佐久間闇子と奇妙な世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 決闘懇談 (前編)

<<   作成日時 : 2015/03/20 00:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 4

◆ ◆ ◆



「日本の大学は、どこも大差ない。」

蒼乃削減(あおの・さくげん)は高校時代、そのように恩師から言われたことがあった。
だからこそ進路は、きちんと考えて選ぶべきだ―――昔のように、“いい大学”へ行けば将来が保障されているということは、今となっては、それこそ昔の話であるからだ。

飛び級を重ね、疾走するように学業を修めた彼女が、今それを思い出していたのは、仕事と大いに関係する。
22歳、青みがかったショートヘア。ぴっちりした服装が、すらりとしつつも豊かなディティールを強調している。
幽堂高校の職員室で、期末テストの採点をしながら、懇談のことを考えていたのだ。

大学は大差ないかもしれないが、そうだとしても高校は千差万別だと、蒼乃は思っていた。
昨年度から務めている幽堂高校は、生徒全員がデュエリスト能力者という、学校全体が異常選抜状態。
生徒数は、およそ1200人。1学年20クラスに20人ずつ。

その中でもレベル4以上の能力者―――もとい、それに紛れて人格破綻者を囲っておく為の特殊選抜クラス。
三学年累計で15名しかいない、通常の20クラスに入らない員数外、通称“零組”(ゼロくみ)。
そのうち一年生の担任を、蒼乃は務めていた。



◆ ◆ ◆



「サク、今日あたり飲みに行けるか?」

若い男の教師が、蒼乃に声をかけた。
引き締まった体格で、まだ高校生にも見える。実際まだ20歳と、蒼乃と同じく飛び級の教師だ。
風見改革(かざみ・かいかく)。蒼乃とは恋人の関係にある。

「ごめん、これから懇談の計画立てないとダメなの。」
「そっか。サクは大変だよな、10人もいて。」
「そうなのよ。前の年はレベル4が1人だけだったから楽だったけど・・・。」

卒業した女生徒のことを思い出しながら、蒼乃は溜息を吐いた。
『1ターンに1度、自分のメインフェイズに、フィールドのカードゾーン1つを消滅させることが出来る』レベル4能力の持ち主だった彼女とは、上手くやれていた。
死んだ妹が同じ年齢だったせいもあるだろうか、妹のような付き合いだった。

「カイは、三年生どう?」
「凹雅(おうが)とは上手くやれてるが、そのせいかな、文月(ふみづき)とは・・・。」
「なるほど。」
「まあ、それでも鳥月(とりつき)よりはマシだろうけどな。俺とサク、担任交代した方がいいんじゃないか。」
「そうね、理事会に掛け合ってみる?」
「そうだな。夏休みに入ったら。」

零組生は、普段は元のクラスメートと同じ授業を受けており、放課後にホームルームという形で出席する。
しかし特別教室への出席率は悪く、蒼乃は生徒のことを、あまりよく知らない状況が続いていた。
そろそろ1学期も終わる頃なのに、デュエルしてるのを見たことがない生徒すらいる。
今回の懇談は、生徒を知る良い機会だと思っていた。



◆ ◆ ◆



<1人目 畦地濃海 あぜち・のうみ>


「畦地くんは、進路どうするか考えてる?」

世間的には、一年生から進路を考えるのは早計だという意見もあるが、幽堂高校では平常だ。
それについて蒼乃も異論は無い。将来の展望を描くのは、小学生でも別に早くない。

「高校を卒業したら、大学には行かずに就職したいと思っています。」

普段は無口なだけに、こういう場でスラスラ発言できることに、蒼乃は少なからず驚いた。
生理的嫌悪感を覚えるほどの容貌だけに、そのギャップは並みではない。

「就職先については、肉体労働系が合っていると思うので、建築現場や引越しあたりを考えています。今は、それだけですが。」
「謙遜しなくていいじゃない。高校一年生で、それだけ考えられる子っていないわよ。テストの結果も良かったし、この調子で頑張ってね。」
「はい。」

それからデュエルの成績について少し話をして、大体の予定は完了した。

「ところで、学校生活で困ってることとかない?」
「いえ、今のところ特には。」
「そう。ならいいわ。でも、困ったことがあったら誰でもいいから先生に相談するのよ?」
「はい。」

授業態度も真面目だし、無遅刻の皆勤賞だ。特に言うべきことは他には無い。
強いて言えば、デュエルの技能を就職に役立てる気は無いのかということだが、それは今の段階では教師の側から言わなくていいと判断した。

こうして懇談はスムーズに終わった。

しょっぱなが苦手だと思っていた生徒だけに、幸先の良いスタートに蒼乃は気を良くした。



◆ ◆ ◆



<2人目 倉田織羽 くらた・おりば>


「倉田さんは、進路どうするか考えてる?」

陽気で明るい、勝気な少女。
前髪を切り揃えたショートボブで、今日も笑顔が光っている。

「えー、進路の話? テストじゃないの?」
「テストは平均点をキープしてるけど、ちょっと遅刻が目立つわね。」
「そこは大目に見てよセンセー。わたし朝弱いのよ。」
「ちゃんと朝は食べてる?」
「ええ、無理ぃ。」

織羽は舌を出して首を振った。
蒼乃はクスクス笑って、資料を広げた。

「デュエルの成績は上々。でも、ちょっとプレイングに粗が目立つわね。」
「そうなのよセンセー。わたしムラッ気あるから。デュエル関係で仕事すんのは無理かなぁ。」
「いいじゃない、デュエルで仕事。」
「まー、頑張ればいけるかもだけどさ、ほら、わたしって可愛いじゃない?」

何を言い出すのだろうと思ったが、可愛いのは確かなので頷いた。
すると織羽は鬱陶しそうな顔になって、声のトーンを低くした。

「男がさ、うるさいのよ。可愛い子がデュエルしてるってだけで、注目されんのヤなのよね。」
「そ、そうなの?」

クラスのムードメーカーで、好感の持てる生徒だけに、この発言には面食らった。
てっきり、注目されるのが好きなタイプだとばかり思っていた。

「カイマ君とかさあ、絶対わたしに気があるでしょ。わかってないのよね。わたしみたいな、根本的なところで人格に欠陥のあるタイプを選んだって、後で苦労するのが目に見えてるのに。」
「自分のことを欠陥とか言っちゃダメよ。高校生に言うのも何だけど、付き合ってみれば良いこともあるわよ。」
「あー、そーゆうのミドロに言ってやってよ。あの子はさ、もっと自信持っていいと思うのよね。あれは男に尽くすタイプよ。カイマ君も、あーゆう子を選ぶべきなのよね。あー・・・」

織羽は煩わしげに溜息を吐いた。

「セックスってさ。」
「え?」

いきなり何を言うのだろうと、蒼乃は更に面食らった。

「男が気持ちいいだけだと思うのよね。女の方が気持ちよくなくても、男は気持ちよくなれる。女が気持ちよくなるのは、男の意思に任される。そういうのがヤなの。だったらオレが気持ちよくしてやるって態度も反吐が出るわ。なに上から見てんのって感じ。1人でマスかいて寝てろ。」

「ちょっとちょっとちょっと、ストップ! そんなこと、他で言っちゃダメよ?」

段々と口調が悪くなる織羽に、蒼乃は危機感を覚えた。
彼女の肩を掴んで制止すると、あらためて椅子に座った。

「進んで言わないけど、言うときは言うわ。他人からどう思われようが、どうでもいいじゃない。人の顔色うかがって、びくびく生きるなんて馬鹿みたい。」

「・・・・・・・・・。」

人間は誰しも承認欲求、すなわち他人から認められたいという思いを抱えて生きているが、この倉田織羽という人間は、その欲求が極度に乏しい。
こんな生徒だとは思っていなかった蒼乃は、ショックで黙っていた。

「あのね先生、わたしの言ってることなんて、まともに受け取らない方がいいわよ。」

波乱の懇談だった。



◆ ◆ ◆



<3人目 呉星十字 くれぼし・じゅうじ>


「将来はデュエリストタスクフォースの仕事へ、この身を捧げたいと思っています!」

意思の強い眼で、十字は眼鏡を光らせ宣言した。
そこには一点の曇りも無い。

「それは良いことだわ。頑張ってね。」

これまで、あまり接点の無かった生徒だったが、予想以上に好ましいタイプだった。
揺るぎない意思を持って、目標へ向かって邁進する。それが呉星十字という人間なのだ。

「つきましては蒼乃先生に、ご指導願いたいのですが、よろしいでしょうか。」
「これから? いいわよ。」

ここまで積極的な生徒が、今まで何故デュエルしていなかったのか、蒼乃は疑問だった。


「「デュエル!」」


蒼乃削減:LP8000
呉星十字:LP8000



「私の先攻ね、ドロー。《レスキューラビット》を召喚して、効果を発動するわ。デッキから《セイバーザウルス》2体を特殊召喚し、オーバーレイ。《エヴォルカイザー・ドルカ》をエクシーズ召喚よ。ターンエンド。」


エヴォルカイザー・ドルカ ランク4 炎属性・ドラゴン族・エクシーズ
攻撃力2300 守備力1700 恐竜族レベル4モンスター×2
このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。



呉星十字のデュエリスト能力は、『相手が手札からプレイできるカードは1ターンに1枚までになる。』という、極めて強力な行動封じだ。
ゆえに最高位のレベル5に指定されている能力であるが、隙が無いわけではない。手札ではなく、デッキやエクストラデッキからの特殊召喚であれば、引っかからないのだ。

そして、20歳を過ぎても失わない類のデュエリスト能力が、存在する。


「ドロー・・・・・・えっ!?」

十字はデュエルディスクの表示を見て驚いた。DRAWの表示が出ていない。
ドローしてみたが、警告音が鳴り響く。

「まさか、レベルE能力ですか!?」

「そうよ。」

レベルE能力とは、相手がデュエリスト能力者である場合のみ効力を発揮する、特殊なカテゴリのデュエリスト能力である。
能力を持たない相手には、同じく能力を持たないのと同じ。ゆえに数値レベルではない。



- - - - - -



「ダイレクトアタック。」

「Oh・・・これがレベルE能力・・・! 私の負けです、先生。」

決着は3ターン目でついた。
蒼乃はライフを1ポイントたりとも削らせずに、消費手札2枚で十字に勝利した。
悔しそうに歯噛みする十字だったが、しかしすぐに笑顔になり、礼を述べた。

「ご指導、ありがとうございました!」



◆ ◆ ◆



<4人目 黒維津軽 くろい・つがる>


「進路ですか? 正直どうするか決めかねているところですね。」

東洋的でありながら西洋風の雰囲気もある、長身の少年。
とても16歳とは思えない、ゾッとするほどの色気がある。

「黒維くんは、丸石くんと仲が良いのよね?」
「別にホモじゃないですが。」

そんなことは言ってないのだが、そういうことを言われてきたのだろうか。
蒼乃は、苗字よろしく丸顔の丸石を思い浮かべた。同僚の1人が、黒維×丸石とか言っていたが、そういう目で見られることが多いのかもしれない。

「好きなタイプは、か弱く清楚な少女です。」

父親が再婚して、義妹が出来たという。
後に火王杯に出場することになるレベル1能力者、黒維聖花(くろい・せいか)。

「だから、思わずレイプしてしまうんですよ。」
「は・・・!?」

津軽の目つきは、いやらしく歪んでいた。

「セックスは男が気持ちよければそれでいい。それを突き詰めた先にあるのがレイプです。」
「黒維くん、あなた・・・! え、冗談よね?」
「ところが冗談ではないのですよ。見目麗しい女を選ぶのも、女を感じさせるのも、それによって男が気持ちよくなる為のものです。」
「間違ってるわ! 黒維くん、それが本当なら、あなたを告発しなければなりません。」

蒼乃は椅子から立ち上がっていた。
それを見て津軽は、不敵な笑みを浮かべる。

「蒼乃先生もですか・・・。」
「どういう意味?」

馬鹿にされているようで腹が立つ。

「私は魔性の男なんです。何もしなくても、女の方から寄ってくる。抱いてやれば、勝手に気持ちよくなる。」
「黒維くん、あなた、女を何だと思ってるの!?」

おそらく言ってることは事実だ。
女に対する見方が、普通の男とは根本的に違う。

「だから、それですよ、それ。私を非難する人間は、2種類しかいない。男は理屈を並べる僻み屋さん、女は私に抱かれたいと思って興味を引こうとしてくる。先生も私に抱かれたいんでしょう?」

「馬鹿にしないで! どうやら、あなたには教育的指導が必要みたいね!

蒼乃はデュエルディスクを展開した。

「ほら、やっぱり抱かれたがっている。デュエルを通じて交わされた約束事は絶対・・・ここで私に負けたら、私の女にしてあげますよ。嬉しいでしょう?」

「黒維くん、もしかして本気で私に勝てると思っているの?」

2人の視線が火花を散らす。


「「デュエル!」」


蒼乃削減:LP8000
黒維津軽:LP8000




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
決闘学園・壊   目録
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ...続きを見る
佐久間闇子と奇妙な世界
2015/08/31 00:11

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「蒼乃削減。ショートヘア好き」
賢吾「人格破綻者?」
ゴリーレッド「界隈も危うい」
コング「畦地濃海は生理的嫌悪感を覚えるほどの容貌なのか?」
賢吾「そんなことないやろう」
コング「倉田織羽もショートボブか」
賢吾「あたしって可愛いじゃない? そりゃあ面食らう」
コング「セックスてさあ。ぐふふふ、もっと行け!」
ゴリーレッド「根本的なところで人格に欠陥があるタイプか」
賢吾「織羽が言うたことは大事や。男の一人善がりで悩んでいるおなごは多い。かといってイカしてやるみたいな愛のない上から目線じゃ余計腹立つわ」
コング「八武院長の診察を受ければ全て解決」
ゴリーレッド「何も解決しない」
賢吾「人の顔色うかがう生き方は疲れる」
コング「他人から認められたいという思い? 僕もない」
賢吾「コングの強味やな」
ゴリーレッド「黒維津軽。ヤバイ男だな」
コング「出た! 賭けデュエル! 負けたらカイと別れて津軽に身を任せる。頑張れ頑張れ! 黒維! 負けるな負けるな津軽!」
ゴリーレッド「津軽の海で泳ぎたいと?」
コング「言ってません」



コング
2015/03/20 18:52
賢吾「呉星十字の話を飛ばすのは失礼やろ」
コング「いじけられても困るからな」
ゴリーレッド「コングに無視されたら喜ぶ」
コング「意味がわからない」
賢吾「20歳過ぎても消えないレベルE能力か」
コング「十字を圧倒。凄い。手ごわいぞサクは。負けるな黒維津軽!」
ゴリーレッド「それしかないのか」
コング「なーい!」
白茶熊賢吾
2015/03/20 18:56
>コングさん
今回の4名では、畦地、呉星が承認欲求の強いタイプ、倉田、黒維があまり無いタイプですね。人は誰しも承認欲求を持っていると言われますが、やはり個人差は凄く大きいと思います。

佐久間「承認欲求か。他人からはともかく、自分に認められる自分でありたいとは思う。」
山田「なるほどな。人の目を気にしなくても、自分の目は気にしなくてはならないわけだ。」
佐久間「自由とは、自分のルールで生きることだからな。嫌われることが自由だとかいう意見もあるが、結局それも他人の評価に依存していることには変わりない。」
山田「難しいな。人の顔色を窺わないように生きているつもりが、他人を否定して生きるようになったら・・・俺も何度か、そうなりかけた。」
佐久間「自分のルールに従って生きて、それで嫌われるならこっちから願い下げだという、強気の姿勢がいい。」
維澄「一貫性が別な人から評価を得ることもあるからね。真剣な姿勢が、真剣な人に届く。」
神邪「高校時代は軽薄な人かと思っていましたが、こんな側面があるとは意外でした。風堂さんに言ってたことの意味は、そういうことだったんですね。」
八武「それで診察の時間は・・」
山田「瞬殺されたいと?」
八武「言ってない。」
アッキー
2015/03/20 22:02
>白茶熊さん
呉星十字も相当の実力者なのですが、それを完全に押さえ込んでしまう蒼乃先生です。レベルE能力は、相手のレベルが高いほど力を発揮するものが多いですが、果たして?

八武「ここからが本番だ!」
山田「十字はレベル5、津軽はレベル4だから、津軽の方がまだ戦えるってことか。」
佐久間「まあ、その理屈は間違ってないが、レベル4でもキツいことはキツいな。」
八武「入れるときの話かね?」
維澄「蒼乃も行動封じなのか、それとも・・」
佐久間「神邪は知ってるからネタバレ封じの仮面装着。」
神邪「前が見えない!?」
アッキー
2015/03/20 22:10

コメントする help

ニックネーム
本 文
決闘懇談 (前編) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる