佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 泥沼 (前編)

<<   作成日時 : 2015/01/31 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



ヒトは“異質”を恐れる。
ヒトは“超常”を恐れる。
たとえ、どんな些細な“力”であっても、理解できないものが存在することを、恐れる。

些細な超能力があるとしよう。
とても些細な超能力だ。
少しモノを宙に浮かせるだけの能力だ。
銃やナイフの方が、よっぽど恐い。
しかし人間の想像力は豊かだ。
超能力が“ある”ということから、あらゆることを考える。
遠くから人を殺せる能力。
体の中に異物を入れる能力。
洗脳や記憶の抹消。人格コントロール。
世界の混乱、秩序の崩壊、社会の破滅。
世界の滅亡。人類の危機。
そんなところまで考えるのが人間だ。
ありもしないものでも、あるかもしれないと考える。
些細な超能力が存在するなら、強大な超能力が存在するかもしれないと考える。
些細な超能力でも隠さなければならないのは、その為だ。
無害な超能力でも命を狙われるのは、その為だ。
あまりにも恐怖は強すぎる。
恐怖は人間を支配している。
ヒトは恐怖から逃れられない。

私は些細な超能力を持っている。
モノを少し宙に浮かせるなんてものでもない。
明日の天気がわかるようなものでもない。
デュエルモンスターズというカードゲームで、特殊な効果を発生させる。
ただそれだけの能力だ。
この些細な能力の為に、私は学校に閉じ込められた。
4月からずっと、学校と、学園の寮を行き来する生活。
両親は恐かったのだ。
私は両親を責める気になれない。
私も恐いから。
人間が恐いから。

いじめられた人間は、もう駄目だ。
全てが恐くなる。
あの人も私を傷つけるかもしれない。
この人も私を傷つけるかもしれない。
わからない。
わからない。
全てが異質。
理解不能。
超常現象よりも理解に困る。
わからないから、わからない。
恐い恐い怖い恐い恐い。
ブスと言われるのが恐い。
からかわれるのが恐い。
彼氏がいないことを話題にされるのが恐い。
友達がいないのが恐い。
人から嫌われるのが恐い。
人から好かれるのも恐い。
変化が恐い。
明日が恐い。

未来が、恐い。



◆ ◆ ◆



幽堂(ゆうどう)高校は一学年20クラスに20人ずつで400人を定員とする。
全校生徒は1200人から少し減って1177人。
50年くらい前に資産家が設立したらしく、その後継者が理事長を務めているそうだ。
この高校の特色は、デュエリスト能力者を集めていることだ。入学の条件は、デュエリスト能力者であること。ただそれだけ。他には何も必要ない。
ここに通っている生徒は様々だが、“異質”であることを理由に“隔離”されたケースが多い。

能力者1177人。1/1177の私。
ニックネームは“毒女”。独身女の俗語。結婚“しない”女ではなく、結婚“できない”女のこと。
本名は風堂深泥(ふうどう・みどろ)、16歳。
そう、16歳だ。16歳で既に、一生結婚できないと決め付けられている。
悔しいのは、多分それが事実だから。
でも、事実だとしても、それを言う人間の神経って何だろう。わからない。
わからない。わからない。わからない。
恐い。恐い。恐い。恐い。恐い。恐い。
嫌なことを言う奴の人格を否定しても始まらない。
殺せるわけもないのだから。

「ミドロはさぁ、もうちょっと自信持っていいと思うよね。」
「え、え・・・。」

急に話しかけられて、私は喋る言葉を思いつかなかった。
こういうとき普通の人は、どうやって喋っているのだろう。
即座に話が出来るって、まるで超能力だ。

「そうやって自信なさげな様子って、見ててイライラするのよ。毒女とか言われっ放しでなく、言い返す気概を持たないとさー。」

クラスメートの倉田(くらた)さん。
元気で可愛い女の子。きっと私みたいな悩みを一生味わうことはない。
言葉だけなら何とでも言える。言葉は無料で無責任だ。
私が倉田さんの言う通りにしたとして、状況が改善することはない。
そうしたら倉田さんは、また私の何かにケチをつけるだろう。
その繰り返し、無限地獄。

「倉田さーん、ちょっと来てくれない? 僕の新デッキ試したいんだけど。」

助け舟を出してくれたのは、同じくクラスメートの冬藍櫂麻(とうらん・かいま)君。
もちろんカイマ君は助け舟を出したつもりは無かったのだろうけど、こういうことは時々あって、ついつい起こり得ない期待を持ってしまうことがある。


「「デュエル!」」


カイマ君:LP8000
倉田さん:LP8000



「わたしのターン、ドロー。デュエリスト能力“腐乱犬”(フランケン)発動よ。エクストラデッキから《F・G・D》特殊召喚。カードを3枚伏せて、ターンエンド。」

「僕のターン、ドロー! デュエリスト能力を発動してから、《ゲール・ドグラ》を召喚。効果でエクストラデッキから3枚の闇属性を墓地に送るぜ?」

「3体の闇属性? まさか!」

「そう、《ダーク・アームド・ドラゴン》特殊召喚だ。効果で倉田さんの3枚のカードを破壊する。更に《ゲール・ドグラ》の効果で6体を墓地に捨てて、そのうち1体を除外してダムドの効果発動。《龍の鏡》を発動して、僕も《F・G・D》特殊召喚・・・・・・総攻撃で終わりだ。」


倉田さん:LP8000→7350→4550→0


「ひっどい1キル!」

デュエルが終わり、倉田さんが文句を言う。
けれど本気で言ってるわけではなさそうだ。“文句を言って可愛い女の子”だ。

「でも凄くない?」
「凄いけどさあ・・・」

ライフゲインが劣って見られるのは、カードの消耗と釣り合いが取れていないからだ。
つまり、カードを消耗せずにライフを得られれば、それは優れているということになる。

「せっかく能力を授かったんだから、いろいろと可能性を試してみたいと思うんだよね。20歳になると消えてしまうらしいし。」
「そりゃあ、カイマ君みたく面白い能力なら、いろいろ試してみたくなるかもしれないけど。」

“釣り合い”。
自分で言った言葉が、自分を傷つける。
目の前の現実とリンクして、惨めな気持ちにさせていく。
ひょうきんな男の子と、元気で可愛い女子。釣り合っている。釣り合っている。
ひょうきんな男の子と、根暗で不細工な女子。釣り合わない。釣り合わない。

マンガとかで、不細工な女子がイケメンと付き合う話があるけど、不細工といっても、それなりに描かれる。
あれが、あのくらいが、男が許容できる最低ランクの容姿だとしたら?
面食いでなくても許容できる、最低ランクの容姿だとしたら。
そう考えると恐い。
恐くてたまらない。



◆ ◆ ◆



夏休みに入って、私は寮の自室に籠もって宿題を片付けていた。
面白いことなんて何も起こらない、暑苦しいだけの日々。
痒い体を掻いたり、汗を拭ったりするとき、自分の体の醜さを意識してしまう。
ああ、痒い。痒くて、イライラする。
頬に出来た腫れ物が、痒い、痛い。
芥川なんとかの「羅生門」に出てくる下人の顔にも、こんな腫れ物が無かったか。
これが男なら、まだマシだったのだろうか。
私が女だから、こんなに嫌な気分なのだろうか。
考えてもわからない。私は女でしかなく、決して男にはなれないのだから。
醜い男と、醜い女なら、どちらがマシだろうか。

朝が来て、昼が来て、日が沈む。
それが繰り返される。
起きるときは不安になる。
日が沈むときは恐くなる。
連続。
それの連続。
繰り返し、繰り返し。
1日、2日、3日。
夏休みも8月になる。

8月6日は、反戦平和登校日だ。高校で平和登校日があるのは珍しいとか。
小学生の頃も、中学生の頃も、何かを思っていた。
反戦平和って、どこか・・・何だろう。
わからない。
わからないのは恐い。イライラする。
反戦平和について、反戦平和というものについて、何か言いたいことがあるような気がするのに。
それが何なのかが、わからない。
確実に何かを言いたいのに、何を言いたいのかわからない。
こういうときがイライラする。
誰かが答を示してくれないか。しかし自分で自分の疑問がわからないのに、誰も答えようがないじゃないか。



◆ ◆ ◆



2学期になって、担任が代わった。今度は男の先生。
私と他の女子とで、扱いに差がある気がする。でも、これも僻みかもしれない。
もやもやした気持ちのまま日々を過ごした。
そして中間テスト間近の放課後。

「はにゃ〜ん。」

間の抜けた声が聞こえてきた。
この声は、やはりクラスメートの永遠(とわ)さんだ。清楚な美少女で、側にいると劣等感を刺激される。

「ミドロさんは今日のホームルームどうする?」

私の所属する一年零組(ゼロくみ)は、この特殊な高校の中でも更に特殊なクラスだ。
特待制度の1つであり、レベル4以上のデュエリスト能力者が揃っている。ちょっと優越感。
そして、こんなことでしか優越感を覚えない自分が嫌になって、劣等感。

「私は、うん、行かない・・・。」

担任の先生よりも、むしろクラスメート。
10人しかいないクラスメート。
あまり顔を覚えられたくない。
何年後かの同窓会で、笑いものにされたくない。
こんなこと心配する私、暗い・・・。

「そうなんだ・・・じゃあ、ボクも、パスしよ。」

どうして私が行かないと、永遠さんもパスなんだろう。
意味がわからない。好意? 友達意識? こんな不細工に気を遣っている? 気を遣ってるのでもない?

「え、どうして・・?」

問いかけてみた。

「だって全員が揃わないならホームルームの意味が無いじゃない・・・ボクは、完璧主義者、なんでね。」

ゾッとするような異常な目つきで、永遠さんは事も無げに言う。意味のわからないことを。
こういうとき、特待クラス、特殊選抜クラスといっても、その異常度に大きな差があると実感させられる。

「ボクも訊いていいかな・・・どうして、ホームルーム、よく休むのか。ね。」

ギクッとした。
もしかしたら私は、ホームルームの出席率が最低かもしれない。
不良生徒というわけではなくて、授業には出ている。
特別選抜クラスといっても、デュエル以外の授業は元々のクラスで受けている。

「あ、その・・・あ・・・・」
「大丈夫だよ・・・落ち着いて、話して。ボクも、喋るの、変だから。さ。それ、わかる、気持ち。ね。」

カタコトの日本語みたいになって、私は思わず吹き出しそうになった。
実際に吹き出すことはなかったが、緊張がほぐれた。

「みんなに、顔を覚えられたくないから。」

正直に言ったのは、永遠さんが、へらへらしてるようで真面目な人だからだ。
彼女は、どこか異空間にいるような雰囲気を、常に纏っている。

「そうなんだ・・・それは、つまり、要するに、容姿に、コンプレックスが、あるってこと、かな?」
「あ、うん・・・。はい・・・。」

やっぱり、そう見えるんだ。わかられてしまうんだ。
みんなの話題になりたくないのに。

「だったら今日はボクと一緒に地下デュエル場へ行こうよ・・・異論が、あるなら、デュエルで、勝負、だ。」

「―――!」



「「デュエル!」」



◆ ◆ ◆



そんなわけで私は、覆面とマントをして、地下デュエルのリングに立っている。
永遠さんとのデュエルは、僅差で負けた。
通算では7勝9敗か。私にしては、たくさんデュエルしてるな。


「え、あの子、女子高生なの?」
「マジ? 美人?」
「彼氏いんの?」
「とりあえずボクの友達とだけ言っておこうかな・・・でも、正体は、秘密、だよ。」
「「おお〜!」」
「覆面剥がしてえ〜!」


何だか勝手に盛り上がっている声が聞こえる。
どうせ中身を見れば幻滅して酷いことを言うんだろうけど、デュエルで負けない限り中身は晒さないルールだ。

その安心感のせいだろうか。
こんなこと、今まで言われたことなかったな・・・って、くすぐったいような気分になっていた。




つづく

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「泥沼・・タイトルからして深いドラマが始まった」
コング「人は恐れるか。異質なものを。超常現象を好きな人間は多いが」
ゴリーレッド「人間は理解できない存在を恐れると同時に、常識を超えた『力』に憧れも持っている」
火剣「でも七瀬は迫害され、命まで狙われた。何も悪いことをしていないのに」
コング「犯されそうにもなった」
火剣「いじめによる精神的ダメージの重さや、心に負った傷に関しての議論はあまり行われていない」
ゴリーレッド「議論が浅いと、相も変わらず芸能人が『昔いじめられていたけど・・・』と乗り越えた体験談を語ってしまう」
火剣「何の罪もないクラスメートを迫害する非人道的な凶悪行為であり、絶対に許されない蛮行という発想がない」
コング「16歳に結婚できない毒女って意味わからない」
火剣「それは負け組みとかくだらねえ言葉を流行らした世間の罪でもある。本来独身か既婚かなんて関係ねえ。だから俺様は豪語するんだ。世間体などゴミだと」
コング「ドウドウ」
ゴリーレッド「言葉は無料で無責任・・・重い言葉だ」
火剣「醜い男と醜い女か。こういう話を聞くとルックスの話をするのも躊躇するな」
コング「躊躇なんかしない。僕はやっぱり美女、および美少女がいい!」
ゴリーレッド「よし黙れ」
コング「美乳美脚美ボディ、キュートなスマイル」
火剣「反戦平和という言葉に風堂深泥は引っかかるのか」
ゴリーレッド「反戦平和を訴えている人間が日頃人をコバカにしたりすると説得力を失う」
火剣「永遠、久々の登場」
ゴリーレッド「仮面舞踏会か」
コング「♪SHYな言い訳、仮面で隠して、踊ろう、踊ろう、かりーそめの、一夜をっ、きっとお前も、悩めるマドンナ、棄てなっ棄てなっ、マジなープライドをー今はー」
火剣「後半に続くか」

火剣獣三郎
2015/01/31 16:03
>火剣さん
人間を100人集めて平均値を取れば、美しい容貌になると聞いたことがあります。平均や普通こそが美しいとすれば、異質さと醜さは通じるものがあるかもしれません。
ミドロ16歳、悩める少女のエピソードです。

佐久間「興味が勝るか、恐怖が勝るか。私は当然、興味の方。」
山田「お前自身が常識を超えてるだろうが。」
佐久間「自分が知らないことは全て未知だ。未知なるものに対するスタンスの問題なのだ。」
山田「なるほどな。俺は半々か。」
八武「私も半々かねぃ。」
維澄「いじめは恐怖から起こるという言説がある。自分たちに理解できない者への恐れが、迫害へ繋がる。」
神邪「理解できないなら、理解しなくていいんですけどね。焦って理解しようとすると、お互いに不幸な結果になってしまいます。」
山田「自然に理解できるまで辛抱できるのが、本当の意味で大人なんだな。」
神邪「それにしても、零組のみんな、懐かしいです。」
佐久間「反戦平和については、神邪がアルドと語っていたことがあったな。戦争という無駄を無くすこと・・・面白い意見だ。」
神邪「最初に違和感を覚えたのは、中学生の頃でした。戦争の恐さを学ぶ為にはどうすればいいかという質問に、ある生徒が『実際にやってみればいい』と答えたんですが、それに対して教師は『何てことを言うんだ』って怒ったんです・・・そのとき、これって正解のある問題なのかなって、首をかしげたんですよね。反戦平和って、質問者が用意した正解を出す類の問いとは、違うと思ったんですよ。少なくとも僕は、その生徒の意見で視野が広がりました。」
八武「ミドロの求めていた答えは、そういうことか。」
神邪「それはわかりませんが、このテーマで話してみたかったですね。」
アッキー
2015/01/31 22:34

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泥沼 (前編) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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