佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘教師 (中編)

<<   作成日時 : 2014/12/22 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



言うまでもないことだが、翔武学園のデュエルイベントは生徒会に限ったものではない。
デュエル専門校ではないので、デュエル・アカデミアやJデュエルハイスクールほどではないが、生徒同士のレクリエーションも含めて、頻繁にデュエルが行われている。
学力偏差値よりも、決闘偏差値の方が高いと言えば、その白熱ぶりを感じられるだろうか。

中間テストの後に行われるのが、クラス対抗戦。
ひとつのクラスから3人の代表(先鋒・中堅・大将)を選んで、トーナメントを行う。

ただし、生徒会メンバーは出場することは出来ない。
実力の偏りもあるし、その生徒会が主催する大会なので、メンバーはスタッフ側なのだ。

3年生と2年生に、それぞれ3人ずつ。1年生に4人。
この人数でイベントを準備するのは大変だと、協力する立場から見ると、いっそう思う。

学園モノのマンガや小説だと、この半分以下で多種多様のイベントを担っていたりするが、実際そうはいかない。
確かに、可能か不可能かで言えば前者だが、それは普通の学生が享受している様々な権利を放棄しての話。
端的に言えば、家を出て学校に住み込めば可能だという、そんな話だ。

スペックの問題ではない。世の中には、人数ありきの仕事が確実に存在する。
壇上で話しながら生徒の案内は出来ないし、異なる教室で行われるデュエルの審判を1人では務められない。
世界最強の格闘家でも、別々の場所で同時に戦うのは無理なのと同じだ。

ゆえに前年度と同じく、有志の協力者や、鷹野麗子が外部から呼んだ人々に頼ることになる。
爬虫類みたいな目つきの少々ラリッた男と、今回も妙に話が弾んだ。

「それでは、お嬢さん。私はこれにて。」
「はい、珍札さん。」

相変わらず、風貌に似合わず紳士的な男だ。お嬢さんって歳でもないのだが、きっと育ちがいいのだろう。
もっとも、詮索など野暮だから何も訊かないが。

作業へ戻る彼を目にしながら、耳には干支川クラスの面々の声が響いてきていた。

「勝つぞー!」
「「「おおーっ!」」」

前年度と違って、干支川いわく“面白いクラス”だという。
私が授業しに行くときは、スリーサイズを訊かれたり、毎回セクハラされるのだが、干支川は笑って見ている。
中でも干支川お気に入りの飛堂は、処女かどうか尋ねてきたりして、嫌になる。
ご想像に任せるわ、などと言って流したが・・・。
クラスを活性化させるのは不良だというのが、教育現場の常識らしいが、糞食らえ。

「打倒、エリートクラス!」
「「「えい、えい、おー!」」」

ちなみに次の試合は私のクラスとだ。エリートって何よ。
会話が苦手で運動も劣位で、コツコツと勉強を頑張るしか出来ない弱者を、エリート扱いして打倒するのか。
つまらないクラス、活気の無いクラスと言われても、必死に頑張ってきてんだ。
何で貴様らなんかに食い物にされないといけないんだ。エリートって何よ。

劣等性が優等生を下すのがカッコイイことで。
不良が真面目な人を笑いものにするのが活気あるという意味で。

唯一伸ばせるパラメータすらも、それを伸ばすことがイイ子ちゃんぶってると蔑まれるのなら。
良い成績を取ることが、嫌味だとか傲慢だとか非難されるというのなら。

それに対する私の答えは、ただひとつだ。


―――ふざけるな。



- - - - - -



三島黒逸:LP5300、手札1(魔導戦士ブレイカー)
場:
場:天変地異(永続魔法)
デッキトップ:デーモンの斧

飛堂空路:LP100、手札0
場:V・HEROアドレイション(攻2800)、V・HEROトリニティー(攻2500)
場:強者の苦痛(永続魔法)
デッキトップ:死者蘇生




そして迎えた大将戦の、最終局面。

ターンは三島、メインフェイズ1に入ったところ。
互いにフィールド以外から発動できるカードは無い。


三島のレベル3能力“アドバンテージ・ワン”は、1ターンに1度、自分のメインフェイズに、デッキからカードを1枚ドローできる。属性カテゴリの無い、無機質な能力だ。

《魔導戦士ブレイカー》を召喚し、効果を発動して《強者の苦痛》を破壊。
デュエリスト能力を発動して《デーモンの斧》を引き、ブレイカーに装備して《V・HEROトリニティー》を攻撃。
それで飛堂のライフは丁度0になる。

・・・ただし、それは飛堂が無能力者であることが前提の話。

飛堂のレベル1能力“スカイヒーロー”は、『自分フィールドの「HERO」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで攻撃力を300ポイントアップする』というもの。

そしてブレイカーを守備でセットしても、次のドローで引いた《死者蘇生》で、適当なHEROを引いて攻撃される。
飛堂の墓地で最も攻撃力が低いのは、《E・HEROレディ・オブ・ファイア》だが、それでもブレイカーを倒せる。
蘇生したトリニティーは3回攻撃能力を失っているが、2体のダイレクトアタックでジャストキル。
ブレイカーを立たせておいても、三島の墓地には《ゴブリン突撃部隊》がある。やはりジャストキルだ。


「どうした、その手札が《魔導戦士ブレイカー》だってことはわかってるぜ。」

飛堂が挑発めいたセリフを発する。
彼にしてみれば、見下したわけでもないのだろう。
これを侮辱のセリフだと思う私が、被害妄想の塊なのだろう。

「なあ、三島先輩、デュエルは楽しいか? 次に引くカードがわかってる、そんなデュエルつまんなくないか? ずっと先輩は苦しそうだぜ。能力を使うときも、先輩、つまんなそうだ。」

飛堂が目を輝かせて、両手を広げて言う。
彼にしてみれば、見下したわけでもないのだろう。
これを侮辱のセリフだと思う私が、被害妄想の塊なのだろう。わかってる。

「そんな《天変地異》、破壊しちまえよ! 次に何が来るのかわからないドローで、勝負つけようぜ!」

なるほど、飛堂の言ってることは一理ある。
ブレイカーの効果で《天変地異》を破壊し、“アドバンテージ・ワン”で1枚ドローすれば、僅かに勝機はある。
三島のデッキは事前にチェックしている。この状況で何を引き、どのように行動すれば勝てるかを考えたとき、確かに三島のデッキで、勝てる道筋は存在する。

しかし飛堂は、わかっているのだろうか?
三島のデッキは【天変地異コントロール】であり、読んで字の如く《天変地異》をキーカードとしている。
それを「破壊しちまえ」なんて、三島のデュエリストセンスを否定したも同然なのだ。


“つまらない”。

キーワードは、“つまらない”だ。
私が言われてきた言葉であり、三島の能力について干支川が下した評価でもある。

ただカードアドバンテージを稼ぐだけの、面白味の無い能力。
なるほど、そう感じる気持ちはわからないでもない。

しかしそれを、生徒が聞いてるような場所で口にするか?
心で思うことと、口に出すことでは、紙一重であっても絶対的な差異がある。両者は質的に違うものだ。

それを聞いて、私が傷つくだけなら、まあいいだろう。
私は大人で、プロの教師だ。耐えなければならないし、耐えられなくはない。
どれほどトラウマを刺激されて、どれほどハラワタが煮えくり返るとしても、おしとやかと評される態度を崩さない程度には、自分の激情を抑え込める。

“ふざけるな。何度でも言う、ふざけるな。デュエルに勝って、貴様らの薄汚ぇヒロイズムを否定してやんよ”。

・・・などということも、口には出さない。
私がデュエルするわけではないから当たり前だが、私がデュエルするとしても言わない。性に合わない。
言い換えれば、私のキャラじゃない。
我ながら安いプライドだ。“おしとやか”な自分に、何らプラスの価値を見出してもいないくせに。


ああ、それよりも、飛堂はわかっているのだろうか?


「ターンエンド。」


飛堂空路:LP100→0


レベル3能力“アドバンテージ・ワン”が、相手のデッキからもカードを引けるということを。


「あ・・・!」


死者蘇生 (魔法カード)
自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。



E・HEROレディ・オブ・ファイア レベル4 炎属性・炎族
攻撃力1300 守備力1000
自分のターンのエンドフェイズ時、自分フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO」と名のついたモンスターの数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。



相手のデッキからもドローできるからこその、レベル3能力で。
相手のデッキからもドローできるからこその、《天変地異》なわけだが。

自分のデッキからしかドローできないなら、せいぜいレベル2だし。
自分のデッキからしかドローできないなら、わざわざ《天変地異》を使う必要は無い。

だからこそ飛堂の言うことには“一理ある”と思った。
《天変地異》を否定するなら、何故《天変地異》を入れてるのかという疑問に辿り着くことは容易だし、そこから能力の偽装を見破ることも、決して難しくない。
結果だけ見れば、見破れなかった間抜けだが、異なる視点から正解ににじり寄っていたことは否めない。
それはセンスと表現されるもの、あるいは異能感覚というものだ。


「・・・残念やったな、飛堂。」
「うん、でも、楽しいデュエルだったぜ!」

干支川が飛堂を慰め、そしてデュエルリングで飛堂と三島が握手をする。

「オレの完敗だ、三島先輩。だが、今ので能力はわかった。次は勝たしてもらうぜ。」
「こっちこそ負けないよ、飛堂くん。」

三島が笑ったのを、初めて見たような気がした。



- - - - - -



なかなか現在の話へ進まないが、もう少しだ。

クラス対抗トーナメントは、私のクラスは3位決定戦で勝利した。
勝利を決めたのは、またしても三島。彼は一躍クラスのヒーローになった。

ところが、そこへ干支川が出しゃばったのが災いのもとだ。
いや、彼女にしてみれば、軽い気持ちで祝いの言葉をかけただけなのだろうが・・・。
しかし勝利に賑わっていたクラスの雰囲気は、静まり返ってしまうのだ。


「よっ、少年。面白かったで。まさかあの場面で飛堂に勝つとはな。見事な偽装やった。」

まさか、このセリフが火に油を注ぐものだとは、彼女は夢にも思っていなかっただろう。
私も欺瞞に苦々しい思いはあったものの、三島は普通に流すと思っていた。

ところが。


「はぁ? あんな糞つまんないデュエルの何が面白かったの?」


誰も言葉を発せなかった。
三島を除いては。


「日頃から散々バカにしておいて今更なに言ってんの? 自分の価値観に則したもの以外は面白くないと平気で吐き捨てておきながら、価値観に掠った途端に手のひら返して褒めちぎるとか、ふざけるなクズ。そんなんで教師やってて恥ずかしくないのかタコ。死ねっ、ゴミ教師!」


静まり返った教室で、三島は憎悪と嫌悪で歪んだ双眸で、干支川を睨みつけていた。
涙さえ滲ませた目で、震える拳に汗を滲ませて。

何も言えないけど、私は何も言わないけど、カッコイイぞ三島くん。
私が言えないことを、私が言えなかったことを、よく言ってくれた。

“つまらない優等生”と蔑まれてきた、中高生時代の私を、君は救ってくれた。

今はもう、私は大人になってしまって、君とは教師と生徒でしかないけれど。
あの頃の私にとって、君は確かにヒーローだ。





つづく

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「・・・深い」
コング「腐海を焼き払い」
ゴリーレッド「考えさせられるテーマの宝庫だ」
コング「わが事業に参加せよ!」
火剣「クラスを活性化させるのは不良? こんなセリフを聞いたら『ふざけるな!』と激怒していい」
ゴリーレッド「怖いのは『エリート=悪者』みたいな図式だ」
火剣「夏休みに遊ばずに必死に勉強して二学期に成績が良くなっている生徒がいるな」
コング「卑怯な奴ですねえ」
ゴリーレッド「全然卑怯ではない。努力家を褒めなくなったら学校は終わりだ」
火剣「不良は目立つんだ。不良が良くなると職員室中大喜びで励ます」
ゴリーレッド「本当はマイナスがプラマイゼロになっただけだ。散々カツアゲや暴力をふるわれていた生徒が満面笑顔で不良を励ます教師を見たら」
火剣「よし、俺も不良になろうと思うだろう」
コング「僕は優等生ならではの強者の苦痛があった」
ゴリーレッド「ほう」
コング「デーモンの斧といえばアドニスだ」
ゴリーレッド「何の話をしている?」
コング「水着ギャルの股に斧を当てて、『やめて!』と背伸びさせて『ほらあ、突き上げてあげようか、へへへ』」
ゴリーレッド「アックスボンバー!」
コング「だあああ!」
火剣「どんな勝負でも挑発に乗っちゃいけねえ」
ゴリーレッド「私が言えなかったことを言ってくれた。これがヒーローだ」
コング「ヒーローといえばジャスティス。死者蘇生」
ゴリーレッド「蘇生しなくていい」
火剣「現実の学校。現実の教師。大丈夫か心配になってくるな」
コング「美人教師が生徒からのセクハラを受けるのもあるかな?」
火剣「ありそうだ」
火剣獣三郎
2014/12/22 16:47
>火剣さん
一概に不良を否定するわけにもいかないのですが、“活性化”の裏側で被害を被り、泣き寝入りするしかない人間がいることを思うと、これまでの方法論を刷新せねばと痛感します。
かつて自分が泣き寝入りする立場だったこともありますが、人に教える立場になって、より深く意識するようになりました。

佐久間「エリートもピンキリで、人を見下すエリートもいれば、仲間思いの働き者もいる。」
山田「不良も色々いるのと同じことだな。やはり、軽々しい決め付けは出来ないわけだ。」
佐久間「ところが、仲間思いのエリートほどよく攻撃されるし、情に篤い不良ほど理不尽な扱いを受けたりする。」
山田「嫌味なエリートや、ろくでもない不良は、甘い汁を啜るわけか。」
維澄「簡潔に二分化するわけにもいかないけれど、そこに憎悪の渦巻く悪循環が生まれるのは確かだね。」
神邪「僕は仲間思いではないですが、成績だけは良かったので、優等生の括りに入れられましたね。人を見下していると決め付けられて、よく攻撃されました。まあ確かに、勝手に僕を嫌味なエリートに仕立て上げる連中のことは、見下すどころか憎悪してますが。」
佐久間「それを教師もやってくるからヘドが出るわなァ。」
八武「苦汁を舐めて、涙を呑んで、理不尽を呪ってきた人が、心の中で思い描いている願望。それを叶えることがヒーローの務め。」
神邪「高校時代、美人教師に目を付けられたことはありますねぇ。」
八武「その話もっと詳しく!」
佐久間「また今度な。」
八武「そればっかり・・。いいよいいよ、私はななみと斧プレイをしてくるからね!」
山田「鬼神とダブルでアックスボンバー!」
八武「ごはっ!?」
アッキー
2014/12/22 23:08

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