佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS ある日の零組 (パートU)

<<   作成日時 : 2015/03/02 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



「あー、疲れたあ。」

切り揃えた前髪に左手を添えて、倉田織羽(くらた・おりば)は教室の窓枠にもたれかかった。
いつもは明るく元気な彼女も、連日のデュエルで疲れていた。

「ふぅ・・・。」

心地良い疲労感を風に絡めながら、織羽は眠くなってきた。

そこへ扉を開けて、永遠アルドが入ってきた。
清楚な雰囲気の美少女は、窓の近くまでやって来て腰を傾ける。

「オリバ・・・寝てる、の、かな?」

意識はあるのだが、体を動かすのが億劫なところまで睡魔に支配されている。
まどろむのが気持ちいいので、織羽は成り行きに任せた。

「まあいいや・・・どうせ、ボクには、関係ない、し、明日に、しよう。」

そう言ってアルドは髪をなびかせて去っていった。
何やら気になるセリフだったが、すぐに織羽の思考は別方向へ向いた。



◆ ◆ ◆



「つまりそういうわけでオリバは今ぐっすりだから起こしちゃ駄目だよ。」

唇に人差し指を当てて、アルドは言った。

「あれ、そうなんだ。新しい戦術考えたから付き合ってほしかったんだけどな。」

冬藍櫂麻(とうらん・かいま)は、男としては可愛らしい顔立ちの少年だ。
しかし面と向かって立ってみると、意外と背が高い。

(やっぱり男の子だな・・・いや、別に、男だから、背が高くないと、いけない、ことは、ないし、女だから、背が低くないと、いけない、ことはないんだけど。ね。)

どちらかというと、モデルのようなスラッとした高身長に憧れるアルドである。
例えば、知り合いの小説家・・・泣笠葉継(なきがさ・はつぐ)のような。

(葉継はカッコイイよね・・・まあ、背の高い、人は、それはそれで、男から、好みじゃない、みたく、言われたり、色々と、嫌な、思いを、するみたい、だけど。)

所詮は隣の芝生かと思いながら、アルドは目の前に意識を戻した。
ちょっと引っかかることがあると、すぐに思考の世界に飛んでしまうのは、もはや性分だった。

「だったらボクと・・・」

言おうとして、後ろに気配を感じて振り向いた。

そこに綺麗な顔をした長身の男子が立っていた。

「ツガル君じゃない・・・どうした、の?」

櫂麻も平均よりは背が高いが、それでも180センチを超える黒維津軽(くろい・つがる)ほどではない。
アルドからすれば、津軽は20センチ以上も背が高いので、近付かれると見上げる形になる。首が痛い。

「ああ、冬藍とデュエルをしようと思ってな。」

「僕と? いいよ。」

2人は当然のように向かい合って、デュエルディスクを展開した。
生徒全員がデュエリスト(それも能力者)である幽堂高校では、珍しくもない光景だが、アルドは首をひねった。

(何かあるな・・・この2人、ケンカでも、してるの、かな?)

気さくな態度と物分りの良さの裏に、どこか敵愾心みたいなものを感じた。

「黒維くん、何か賭ける?」
「そうですね、織羽とのデュエル権とか、どうです。」

軽いノリに聞こえる口調で言う櫂麻に対し、いつもの丁寧口調に戻った津軽が答えた。

(にゃるほど納得オリバさんモテモテだね・・・いや、ちょっと、違う、かな?)

恋愛とは別の何かを感じ取り、アルドは結論を保留した。
あれで織羽も一筋縄ではいかない女だし、この2人も複雑な人間だ。

幽堂高校特殊選抜クラス“零組”。
三学年トータルで15名在籍しているが、そのうち10名が一年生に固まっている。
それゆえに序列制度が、暫定的にだが、導入されていた。

(面白いデュエルになりそうだ・・・いいね、この、緊張感♪)

第5位:冬藍櫂麻と、第8位:黒維津軽。
どうしてデュエルするのかはともかく、興味深いのは間違いない。

ちなみにアルドは4位で、織羽は9位だが、実質3位から下は団子状態。
すなわち、このデュエルは好カードと言える。


「「デュエル!」」


冬藍櫂麻:LP8000
黒維津軽:LP8000



「僕の先攻・・・」

「《先取り天使》を捨てて、こちらの先攻ですね、ドロー。」

津軽が先手を取った。
それを見てアルドは、ふむ、と頷く。

(カイマ君の能力を相手にする場合・・・先手を、取られると、不利、だから、ね。)

対策を組んできたということなのだろう。
櫂麻の能力は強力ではあるが、対策を立てられやすい。
だからこそ櫂麻も様々なデッキを試しているのだろうと、アルドは思っていた。


「《速攻の吸血蛆》を召喚して、ダイレクトアタックです。」

「ううん・・・」

冬藍櫂麻:LP8000→7500


(これでカイマ君の能力は封じられた・・・わけでも、ないけど、難しく、なった、ね。)

あくまで序列は全体の戦績に基づくものであり、個人では相性もある。
10位の畦地濃海は、殆どデュエルをしないからこそ最下位に甘んじているが、アルドにとっては厄介な相手だ。

(濃海と実際やり合えば五分五分かな。)

6位の風堂深泥にも、勝ち越してはいるものの互角のようなものだし、反射能力者に若干弱いところがある。
また、3位の自動火力もアルドにとっては厄介なところだった。



冬藍櫂麻:LP7500、手札5
場:
場:

黒維津軽:LP8000、手札2
場:速攻の吸血蛆(守1200)
場:伏せ×1




津軽のターンは終了していた。

(カイマ君の能力を封じたとはいえカードを消費したし勝負はわからないかな・・・ワクワク、するよ。)

封じたといっても簡易ロック程度だし、どう転ぶかわからない。

「ちえっ、せっかく新しい戦術を試そうと思ったのにな。僕のターン、ドロー。」

どうやら戦術も封じられた口ぶりだが、果たして信用していいものかどうか。
精神的な軽業師みたいな少年だが、どちらかというと詐欺師だと、アルドは思っていた。
あるいは、もっと猟奇的な方だろうか。


「ん〜、《デビル・フランケン》を召喚して、効果を発動。」


冬藍櫂麻:LP1125899906827624、手札5
場:デビル・フランケン(攻700)、極戦機王ヴァルバロイド(攻4000)、サイバー・ツイン・ドラゴン(攻2800)、ナチュル・エクストリオ(攻2800)、重爆撃禽ボム・フェネクス(攻2800)
場:

黒維津軽:LP8000、手札2
場:速攻の吸血蛆(守1200)
場:伏せ×1



「更に、ボム・フェネクスの効果で2100ダメージ。」


黒維津軽:LP8000→5900


「かかりましたね冬藍くん、罠カード《強制詠唱》で、手札の《大逆転クイズ》を発動します。」

「え、事前準備が済んでもいないのに当てられるのかい?」

「私のデッキは【ほぼモン】なのでね、モンスターカード!」



デッキトップ:《ホルスの黒炎竜LV8》



冬藍櫂麻:LP5900、手札5
場:デビル・フランケン(攻700)、極戦機王ヴァルバロイド(攻4000)、サイバー・ツイン・ドラゴン(攻2800)、ナチュル・エクストリオ(攻2800)、重爆撃禽ボム・フェネクス(攻2800)
場:

黒維津軽:LP1125899906827624、手札0
場:
場:




「ライフポイントいただきです。」

「うーん、《ライフチェンジャー》だと思ってたんだけどなあ。いいや、その言葉を信じることにするよ。全てのモンスターを生贄に、《真魔獣ガーゼット》・・・ダイレクトアタック!」

「っ・・」


黒維津軽:LP1125899906827624→1125899906814524


(しかしだけどどうしてどうして13100ぽっちの攻撃力じゃ千兆ものライフは削りきれない・・・これを、覆す、策略は、あるのかな?)


「こっちのターンですね、ドロー。私のデュエリスト能力で、墓地から《裁きの龍》を特殊召喚。効果を発動し、ダイレクトアタック。」

「ああ、やれやれだぜ・・・」(LP5900→2900)


冬藍櫂麻:LP2900、手札5
場:
場:

黒維津軽:LP1125899906813524、手札0
場:裁きの龍(攻3000)
場:



「僕のターン、ドロー! 《終焉のカウントダウン》を発動。」

「しまっ・・・!」

津軽の顔が青ざめた。
しかし、それも演技かもしれない。


冬藍櫂麻:LP1073741824、手札5
場:
場:

黒維津軽:LP1125899906813524、手札0
場:裁きの龍(攻3000)
場:



「そして速攻魔法《時の飛躍》発動。メインフェイズ2に移行して、《キラー・トマト》召喚。」


終焉のカウントダウン:残り14

冬藍櫂麻:LP7958661109946400884391936、手札3
場:キラー・トマト(攻1400)
場:

黒維津軽:LP1125899906813524、手札0
場:裁きの龍(攻3000)
場:



「ま、僕の能力は1ターンに1度、自分のメインフェイズにしか発動できず、使い勝手も悪い。だけど嵌まれば凶悪そのものだと自負しているよ。」


終焉のカウントダウン:残り2

冬藍櫂麻:LP7958661109946400884390336、手札1
場:レジェンド・デビル(攻3600)
場:

黒維津軽:LP1125899906812924、手札0
場:
場:



津軽のデッキトップは、《ホルスの黒炎竜LV8》だ。

この瞬間、櫂麻の勝利が確定した。


(これはツガル君の戦術ミスかな・・・ボクなら、《ファイヤー・ソウル》を、真っ先に、考えちゃう。よね。面白い、ところでは、《ダーク・キメラ》とかも、ありかな。この状況、墓地に、あれが、あれば、ツガル君の、勝ちだけど、そんな、レアカード、普通、持って、ない。)

デュエリスト能力さえ封じれば、櫂麻は恐いデュエリストではない。
徹底的にメタを張れば、他のレベル4能力者よりも攻略は容易いだろう。

とはいえ、自分のスタイルに拘ることもデュエリストの資質である。
自分のカードを信じられないようでは、やはり結果は同じことだ。
メタゲーマーとしての資質が強い者でなければ、無惨な最期が待っている。


「それで、次はアルドさんが僕と戦うの?」

「何故どうしてそうなるの・・・と、言いたい、ところ、だけど、願ったり、叶ったり、だ。“姪探偵”としては、“真犯人”を、放っておくわけには、いかないから、ね。にゃ、にゃ、にゃ、はにゃ〜ん♪」


「「デュエル!」」


永遠アルド:LP8000
冬藍櫂麻:LP8000



「僕の先攻・・」

「甘いよカイマ君・・・ボクも、持ってるんだ、《先取り天使》を、手札に、ね。」

「あ、やば!」

櫂麻の表情が曇った。


「デュエリスト能力発動・・・よくご存知の、“ブレイクスリー”、だよ。」

「おぎゃああああああ!!」(LP8000→4000)

「あ・・・ライフが、4000に、なっ、ちゃっ、た。《うずまき》発動。」

「ふひいいいいいいい!?」(LP4000→0)



◆ ◆ ◆



デュエルディスクを折り畳んで、3人は食堂へ足を運んだ。

「冬藍の能力は、強いことは強いですが、負けるときは負けますね。」
「あれはアルドさんの能力が強すぎるんだよ。」
「けれどしかし逆に言えばカイマ君がひとたび能力を発動すればボクの能力でも削りきれないからね・・・先攻を、取れなければ、非常に、厳しい、よ。勝率も、トータルで、五分五分、だし。」

櫂麻はラーメン、津軽はトマトジュース。
それぞれ無難なチョイスだ。

「ラーメン美味い。」
「あー、トマトジュースより血ぃ吸いたい。」

そこへアルドは、牛乳とホットドッグ。
津軽と櫂麻は真顔になった。

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

「あれ・・・どうしたの、2人とも。」

清楚な美少女が、熱くて大きな肉の棒を咥えている図。
アルドは2人の視線が気になって、思わずホットドッグから口を離した。
透明な唾が、糸を引いている。

「いや、別に何でもないよ。ラーメンの汁うまっ!」
「最近のトマトは甘くなったものです。」

「もしかして何か変なこと考えてないかな・・・男の子って、えっち。」

アルドは目を細めて2人を睨んだ。



今日も零組は平和だった。






   ある日の零組 (パートU)   了

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「お、永遠アルド登場。犯せ!」
火剣「倉田織羽」
コング「織羽は自分の羽をもぎ取ってくれるSを求めている」
ゴリーレッド「崖から突き落とされたいか?」
コング「なぜそうなる?」
火剣「背の高さか。確かに言葉には気をつけないとな。本人は想像以上に気にしているかもしれねえ」
ゴリーレッド「背高い女性に『デカイね』と言う無神経な男は多い。悪気はゼロだからたぶん何度も繰り返してしまう」
火剣「男にチビも禁句だ」
コング「でも女子は169以下が理想」
ゴリーレッド「こういう男がいるから」
火剣「コングの身長なら170センチ超えててもいいんじゃねえか」
ゴリーレッド「隣の芝生は青く見える」
コング「隣の奥さんはオイシク見える」
ゴリーレッド「待て」
火剣「泣笠葉継は元気か?」
コング「黒維津軽? ♪津軽海峡ーふーゆげーしきー」
ゴリーレッド「いいから」
コング「恋愛とは違う何か。気になる」
火剣「濃海とはどうなんだ?」
コング「にゃるほりろの仲だ」
ゴリーレッド「人間語を喋りなさい」
コング「LP795866・・・追いつけねえ」
火剣「アルドたち三人のデュエル。何かハイレベルだ」
コング「おぎゃあああ! ちなみに赤ん坊の泣き声はアギャー!」
ゴリーレッド「ドロップキック!」
コング「ふひいいいいい!」
火剣「ふざけ過ぎだ。荒らしか」
コング「アルドにFされて何秒もつかのバトル」
ゴリーレッド「遺言は書き終わったか?」
コング「待て。僕にはまだやらねばならぬことが山積している」
火剣獣三郎
2015/03/02 21:49
>火剣さん
比較的ほのぼのとした日常だけに、ライフの異常さが際立ちますね。私も声に出して読むのがしんどいレベルです。(←おい)
恋愛とは違う要素が絡んでいるようですが、それはまた次の機会に。
それぞれ一筋縄ではいかない面々です。

佐久間「男でもノッポと言われて傷つく人がいるらしいな。」
山田「微妙なところだ。うどの大木は明らかに悪口だが。」
八武「ノッポは暗に、ひょろひょろしているというニュアンスを含む。・・まあ、結局は前後の脈絡次第になるのかねぃ?」
維澄「でかいと言うのではなく、スラリとしていると言うべきだね。」
佐久間「どうして私を見る?」
維澄「身長が低いと、スラリとした高身長に憧れる。わかるわかる。」
佐久間「剣呑な目つきで私を見るでない。ロリ化!」
維澄「ちっちゃいのも可愛い。」
佐久間「やめろ、抱き締めるな。離せ。」
維澄「自分より小さい女が好きって男の気持ちもわかるわぁ。」
佐久間「離せ、頬ずりするな!」
神邪「要するに、好みを語るのと、それ以外を貶すのとでは、全く別ってことですね。」
山田「そういうことだな。」
佐久間「助けろ!」
八武「この微笑ましい光景を撮影。」
佐久間「ええい、元に戻る! やめろ、もたれかかるな!」
維澄「あと5秒。」
八武「アルドはフェラ上手そうだねぃ。でも、清楚な美少女がぎこちなく咥えているのも良・・」
山田「お前の遺言は最後まで聞かない。」
八武「待ちたまえ!」
アッキー
2015/03/02 23:08
冬藍さんのライフがどうしてこんなに増えるのか、まるで理解が追いつかない。まるで意味が分からんぞ、と叫んだ5D’sの人の気持ちがよく分かる。一応、数の入ったカードの効果発動をトリガーにしているようですが。しかし、強い能力も無敵の能力ではない。ある時にはあっさり負ける。では、最強のデッキとは…?

白龍「最強のデッキ…それが私の夢!」
ツヲ「ボクの願い!ボクの希望!」
白龍「しかし、最強などというものは有り得ない!常に勝ち続けるデッキ、誰にも勝ち続けるデッキ、どんなデッキにも勝てるデッキなど存在しない!」
ツヲ「それでもボクは目指す!」
白龍「それでも私は夢見る!」
ツヲ「最強のデッキを作ることを!」
白龍「最強のデッキを作ることを!」

パルナ「二人共、どうしちゃったんだろう…。」
翼「高みを目指す向上心の賜物ですよ。」
パルナ「まあ、結局、パルナのデッキが一番強くて凄いんだよね。(ダイゴさんパロ)」
千花白龍
2015/04/05 11:57
>千花白龍さん
系統としては神邪やベーター・アンと同じく、数を扱うデュエリスト能力ですね。高校数学で解けるので、良かったら謎解きに挑戦してみてください。(後で伏字のテキストも出ます)
発動すれば強力ではあっても、発動条件の厳しさゆえにレベル4である、カイマ君のデュエリスト能力でした。

佐久間「それでは最強のデッキ同士が戦った場合、勝つのはどっち?」
山田「考えていくと究極の問いになりそうだな。」
神邪「そのあたりが【究極のデッキ】に繋がっていくんですね。」
八武「ヒカルの碁における“神の一手”のようなものか、あるいは・・」
維澄「現実に到達できないとは、まだ誰にも言えない。」
アッキー
2015/04/05 21:23

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