佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘航海   It's time to Duel 〜氷に咲く華〜

<<   作成日時 : 2015/05/30 00:05   >>

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◆ ◆ ◆



熱が残っていた。

心地良い熱と、不愉快な熱。



浜百合氷澄(はまゆり・ひすみ)は、ディーラーとしての自分から、プライベートの時間へ移っていた。
しばらく仕事が無いので、熱いシャワーを浴びてから、本格的に睡眠を取り、疲れを癒した。
久々に泥のように眠ったが、散漫だった意識が次第にハッキリしてきて、ふたつの熱を感じていた。
船内の空調は、冬のせいか暖房を利かせすぎていて、服を纏わずに眠っても、なお火照る。
シャワー室で冷水を浴びて、瑞々しい肌に水滴を弾かせると、のぼせた頭も冷えてきた。
洗面所で、あらためて顔を洗い、歯磨きと嗽も済ませる。
誰が見ているわけでもないが、バスタオルを身につけて、しばらく服を着ないでベッドに座った。
突き出した胸が揺れ、くびれた腰が布団に沈む。細い脚が、しなやかに組まれる。
低アルコールのビールを咽に与えると、生き返った気分になった。

「ふぅ・・・今何時だったかな。」

お客様へ向けてではない、素の口調で、氷澄は壁の時計を見た。目覚めるには丁度いい時間だ。
微笑を浮かべた唇から漏れる息は、甘い香りを放っている。
頭に巻いたバスタオルが、青白い髪から水気を奪い、氷澄はワシャワシャと拭いてから洗面台に向かった。
自慢の髪というほどではないが、身だしなみに気を使う程度には愛着のある髪だ。ブラシで丁寧に梳いていく。
低温ドライヤーで、じっくり乾かし、ようやくバスタオルを取って下着を身に付けた。
ディーラーとしての挑発的な服装のときは、対照的な清楚な下着だったが、プライベートでは逆だ。
女を美しく魅せるという黒。ブラとショーツは、艶かしい色気を発している。
それを閉じ込めるように、やや厚手の赤いシャツ、ボーイッシュなハーフジーンズで決める。
氷澄は、こうした内外のコントラストを考えるのが好きだった。健康的な格好の下に、淫靡な下着。
もちろん見られることがないのが前提である。密かな楽しみだ。

しかし今の氷澄は、いつもとは少し気持ちが違っていた。
自分だけの楽しみとしてのコントラストが、ある人物に見られることを意識した。
それが、ふたつの熱。

(マサキに見られたら、何と思われるかな? 遊んでそうって思われる?)

挑発的な服装は嫌いじゃないが、男と一線を越したことはない。
それは父親べったりだったせいもあるのだろうが、父親が行方不明になってからも、機会は無かった。
決して同性愛者ではないのだが、男というものが、自分を性的な目で見る“男の目”が苦手だった。
矛盾しているようだが、挑発的な格好は、あくまで自分の楽しみであり、無遠慮に見られたくはないものだ。
きちんと節度を守り、手順を踏んで観賞(あるいは干渉)してくるなら、決して不愉快ではないのだが。

そう、決して不愉快ではない。大河柾、彼から発せられる男の香りは、決して嫌いじゃない。
今のところ、恋人になりたいとまでは考えてないが、しかし場合によっては・・・と思う。
少なくとも、柾から見られることを意識するほどには、彼のことを好ましく思っていた。

しかし、意識することが好意であるとは限らない。氷澄は、真逆の例を同時に味わっていた。
いきなり抱きついてくる、無遠慮な行為。節度の無い、手順を無視した、いやらしい男。
その前から気に食わなかった。ゲームとはいえ、処女かどうかを尋ねてくるなんて、ありえない。
氷澄の中で、竜堂神邪は強姦魔に等しかった。

実際、神邪は女を強姦したことがあるので、氷澄の言うことに反論も言い訳も出来ない。
たとえ彼が、大勢から迫害を受けていようが、それは氷澄には関係ないことである。
ナイフで刺された傷口に突っ込まれて強姦されたことがあったとしても、勝手に人に抱きついていいわけがない。
まして氷澄は、そのことを知らないのだ。

(ああ、気持ち悪い。あんな奴に負けたなんて、最悪!)

柾に負けたときは、悔しかったが、どこかで快感だったのは否めない。
日頃、低レベルの男を相手にしている反動か、どこかで強く逞しい男に屈服したい気持ちがあるかもしれない。

しかし神邪に対しては、負けたことすら認めたくなかった。
相手の勝ちを認めたくないし、相手の価値を認めたくない。

「ふっ・・・出かけよ。」

心の中で毒づくと、気分がマシになった。
氷澄は部屋を出ると、カフェへ向かって歩いていった。

無論、ディスクとデッキは忘れずに。



◆ ◆ ◆



「ふわあああ!」

大きな欠伸をして、凜堂涼香(りんどう・すずか)は目を覚ました。
ピンクにイチゴ柄のパジャマは、そろそろ子供っぽいかと思いつつも、お気に入りなので着続けている。
目を擦りながら布団から出ると、よたよたと洗面所へ向かう。朝は強くないのだ。
歯磨きと嗽を済ませて、トイレにも行き、冷水を顔に浴びせて、ようやく頭が冴えてきた。

「おっはよー、うつつ君! もう朝だよー!」

涼香はベッドにダイブした。
もちろん、まんまフライングボディーアタックでは、寝ている人の命が危ないので、のしかかるような格好だ。
中学生としては発育の良い体が、シーツの海に沈み込む。まとめてない髪が、わさっと広がる。

「ふにゃあ、もうちょっと寝かせてよ。この世は所詮、夢か幻なのーさー。」

そう言いつつも、流石はプロのディーラーである。素早く意識を覚醒させて、起きてきた。
13歳の少年は、1つ違いの姉のような少女を見ながら、やれやれと息を吐いた。
仮にも借金を返そうと、裏カジノで稼いでいる最中なのだ。もう少し緊張感を持って欲しいと思う。

(まあー、それが涼香の良いところかもしれないーけどね。)

どちからというと、自分が兄の役目を負わなければならないだろうとは思いつつ、双夢現(そうむ・うつつ)は、ベッドから下りて洗面所へ向かった。

「えへへー。」
「何を笑ってるのさ。」

歯を磨いていると、涼香がニヤニヤしているので、現は首をかしげた。

「男の子と一緒の部屋で、お泊りなんて、わたし不良になっちゃったかも?」
「この程度でー? まー、僕が“ついていたら”そういうことになるのかなー?」

現は13歳としても華奢な体つきをしている。小さいだけでなく、男性的な形状が見られない。
それは彼が、カストラートとして育てられた過去を持っていたからであった。
人道的見地から廃止された、声変わり封じの去勢であるが、完全にゼロではない。
まだ物心つく前に、現は男のシンボルを切り取られ、性欲も感じることなく生きてきた。

(僕を“男”として扱ってくれたのかなー? だとしたら喜ぶべきかも。)

女扱いされて、喜ぶ女もいれば不愉快に思う女もいる。それは男も同じことだ。
肉体的な意味では反応しないが、精神的には悪くない気分だった。

その一方で、涼香は別のことを考え始めていた。

(そう言えば、あの人も男っぽくないけど・・・。)

涼香は、柾と親しく話していた人物のことを、思い出していたのだ。
しかし、男っぽくないといっても、現とも別物のように思えた。
男でもないが、女でもない現は、しかし人間であるのは確かだと思える。
しかし竜堂神邪という人物は、人間ですらないように思えた。
現が男としての機能を損なっているとすれば、神邪は人間としての機能を損なっているように感じる。
それは近い人物を挙げれば、両親を騙して多額の借金を背負わせた、あの瀬良という男に似ている気がする。

「・・・違うからね。」
「ん?」

涼香は申し訳なく思い、現を後ろから抱き締めた。
人間じゃない物体とイメージを重ねてしまったことを、謝ったのだ。

もちろんテレパシストでもない現は、別の意味で受け取った。
揶揄した形になったのではないかと気付いた涼香が、そうではないと言ったのだと思った。

(気にしなくてもいいのになー。僕に言わせれば世の中、色々と気に病みすぎな人が多いんだよー。)

そんな自分は、怒りという感情が欠落しているのかもしれない。
怒りは男性ホルモンの変形だという説は、あながち間違いではないと思う。

「それでーさー、ルームサービス取る? それとも食べに出る?」
「うーん、どうしよっかな。」

余計なトラブルを避けるなら、断然ルームサービスを頼むべきなのだが、しかし涼香は思うところがあった。
この広い船内で、会える確率は高くはないのだが、柾に会えるかもしれないと思うと外に出たかった。

(好き、なのかな?)

どちらかというと、兄に対する“好き”、親愛の情のような気がする。
兄がいるわけではないが、もしも兄がいるとしたら・・・というイメージの1つに、柾はピッタリなのだ。

「・・・というわけで、カフェに行く。」
「何が“というわけ”なのさ。」

現はクスクス笑って、扉を開けてやった。
やはり見ていて飽きないと思う。

ディスクとデッキを忘れずに、2人は部屋を後にした。



◆ ◆ ◆



それは必然だったのかもしれない。

今ここで会ったのは偶然だが、いずれ起こるのであれば、必然とも言えるだろう。
スマートに朝のコーヒーを楽しんでいる氷澄と、サンドイッチを頬張る涼香の、視線が交錯した。
涼香が来たときから、2人の女は互いを意識していたが、それが煮詰まりつつあった。

(うっひょー、これは面白くなりそうだなー。)

現は内心、生きてて良かったと思った。
こんな面白いものが見られるなら、あのとき電流処刑されなかったのは正解だった。

「あ、あの、わたしとデュエルしませんか?」

言葉こそ丁寧だが、涼香の目つきは挑戦的だった。少女の目ではなく、女の目だった。
それに対して氷澄も、余裕ぶらない。つららのような目つきになって、薄笑いを浮かべる。

「いいわよ。」

獲物を駆る女豹のような顔で、氷澄は席を立った。
澄み渡る美しさに、涼香は圧倒される。美しいとは、威圧でもある。

(これはー、ちょっと手を加えるべきかなー。)

現は急いでジュースを飲み干し、2人のもとへ割って入るように歩いてきた。

「浜百合さーん、大人気ないことになる挑戦は受けっこなしよー。」
「あら、ハンデつける?」
「ハンデなんかいらないもん!」

涼香はデュエルディスクを展開する。
しかし現は、それを押さえて首を振る。

「対等に戦いたい気持ちはわかるけどさー、既に対等じゃないんだよ。言ってる意味わかるよねー?」
「え、それは・・・あ・・・・」

涼香は気付いて、うなだれた。

「だから僕がタッグを組むよー。」
「いいわよ、その程度のハンデは認めてあげるわ。」
「んじゃー、お言葉に甘えてターンの順番は決めていい? 涼香、僕、浜百合さんの順番で。パートナーとのフィールド・墓地・除外ゾーンは、共有してもしなくてもいい。」
「構わないわ。1順目は攻撃不可。これでいい?」

氷澄は余裕の態度を崩さない。
女としては余裕ぶってもいられないが、デュエリストとしては余裕になれるだけの差があるとでもいうのか。
その態度に涼香はムッとしつつも、虚勢を張ってる可能性も考えて、現に耳打ちした。

(ねえ、うつつ君。こんなにハンデつけていいの?)

すると現は、目を細めて笑った。

「何を言ってるのーかーなー。涼香、もしもカード・キーを失ったことで、浜百合さんを甘く見ているなら、その認識は全然あてにならないと言っておくよー? デュエリストの本領は、デュエルに決まっているんだから!」

「ごくっ・・・!」


そしてデュエルが始まった。


「「「デュエル!」」」


凜堂涼香:LP8000
双夢現:LP8000

浜百合氷澄:LP8000



「わ、わたしのターン、ドロー! んーと、《マスマティシャン》を召喚して、デッキからレベル4以下のモンスター1体を墓地に送る・・・よ?」

おずおずとした調子で、涼香はプレイングを進める。
女としても決して勝ってる自信は無いが、デュエルの腕前は、現の言葉を信じるなら桁違いだろう。


「レベル3能力“蒼白の魔門”(セブンズゲート)発動。フィールドに存在するレベル、ランクが7未満のモンスターは、ゲームから除外されるわ。」


「ふええええ!?」

《マスマティシャン》 (除外)

これで戦闘破壊されたときのドロー効果は望めなくなった。
制限カードを潰されてしまっただけに、落ち込んでしまう。

しかし現を見ると、動じている様子は無い。

「気を付けなよー、涼香。あれを浜百合さんの本質だと思っちゃ駄目だ。」
「ど、どゆこと? 嘘ついてるってこと?」
「んー、あれが偽装なのは間違いないんだよねー。お互いのモンスターを除外してしまうなら、強力でもレベル3なのは納得できるんだけどー。」
「レベル4で、相手だけ除外ってこと?」
「それなら話は早いんだけどー。んー、まあ、とにかくデュエルを進めなよー。」
「う、うん。カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

モンスター不在のフィールドに、伏せカードが1枚のみ。
しかし氷澄とて、出せるモンスターは限られているはずだと思い、涼香は心を落ち着けた。

「んじゃー、僕のターンね、ドローっと。」

現にとっては興味本位のデュエルだが、さりとて手を抜くことはしない。
むしろ興味本位だからこそ、余計なことを考えずに全力が出せる。現は、そういうタイプだった。

「うにゃ、確かめることは色々あるけどー、これでいくかー。《トーチ・ゴーレム》!」

攻撃力3000、レベル8のモンスターが、氷澄のフィールドに特殊召喚された。
しかし代償として、現のフィールドにはトーチトークン2体が出されている。


「・・・“蒼白の魔門”発動よ。」


トーチトークン (除外)
トーチトークン (除外)



「うーりゅりゅりゅ、カードを1枚伏せて、ターンエンド。」


凜堂涼香:LP8000、手札4
場:
場:伏せ×1

双夢現:LP8000、手札4
場:
場:伏せ×1

浜百合氷澄:LP8000、手札5
場:トーチ・ゴーレム(攻3000)
場:



「私のターン、ドロー。レベル8、《神獣王バルバロス》を召喚するわ。いただいた《トーチ・ゴーレム》で、双夢くんにダイレクトアタックよ。」

「あやー、僕の方を警戒してくれてるのは嬉しいけどー、《洗脳解除》発動だよー。」


洗脳解除 (永続罠)
このカードがフィールド上に存在する限り、自分と相手のフィールド上に存在する全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る。



「やっぱりね。カードを3枚伏せて、フィールド魔法《コズミック・スペース》発動よ。」


コズミック・スペース (フィールド魔法)
エンドフェイズごとに、フィールド上のモンスターはレベル・ランクが1つ下がる。(0になったら墓地へ送られる)



「ふーん、その手で来たかー。よくよくモンスターが嫌いと見える。それとも宇宙が好きなのかなー?」

「どちらでもないわ。強いて言えば、この程度で息苦しくなるようなら、出直しておいでってところね。ターンエンド。」

「あ、あれ、確か・・・?」

涼香は首をかしげた。彼女の記憶では、《コズミック・スペース》がオフィシャル・カード化された覚えはない。
そのことを察して、現が小声で告げた。

(この船でオフィシャル・カード以外を使えないのーは、プレイヤーだけの話だよー。)
(あ、そっか。それはそうだよね。うつつ君はオフィシャル・カードしか使わないから、忘れてた。)



凜堂涼香:LP8000、手札4
場:
場:伏せ×1

双夢現:LP8000、手札4
場:トーチ・ゴーレム(攻3000・L7)
場:洗脳解除(永続罠)

浜百合氷澄:LP8000、手札1
場:神獣王バルバロス(攻1900・L7)
場:コズミック・スペース(フィールド魔法)、伏せ×3




「わたしのターン、ドロー! モンスターをセッ・・」

その声に、氷澄の鋭い宣言が割り込んだ。

「永続罠発動!」


聖なる輝き (永続罠)
このカードがフィールド上に存在する限り、モンスターをセットする事はできない。
また、モンスターをセットする場合は表側守備表示にしなければならない。



「そ、そんなあ〜。」

「そんなに落ち込むということは、【シャドール】でも使ってるの?」

「うっ、見抜かれた! ・・・だったら、もう様子見は終わりだよね。」

涼香の目つきが、ギンッと鋭くなった。

「手札の2体を融合! レベル9、《エルシャドール・アノマリリス》!! 融合召喚なら、シンクロ召喚やエクシーズ召喚と違って、フィールドを経由しなくても出せる!」

攻撃力は2700と高く、魔法・罠による特殊召喚を封じる効果を持っている。

「そして、うつつ君のフィールドも、わたしのフィールドとして扱える! 《トーチ・ゴーレム》でバルバロスに攻撃!」

「速攻魔法《禁じられた聖杯》で、バルバロスの効果を無効、攻撃力を3400にするわ。」

「・・・っ、だった、ら、伏せカード《超融合》!! 手札1枚を捨てて、アノマリリスとバルバロスを融合!!」

「ここでー、僕のデュエリスト能力も発動するねー。」


夢幻の僕(ブロッケン) レベル2能力(所有者:双夢現)
デュエル中に1度だけ、フィールド上のモンスター1体と同じ攻守・レベル・属性・種族の「ブロッケントークン」1体を特殊召喚することが出来る。



凜堂涼香:LP8000、手札2
場:エルシャドール・シェキナーガ(攻2600・L10)
場:

双夢現:LP8000、手札4
場:トーチ・ゴーレム(攻3000・L7)、ブロッケントークン(攻2600・L10)
場:洗脳解除(永続罠)

浜百合氷澄:LP8000、手札3
場:
場:コズミック・スペース(フィールド魔法)、聖なる輝き(永続罠)、伏せ×1



「永続罠《メタル・リフレクト・スライム》発動よ! 守備力3000ポイントの壁となるわ!」

「そんなの無駄だもん! 2枚目の《超融合》で、シェキナーガとスライムを素材に、2体目のアノマリリス!」

(勝てる!)

涼香は3体のモンスターで総攻撃を仕掛けた。
攻撃力3000、2700、2600・・・累計8300は、氷澄のライフを削り取ってしまえる。



・・・はずだった。



凜堂涼香:LP8000、手札1
場:エルシャドール・アノマリリス(攻2700・L9)
場:

双夢現:LP8000、手札4
場:トーチ・ゴーレム(攻3000・L7)、ブロッケントークン(攻2600・L10)
場:洗脳解除(永続罠)

浜百合氷澄:LP5300、手札3
場:
場:コズミック・スペース(フィールド魔法)、聖なる輝き(永続罠)




「え・・・・・・?」

何が起こったのか。
2700しかダメージを与えられていない。
氷澄の手札が増えている。
これは《増殖するG》の効果か。
しかし何かがおかしい。
何か。

呆然とする涼香は、手札を1枚伏せるだけでターンを終了するしかなかった。


「僕のターン、ドロー! 《魂吸収》を発動し、《ネクロフェイス》を召喚するーの。」

《ネクロフェイス》 (除外)

双夢現:LP8000→16000


「アノマリリスでダイレクトアタックだーよ!」

「その攻撃は《クリボー》で防ぐわ。」

「んじゃー、ブロッケンシェキナーガで、アタック、アタック!」

浜百合氷澄:LP5300→2700

「カードを3枚伏せて、ターンしょーりょー!」


凜堂涼香:LP8000、手札1
場:エルシャドール・アノマリリス(攻2700・L7)
場:

双夢現:LP16000、手札0
場:ブロッケントークン(攻2600・L8)
場:洗脳解除(永続罠)、魂吸収(永続魔法)、伏せ×3

浜百合氷澄:LP2700、手札2
場:
場:コズミック・スペース(フィールド魔法)、聖なる輝き(永続罠)



「1万と、6000ね。そんなライフは射程範囲内よ。」

氷澄はゾッとするような笑みを浮かべながら、カードを引いた。


「デュエリスト能力、発動。」


それだけで、全ては終わっていた。


凜堂涼香:LP0

双夢現:LP0



何が起こったかもわからないまま、涼香と現は敗北した。



◆ ◆ ◆



「よぉ、凄ぇじゃねえか。」

いつの間にか柾が観戦していた。

氷澄も涼香も、デュエルに熱中していて気付いていなかった。
デュエル中のテンションを見られていたかと思うと、顔が赤くなる。

「み・・・見てたの?」
「ああ。おかげで氷澄の能力も、50パーセントくらいは推測できた。“頭のいい女は好きだぜ”?」

「・・・っ!」

氷澄は照れるのではなく、ぎくっとした顔で柾を見つめ返した。

「・・・今のデュエルだけで、わかったの?」
「ははっ、流石にそれは無ぇよ。エクストリーム・デュエルの前に、平田さんとデュエルしてただろ?」
「ああ、あの汚らしい酔漢・・・。」
「あのときは《バードマン》が除外されていなかった。そこから違和感を辿って、この結論に辿り着くのは、そんなに難しいことじゃねえ。俺の場合、平田さんの昔話を聞いていたおかげもあったがな。・・・っつっても、能力を見抜いたところで正直、ほぼ対策は立てようがないが。」

柾は腕を組んで首をかしげ、参ったような表情をする。
その様子は、カマをかけているようには思えない。
言葉通り、少なくとも50パーセントまでは見抜いているのだ。

「いや、それより氷澄、悪かったな。正直あんたのこと見くびってた。カード・キーのゲームから推し量った実力なんざ、全くアテにゃ出来ねえな。ここまで俺を滾らせたデュエリストは、あんたで11人目だ。これからは俺も、デュエリストレベルMAXで行くぜ。」

「それは楽しみね。次のゲームで待ってるわ。」

氷澄は挑戦的な目つきで、柾を睨んだ。
それは女の目ではなく、デュエリストの眼光だった。

「っ・・・」

涼香は悔しかった。負けたことだけでなく、このハイレベルの会話についていけない。
まず氷澄の能力からして全くわからない。自分は頭の方もレベル0なのかと思うと、涙が出そうだった。
遥かな高みで火花を散らす2人のことが、デュエリストとして羨ましく、そこに届かない自分が情けない。

「・・・マサキさん!」

「お、おう、何だ?」

いきなり大声で呼ばれて、柾は面食らった。
涼香の表情は、兄に置いてけぼりにされた妹のようだった。
もしも妹がいたら、こんな感じだろうかと、柾は思う。

「わたし、最後のカード・キー、取ってきますから! 貰ってください!」
「え?」

現は驚き、思わず横を見た。首がグキッと音を立てる。
柾はというと、少しの間ポカンとしていたが、我に返って首を振った。

「いやいやいやいや、待て待て待て待て! 涼香ちゃんは、借金返す為にゲームしてんだろ?」
「子供扱いしないでください! わたしだって、マサキさんと・・・マサキさんと・・・・・」

涙声になりかけて、涼香は言葉を切った。

(ちっちゃくても、デュエリストだなあ。)

柾は反省した。
さっきから涼香を無視した形になっていたことも含めて、良くなかった。
氷澄が凄すぎて、興奮のあまり周りが見えなくなっていたのだ。

「わかったぜ。だが、対等なデュエリスト同士ってんなら、タダでカード・キーを受け取るわけにはいかねえ。手に入れた暁には、35億DMで買い取らせてもらう。」

「・・・っ、そんなに貰えません! そんな・・」

「おっと、勘違いすんなよ。これは妥当な値段なんだぜ? 難易度★3つの“Qカード”が、カード・キーの勝負で掛け金26億だったって聞いてる。残る3つのゲームは全て★4つ・・・★の数の比を掛けたら、そんなもんだろ。」

ここは柾としても、プライドがある。
涼香の借金を肩代わりしてやりたいという思いもあるが、それはサブだ。
カード・キーを賭けたゲームは、量的に計れるものではない。質が違う。
既にカード・キーを1つ貰っているのに、更に貰い受ける約束など、したくない。

「わ・・・わかりました。でも、お金の為にカード・キーを渡すなんて、思わないでくださいね?」
「ああ、それは当然だ。金が欲しいなら、もっと他に・・・ううん、いや、期待してるぜ。」

危うく下品な冗談を口にするところだった。
すんでのところで言わずに済んだが、心の中では冷汗だらけだ。

(女心のー、わからない人だなー。でも、決闘魂はー、わかりすぎるほどなんだねー。)

現は苦笑いしたが、涼香が嬉しそうなので良しとした。



◆ ◆ ◆



●Gカード
難易度:★
ディーラー:明るい顔の猫(オーダー・メニー)

●ワン・デュエル
難易度:★★
ディーラー:剣呑な胡蝶(双夢現)

●EXデュエル
難易度:★★★
ディーラー:死を運ぶ鳥(浜百合氷澄)

●Qカード
難易度:★★★
ディーラー:死を運ぶ鳥(浜百合氷澄)

◎Cデュエル
難易度:★★★★
ディーラー:無貌の蜩(???)

◎RARデュエル
難易度:★★★★
ディーラー:柔和な賢者(???)

◎KTデュエル
難易度:★★★★
ディーラー:亡霊船長(ギャシュリー・クラム)



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佐久間闇子と奇妙な世界
2015/07/31 00:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「はまゆり・ひすみか。前に聞いたことがあることを思い出した」
火剣「氷澄。とびきりにイイ女だ」
コング「熱いシャワーか。ということはスッポンポン!」
ゴリーレッド「それしかないのか」
コング「一人暮らしでもバスタオルを巻くか。究極のチラリズム!」
火剣「一糸纏わぬ姿で眠っていたのか」
コング「夜這いされたらアウトだった。ぐふふふ」
火剣「黒い下着はアダルトだ」
コング「高温ドライヤーで責めたい。アチチチチチ!」
ゴリーレッド「お、こんなところにドライヤーが」
コング「待て。男にやっても面白くともなんともない」
火剣「見られることがないのに下着にこだわる。大事だ」
コング「美女はいつ素っ裸にされるかわからないからな」
ゴリーレッド「そういうことではない」
火剣「マサキはモテるな」
コング「挑発的な服装を楽しむリスキーガールの中にも処女がいる。これは重要な情報を入手した」
火剣「きちんと節度を守り手順を踏む?」
コング「そうすれば犯してもいいのか?」
ゴリーレッド「熱風!」
コング「があああ!」
火剣「神邪はやはりドラえもんの『ムシスカン』を飲まされたんだ」
コング「マサキは『ニクメナイン』を飲んでるな」
火剣「強く逞しい男に屈服したいという願望? 本質はMか」
ゴリーレッド「涼香と氷澄」
火剣「モテる男は女心がわからなくてもモテるか」
コング「世の中そんなもんよ。界隈は神邪の応援団だ」
コング
2015/05/30 15:47
>コングさん
どういうわけか読者サービス回になっています。
どちらかというと男性陣を書きたいのですが、女性も書いていて楽しいです。(書きやすいのも女キャラの方)
相変わらず嫌われている神邪と、モテるマサキですが、このあたりも神邪のモノローグと関わっているかも・・・?

八武「やはり神邪くんは女の肉体でいるべきなのでは・・・。」
山田「大真面目に何を言ってるんだ。」
佐久間「そう単純な話でもないんだけどね。」
維澄「マサキに嫌われることはないと思うけど、今までと同じ関係ではいられないか。」
八武「ふむ、まあ今は氷澄だ。暖房を効かせたギャシュリーに、盛大な拍手を!」
山田「送らない。」
佐久間「これは氷澄の気持ちが昂ぶっているせいもあるが。」
八武「マサキと熱い夜を過ごすことを想像して、エッチな気分になってしまっているんだね? 凄くイイよ!」
佐久間「淫乱処女と言えば、栞は下着どんなの穿いてんだ?」
山田「セクハラ断罪チョップ!」
佐久間「ぐはっ・・」
維澄「下着はノーコメントとして、節度や手順が大事だというのはわかる。しかし神邪は節度ある方だと思うけどね・・。」
山田「涼香からも微妙に嫌われているのが、何とも悲しい。」
佐久間「親友がモテることは嬉しくても、親友を好きな女が自分を嫌うから、憎悪や嫉妬の混じったような感情が芽生えてくる。」
山田「難しいな。嫌いなものを好きになれとも言えないし・・。」
佐久間「だが、だからこそ応援してくれる味方もいる。」
アッキー
2015/05/30 20:52

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