佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘倶楽部PX   インターローグ 逆錐創世

<<   作成日時 : 2015/09/26 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



少年は苦い顔をしていた。

女と間違われそうな中性的な顔は、造形だけは整っているが、それが今は歪んでいる。
数日前に、闇坂琴美と連絡が取れなくなったときから、この事態は必然だと認識していたが、それでも。


「久しぶり、神邪くん。お母さんですよ〜。」

ひらひらと両手を振って、少女の形をした恐怖は、竜堂神邪とゴーストフェイスの前に現れた。
見た目は10代半ばの美少女。ポニーテールを結んだニンフェットは、設定年齢より豊かな胸を、清楚な白いキャミソールに包んでいる。風で揺れるスカートの隙間から見えるショーツも、純白だ。

「まさか君が、キューブの総帥とは! お母さんは驚いてるぜ。」
「・・・会うたびにキャラが変わりますね、あんたは。」

神邪は眉を顰めながら、一方で傍らのフードに目で注意した。出るな、と。
だが、フードの人物、ゴーストフェイスは、ずずいと前に出る。

「12,3歳の少女が母というのは、バツグンにシュールな光景ですね。わたしはキューブ“二の面”ゴーストフェイス。」

か細く不気味な声で、ゴーストフェイスは名乗り、そしてデュエルディスクを展開する。

「よせっ、ゴースト!」

だが、ゴーストは神邪の言うことをきかない。そのままデュエルを始めてしまう。
どいつもこいつも自分に従わない、キューブの実態を思い浮かべ、まったく自分は人望が無いものだと思う。


「闇坂琴美に続いて、ゴーストフェイスなあ。まあいいか・・・お母さんのデュエルを久々に見せてあげよう。」



- - - - - -



1分後。

「あ・・・・ぐっ・・・・・・・・が・・・・・ま・・・・・・・・」
「ゴースト! だからあれほどしつこく言ったのに!」

敗北して倒れるゴーストフェイスを、神邪は抱きとめた。
しつこくは言ってないが、神邪が制止するとは、よっぽどのことだ。その忠告を無視した報いだった。

「まったく、君が母さんに勝てるわけないじゃないか! 6年前に、君自身が言ったことだろう。母さんが出てきたら、相手は僕に任せるって約束だ。僕を除いて、“キューブ”で母さんに勝てる者はない。忘れたのかい?」
「バツグンにしつこい! だったら神邪が戦ってくださいよ!」
「そうなるな・・・。どうせ大魔王からは逃げられないし・・・。」

切り札の“神炎”が、ある大魔王の必殺技(の1つ)に似ているので、思わず口を突いて出たのだが、実際デュエルで、それを使うまでもなかった。

「アハハハハ! 大魔王と呼ばれたことは今まで無かったなァ! お母さんは新鮮な気持ちになれたよ。」
「僕は色々と絶望的な気分です。ゴーストの能力が全て裏目に出るとか、ありえない。何それ。」
「なァにそれって、神邪の絶対能力なら読めるだろう? 私の“逆錐創世”(メティスカロフ)は、任意反転の能力だ。」
「だからですよ。あんた、とんでもない切札ァ隠してたね。レプス星人も真っ青ですよ。」


より強く、相手より強く。
それは戦いにおける必然だ。

限界を超えて強くなる。限界など無い。果てしなく強く、強く。
どこまでも強く。際限なく強く。
あるいは、弱者が知恵を絞って、強者に勝つ。
強運でも、奇跡でも、ご都合主義でも、何でも使って勝つ。勝つ。

しかし、一見すると何でもアリに思える、こうした進化・成長は、同時に避けられない限界をも作り出している。
すなわち、これらは、「俺のほうが強い」「私が勝つ」ということでしかない。それが“限界”なのだ。

反転させられれば、「俺の方が強い」は「俺の方が弱い」になる。「私が勝つ」は「私が負ける」になる。
覚醒すれば弱くなる。最強の矛は最弱の糸になる。最強の盾は紙細工ですらない。
無効化すらも、それ自体を反転させられてしまう。
しかも、反転は任意である為に、弱ければ弱いままだし、負けるなら勝てない。
無効化できないなら、そのまま無効化できないままだ。

具体的にデュエルモンスターズで考えれば、「ダメージ」は「回復」になり、攻撃力や守備力はマイナスになる。
レベルもランクもスケールも、ありとあらゆるものが反転できる。

当然ながら、能力に関しても同じことだ。レベルプラスは、マイナスへ。マイナスはプラスへ移行可能。
ゴーストフェイスはレベルマイナス“存在の否定”を持っているが、それもただのプラスにされてしまう。
そうでなくても、マイナスと称しながら、極めて有用性の高い能力ゆえに、反転させられれば言わずもがなだ。


「神邪ァ、この程度の能力に恐れをなしているようでは、絶対にカンサーは倒せないな。わかってるとは思うが、お前の絶対能力“シフトワン”は、“出来る”と“出来ない”が逆の関係になってない、数少ない能力なんだぜ? 言い換えれば、私の固有能力“メティスカロフ”に対抗できる、数少ない能力とも言える。」

「・・・まァ、攻略法はともかく、対抗策なら誰でも思いつけますよ。対等であろうとすること。相手を決して見下さず、だけど決して卑屈にならないこと。僕にとっては簡単なことです。」

「だろうな。お前は長らく自覚してなかったが、その点においては人類最高峰だ。親の欲目かもしれんがね。」

デュエルディスクを撫でながら、竜堂眸は笑う。
彼女の周りだけ、新しい風が吹いているようだ。

「さァ、しっかりと意識を集中するんだ。お母さんのデュエルは荒っぽいからね。」



- - - - - -



30分後。


竜堂神邪:LP1、手札0
場:
場:

竜堂眸:LP0、手札0
場:コード13 Detah Attribute (攻∞)
場:




「あ・・・・・・あァ・・・・・っ・・・・・・・・」

少年は脂汗を滲ませて、ぜいぜいと息を切らしながら膝を折っていた。
ただの肉体的な疲弊ではない。精神、いや、魂がオーバーヒートしている。

それを見ながら少女は、悲しそうな顔で石ころを蹴っていた。

「悪くない・・・・・・が、甘いな。」

少女の形をした恐怖は、複雑な表情で無理やり微笑んだ。

「それが神邪、お前の致命的な弱点その1だ。単純なスペックなら、お前が、私ごときに勝てないはずはない。」

「・・・・・・・。」

「お前は、自分に対する敵意や嫌悪、侮蔑や嘲笑、無知無理解、差別、迫害・・・そういったものに対しては、言葉で表現するのが馬鹿らしいほど強い。勝利は前提で、いかにして傷つかずに勝つかしか頭に無い。勝ったと感じる基準が果てしなく高いだけで、はっきり言って次元が違うよ。この私と比べてもな。」

だが、と言って、少女は残念そうに瞼を半分閉じる。

「その反面、お前は、自分に好意を寄せている者に対して、悲しいほど弱い。好意に見せかけた見下しに対しては容赦ないが、本物の好意に対しては、果てしなく脆弱だ。他者から嫌われ、嫌われ続け、嫌われ過ぎて、それゆえに強いが、それゆえに弱い。例えば、そうだな・・・大河マサキ、だったか? お前の親友の名前。」

その名前を聞いて、神邪の体がピクッと動く。

「そいつとデュエルで殺し合う羽目になったら、勝てるのか?」

少女は薄気味悪い顔で笑っていた。
我が子が、親友と殺し合うことを想像して、愉しんでいるようだった。

「お母さんは過保護だから、可愛い息子の為に、大河くんに会いに行ってみようかな。」


そのとき、神邪が立った。


「マサキに手を出したら、許さないぞ!」


いつの間にかデュエルは終わっていた。
表示を見れば、“DRAW”・・・引き分け。
引き分けである以上、反転させても引き分けにしかならない。

「いやいや、冗談だ。」

少女はニタリと笑って、デュエルディスクを畳む。

「冗談・・・?」

「あァ、お前は既に私を超えているんだから、保護など必要あるまい。大河マサキに会うのは、別件・・・いや、お前の方が別件で、こっちが本件だが。」

「・・・っ!」

神邪は一瞬で察した。
数日前に闇坂琴美が消えたのは、間違いない。この女が。

そして、“クリムゾン・ドラグーン”がレベル5能力者を狩っているという噂と。
親友がレベル5能力者である事実を合わせれば。

すぐに結論は絞られる。

「―――っ」

瞬間、神邪は後方へ吹っ飛び、ビルの壁に激突した。

「神邪さん!?」

ゴーストフェイスには、何が起きたか見えなかった。
まるで時間が止まっていたかのように、結果だけが出現した。

「あー・・・リアルファイトでも同じことなんだよなァ。スペックで考えれば、私ごときに負ける世界じゃないんだが。」

汗ひとつかいてない。

「およそ誰にだって勝てるのに、好きな奴には勝てない。神に近しい力を持ちながら、どこまでも普通の人間でしかないね、お前・・・。」

「か・・・・はっ・・・・・」

血を吐きながら、よろよろと神邪は歩いてくる。

「結構、まだ戦意は喪失してないようで何よりだ。・・・あハん、喪失と言えばさァ、この体。13歳になってるってことは、処女に戻ってるってことか。」

いいことを思いついたと言わんばかりに、少女の双眸は三日月に歪んだ。

「お前の親友、大河マサキ・・・なかなかイイ男だよな。3番目の夫を思い出すぜ。」

「・・・っ、あんた・・・何を・・・・」

「察してるくせに言わせたいのか? それとも拍手で送り出してくれるの?」

「―――っ!」

神邪の姿が消えた。
だが、少女は微動だにせず、ズタボロになった神邪が横たわる。
次元の違う領域で、激しい戦闘を繰り広げてきたのだろう。

「あハん、他者の魔力を際限なく吸収できる神邪くんも、なかなか大したものだけど、魔力そのものをマイナスに反転できる私に、魔法バトルは通じないぜ?」

笑いながら少女は、神邪に跳び蹴り。エルボードロップからの大爆発。
神邪の左腕が吹っ飛び、デュエルディスクが転がった。

「・・・く・・・・・・」
「まァ、健闘を称えて、大河への誘惑は無しにしておこう。子供に手を出す趣味も無いしな。」
「説得力の欠片も無ぇよ! あんた俺にしたこと忘れたわけ!?」
「あハん、まだツッコミ入れる元気が残ってるの?」

少女はテレポートでもしたように、神邪の側に現れる。

「・・・っ」
「左腕、繋げといたよ。」

いつの間に。
しかし時間停止が使えるなら、容易いことだろう。

「母さ・・」
「安心しろ。5人目の夫が出来るとかいうオチは無ぇ。シルベスターとも、そういう関係じゃないしな。」

この人には、どれだけの顔があるのだろうか。
今の顔は、今までのどの顔とも違う。

「・・・母さんの場合、その美貌が既に誘惑だよ。マサキは女好きだし、あんたが現れたら、咄嗟にスリーサイズを目測する光景が目に浮かぶなァ。」



◆ ◆ ◆



「結局、ヒトミちゃんは、シンヤ君と遊びたかったの?」

制服姿の月島カノンが、ぺたんと座って上目遣いで尋ねる。
それを足蹴にしながら、少女は目を閉じる。

「圧倒的なワンサイドゲームも退屈だろう。今のままでは、神邪は100パーセント、カンサーに勝てない。」
「そんなことイっちゃって・・・・・あン、そこ・・・イイ・・・・・くだらない馬鹿どもに磨り減らされた神経を、ちょっと過激な親子のスキンシップと会話で、癒してあげ・・・・んんっ、ヒトミちゃんの足、きもちいいよぉ・・・・・たんじゃない?」
「お前は気持ち悪いな。」
「みゃっ、その冷たい目つき、ゾクゾクしちゃう♪ ゾクゾクしちゃうの♪ ゾークだけに!」
「まだ余裕があるのか?」
「みゃああん! お豆さんグリグリしちゃ嫌あ! 感じすぎて・・・・・・え、えと、ほらあ、私もマゾだからぁ、シンヤ君の気持ちはわかるかも・・・あ、摘んじゃダメ・・・イく・・・・・マゾが欲しいのは理想の相手からの責め苦であって、ただ身勝手な感情をぶつけられても白けるっていうか・・・・・あ、も・・ダメ・・・イって、イイ・・・?」
「そういえば、何で私が貴様のSMゴッコに付き合わなければならないんだ?」
「みゅ!? ヒトミちゃんの方から足を出してきたのに、寸止めなんて酷い! 意地悪!」
「私に百合の指向は無いのに、こいつといい、風花といい、チェルシーといい・・・何なんだ。」
「みゅう、ヒトミちゃんはエロかっこいいから、同性に好かれるのは仕方ないことなんだよ。」
「足を舐めるな!」
「みゃふん♪」

顔面に蹴りが入ったカノンは、幸せそうな顔で倒れた。
それを少女は、げんなりした顔で見て、溜息をつきながら首を振った。




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「母を『あんた』と呼んでいる。複雑な関係なのか」
コング「大魔王か。ゴーストフェイスも相手にならない」
ゴリーレッド「相手になるのは月島カノンか」
火剣「相手にしたくないと言うべきか」
ゴリーレッド「限界というのは自分がつくるもので、本来人間に限界はない」
コング「いくら女はハートといっても限界はある」
火剣「それは許容範囲」
ゴリーレッド「竜堂眸の強さはちょっと次元が違う」
火剣「『SPEC』で手を左から右に移動しただけであのにのまえを消滅させたセカイ。しかしセカイが『死ね』と手をかざした瞬間、トウマは『ダメモト!』と叫び巨大な鏡を出したらセカイのほうが消えた。どんな底知れない強者も絶対ではない」
コング「マサキの名前が出た時の神邪の真剣さは凄かった」
火剣「マサキが本件?」
ゴリーレッド「マサキに手を出したら親子断絶だから手を出さないと思うが」
コング「マサキは結構な美女・美少女好き。そこが弱点であり長所。にひひひ」
火剣「月島カノンみたいに最強でMだと、どんな危険なピンチも味わえるから人生を謳歌しているだろう」
コング「全国のM子が羨ましがる、羨ましガール」
ゴリーレッド「ポッキーといい勝負」
火剣「70年代、ブッチャーの全盛期は『黒い恐怖』と呼ばれて恐れられていたことを思い出した。竜堂眸のニックネームも『恐怖』か」


火剣獣三郎
2015/09/26 10:51
>火剣さん
他の子供たちと違って、神邪との関係は複雑ですね。最も親しく、最も複雑な親子関係。
そして「SPEC」よろしく超絶バトル・・・OD状態ですが、遊戯王ではよくあることですね。

山田「それでいいのかデュエル小説。」
佐久間「いいに決まってる。」
八武「うーむ。神邪くん、ダンジョンでチェルシーと対峙したときは、まるで竜堂眸をレイプしたような口ぶりだったが、実際は逆なのかね?」
佐久間「逆とも言えないかな。」
維澄「真相は八武の中・・。」
佐久間「おい。」
維澄「真相は闇子の中?」
佐久間「剣呑な目で私を見るな。」
維澄「佐久間も同性に好かれるタイプだね。人類として当然のことだと思います。」
佐久間「黙れ。」
山田「しかし恐ろしい強さだ。まさに次元が違うところで戦っていたわけか・・・。」
八武「やはり神邪くんの本質は真剣そのもの。」
佐久間「羨ましガールに受けたのは私だけか?」
維澄「まあ、カノンは楽しそうだよね。私も羨ましいかな。」
佐久間「どっちの意味で?」
維澄「両方。」
佐久間「流石は両刀か。」
維澄「だから佐久間が男に変身しても、何の問題も無い。」
佐久間「恐怖が迫ってくる!」
アッキー
2015/09/26 20:31

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