバーエンディングストーリーか?」
ゴリーレッド「雲井忠雄、牛尾刑事。御馴染みの名前が」
火剣「人から恐れられる風格か。この弱肉強食の乱世では、残念ながらそういう武装も必要かもしれない。悲しい世の中だが嘆く暇もねえ」
コング「火剣は大丈夫だろう」
ゴリーレッド「でも激村先生は198センチ135キロの巨漢なのにパワハラに遭った」
火剣「見た目弱そうな人間がどれだけ危険か察する」
コング「無事すぎて眩暈がするほど?」
火剣「眩暈がするほど無事じゃなかったってことか」
ゴリーレッド「真剣に話を聞かない刑事も良くない」
コング「下着を穿き替えた。これが小森彩也香なら必要な情報になる。これが不平等な世の中の実態よ! ナッハッハ! 山んばっはっは!」
ゴリーレッド「病院の手続きを」


火剣獣三郎
2014/12/13 12:44
>火剣さん
子供の頃、自分の家にも親戚の家にも本があるので、各家庭に本があるものだと思っていました。それが実は少数派だと知ったとき、もっと本を広めなければならないと感じました。
それはさておき、真夜の奇妙な冒険パート2でした。幻覚(?)を見ているあたり、既に別の世界へ迷い込んでいるのかもしれません。

佐久間「英雄とは・・・完練のことかな。」
山田「ひでおだ。まあ、むしろ本来の意味での英雄に近いと思うが。」
八武「奈落は英雄に入るね?」
維澄「その定義だと界隈には英雄が多そう。」
佐久間「英雄には2種類いる。誰かを助ける英雄と、弱者を虐げる英雄だ。」
山田「後者は英雄ではない。」
佐久間「しかしチャップリンも言ってる通り、街中で1人殺せば殺人犯だが、戦場で百人殺せば英雄になったりする。」
維澄「神邪を殴っていたのは、後者のタイプか。」
神邪「しかしその人は、よく人助けをしていました。」
維澄「ネガティブなイメージを抱くのも頷けるね・・。」
佐久間「だが、雲井によって払拭された。」
神邪「ヒーローというのは、“悪い奴”を殴るものだと思っていました。けれど雲井くんは、相手が“悪い奴”だから戦うわけじゃないんですよね。」
佐久間「ちなみに、この後どうなった?」
神邪「それは、『決闘迷宮』の通り、何かと邪魔されまして。しまいにゃ挨拶しただけで通報ですよ。」
山田「お前は何をしでかしたんだ。」
八武「まぁ、少なくとも言えることは、下着を履き替えたのが女の肉体のときなら必要な情報だったということだ。」
山田「病院へ送り返そう。」
アッキー
2014/12/13 20:49

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