佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘倶楽部PX   第六話 終焉のカウントダウン

<<   作成日時 : 2015/10/04 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



皆さん、こんにちは。僕の名前は―――っと、大人の事情で僕の名前は秘密だ。
決して鷹野さんにビビッているわけじゃない。あんな女、恐くなんかない。

さて、今現在どうなっているかというと、僕のデュエルが終わったところだ。
竜堂眸に吸収された2人を助ける為に、僕が鮮やかな理論で勝利を収めようとしていたはずだった。
だけど、あろうことか代々木は、モンスターとの絆という大義名分を振りかざし、大団円を踏みにじったのだ。

チッキショオオオオオ!! 空気読めよ!! ここはお前が負けるところだろ!?
どんだけ僕に勝ちたいんだよ!? 他で勝ってるんだからデュエルくらい僕が強くたって構わないだろ!?
いやいやいや、女の子からの人気だって、負けてないはずだ・・・負けてない・・・。



「オ〜ホッホッホ!! あれだけ大見得を切っておきながら、ざまあないわねパラコン!!」



こ、この忌まわしい声は!

声のした方を振り向くと、そこに黄金に光り輝く鷹野さんがいた。
しかも男女の制服を持っている。どういうことなのか意味がわからない。
他のみんなも唖然とした顔で沈黙して・・・いや、安藤さんだけが駆け寄っている。

「鷹野さん! どうしてここへ!?」
「稲守さんから連絡を受けて、飛んできたのよ。」

さっき稲守さんが席を外していたのは、そういうことか。

「安藤さん、あなたの恋人を助けに来たわ。」
「そ、そんな、まだ恋人とかじゃ・・・」

安藤さんは頬を染めていた。恋人って、僕のことか?
そう考えていると、何故か鷹野さんが面白くなさそうな顔で、つかつかと歩いてきた。

「パラコン・・・あなたって・・・」
「え、何?」

急に色っぽい声で、鷹野さんは僕の手を取った。
いや待て、騙されるな僕! これは罠だ! 何度も食らったから知っている!
だけど鷹野さんの手から伝わってくる感覚は、妙に優しげだ。まずい、気をしっかり持つんだ!



「私がいないと、本当に駄目ね・・・。」



「コンチキショオオオ!!」

やっぱりな! そう来ると思ってた! チキショオ!
何度も何度も無能呼ばわりしやがって! この女、いつかギャフンと言わせてやる!
ノートの余りに似顔絵描いて、全身に悪口書きまくってやる!

「無能なパラコンボーイ、略してムノーイに代わって、私が2人を助け出してあげるわ。」
「誰がムノーイだ、コンチキショオ!! こんなことなら素直に《ヴィクトリー・ドラゴン》使っとくんだった!」

相手が代々木とわかった瞬間に、相手モンスター奪ってマッチキルモンスター召喚したら、更にカッコイイと思ってしまった僕を、いったい誰が責められようか。


「ちなみに私が黄金に光り輝いているのは、《悠久の黄金都市グランポリス》を手に入れた副作用よ。しばらくすれば収まるわ。」

どうでもいい情報を披露しながら、鷹野さんは竜堂眸に向かって歩いていった。大丈夫かな。
あ、いや、別に鷹野さんのことが心配ってわけじゃなくて、2人がリアルファイトなんかしたら、ここら一帯が焦土と化すような気がするからね。巻き込まれたら死ぬ。

「竜堂さん、あなたが風森さんとリスティーさんを吸収しているのは、デュエルに勝利して得た権利よね?」
「なるほど、《うずまき》の第67効果を使うつもりか。」
「その通りよ。《うずまき》第67の効果は、“勝利した事実を無かったことにする”。」

ええええええええええ!!? 知らねええええ!!
後付け設定にも程があるだろ作者!!

「後付け設定なんかじゃないわパラコン。これは“あっぷるぱい”による、れっきとした公式見解よ。嘘だと思うなら遊戯王原作HPの掲示板を・・・あ、前の掲示板はサービスが終了したんだったわね。」

「今の私は43歳だから、“逆錐創世”を失っている。《うずまき》の効果を反転させることは出来ない。吸収した2人を開放すれば、10代に戻り、《うずまき》の効果を反転させることも可能になるが、ここで無限ループが発生する。」

「そう、無限ループは仕掛けた側が解除しなければならない。2人を開放してもらうわ。」

「いいだろう。・・・今にして思えば、“66”プラス1人という意味だったわけか。あの変態も味な名付け方をする。」


いやいやいや、こんな簡単に開放されちゃっていいの!?
ねえ、僕の努力とか頑張りって、いったい何だったの!?


かくかくしかじか (魔法カード)
話を短縮し、ストーリーを高速回転させる。



すると鷹野さんが、いつの間にか僕の背後に回り、手を重ねてきた。

「パラコン・・・あなた、本当に役立たずね。」
「うるせえええええ!!」
「あなたのデュエルって、いったい何の意味があったのかしら。」
「チキショオオオオオ!!」

この女、傷口に塩を塗りこみやがって!
見てろ・・・いつか必ず逆襲してやるからな!



◆ ◆ ◆



竜堂眸の体から、黒い靄みたいなものが立ち昇り、地上に集まってきた。
それは人間の形になり、風森無々とリスティー・N・ダークになった。


ただし、全裸で。


「はうううう!!? な、何で全裸なのぉ!?」
「どういうことですか竜堂さん!?」

リスティーと無々は、慌てて蹲り、体を丸める。
比呂子は顔を真っ赤にして、両手で顔を覆いながら隙間から無々を見ていた。

「疑問に思ったことはないか?」

少女の形をした恐怖は、長袖にハイネック、ロングスカート、厚手の帽子まで被り、黒ずくめで問いかけた。
具体的に言うと、「セラフィック・フェザー」8巻133ページのような服装だ。
やたら暑そうな格好だが、平然とした顔をしている。(ちなみに今は6月だ)

「いや、その前に。お前たちは『ドラゴンボール』という話を知っているか?」

見城薫でなくても、この場にいる人間の殆どが知っていた。
その反応を見て、少女は次の言葉を吐き出す。

「セルが18号を吐き出したとき、どうして全裸ではないのか、一度も疑問に思わなかったのか?」

彼女の言う「ドラゴンボール」とは、「西遊記」を元にした作品である。
当然ながら、妖怪じみた敵が出てきて、その中に“セル”という人造人間が登場する。
セルは、同じ科学者によって造られた、17号、18号の2人を吸収して、パワーアップした。
しかし、腹パンや頭部への打撃などを食らった衝撃で、18号を吐き出してパワーダウン。
それから色々あって、セルは死んだ。主人公の息子に、殺されたのだ。

問題は、18号を吐き出したシーンである。
セルの吸収とは、体組織が一体化するものであり、当然ながら服は脱げているはずだ。
吐き出したときに衣服が着用されていることから、セルが極めて紳士であることの証明となっている。
パワーダウンが避けられないと判断して、せめて衣服を着せたのだと思われる。

だが、竜堂眸は紳士でもなければ淑女でもない。かなり最低な性格だ。
ゆえに無々とリスティーは、すっぱだか。衆人環視の前で、すっぱだかである。
急いで鷹野麗子が金色の光で2人の姿を覆い隠し、服を渡した。
この事態を予想して、あらかじめ対策を整えている鷹野麗子は、淑女と言って差し支えないだろう。



「ムー君・・・ムー君!!」
「ひ、比呂子ちゃん・・・」

完全に開放された無々に、比呂子は人目も気にせず、すがりつくように抱きしめた。
無々は頭がクラクラしていた。

「リスティーちゃん!」
「ふええ!?」

リスティーには、敦が駆け寄っていた。
いきなり両手を握られて、リスティーは困惑した。だが、悪い気分ではなかった。



◆ ◆ ◆



東仙高校のメンバーは、約束通り、地上へ帰された。
ただし、この都市における記憶は消されることになった。

大会を不戦勝で進んだとき、ふと、対戦相手とデュエルをした記憶が、デジャビュのように浮かんだ。
それはデジャビュではなく、実際に起きたことだったが、すぐに雲散霧消してしまい、記憶から消えた。
しかし、さっきまで納得できなかった不戦勝に、納得できていた。



殺霧と一寸日は、ここに連れて来られているはずの砂原と、おそらく連れて来られているであろう黒須を、探すことにした。

鷹野とパラコンも、この街でやることがあるからと去っていった。



◆ ◆ ◆



静謐な白い廊下を、黒ずくめの少女が歩いていた。
それを待ち構えていたかのように、中性的な容貌の少年が立っている。

「神邪、丁度いいところに来た。“シフトワン”で私の年齢を43歳に戻してくれ。」

少年は無言で従った。
14歳の少女の肉体が、胴も手足もスラリと伸びて、麗しい大人の姿になる。
実年齢こそ43だが、肌の張りや艶は、10代でも滅多に見られないほどだ。

「どういうことだよ母さん!?」

神邪は両手を広げて、遺憾の意を示した。
竜堂眸は、白いブラウスに黒のスリットスカート。扇情的な格好ではあるが、神邪は納得しない。

「年齢をシフトして、肉体が伸びきったら、服が弾け飛ぶはずじゃないのか?」
「お前は『セラフィック・フェザー』の読みすぎだ。」
「母さんの美しい裸身が見られると思ったのに! 本当に、その選択しか出来なかったのか!? 他に・・・他に方法は無かったのか!? 今からでも遅くはない! 僕らは理想の為には、妥協してはならないんだ!」
「お前は会うたびにキャラが変わるな。」


「それで母さん、これでハッピーエンドなんてことはないよね?」


すぐに真剣な顔になり、神邪は母親を睨む。

安易なハッピーエンドは許さないというセリフにも聞こえる。
そういう意味合いも含んでいるのだろう。


「43歳に戻っても、欠損した生体情報までは戻らんか。・・・まァ、酷死病(こくしびょう)は幾分かマシだな。」

はぐらかしたわけではない。神邪の推測は正しかった。

「お前の考えている通りだ、神邪。今年の1月の時点で、私の寿命は残り半年も無かった。」

酷死病。魂の欠損によって生じる、不可逆の疾病。
肉体の感覚が欠落、味覚や触覚なども消え失せて、最後は全身が石化して死に至る。

竜堂眸は29年前に、魂を4つに分割している。
それゆえに強大なデュエリスト能力を得たが、それゆえに寿命が短くなった。

4つのうち1つは、死に瀕しようとしていた。

「そこで、お節介な変態が、“私”を3つに分割したのさ。空間軸で割ったら欠損だが、時間軸で割ったら、欠損こそ治らないが、それだけ病気の進行は遅くなる。」
「そうか、病状の進行度は分割した年齢に比例するのか。だから母さんは、あの2人から年齢を吸い取ったの?」

10歳ではなく、14歳。
その意味するところは、無々とリスティーから2歳分ずつ年齢を吸い取っているということ。

「心配しなくても、記憶や感情までは吸い取っていない。純粋に数理的、そして肉体的な年齢だけだ。」

およそ三等分。“シフトワン”で43歳にしても、分割とは無関係なので、病状の進行には影響しない。
すなわち、竜堂眸、風森無々、リスティー・N・ダークは、ほぼ同時に死に至る計算だ。

「寿命が3倍になったとはいえ、元々が枯渇した命だ。来年までは無理だろう。私の予想だと、今年の9月頃か。」

達観したような表情で、強大なる竜王は静かに笑う。

「母さんは、優しいんだね。」

神邪は思ったことを正直に口に出した。

「あの2人が、生き延びる為に努力できる時間を、少しでも多く与えたわけだ。」

しかし竜堂眸は笑みを消して、目を閉じて溜息を吐いた。

「・・・嫌になるなァ。」
「すいません。」

神邪は、すぐに自分の失態に気付いた。

「神邪、お前と私は同じ人間だ。」
「そうですね。周囲からの評価が違うだけです。」

否定的に捉えられるか、肯定的に捉えられるか。
つまるところ、神邪と眸の違いは、それだけだ。

「偽悪趣味は無いからな。“無々とリスティーの為にやったことだ”。これでいいか?」
「同じことを僕がやれば、他人の運命を弄んで楽しむ、悪趣味な奴ってことになるんでしょうね。」
「お前のおかげで、私に向けられている好意の真贋が、よくわかる。よく視える眼鏡だ。」
「視えすぎて苦痛だと思ったことは?」

その問いかけに、竜堂眸はクスッと笑って肩を竦めた。
今更すぎる質問をしたことに、神邪は失敗だったと思いながら失笑した。

「あの2人には、もう話してあるんですか?」
「話す必要もない。私の知識の一部を共有してあるから、既に知っていることだ。」
「知識を共有させ、真実を信じさせる為に、吸収したんですか?」
「また善意の解釈かよ。否定はしないがな。」



◆ ◆ ◆



ま、言ってしまえば僕はデュエリストだ。

自分の寿命が、残り数ヶ月と知っても、あまり驚かない。
自分が創られた存在で、高校に入るまでの人生が偽りだったと知ったときに比べれば、驚くことじゃない。
まだ人生が半分も残っているとも言える。

だけど、だけど、諦めたくないよ。
その先のことを、諦めたくないよ。
僕に縋りついて泣いている人と、未来を歩いていきたいよ。

モリンフェン様!
どうか僕に力を!

勇気だけじゃ駄目なんだ。覚悟だけじゃ駄目なんだ。
死を受け入れる勇気も覚悟も、諦めを言い換えただけに過ぎない。
傲慢だっていい。生きてやる。生きてやる!




「生きたいか?」




僕の前に、その人は現れた。




そして僕は、ある決意をし、みんなに酷死病のことを話すことにした。
こんなとき、かける言葉が見つからないで、痛ましい顔をしているのが、あまり見たくない。
僕のことを思ってくれて嬉しいけど、僕のせいで悲しい思いをさせてると思うと、嫌なんだ。
だから僕は、笑うんだ。

その人が用意した漆黒のDホイールに、僕は乗り込んだ。






   第六話 終焉のカウントダウン   了

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「大人情事で名前は言えない?」
ゴリーレッド「事情だ」
火剣「パラコンボーイしかいない」
コング「鷹野麗子登場」
火剣「ムノーイに格下げか」
コング「比呂子は恋人と言われて照れてる場合ではない」
ゴリーレッド「勝っても2人を救える方法とは鷹野麗子のことだったのか」
火剣「確かに竜堂眸と鷹野麗子のバトルはNGだな」
コング「おっと全裸のリスティー! 偉い。これが究極のリアリティ。映画やドラマも見習え!」
ゴリーレッド「興奮するな」
コング「女を吊るして拷問するのに服はそのままってあり得ない」
火剣「竜堂眸はサービス精神か無慈悲か」
ゴリーレッド「鷹野麗子は5手先を読んで金の光か。素晴らしい」
コング「余計なお世話。リスティーは衆人環視のもと裸を晒す非日常の興奮をもっと体感したかったであろう」
ゴリーレッド「あの世へ旅立つ準備はできたか?」
コング「暴力皇帝で情報を共有するな」
火剣「漆黒のDホイール? 黒薔薇か」
コング「理想のためには妥協してはならない。安易なハッピーエンドは許さない。正しい!」
ゴリーレッド「シャラップ」
火剣獣三郎
2015/10/04 12:37
>火剣さん
もはやパラコンボーイが本名と化しつつありますが、本名は別にあるはず・・・? 私も知りませんが。
惜しいところで敗れたパラコンに代わって、鷹野麗子が颯爽登場! 手早く事件を解決し・・・そして全裸事件へ!

山田「なんということだ。」
佐久間「素直に喜べよ。」
山田「開放されたことには喜ぼう。だが、意味はわからない。」
八武「セルから吐き出された18号が、服を着ていたことは、私も疑問だった。そういうわけだったのか・・・。おのれセル!」
維澄「少年マンガだからね。」
佐久間「いや、ドラゴンボールは普通に下着姿とかヌードとかあるよ。そもそもフリーザ、セル、ブゥ、全員が全裸だぜ?」
八武「しかし嬉しくない・・・。読者サービスとは何か、見つめなおそう。まずはビーデルちゃんをリョナった後で、ちゃんと服を脱がしてだな・・」
山田「殴られたいか?」
八武「理想の為には妥協してはならないのだよ。神邪くんは残念だったであろう。だがそれは明日への欲望、活路への希望!」
山田「そろそろ黙らそうか、このエロリスト。」
アッキー
2015/10/04 20:42

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