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zoom RSS 決闘懇談 (中編)

<<   作成日時 : 2015/03/21 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



職員室で、風見はコーヒーを飲んでいた。
今頃は蒼乃が懇談をしている最中だが、どことなく落ち着かない。そわそわする。胸騒ぎがする。

「落ち着かないですか、風見先生。」

眼鏡をかけた、ハンサムな先輩教師が、アメを差し出してきた。

「あ、赫夜(かぐや)先生。どうも。」

アメはチョコレート味だった。コーヒーに合う。
いつもアメを持ち歩いているのだろうか。

「・・・・・・。」

先輩教師である、赫夜無法(かぐや・むほう)。
蒼乃や風見と同じく、レベルE能力者である。
その女性と見紛うほどの容姿も相まって、生徒からは“姫”と呼ばれて親しまれている。

「どうしました? 僕の顔に何か付いてますか?」
「あ、いや、何でもないです。」

風見が幽堂高校に赴任してきたのは、今年度のことだ。
恋人である蒼乃と同じ職場で働けるのは願ってもないことだったが、そこにいたのが赫夜。
年上の男としての余裕っぷりが、風見に劣等感を抱かせていた。

昨年度、蒼乃は職場で赫夜と一緒に働いていたことを思うと、男としても刺激される。
蒼乃が2つ年上であるだけに、自分は頼りなく思われてるのではないかと、いつも心配なのだ。

「大丈夫ですよ、僕は成人女性には興味ないですから。」

心を見透かされていたのか、冗談めいたセリフが飛んできた。
相変わらずスマートな笑顔なので、いやらしい感じはしない。

「女生徒がストライクゾーンってことですか?」
「ははは、そうですね。姉が死んだのが高校生のときなので、どうしても面影を追ってしまうんでしょうか。」
「あ・・・そうでしたか・・・。」

まずいことを言ったかと、風見は口ごもる。
しかし赫夜は笑顔だ。

「いえ、姉の話が出来るのは、嬉しいことですから。」
「そうですか。お姉さんは、どういう人でしたか?」
「物静かですが、意思の強い人でした。貧乏生活から努力して、この高校に入ったんですが、卒業間近に交通事故に遭いましてね。」
「ここのOGなんですか!」
「ええ。生きていれば、さぞかし強いデュエリストだったと思います。僕より2つ年上で・・・・・・風見先生、蒼乃先生を大事にしてやってくださいよ。」

僕にとっては年の離れた妹のようなものでしたから―――そう言って赫夜は“兄”の顔で笑った。

「肝に銘じます。」

義兄というよりは義父ほどの貫禄だが、風見は怯まずに宣言した。

その頃、零組の教室では蒼乃と黒維の懇談・・・もとい、教育的指導デュエルが始まっていた。



◆ ◆ ◆



蒼乃削減:LP8000
黒維津軽:LP8000



「私の先攻よ、ドロー!」

(こんな奴に負けてたまるものですか!)


エヴォルカイザー・ドルカ ランク4 炎属性・ドラゴン族・エクシーズ
攻撃力2300 守備力1700 恐竜族レベル4モンスター×2
このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。



《レスキューラビット》からの、《セイバーザウルス》2体リクルート。
それらをオーバーレイして《エヴォルカイザー・ドルカ》をエクシーズ召喚する。
蒼乃の基本戦術の1つだ。

「カードを1枚伏せて、ターン終了よ。」

「では、こちらのターンですね。」

津軽は唇を舐めると、デッキに手をかけた。


だが。


「・・・っ!?」

警告音が響いたので、咄嗟に手を引っ込めた。
そして蒼乃を見ると、彼女はクスクスと笑っていた。


「仮にも零組の担任を務めようって教師よ? 黒維くん、あなた如きが0.001パーセントでも勝てると思った?」


「・・・っ、レベルE能力・・・?」

ゾッとするような色気が消えて、子供のように震えていた。
津軽にとって、恐るべきことだった。

「黒維くん、あなたのドローフェイズは私がいただいたわ。ドロー。」(手札4→5)

フェイズを奪う能力。
蒼乃のレベルE能力は、そういうものだ。

「レベルE能力“星略血痕”(バーグラー)。『ターン開始時に、相手のレベルと同じ数まで、相手のフェイズを選択して、自分のフェイズとして使用できる。』・・・2つのメインフェイズとバトルフェイズも、いただくわね。」

「・・・! ・・・っ!」

津軽のデュエリスト能力は、自分のメインフェイズにしか発動できない。
フェイズを奪われては、能力を封殺されたも同然だ。

可愛らしく清楚な女教師が、このときばかりは魔性の女に見えた。

「再び《レスキューラビット》を召喚して、効果発動。《ヴェルズ・ヘリオロープ》2体をリクルートするわ。ドルカでダイレクトアタック!」


黒維津軽:LP8000→5700


「・・・っ、ダメージを受けたことにより、《トラゴエディア》を特殊召喚・・・! 2400打点は、そのモンスターたちでは超えられないですよ!」

「超える必要など無いわ。2体のヘリオロープでオーバーレイ、《ヴェルズ・バハムート》エクシーズ召喚よ!」


ヴェルズ・バハムート ランク4 闇属性・ドラゴン族・エクシーズ
攻撃力2350 守備力1350 「ヴェルズ」と名のついたレベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
手札から「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を捨て、選択した相手モンスターのコントロールを得る。



「手札のヘリオロープをコストに、《トラゴエディア》いただくわね。そして私のターン!」


《トラゴエディア》 (攻2400→3000)


「ドルカでダイレクトアタック!」

「・・・っ、《バトルフェー「無駄よ」


エヴォルカイザー・ドルカ ランク4 炎属性・ドラゴン族・エクシーズ
攻撃力2300 守備力1700 恐竜族レベル4モンスター×2
このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。



黒維津軽:LP5700→3400


「冥府の使者「無駄だって言ってるでしょ!?」


《冥府の使者ゴーズ》は、自身の効果で特殊召喚したとき、効果を発動する。
それは《エヴォルカイザー・ドルカ》の格好の餌食だ。


「《トラゴエディア》でダイレクトアタック・・・罠カード《無謀な欲張り》発動よ!」


《トラゴエディア》 (攻3000→4200)


「ひ・・・!」

「黒維くん、あなたの罪は、どれほどかしらね!?」



黒維津軽:LP3400→0



「・・・っ、負けました・・・!」

これほど悔しいのは、生まれて初めてだった。
煮え滾るような屈辱感が、津軽の表情を歪めていた。

「女に負けるのが、そんなに悔しい?」

それは女を見下していることに他ならない。
負けるのが悔しいのは当たり前だが、相手が女だから余計に悔しいというのは、勝負を舐めた勘違い野郎だ。

そういう思いあがった男には、辛酸を舐めさせてやるに限る。
蒼乃は、自分はサドっ気があるのだろうかと思った。

「いい、黒維くん。あなたは女を尊重することを覚えるべきよ。」

「・・・っ、“女を尊重する”なんて考え方こそ、女を見下していると思いますがね。」

冷汗たっぷりの顔で、津軽は反抗した。
その表情に、ますます蒼乃は加虐心を刺激された。

「黒維くん。」

少し強めに言いながら、蒼乃は腕を組んだ。

「尊重するというのは、守る守られるだけの関係じゃないのよ。男と女が互いに尊敬し合うことが、豊かな個人と豊かな社会を作っていくの。それが何になるって言うのなら、今すぐ社会から出て行くべき。厳しいことを言うようだけど、あなたの為でもあるのよ。このまま女を見下し続けたら、いつか必ず最悪の結末を迎えるわ。」

「・・・・・・・・・・・・。」

このとき津軽は、反省したわけでもなければ懲りたわけでもなかった。
その後、相変わらず女を抱いて捨てる高校生活を送っていた。

しかし卒業後に、デュエリストタスクフォースで佐野春彦と朝比奈翔子に敵対したとき。
タッグデュエルで完膚なきまでに敗北し、そのとき2人の協力し合う姿を見て、蒼乃の言葉を思い出したのだった。

改心したわけではなくても、蒼乃を尊敬すべき恩師として位置付けたのが、そのときだった。
それは津軽の自己流。
尊重し合うのは違和感がある。尊重というのは、津軽の感覚では腫れ物扱い、壊れ物扱いに近い。
尊重ではなく、尊敬。それが津軽の出した答だった。

その証として、津軽はエクシーズモンスターを戦術に組み込むこととなったのだ。



◆ ◆ ◆



<5人目 月島火月 つきしま・かげつ>


「私はね、本物ってやつが好きなんです。本音、本性、本心。」

子供の頃に大火傷を負って、全身を包帯で巻いた少女。
それでも体のラインは艶かしく、女性らしい曲線美を描いている。

「人間、きっちり他人を評価することなんて、そうそう出来やしない。勝手にイメージを押し付けて、こういう人間だと決め付ける。それに吐き気を覚えつつも、自分も同じことをしてるだんろうと思う。」

「・・・・・・。」

蒼乃は黙って聞いていた。
この少女の言うことには、人を引き込む力がある。死線を潜った人間の重みだろうか。

「だからこそ、です。だからこそ私は、人から本質を見抜かれたとき、自分が人の中身を見抜けたとき、嬉しくて嬉しくて仕方ない。その為に生きてるようなものです―――進路、ですか? カードプロフェッサーか、タスクフォースに行きたいと思っています。そこなら、あるいは奴に・・・」

包帯の隙間から見える双眸が、険しく歪んだ。

「奴?」

「母親を探しているんです。今どこで何をやっているやら・・・。」



◆ ◆ ◆



<6人目 冬藍櫂麻 とうらん・かいま>


「将来の夢、ですか。うーん、色々やってみたいんですよね。」

男としては少々可愛らしい顔立ちの少年。
ことによれば中学生にも見えるくらいだが、けっこう上背はある。

「とりあえず20歳まではデュエルで色々。せっかく能力デュエリストになったんだから、色々やらないと損。畦地くんなんかは、あんまりデュエルしてないから、損してるなーって思う。」
「デュエル以外では何を考えているの?」
「そうですね、色々。警察官に消防士、建築士に裁判官、名探偵に真犯人。どれも魅力的です。」

最後の1つだけ不穏だった。

「真犯人?」
「だって僕はカイマ君ですからね。カイマ君といったら真犯人ですよ。」

意味がわからない。何かのマンガかアニメのネタだろうか。

「このクラスで殺人事件を起こすとしたら、被害者は倉田さんとかいいな。あの子、可愛いし。好みの女子を見つけたら、カイマ君はすぐ殺したくなるんですよね。」

「・・・・・・。」

それが冗談かどうかは別にしろ、とりあえず織羽の予測は正しかったようだ。

津軽も含めて、どうも偶数番目に地雷が埋まっている気がした。



◆ ◆ ◆



<7人目 永遠亜留戸 とわ・あるど>


「はにゃ〜ん・・・将来、どうするか、どうしよう?」

おしとやかで清楚な、柔らかい雰囲気の少女。
長く伸ばした髪が、可憐な容姿に拍車をかけている。

(この子、ちょっと天然で抜けているところがあるから心配なのよね。)

悪い男に引っかかって転落しそうな危うさを感じていた。

「蒼乃先生は・・・それを、聞いて、どうする、つもり、なのかな?」
「え? それはもちろん、あなたの将来のサポートをするのよ。」

やっぱり天然だと思った。
だが、次のセリフで蒼乃は凍りついた。

「嘘ばっかり・・・“おとなPTA”の、決闘査察部隊、こと、“制圧凶師会”の、蒼乃削減、さん?」

「―――っ!?」


“おとなPTA”というのは、戦後まもなく発足した秘密結社である。
健全な青少年の育成に悪影響を及ぼすものを抹殺するという大義名分を掲げ、歴史の裏側で暗躍してきた。
1969年の全裸活動家弾圧や、1970年のポルノ焚書などは、今では昔の話になってしまっただろうか。

数年前に、現在の総理大臣、山本山太が率いる“やまも党”とのデュエル対決で、おとなPTAは敗北。
それで、デュエルモンスターズへの矛先を折られることとなっていたはずだった。

しかし、おとなPTAは、決して諦めない強い心の持ち主たちが揃っていた。
悪魔を倒すには、自らも悪魔にならなければならない。そう、デュエルモンスターズを滅ぼすなら、自らもデュエリストにならなければならないのだ。
後に歴史に登場するレベルマイナス集団が、それを最も徹底しつつ守破離の破まで行き着いた集団だった。

そこまでの壊れっぷりではないにしろ、おとなPTAは能力者に対抗する能力者、すなわちレベルE能力の持ち主を全国から集めて部隊を作り上げた。
それこそ“制圧凶師会”―――良からぬデュエリストに教育的指導を行う「E」、“Education”を掲げるチームだ。


「蒼乃先生は何の目的で幽堂高校に来たのかな? な? な?」




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「男だけと姫」
賢吾「胸騒ぎは正解や」
ゴリーレッド「成人女性に興味ないという教師も不穏」
賢吾「コングもや」
コング「僕は佐倉巡査など成人女性にも興味を持つ」
賢吾「こんな奴に負けてたまるものですか! そういうヒロインが敗北するところに意義がある」
ゴリーレッド「異義あり」
コング「異義なし・・・嘘! 負けた黒維」
賢吾「女を見下すのはアカン。なるほど教育的指導デュエルか」
ゴリーレッド「尊重し合い、尊敬し合い、助け合う。男が女を一方的に守るのではなく、互いに助け合うという発想」
コング「月島火月。本物が好きなのか。本音、本性、本心、本州」
ゴリーレッド「本州は関係ない」
賢吾「死線を潜った人間の重みか。確かに生まれながらに裕福で健康だと勘違い君になりやすいな」
コング「母親を探してる?」
ゴリーレッド「冬藍櫂麻。真犯人?」
コング「好みの女子を見つけたら殺したくなる。ダメでしょう、殺したら犯せなくなる」
ゴリーレッド「そういう意味なのか?」
賢吾「アルドを舐めたらアカン」
コング「アルドの全身に舌を這わす」
ゴリーレッド「おとなPTAの制圧凶師会。不穏だ」
賢吾「やまも党の山本山太。何か舐めた政党名やな」
コング「アルドは秘密を知ったか。まずは可憐な唇にガムテープ」
賢吾「手足を縛って拷問。どこまで知ってるから言ってごらん?」
コング「言わないとスッポンポンにしちゃうよん・・・キリン帰るな」
コング
2015/03/21 14:24
>コングさん
どうも不穏な人物だらけの幽堂高校です。カイマ君の言ってることも、あながち冗談ではないです。初期設定の彼は、本当に殺人事件の真犯人でした。その名残ですね。

八武「フェイズを奪う能力だとぅ!?」
山田「心も奪われたかも。」
佐久間「こういう事態を想定して、教師は全てレベルE能力者だ。」
維澄「とんでもない高校だね。」
佐久間「零組の担任には、特に強力な能力者が配備されている。制圧凶師会の名は伊達じゃない。」
維澄「アルドでも勝てない?」
佐久間「現時点では無理だな。」
八武「ぬうう、こうなったら神邪くんの出番だよ!」
佐久間「零組生だから出番はあるけどな。」
八武「まさか普通に懇談やって終わりなんてことはないだろうね?」
佐久間「界隈の期待に応えられる展開かどうかはわからない。あくまで懇談だからな。」
神邪「はい、懇談でしかありません。」
山田「そう言われると逆に不穏な気がするんだが。」
八武「個人授業を勧めよう。」
佐久間「個人授業。本来いやらしい意味など無いのに、そこはかとないエロスを感じさせる。」
山田「解説しなくていい。」
八武「アルドは口封じされてしまうのかね?」
山田「殴りたい、この笑顔。」
八武「やめたまえ。」
佐久間「そろそろ神邪にはスタンバイしてもらおう。」
神邪「スタンバイフェイズは奪われそうですけどね。」
アッキー
2015/03/21 22:12

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