佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘倶楽部PX   第十三話 ライバル再登場! (前編)

<<   作成日時 : 2015/10/27 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



ま、言ってしまえば僕はモリンフェン様の崇拝者だ。
しかし、この出だしも何度言ったのやら。
テンプレートってやつは便利だけど、やりすぎるとマンネリになってしまう。難しい。

そんな僕は、風森無々。ごく普通のデュエリストだ。
デッキの全てに《モリンフェン》様を鎮座ましましあそばせられることの出来る、レベル1能力を持っている。
これが僕を、新たなる光のステージへ誘うことになろうとは、昨日までの僕は夢にも思っていなかった。



◆ ◆ ◆



比呂子ちゃんが行方不明になってから、1ヶ月が過ぎた。

今は10月の末。2学期の中間テストも終わっている。
こんなときでも、勉強に身が入らなくなるなんてことはなく、むしろ集中できてしまった。
たくさんのことを経験して、僕たちは大人になったのかな。
あの決闘都市での経験を思い返すと、学校の勉強が楽に感じる。愛しいとさえ思えるんだ。

竜堂眸から得た知識と、タスクフォースから聞かされた“呪い”の情報。
そこから燈炉子さんが、どのような行動を取るかは明らかだった。
僕は知っていて、言わなかった。比呂子ちゃんにも、燈炉子さんにも、自由でいて欲しい。
正直なところ、タスクフォースによる監視に、僕も苛立っていた。だからスカッとした。

タスクフォースの中でも、束縛に近い監視に対する反対意見はあったようで、僕たちの訴えや、カノン先生のはたらきかけなどによって、帰ってきてもお咎めなしという方向で進んでいる。
受け皿は整っている。あとは彼女が帰ってくるのを待つだけだ。
だけど僕個人としては、待っているだけでは済まない理由がある。

「僕は、燈炉子さんのことが好きなのかな?」

我ながら最低なセリフだ。モリンフェン様に叱られてしまう。

「比呂子ちゃんへの好きも、強くなっているんだけれど。」

またまた最低だ。
幾ら体が同じだからって、2人の女性を同時に愛するなんて、ふしだらな男だ僕は!
比呂子ちゃんと両想いになれた途端に、僕ってヤツは浮気の虫が騒いでしまうというのか?

だいたい、比呂子ちゃんと両想いになれたからといって、燈炉子さんまで僕を好きになってくれなんて、そんなの虫が好すぎる!

あああうううあああ、こんなことを考えている時点で、もう僕は燈炉子さんに参ってしまってるってことじゃないか。
抱きしめたときの感触が、何度もリフレインするんだ。酷死病を克服した途端にこれだよ!
危機で麻痺していた事象が、急速解凍されて電子レンジで3分半! ほっかほかの状態で出されました!

可愛くて芯のある比呂子ちゃんと、凛々しくて荒々しい燈炉子ちゃん。
一粒で二度美味しいとか、うわああああああ消えろ消えろ妄想!
こんな彼女を穢すようなことを考えてはいけない! 鎮まれ僕! お助けくださいモリンフェン様!

でも、比呂子ちゃんとは両想いだから、彼女を想って妄想しちゃうのは・・・構わないですよねっ!

・・・・・・
・・・

・・・・・・・・・よし、モリンフェン様のお許しが出た! 正直もう限界なんだよね!


「みゅ? 何が限界バトルなの?」

「わひゃあああああカノン先生いいいいいい!!?」

僕は早速、竜堂眸の知識で魔術を使って、窓ガラスを破って校庭へダイブしていた。
ぶっつけ本番で無理が祟ったのか、あちこち骨折した。



- - - - - -



「・・・いや、風森。何やってんだよ。」
「うん、まあ、いつもの風森だな。」

次郎くんと敦くんが呆れていた。
僕はカノン先生の治療を受けながら、部室で正座している。反省の意味を込めているのだ。
ちなみに魔術は発動してなかったらしい。

「はう、だけど何で急に窓から跳び下りたの?」
「うぐっ・・・そ、それには、あまり深くない事情が・・・」

「風森が跳び下り自殺するのは何度目だったっけ?」
「え、まさかクラスでいじめに遭ってるとか!?」

「あ、いえ、そういうことではなく。そもそも今回のは逃走した結果、たまたま行き先がグラウンドだったんです。」

先輩たちに心配かけて申し訳ない。
モリンフェン様に対する慙愧の念から、自殺未遂を起こしたことのある僕だが、もう命を粗末にはしない。
ありふれた存在どころか、そもそも存在しなかった僕だけれども、かけがえのない今があるから。

考えてみれば、副人格が分離したからといって自分を貶めるのは、同じく副人格である燈炉子さんを貶めることにもなってしまう。
だから僕は、自分を大事にしようと思う。さっきのダイブは何かの間違いだ。

「みゅう、どうやら性欲が有り余ってるようだね。」
「なななな何を言ってるんですかカノン先生!?」
「みゅっふっふ、思春期の男の子が奇行に走るときは、性欲が有り余っていると相場が決まっているのさ♪」

くっ、恐るべき洞察力だ。モリンフェン様の如き眼力だ。

「カノン先生・・・あなたは何者なんですか?」
「みゅっ? このタイミングで訊く?」

「そいつはオレ様も知りたかったな。」

栗間先輩が乗っかってきた。
カノン先生に覆い被さるように、壁に手をつく。

「みゅうう、女の子には秘密がいっぱいあるんだよ。だから秘密♪」
「女の子? てめえ何歳だよ。」
「あ、いーけないんだ、そんなこと言ったらダメなんだ。わーるい子♪わーるい子♪」
「そうよミヤコ、女の子に年齢尋ねるなんて失礼よ。」
「リッカてめー、どっちの味方だよ!」
「あたしは女の子だから、女の子の味方に決まってるじゃない。」
「は、はう、リスティーも味方。」
「えーと、ぼくは・・・」
「これだから女ってやつは・・・。」

しかしカノン先生って、本当に何歳なんだろう。見た目は僕らと同じくらいか、少し年下に見えるくらいだ。
だけど4人も娘がいて、長姉は30代半ばって話だ。どう頑張っても40歳は過ぎている。
いや、それどころじゃない。断片的に受け継いだ、竜堂眸の記憶。43年前の、彼女が赤ん坊だった頃。
そのとき既に、カノン先生は今と同じ姿をしていた。魔術で若さを保っているんだろうか?

「みゃはは、安心していいよ。私は誰かを生贄にしなくても若さを保てるから。」
「そうでしたか。・・・どうやってですか?」
「みゅう、秘密。」

謎は深まるばかりだ。
竜堂眸の記憶があるせいか、どうしても不気味さが拭えない。


『バケモノめ。』


この言葉を“僕”は、いつどこで発したのだろう―――いや、これは“竜堂眸”の言葉だったか?
竜堂眸の“逆錐創世”(メティスカロフ)、そして3つの副人格それぞれが持つ能力。
“天空召雷咆”(スライファー)、“生贄火焔”(インパクト)、“不死鳥”(フェニックス)。
それらを昇華した、“冥界死点”(フォーシィス)、“無限神腕”(サクリファイア)、“神炎”(ゴッドフェニックス)。
1つだけでも反則レベルな能力を4つ所持する、振り切った限界を更に3回も振り切ったような決闘者。

その彼女をして、なおバケモノと言わせしめるカノン先生とは、いったい―――・・・


「みゃあ、言い忘れてたよ。大会の案内を持ってきたんだけど。」

我に返ると、カノン先生がチラシを机に置いていた。

「どうしたんですかカノン先生、まるで顧問みたいじゃないですか。」
「みゅうう、まるでじゃなくて顧問だよ! 忘れてるかもしれないけど、私は童実野高校デュエルモンスターズ倶楽部の、れっきとした顧問なんだからね?」

「はう、そうだったの?」
「時々やって来る知らない子かと思ってたな。」
「俺も。」
「あたしも忘れてたわ。」
「オレ様もだ。」

「みゅう〜、 みんな本気で言ってないよね? 冗談だよね? ね?」

からかいタイムは終了して、僕たちはチラシに目を移した。


「全世界モリンフェン使いデュエル大会!?」


書かれてあったのは、驚愕の事実だった。
主催者は、「絶対唯一モリンフェン教“総本部”」―――!!

「ついに、動き出したのか・・・!」

絶対唯一モリンフェン教は、キリスト教、イスラム教、仏教と並ぶ、世界四大宗教の一つだ。
その“総本部”は、M5(モリンファイブ)と呼ばれる人たちによって運営されている。

“冥府皇帝”マグナム・モリン!
“調律仙女”ミクロ・モリン!
“荒廃君臨”ムーア・モリン!
“退廃死想”メメント・モリン!
“無尽神法”モリン・モリン!

「となれば、僕が参加しないわけにはいきませんね・・・。」

参加資格は、メインデッキに《モリンフェン》様を3枚鎮座ましましあそばせていること。

「面白そうじゃねえか。俺も出てみるか。」
「ぼくも出てみたいな。」

「あたしも出るわよ。ミヤコはどうするの?」
「当然出るに決まってんだろ。《ペルソナ》も、闇属性・悪魔族なんぜ?」

「は、はう、リスティーも出ていいのかな?」

「みゃはは、じゃあ全員参加で決定だね。地区予選は11月最初の日曜日だよ。」



「・・・・・・。」

和気藹々としながら、僕は“彼女”のことを考えていた。
闇坂紐里。僕を負かしたデュエリスト。
モリンフェン様を愛しているのに、デッキに《モリンフェン》様を鎮座ましましあそばされることが出来ない、非業の宿命を背負った女の子。

このイベント自体が、紐里さんを傷つけているかもしれないと思うと、やるせない。



◆ ◆ ◆



無々が浮かない気分でいた頃、まさに闇坂紐里は泣いていた。
これだから、救いなんて無い。救われたと思っても、現実の前に打ちのめされる。
魚眼レンズのおかげで、片方を拭うだけでいいことだけが、些細な救いだ。

「諦めたと思ったのに、わたひも大概しつこいなあ。しつこい女は嫌われちゃうよー。自分に忠告。」

冗談ぶってみても、後から後から涙は流れてくる。
こんなに未練を残してる。諦めていたところへ注がれた情熱が、今は涙になって流れていく。

「無々くんなんて嫌いだー、あははははは!!」

枕に突っ伏して、紐里は声を殺して泣いた。
そのまま眠ってしまった。



- - - - - -



目を開けたとき、そこには金髪の少女が座っていた。

「つ、月島さん!?」
「みゃはは、あんまり久々でもないけど、おひさ〜。今日はヒモリちゃんに、うまい話を持ってきたんだ。」
「あははー、うまい話なんて世の中に転がってるはずないさー。奇跡は転がっていても拾えない! 拾えない!」

紐里は枕を叩きつけて、うなだれた。
彼女のデュエリスト能力は、無々と同じで、デッキ構築に干渉する。


“燃燐付炎”(モリンフェン) レベル1能力(所有者・闇坂紐里)
自分はデッキに「モリンフェン」を入れることは出来ない。
デュエル中に1度、「モリンフェン」が召喚・特殊召喚・リバースしたとき、相手全員に4000ダメージを与える。
この効果で与えたダメージ分だけ、自分のライフを回復する。




「みゅふ、奇跡もデュエルもあるんだよ?」

カノンは渦を巻いた目つきで、左手を翳した。

「え―――?」



“燃燐付炎”(モリンフェン) レベル1能力(所有者・闇坂紐里)
デュエル中に1度、「モリンフェン」が召喚・特殊召喚・リバースしたとき、相手全員に4000ダメージを与える。
この効果で与えたダメージ分だけ、自分のライフを回復する。




「これは―――」

「悪魔の右手は、神の左手と対を成す。神の右手とは、チミンとウラシルの関係かな。」

「あひひ、月島カノン・・・あなた何者よ・・・ううん、何者でもいい。わたひは、わたひは―――!!」






つづく

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「ま、言ってしまえば僕は変態だ」
ゴリーレッド「自覚あるのか」
火剣「ライターはよくテンプレートを使うらしいが小説は難しい」
コング「風森無々が普通だったらキャスト全員変人になる」
火剣「ムーは燈炉子のことが好きか」
コング「複数の女を同時に好きになることなんか、それこそ普通だ」
ゴリーレッド「女性の気持ちは一筋であってほしいと」
火剣「おかずにされるのは光栄と思う女は多い。逆に彼氏がほかの女で妄想したら破局もんだろう」
コング「でも彼女は彼氏よりも彼氏の親友とか禁断の妄想のほうが萌えるらしい」
火剣「抱き締めた感触か、わかるな。セクハラ大魔王でない限り、恋人でもない女に触れることはあまりない。だから何かの拍子で抱き締めたりしたら意識するかもよ」
コング「思春期の奇行の原因は性欲か」
火剣「窓からではなく燈炉子にルパンダイブ」
コング「立夏やリスティーにルパンダイブ」
火剣「住めば都が怒る」
ゴリーレッド「カノンは何歳だ?」
コング「テーガン!」
火剣「紐里はモリンフェン大会に出れるのか?」
ゴリーレッド「出たら面白いが、どうなんだろうか」

火剣獣三郎
2015/10/27 16:13
>火剣さん
決め台詞などもそうですが、繰り返し使うことで効果的なれど、使いすぎると薄れる危険性がありますね。そんなわけで、少しずつ変化を持たせています。
さて、始まりましたモリンフェン大会。能力の関係で出られないはずの紐里でしたが、カノンは救世主か、はたまた悪魔か。

佐久間「ま、言ってしまえば山田は変態だ。」
山田「おい貴様。」
佐久間「無々が普通となると、山田を普通と呼ぶわけにはいかない。そう思わないか。」
山田「せめて変人にしてくれ。」
八武「比呂子と燈炉子、肉体は1つなのだから、2人とも愛せる方が誠実ではないかね?」
維澄「こういうケースだと、どっちが誠実かは難しいね。」
八武「2人とも愛せる方が誠実だ。」
山田「強引に話を持っていくな。」
佐久間「山田のオカズは私一筋であってほしいものだ。」
山田「聞こえない。」
佐久間「あー、そういえば中学以来、山田とハグを交わしたことがないぞー。しまいにゃ剥ぐぞー。」
神邪「これが愛なんですね。」
山田「違う。」
神邪「ヤンデレは良いものですよ、山田さん!」
山田「ひたすら恐い。」
維澄「佐久間の思春期は終わらない。」
佐久間「永遠の14歳だからな。」
山田「カノンの年齢不詳は、佐久間のせいか?」
佐久間「私の年齢不詳は、山田への愛ゆえ。」
山田「闇の力だろ。」
アッキー
2015/10/27 20:20
あけましておめでとうございます。前回、読んでいたところの続きのリンクを開けてみてびっくり、コメントをするのも二ヶ月ぶりの白龍です。
どうにか日常に戻ってこれた無々君ですが、その喜びを一番分かち合いたい人がそばにいない。これでは日常に戻ってきた意味が…。よし、これは無々君がヒロコさんを探して三千里パターンかと思いきや、またしてもカノン先生の差し金で奇妙な大会に参加することに…。
まるでマジカルシェフ少女しずるのノリを思い出しました。今ならWEBで無料で読めます。
http://comic-earthstar.jp/detail/shizuru/

本当にカノン先生が常に暗躍している!この人の目的はちょっと読めない…。九割ぐらいは「楽しいから」で動いている気はするんですが、その先に何か壮大な計画があるようなないような…。最強のモリンフェン使いの称号は誰の手に?
千花白龍
2016/01/01 16:48
>千花白龍さん
あけましておめでとうございます! 「決闘倶楽部PX」最終章、モリンフェン大会編、お楽しみください!
地下都市から戻ってこれたクラブメンバーですが、例の呪いを解く為に燈炉子はアメリカの地下迷宮へ・・・。追いかけていくよりは、比呂子の大事にしたい日常を守ることが努めだと考えました。
そして始まる、ツッコミどころ満載の大会・・・。
マジカルシェフ、早速第1話を読みましたが、これは私好みの話だ・・・! 優ちゃんが良いキャラしてます。出てきた時点で好きになれそうでしたが、いい奴で良かった!

カノン先生は暗躍しまくりです。彼女の目的は「楽しいから」で合ってると思います!
壮大な計画は、進めているかもしれません。カンサー決戦編は今年中に始まる予定です。
アッキー
2016/01/01 22:24

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決闘倶楽部PX   第十三話 ライバル再登場! (前編) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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