佐久間闇子と奇妙な世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 決闘倶楽部   インターローグ 子供の目

<<   作成日時 : 2015/05/04 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 2

◆ ◆ ◆



熊井次郎は、女が苦手だ。

幼い頃に父親が死んで、母親に育てられた。
雄大な父親の記憶も薄く、線の細い母親の泣いている記憶が濃くあった。

泣いている人を見たくない。
嘆いている人を見たくない。
悲しんでいる人を見たくない。

ちょっとしたことで、さめざめと泣く母親を見ていると、胸が潰れそうだ。
どうしてそんなことで泣くのかと、鬱陶しい気分になる。
彼の最も身近な女性は、彼の最も苦手なタイプだった。

しかし、そんな性質を繊細だと受け取る男もいるのだろう。
次郎が11歳のとき、まだ30代の母親は、ある会社の社長と再婚した。
大企業とまでは言わなくても、それなりの規模がある会社で、一気に生活は楽になった。

社長という時点で、次郎は気に食わなかった。
偏見でしかないのだが、社長なんて生き物は、妻をおざなりにして浮気しまくるものだと考えていたのだ。

そして杞憂でもあった。再婚した男は、次郎の母親を大事にして、もちろん浮気もしなかった。
だからこそ、負けた気になった次郎は、ますます義父が気に食わなかった。
そんなことを思う自分の器の小ささが嫌になり、自分に優しくする義父に反発した。

母親は、結婚の喜び、新生活の喜びで涙を流した。
それが次郎にとっては、大袈裟で鬱陶しかった。

義父に反発する次郎に対して、母親は嘆き悲しんだ。
それも次郎にとっては、鬱陶しくて仕方なかった。

どうして、そっとしておいてくれないのか。
次郎は、それが幼稚な感情であると思いながらも、何かと干渉してくる義父と母親が嫌いだった。


ダークネス事件が起こるのは、それから1年あまり後のことである。



◆ ◆ ◆



平田敦は、女が苦手だ。

彼の父親はギャンブル狂で、妻子に暴力を振るうこともあった。
母親は敦を連れて、逃げるように離婚し、新しい土地で新しい恋をした。

しかし、その恋は破れてしまう。
恋した相手は、他の女と結婚し、その日から母親は変わってしまった。
ことあるごとに、敦に愚痴をこぼし、男に裏切られたと、相手の女が許せないと、呪いを込めた。

言葉は呪いになると思う。
いつしか敦は、顔も知らない女を、憎むようになっていた。
母親を愚痴っぽくした女が、家を暗くした女が、許せなかった。


それから程なくして、ダークネス事件が起こる。
ダークネスは、人に心の闇があれば、そこに住み着いて、更なる闇に引き込む。
敦の母親はダークネスに引き込まれ、いなくなった。

親玉は結城十代によって倒されたが、各地でデュエリストの戦いがあったことを忘れてはならない。
ダークネスが増幅した心の闇は、敦を復讐へ誘った。
それは殆ど逆恨みのようなものだったが、ダークネスに取りこまれた敦は止まらない。

自分の母親を振って、他の女と結婚した男、熊井。
闇のデュエルで彼を殺してやろうと思っていた。

ところが、熊井と彼の妻もダークネスに取り込まれており、いなくなっていた。
行き場を失った復讐心は、残った息子へ向かう。


対決は必然だった。

現れた敦はダークネスの気配を纏っており、次郎の方から涙ながらにデュエルを挑まれたのだ。
激昂した次郎と、ダークネスの力を備えた敦。
それぞれデュエリスト能力に覚醒しており、デュエルは熾烈だった。

当時としても相当の火力を誇る【サイコロバーン】と、能力で補強された【キュアバーン】の、好カード。
こんな形ではなく、健全な大会で戦えたら、どんなに良かったことだろう。


『速攻魔法発動、ターンジャンプ!!』

追い詰められた状況で引いた《時の飛躍》と、墓地にあった《堕天使マリー》のコンボ!

いったん《時の飛躍》を伏せておき、エンドフェイズに1000ダメージ。
敦のターンで発動して、3000ダメージを与え、初期ライフの半分までしか削れていなかった4000ライフを、あっという間に削り取ったのだ。


その後の経緯は、ご存知の通りである。
ダークネスの親玉が結城十代によって倒されると、取り込まれた人々は元に戻ってきた。



◆ ◆ ◆



片親同士だったから。
親に対して良い感情を抱いてないから。
女が苦手だから。
闇のデュエルでぶつかり合ったから。

だから熊井次郎と平田敦は、友達になれたのだろうか?
そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える。

ダークネス事件の後、2人は中学で再会し、お互い気まずそうに沈黙した。
友達と言えるようになるまでは、もう少し時間を要した。

きっかけは、敦が女子に追いかけ回されたことだろう。
それを次郎が阻止するという構図は、この頃から確立した。


親たちは、力ずくの介入(引越しなど)こそしなかったものの、付き合いを遠慮して欲しいと口にした。
それは子供の目から見て、みっともなく映った。

しかし子供の目は、いつまでも幼くはない。
この状況で、誰が何をすれば問題が解決するかを、いつまでもわからないままの2人ではない。
困難であっても、やらねばならないと、次郎と敦は決意した。

まずはデュエルで親たちに勝利し、子供同士の付き合いに文句を言わせないようにした。
そして敦の母親に、お見合いデュエルをさせて、再婚させることにしたのだ。

デュエリスト能力者である自分たちが、ほぼ初心者である親たちに勝つのは容易かったが、難しかったのは、その初心者クラスの親を、お見合いデュエルで勝たせることだった。
デッキ構築からプレイングまで、次郎と敦は、何度もヒステリーを起こす敦の母親を、辛抱強く指導した。

その結果ようやく、お見合いデュエルに勝利した母親は、自分の吐いた呪いや暴言の数々を忘れたように、新しい生活で幸せいっぱいの顔をしていた。

『はぁ、これだから女ってやつは・・・。』
『まったくだよ・・・。』

疲れきった2人は、やれやれと顔を見合わせた。
中学三年生の春だった。


全世界デュエリスト能力者大会で敗退した2人が、火王杯で安藤比呂子と対決するのは、もう少し後の話である。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
決闘倶楽部   目録
◆ ◆ ◆ ...続きを見る
佐久間闇子と奇妙な世界
2015/05/04 00:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「僕は女の子が得意」
ゴリーレッド「聞いてない」
火剣「社長はそういう人種か。じゃあ賢吾は浮気しまくってるな」
ゴリーレッド「100%の確率のわけがない」
コング「嘆いてる女子、悲しんでいる女子は見たくない。僕と同じだ。でも女子を泣かすのは好き。誇り高きヒロインが両目を真っ赤に腫らす表情に・・・」
ゴリーレッド「ニーパット!」
コング「しまった!」
火剣「義父と息子は難しそうだな。こういう話を聞くと結婚しなくていいと思ってしまう」
ゴリーレッド「実の親子でも難しいのだから大変だ」
コング「ダークネスは魔王のようだ」
火剣「次郎も敦も壮絶な半生と壮絶な出会いだな。これじゃ中3でも大人みたくなってしまう」
コング「なるほど、かごめがアダルトなのはある意味当たり前か。命懸けが日常だからな」
火剣「お見合いデュエル?」
コング「負けたら即・・・」
ゴリーレッド「クロスライン!」
コング「ごおおお!」
火剣「しかしもうすぐ敦は女なしでは生きていけない男に」
火剣獣三郎
2015/05/04 19:46
>火剣さん
本編では主役を張れてない2人ですが、なかなかに壮絶な過去を持っています。このあたり詳しく描くと、それだけで独立したシリーズが作れそうなくらいですね。
本当に大変なのは、大事件を乗り越えた後なのかもしれません。

山田「親子でも、同性同士は反発するって話を聞く。」
佐久間「私と母しゃんは仲良しだったよ。」
維澄「私と闇子は仲良しだね。」
佐久間「おいやめろ。」
山田「母と娘より、父と息子の方が反発しやすいな。」
佐久間「それもよく聞く。そして、結婚相手の両親との場合、逆になりがちだとも。」
神邪「実父は生まれる前に亡くなったので何とも言えませんが、やはり養父母との関係は実の親より難しいと思います。」
八武「人間関係は難しいねぃ。私も養子や人造で子供を設けることは、物的には可能だが、やらなかった。」
佐久間「確かミガロスは、死根也の子供が欲しいと言ってたが。」
八武「・・・自分で産んだ子供がね。」
佐久間「お前ならミガロスを改造して、生殖機能を付加することも出来そうだがな。」
八武「出来るけど、やりたくないんだよねぃ。私にとって女の子は、愛でるものであって、子供を産ませる道具じゃないから。」
山田「セリフだけは男の鑑なんだが。」
神邪「浮気してなければ完璧でしたね。」
八武「だーくねぇーす・・・だーくねぇーす・・・」
山田「誤魔化すな。」
佐久間「お見合いデュエルは見てみたいな。いつかアッキーに書かせよう。」
アッキー「え?」
アッキー
2015/05/04 20:59

コメントする help

ニックネーム
本 文
決闘倶楽部   インターローグ 子供の目 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる