佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘倶楽部PX   エピローグ どの日?

<<   作成日時 : 2015/11/09 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



ま、言ってしまえば、これは水着回ってやつだ。
意味が無くても水着回。原作に無くても水着回。アニメになれば水着回。
けれど、ただ水着姿を披露するだけの話に、何の意味があるのだろう?

だが、逆に・・・頑なに水着回を拒むことは、果たして良いことなのだろうか。
お色気で視聴率を稼ごうとすることは、安易で安直な思考なのかもしれないが、それは“悪”かどうか。
むしろ、安易でありたくないという気持ちが勝るあまり、それに媚びることこそ、怠惰そして惰性―――

―――かの悪名高きホロコーストにも繋がる、“陳腐な悪”ではないのか。

選ばれし民族であるという意識は、マイノリティーとしての自覚などではない。
ただ、“世界の中の”少数派であることに甘んじて、その中で“普通”に振舞ったものだ。
いや、もはや“普通”などと呼ぶべきでもない、思考放棄の惰性・・・。
それは、マイノリティーとしての自覚が欠落した、誇り無き生き方そのものである。

伝統や様式美には、経験に裏打ちされた理論的蓋然性が、れっきと存在している。
それと現実が乖離ないしは軋轢を生むとき、それを捨て去るのではなく、現実と平衡した形式に整えるのが、知性ある者の生き方ではないだろうか!



- - - - - -



自分への言い訳を完了し、僕は生まれてきた喜びを感謝した。
モリンフェン様、ありがとうございます! ありがとうございます!

言い忘れていたが、僕は風森無々。
ごく普通の、デュエリストだ。



◆ ◆ ◆



「誰に、お礼を言ってるのかな?」
「うひゃああおおう比呂子ちゃん!?」

僕は慌てて踊ってしまった。

しかし、こうして見ると比呂子ちゃんって着痩せするタイプだったんだな。
真っ赤な布地に包まれたマシュマロンは、攻撃力に換算すると僕の防御力(理性)を軽く超えていた。

「そそそ、そのビキニ、似合ってるね。」
「あ、ありがとう・・・。」

比呂子ちゃんは、ほんのり紅潮した顔で俯き加減。
しまった、またしても僕のMPが減ってしまう! 萌死だけは避けなければ!

「うっ・・・心臓が・・・!」
「ムー君!?」

竜堂眸の知識から引っ張り出したデータによれば、酷死病は複数の症状があるという。
そのうちの1つが、精神的なダメージや消耗が、肉体的なダメージや消耗と等価であるというものだ。

残酷だ。とても残酷だ。
ときめいたり、興奮したりすることも、科学的には“消耗”になる。
萌えれば、それだけ死に近付く・・・僕の魂には常に、《霊使いパラダイス》が張られているんだ!


霊使いパラダイス (フィールド魔法・デッキニャン・テキスト略式)
このカードが場に表側表示で存在する限り、ライフポイントは「萌えポイント」になる。
(プレイヤーが萌えたとき、そのプレイヤーの持つ萌えポイントは消費される。また、萌えポイントが0になったとき、そのプレイヤーは決闘に敗北する)



真夜さんの場合は、萌えるほどMPが回復するが、傷つけられてMPが減ることが多い。
傷つくことは少ないけれど、萌えてもMPが消耗する僕と、どちらが―――・・・

・・・いや、今は考えまい。

そもそも、比呂子ちゃんの水着姿を目の前にして、暗いことを考えられないと言うべきだろうか。
バトルフェイズを行っても、ふにゃんと形を変えるだけで、決して破壊されない無敵のマシュマロンが、僕のMPに反射ダメージを与えてくるんだ。

お わ か り だ ろ う か

比呂子ちゃんが、比呂子ちゃんが、僕の腕を組んで、やややや柔らかいかかかかかかか感触があああ!!

「もう、さっきから何を考えてるの?」
「パラダイスだ・・・!」

ほっぺを膨らませる比呂子ちゃんが可愛くて仕方ない。
ああ、落ち着け僕! 余裕が無い男は嫌われるって、何かの本に書いてあった!
だけど「本で読んだ男らしさなんて早く飛び越してよ」って名言もあるし、どうすればいいんだ僕は柔らかーい!

「ふにゃあ・・・」
「ムー君!?」

魔術を用いて常にMPを回復しているのに、さよならパトラッシュ・・・

「おい、また風森が死んだぞ!」
「早くMPを注入するのよ!」



◆ ◆ ◆



ふー、まったく。風森の奴、いつもハラハラさせやがるぜ。
クリムゾン・ドラグーンの分身だってのに、ああも女に免疫ゼロなのは何でなのか・・・。

風森が鼻血でダウンしてるので、語り部はオレだ。栗間都だ。
ああ、リッカの水着姿なら、お前らに見せる気は・・・あ、おいカメラ、アングルを変えるな!
やめろ、リッカのDカップはオレ様専用の・・・!

「だーれがミヤコ専用ですって?」
「リッカあああ! カメラにアップで晒してんじゃねええ!」
「なーによ、この白ビキニが目に入らない? ほれほれー、なんちゃって。」

くっ・・・リッカのマシュマロン(攻撃力は帝クラス!)が、たゆんたゆん揺れていて、何時間でも見続けたい!
落ち着け栗間都、これは巧妙な罠だ!


おっぱいぷるんぷる〜ん! (罠カード)
揺らすことが可能な美乳を持つ、美女または美少女デュエリストのみ発動できる。
自分の胸を揺らすことで、相手のプレイングを鈍らせ、相手はMPを時価で失う。



ちなみにリッカの《スフィンクス・アンドロジュネス》は、普段は攻撃力0で折り畳まれている。
そのことに物足りなさを感じるようになったオレは、もう駄目かもしれん。

「リッカ、向こうの岩陰に移動しないか。」
「やらしーこと考えてないでしょうね?」
「安心しろ、オレ様は紳士だ。あ、カメラあっち行ってろ。」
「何ひとつ信用できないわよっ!」

ビンタされた。何故だ。



◆ ◆ ◆



もう、ムードが無いったら・・・!
ミヤコってば、あたしの体にしか興味ないのかしら・・・なんて不安になるわ。
こんなときくらい、恋人同士の甘い語らいとか、こう、さあ!

何か腹立ってきた。
500ライフ支払って、《スフィンクス・アンドロジュネス》の攻撃力を3000ポイントアップしてやろうかしら。
両性具有みんな出来るわけじゃないと思うけど、あたし頭の中で、意識を男か女かでスイッチできるのよね。

《みーつけた♪》
「ペルソナっ・・・!」

あたしは思わず後ずさって身構えた。

《そう警戒しないでよ。傷つくじゃない。》
「当たり前でしょ。あたしの体を乗っ取って、よくも好き放題やってくれたわね。ハクロ姉ちゃんのことだって、許してなんかいないんだからね!」
《でも、気持ちよかったでしょ?》
「〜〜〜! あんたねえ!」
《ねえ、また我と一体化して、一緒にミヤコに犯されない?》
「ああああんた何言ってんのよ!?」

こいつ、Mに目覚めたわけ?
ミヤコはサドッ気あるけど、あたしはMじゃないからね?

《今まで散々、ミヤコから開発されてきたんじゃないの?》
「開発って、あんたねえ・・・。イチイチ言うことがヤらしいのよ。」
《だってリッカってMでしょ?》
「誰がMですって。」

あたしはペルソナの口を掴んで、おっ広げてやった。

《いひゃい、いひゃい!》
「何でちょっと嬉しそうなのよ・・・。」

あー、もういいわ。精霊と人間で、まともに話し合いが成立するわけもないしね。

《それよりもリッカ、我の水着、どう?》
「それ水着なの? 体の模様を変化させただけじゃない・・・。全裸よ、全裸。」



◆ ◆ ◆



「ま、言ってしまえばサラシはキツい。とはいえ胸ぷるぷるさせて学ランってのも何だかな。次郎はどう思う?」
「何で俺に振るんだよ!」

そんなわけでオレ、一寸日獲斗も、水着になってまいりました!

「包帯じゃねえか!」
「いやー、どうもビキニってのは露出が多い気がして。」
「変わんねえよ!」
「はっはあ、いいツッコミだ!」

いわゆる“包帯ビキニ”ってやつだ。

「そんな水着は無えよ!」
「マニアな層を狙ってみたぜ。」
「狙わなくていい!」
「次郎は嬉しくねえのか?」
「俺はノーマルだ!」
「男が変態で何が悪い!」
「それ女のセリフじゃないよな!?」

はっはあ、水着になってると、オレのボケも冴え渡るぜ!
相田たのかも探偵のコスプレをすると、灰色の脳細胞が冴え渡るからな。それと同じ理屈だ。

「ツッコミが追いつかねえ・・・!」
「童貞だから仕方ねえよ。」
「何言ってんだてめーは!?」
「エッチが嫌いな男の子はいません!」
「だから女のセリフじゃねー! ったく・・・!」



◆ ◆ ◆



「リスティーちゃん、スイカ食べる?」
「うん、ありがと敦くん。」

海辺の景色を見ながら、ぼくとリスティーちゃんは縁側で涼んでいた。
ま、言ってしまえば・・・2人っきりという意識は、ぼくだけなんだろうな。自意識過剰だ。

スタイルの良い女の子が着るワンピースは、かえって破壊力が高い。
クリムゾン・ドラグーンがリスティーちゃんを吸収したときのスタイルと、よく似ている。
三原色ラインのワンピースは、露出は少ないけど1ターンでデッキ破壊してしまえそうな禁止級。

かける言葉も忘れて、ぼくは幸せな時間を過ごしていた。
会話が無くても、こうして隣にいるだけで、他には何も要らない気分になれる。
それは、会話下手な言い訳かもしれないけれどな。

「敦くんは、好きな人とかいるの?」
「え?」

何を急に言い出すかと思えば、何を急に言い出すんだろう。
何を急に好きな人とか、そんな、まるで、それは、まさかリスティーちゃんも、ぼくのことを?

「・・・いる、けど。」
「そうなんだ。」

・・・つい舞いあがってしまったが、リスティーちゃんは風森のことが好きなんだよな。
リスティーちゃんを目で追ってると、リスティーちゃんが風森を見ているのがわかる。

ぼくは風森が死んだとき、どす黒い感情が芽生えていた。
これでリスティーちゃんは、ぼくのものだって。

だから風森が生き返って、良かった。

「志乃ちゃんって、敦くんのこと好きだよね。」
「えっ・・」

砂原さん、砂原志乃さん。
ぼくとデュエルした、都蘭布高校のデュエリスト。昔の知り合い。
正直、それくらいしか頭に無い。

「そうなの?」
「リスティーには、そう思えたな。はう・・・想像だけど。」

想像。だけど、リスティーちゃんが言うと、現実味がある。
クリムゾン・ドラグーンの分身。本人ではなくても、その性質を受け継いでいる。
安藤さんの思考を、想像だけで言い当てた、心理の怪物。

「急に言われても、どう考えたらいいか・・・。」

砂原さんは可愛いと思うけれど、恋愛対象として考えたことがなかった。
ぼくは女の子を見ても、なかなか恋愛の相手として見れない。追い掛け回された経験のせいだろうか。

ぼくを好きになってくれる女の子を、ぼくは好きになることが出来ない。
風森を好きなリスティーちゃんが、ぼくは好きなんだ。

「はう、そうだよね。ごめん。」
「あ、いや、ありがとう。」

そのとき、ぼくは気付いてしまった。
もしかしてリスティーちゃんは、ぼくの恋心に気付いているんじゃないのか?
そう思うと、急に恥ずかしくなって、いたたまれなくなって、逃げ出したい気分になった。

だけど、ぼくは、動けない。

その・・・・・・肉体的な意味で。



◆ ◆ ◆



「ふぅ・・・・・・世界が、美しい・・・!」

メンガーのスポンジは、表面積が無限大になる。そのフラクタル次元は、3を底としてlog20・・・およそ2.7だ。
何故なら、N次元の物体を全ての次元においてX倍に拡大した場合、元のX^Nの個数を必要とする。
3次元物体のルービックキューブは、1ピースを3倍ずつに拡大すると、27ピース必要ということだ。
すなわち3倍に拡大して20個の個数を必要とするメンガーのスポンジは、3^N=20となり、N≒2.7となる。

・・・どうして僕の頭が冴えているのかは、そっとしておいて欲しい。
ひとつだけ言えることは、替えの水着が用意されていて助かったということだ。

それにしても、僕の中にフラクタルの知識があったことは驚きだ。
竜堂眸からコピーした知識は、その大半が無意識の闇に閉ざされたまま。
たまに、何らかのきっかけで、意識に顕れる。

「みゃはっ、つまり無々くんがリスティーちゃんに勝てたのは、そういうわけだったんだね。」
「ななな何を言い出すんですか、カノン先生!? というか、そういうわけって? そこからして僕わかりません!」
「みゅ? 無々くんが難しいこと考えてる顔してるときは、モリンフェンのことを考えてると思ったけど、もしかして違ったのかな・・・。」
「ああ、そういうことですか。そうです、僕はモリンフェン様のことを考えていました。」

嘘ではない。全ての事象はモリンフェン様に通じているのだから。

「無々くん、私の水着どうですか?」

「もももももももモリンフェン様!!???」

フリルのついた紫の水着を身に纏い、金色のモリンフェン様が僕を悩殺せしめたりに、いらっしゃった!

「き、綺麗です!」

「ムー君?」

はわわっ、背後から比呂子ちゃんのマシュマロンがダイレクトアタック! 何て幸せなんだ!

「みゅふふ、ハーレムってやつだね。」
「か、カノン先生まで、何しているんでしょうか・・・?」
「みゅ? 見ての通り、無々くんの賢者の杖を、再び白く輝かせようとしているだけだよ。あーん・・・」


「ダークフェノメノン!!」


ああっ、カノン先生が真っ二つに!

「みゅう! それ私の技!」

「私を真っ二つにした罰です。」

「みゅう〜。」

真っ二つになったままで、カノン先生は不満そうに口を尖らせる。
そろそろタイムオーバーかな。

「カノン先生。今日は、ありがとうございました。」

「みゅ? もういいのかな? 本当に、もういいのかな?」

体をくっつけたカノン先生は、愛らしい笑みで尋ねてくる。
きっと悪魔の笑顔というものがあるのなら、それは禍々しい顔芸ではなく、こんな可愛らしい萌えフェイスだ。

「・・・きっと僕たちが望むなら、ここで永遠に過ごすことも出来るんですよね。それこそ、千年でもデュエルモンスターズ倶楽部をエンジョイ出来る。真夜さんが言ってたのは、こういうことだったんだ。」

だから僕は、みんなに尋ねた。
ひとりひとりに、残酷な選択を迫った。

みんな、答えは同じ。
デュエリストの答えは、いつも同じだ。

「カノン先生・・・いえ、ゾーク。僕たちは戦います。モリンフェン様と共に。」

「みゅふふ、それでこそデュエリストだね。いつか、君たちの持ちえる最大限のタクティクスを揃えて、かかってくるがいい。その日 までは、楽 し い  部活動   を、続

                                    け

                                     よ



                                      う




                                       ね―――










                                                           みゃはっ♪



◆ ◆ ◆



読み切れない 決闘の行方

読まなくちゃ 勝てない気に なるよ


部屋の隅 詰まれたメモリー (ココロの)

いつだって 思い出せない (肝心な)


闇色の向こうの君を 見つめようとするけど

微笑みの以外には 何にも見えない


伸ばせば 指先 触れられるのに


届かない 届かない このココロを

本当に 大切な もの何かな?



◆ ◆ ◆



同時刻、翔武学園。

艶々とした長い黒髪を背中に流した、気品のある長身の少女―――“神の娘”こと、天神美月。
平凡な顔立ちの中に、強い目と天性の決闘資質を秘めたる少年―――“神殺し”の吉井康助。

その2人の前に、フードを被った小柄な人物が、おずおずとした様子で立ち尽くしていた。

「「・・・?」」

鷹野麗子の呼び出しで、屋上に来てみたら、そこにいたのは鷹野麗子ではなく、謎の人物。
レベルマイナスの件もあり、普通は警戒するところだが、フードの人物からは敵意を感じない。むしろ逆だ。

伝わってくるのは、信頼、愛情。
ありとあらゆるプラスの感情。

それもそのはず―――



「お父さん! お母さん!」



フードの中から飛び出してきたのは、10歳を過ぎて間もないほどの、小さな少女だった。

だが、問題はそこではない。
今、この少女は何と言った?

吉井康助と天神美月は、自然と手が伸びていた。
それぞれ流れるような仕草で、泣きじゃくる少女を抱き締めた。
まるで何度も慈しんできたかのように。

少女の言葉が事実であると、物語るように。



- - - - - -



少女のいた未来は、地獄だった。

カンサーに捕縛された竜堂神邪は、人々のマイナス感情を集める装置として改造され、人類が考えうる全ての苦痛を味わい続けた。
神であるリンネにとっては何の意味も無くても、人である神邪にとっては果てしない苦痛だった。
その苦痛の果てに生み出されたのが、“カンサービースト”と呼ばれる怪物・・・魔術改造で体内に巨大構造を有している神邪は、怪物を生産する“工場”として、最適な素材だった。

解き放たれた“カンサービースト”は、闇のデュエルで人々を襲った。
“カンサービースト”は、「相手に∞ダメージを与える、無効化できない魔法カード」や、「攻守∞で召喚制限の無い無敵耐性モンスター」などを普通に使い、更にはデュエリスト能力を所持していた。
神邪に苦痛を与えて、デュエリスト能力を強化させるように命じ、ただでさえ凶悪な“カンサービースト”は、およそ並みのデュエリストには手が付けられないほどの怪物になってしまった。

“カンサービースト”は残虐だった。子供を引き裂き、女を犯して殺した。屍は“カンサービースト”になった。
デュエル以外では倒せない。デュエルで負ければ“カンサービースト”になる。身も心も醜い怪物になる。
それどころか、ライフが1ポイントでも減れば、そこから癌化が始まり、“カンサービースト”になるのだ。
人々は“カンサー”を憎み、竜堂神邪を憎んだ。そのマイナス感情が神邪へ流され、苦痛を与えた。
神邪が苦しめば苦しむほど、“カンサービースト”は次々と生み出されていき、地を埋め尽くした。

しかし強豪デュエリストの存在が、人類に希望を与えていた。
“カンサービースト”にライフを1ポイントも削られることなく、人類を守る戦士たちは活躍した。
ひっきりなしに襲ってくる相手だろうと、交代で戦えば何ということはない。
ひとたびパターンが読めてしまえば、後は作業だ。カード生産も間に合い、並みのデュエリストでも“カンサービースト”を退けられるまでになった・・・。

だが、どれほど強いデュエリストも、寿命には勝てなかったのだ。
みんな、みんな、死んでいった。

残されたのは―――

世界中の魔術師の力を結束し、少女は不死身に近い肉体を手に入れた。不眠不休で、飲まず食わずで。
父親から受け継いだ“掌握の力”と、母親から受け継いだ“光の霧”で、少女は“カンサービースト”の進化に対応し続けた。人々の希望が、プラス感情が“光の霧”に変換され、少女は力尽きることは決してなかった。

どれほど戦い続けただろう。
何年、何年、何万年も。
数えていたら、狂っていた。

2000万年後の人類は、不死身の少女を英雄に、慎ましい暮らしをしていた。


「―――あんな奴ら、滅んでしまえばいい。」


戦い続けた少女は、それでも清らかな心を保っていた少女は、初めて“悪意”を口にした。
自分のいた歴史では、記憶も薄れてしまった両親・・・この世界での両親に甘えて、ようやく子供に戻れたのだ。



- - - - - -



「黎川さんが、ありったけの《うずまき》の力で、私に次元自在航行の力を与えてくれたんです。」

落ち着きを取り戻した少女は、右手を振るってデッキを光らせた。
そこにあるカードを、吉井と天神は知っていた。

三次元では表現されない、けれど存在が確かに認識できる。
かつて神の領域を垣間見た2人だから。


リンネ−永劫回帰の支配者 レベル1 神属性・無族
攻撃力0 守備力0
デュエル開始時に、デッキに存在するこのカードは自分の墓地に送られる。
このカードは他のカードの効果を受けず、自分の墓地を離れない。
このカードが墓地に存在するとき、以下の効果が全て適用される。
●ルールまたはカード効果による既存のデュエル終了条件は、このカードの効果を除いて全て無効になる。
●相手のライフポイントが0になったとき、相手はデュエルに敗北する。
●自分は、1ターンに1度、エンドフェイズ時に「デュエル終了判定」を必ず行わなければならない。この判定時に自分のライフポイントが0であった場合、自分はデュエルに敗北する。



この宇宙を創った、“始まりの1枚”―――最強の敵にして、最強の味方。
レベルマイナス集団と戦ったときは、このカードがあったからこそ勝てた。

(そうか)
(そうなの)

(この)(カードが)

吉井と天神は顔を見合わせて頷いた。

かつての神様を思い出すような、永遠に幼いままの少女は、揺るがぬ双眸で告げた。



「このカードが、カンサーと戦う切札だよ。」



◆ ◆ ◆



かくして、決戦のプロローグは、火蓋を切って落とされた。

間もなく迎えるは、カンサーとの全面対決、その名も―――





「決闘祭」







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2015/11/09 00:01

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「今宵は水着の魅力について大いに語り明かそう」
ゴリーレッド「そういうことなのか?」
コング「水着を舐めるな」
ゴリーレッド「ホントに舐めるな」
火剣「比呂子の赤ビキニ。せっかく蘇生したムーをまた萌死させようとしていないか」
コング「比呂子のようにあまり水着姿を披露しない女子のビキニ姿は興奮を誘う」
火剣「ときめきは医学的には良いことなんだが」
コング「まさに慕情。♪雨雨降れ降れもっと降れ」
ゴリーレッド「『危険が危ない』レベルの世界。ところでパラコンの悲劇とは?」
コング「無事かな?」
火剣「リッカの白ビキニもヤバイ」
コング「水着で美乳選手権をテレビでやっていたがおかしい。美乳というのは乳首の美しさも入るから水着ではわからない」
ゴリーレッド「裸にするわけにはいかない」
火剣「獲斗のさらしビキニはマニアックだ」
コング「晒し者刑にしてドキドキを体感させてあげよう。磔にしてさらしをうひひひ、取るよん」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「リスティはワンピか」
コング「下は全裸?」
火剣「女の『この下は何も身につけてない』というセリフは高度な挑発だ」
コング「麗子と美月の水着姿も見たい」
ゴリーレッド「命懸けで頼め」
火剣「コングは成長したな。暴言を吐かなくなった」
コング「僕は女子を心から尊敬している。そこが邪悪なレイパーと違うところ」
火剣「触発力というのは欲しい力の一つだ」
コング「触る力か?」
ゴリーレッド「全然違う」

火剣獣三郎
2015/11/09 23:39
>火剣さん
奇跡の生還を果たした無々ですが、またしても萌死の危機が迫る!
またしてもと言えば、コメント表示欄が出ないのも、これで何度目。
とにもかくにも、爽やかなエピローグでした!

山田「爽やか・・・?」
維澄「爽やかの定義とは何だったかな。」
佐久間「ジメジメしてないことだ。」
八武「なるほど、愛液で濡れてはいないと。確かに爽やかだ!」
山田「死根也には爽やかさの欠片も無い。」
八武「ときめきは天然の健康薬なんだよ?」
神邪「萌死は、幸せなことかもしれません。」
山田「しかし周りが不幸だ。」
佐久間「どうせなら美乳コンテストを開催するべきだったか。まだアッキーには“攻めの姿勢”が足りてないようだな。」
山田「しなくていい。」
佐久間「葬式ネタは攻めていたが、ここで日和るか。」
山田「不謹慎な葬式ネタより、こっちの方がいい。」
八武「どうやら山田くんもエロスに目覚めたようだ。これも成長。」
山田「だから俺は別に、嫌いだと言ったことはないぞ。」
佐久間「そうだったっけ?」
神邪「エロスが嫌いな人はいませ・・・いや、結構いますね。」
佐久間「そこは言い切ろう。」
維澄「パラダイスのような世界だけど、少年少女は現実に戻ることを選択するか・・・。私なら逃避してしまうかもしれない。」
佐久間「おや珍しい。」
維澄「現実を肯定的に理解することと、現実を肯定することは、ぜんぜん違うことだよ。」
八武「では現実逃避に水着はいかが?」
神邪「ドクター抜け目無い!」
アッキー
2015/11/10 00:11
ツヲ「うおおおおおおおっ!!!」
白龍「落ち着きなさい。」
ツヲ「バッカ!水着回だよ!水議会!水着と聞いて水属性の僕が動かない湧けないじゃないか!」
白龍「極度の興奮状態で漢字が所々間違ってるし…。」
ツヲ「マシュマロンには誰も勝てない!いや勝つ必要はない!MPがゼロになっても本望だ!」
白龍「…ツヲさんは落ち着くまで放っておこう…。」

そして水着サービス回だけで終わらないのでドキドキします。二重の意味で。
永遠に続く夏休みのような時間も平穏なる空間も全てはカノンの手のひらの上かまやかしか。それらを超えて「本当」を手に入れるためにはデュエルで勝つしかない。戦うしかない…。

ある一つの世界の未来、えげつないですね…。2000万年後まで人類を守り抜いた少女は別世界の過去へと帰ってきた。いや、この場合は未分化の過去というべきなのでしょうか。未分化の過去から地獄の未来ではない別の未来の道筋を示すために少女は両親と「再会」を果たす。そして、切り札が一枚。デュエリスト能力も「効果カードの効果」と考えれば、リンネ−永劫回帰の支配者の一枚で今までの即死系デュエリスト能力にも対抗出来るようになるはず。これでようやく、同じ土俵に相手を引きずりこめる。いよいよ、カンサートップ集団に勝てる可能性が出てきたか。この戦いの果てに、未来はどう変わるのでしょうか…。
千花白龍
2016/03/28 22:53
>千花白龍さん

今回も、サービスサービス! 喜んでもらえて幸いです。
しかしサービスとは色気のみに非ず、読者を戦慄させてこそ真のファンサービスな、エピローグ。

八武「水議会。良い響きだ。」
山田「どういう議会だ?」
八武「水着姿の美少女だらけで議会を行うことだ。」
山田「どこのキャバクラだよ!」
神邪「キャバクラとは、『キャー、バクラさん素敵!』の略でしたね。」
佐久間「よく知ってるな。大人だ。」
山田「違えよ!」
維澄「マシュマロン・・」
佐久間「私の胸を物欲しそうに見るなっ!」

楽しげな時間は永遠ではなく、永遠のような地獄から1人の少女がやって来る。公式ポジションとしてはゾーンに相当しますが、言うまでもなく「ドラゴンボール」の人造人間編とか、ターミネーター的な話いろいろ影響を受けています。
自分の未来は変わらなくても、救われる未来があってほしい。そして何より、両親に会いたかった。そんな思いを込めて、少女は舞い降りた。父親と同じ、“掌握の力”を手にして・・・。
“始まりの1枚”は、あらゆるカードと能力の上位系統に位置するので、即死系には絶大な効果を持っていますね。特殊勝利は封じられ、ノーライフも判定までに対処されてしまうという。

そんなわけで、ようやくカンサーに勝てる見込みが出てきました。
「決闘祭!」の連載(ターン)を、お楽しみに!
アッキー
2016/03/29 13:09

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