佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 3

<<   作成日時 : 2015/11/19 00:00   >>

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「逆に訊こう。九古くんは、わたしが人助けに向いてると思うか?」
「思います。」
三角の問いに、すぐに答えた。
「そうか。しかし、わたしは茶倉くんと出会うことすら出来ず、九古くんは彼女を救えた。そういうことだ。」
妻の名を出されて、鈍郎はドキッとした。
もう1年近く会ってない妻。彼女の理知的な顔を思い出して、胸が高鳴る。
「世の中は、助ける側と助けられる側に分かれているわけではない。わたしたちの目指すべきは、人助けではなく、助け合いなのだ。」
「・・・!」
またしても衝撃を受けた。
この4ヶ月で、三角先輩は格段に意識の成長を遂げている。鈍郎は劣等感で胸が締め付けられた。
いつまでも子供みたいに苛立っている自分が、恥ずかしくて情けなかった。
「なあ、九古くん。わたしたちの力は小さい。わたしたちが人助けをするだけでは、焼け石に水、世界は変わらない。何ひとつ変わらない。だから、人助けではなく、助け合いなんだ。人を助ける者が強くあらねばならないなんて、誰が決めた? 強い者が弱者に救われたっていい。わたしは自分が人助けに向いているとは思えないが、向いているとしたら、自分が弱いままで人を助けられるからだろう。」
だとすれば、憎悪に囚われたままでも人を助けることは出来るのだろうか。
いや、出来るかどうかを考えるのではない。それを可能とする為に、自分は何を為すべきなのかを考えねばならないのだ。
十島瑠璃子を助けたとき、自分のことなど考えていたか。あのときは彼女を助けることに無我夢中ではなかったか。
(悪いクセだな。気持ちが輝いていたときのことを、すぐに忘れてしまう。)
それは現状に満足しない、前向きな精神でもあるのだが、超能力の伸び悩んでいる鈍郎は、後ろ向きな気持ちに固定されていた。
(以前は超能力など信じていなかった私が、今では超能力が伸びないことで気を揉んでいる。)
それは滑稽というより不気味だった。
未だに“サトリン”とは何者なのか、七美は語らない。他のメンバーも知らないようで、七美と同じく知ってる側であろう“ガーディアン”は、ホログラムでしか現れない。無論、黙して語らない。
何者かといえば、邪戦士というのも何なのか。
“イヴィル”とは。
声も知らない、謎の存在。邪戦士を束ねる者。“サトリン”の敵。
だが、“サトリン”が何者なのかわからないのであれば、その“敵”を、どのように捉えればいいのだろうか。
(もしも、私たちの方が悪であるなら?)
そのように疑ってみることは、九古鈍郎の本領である。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
ゴリーレッド「人助けではなく助け合いか」
コング「困った時はお互い様のどんまい精神と賢吾が言ってたな」
火剣「助ける代わりに口も出す。これは危険で殺されるかもしれない」
ゴリーレッド「人間には感情があるし、助けを求めて弱っている状態だと心も荒んでいるかもしれない。そういう時に恩を売ると感謝とは逆に殺意が湧く。その人情の機微を賢吾は熟知していた」
コング「これで上手いもんでも食ってうまい酒でも飲みなはれとポンと壱万円札を出す賢吾」
火剣「キャラもあるな」
ゴリーレッド「強い者が弱い者を一方的に助けるという発想だと上からになる」
火剣「その者のプライドを傷つけずに助けるという賢吾イズム」
コング「わかる。風呂場に閉じ込められた入浴中の姉を救出するのに、全裸だから恥をかかせずに助けようと苦心する弟」
ゴリーレッド「違う話になったぞ」
コング「近所の大工が燃える笑顔でドアを壊していた。中にいるのが弟か父なら知らんぷりだろう」
火剣「助ける時は無我夢中。理屈は考えねえ」
ゴリーレッド「鈍郎の話と500マイル離れている」
コング「意識の成長か。人は人と接して意識が成長していく。僕も近親相姦はNGだったが『姉弟』ならOKと進化した」
ゴリーレッド「サトリンの正体を七美は知っているのか」
コング「全裸磔で拷問して尋問しよう。七美もスリルを体感できて喜び一石二鳥」
ゴリーレッド「二丁投げ!」
コング「があああ!」
火剣「自分たちを疑うか。過信狂信は良くない。情理両面で熟慮に熟慮を重ねて自分の信念の正しさを確信することが大事だ」
火剣獣三郎
2015/11/19 10:45
>火剣さん
心の機微に疎い人間が人助けをやっていると、むしろ酷く逆効果になるときがありますね。そして聡い人間も、全てに聡くはなれない。そういう意味で、三角は多様性の大事さを訴えました。

山田「困ったときは、お互い様。この言葉が再び強い力を持てるような社会にしたい。」
佐久間「強者には弱者の気持ちはわからない。だから強者ばかりが人助けをしていると、弱者を踏み躙る。ヒーローとは、そういうものだ。」
神邪「その強さに憧れる者が大勢いると、踏み躙られた者は悪と呼ばれるんですね。だから僕は、悪い奴なんだ。」
山田「やや極論ではあるが、人助けと称して人を踏み躙っているヒーロー気取りは多いからな・・。」
維澄「だからこそ、誰も踏み躙らずに人助けをしているドクター白茶熊は、素晴らしい。」
八武「多くの人は、誰かを踏み躙って生きている。私も美女のプライドを蹂躙しなければ生きていけないわけで。」
佐久間「死根也は自覚的だから上等だ。無自覚ってのが最もタチが悪い。」
維澄「地獄への未知は善意で敷き詰められているからね・・。助けたつもりが踏み躙っているとしたら? そういう視点が無ければ、禍の火種を育てていることになる。」
八武「入浴中の姉を助けたつもりが、恥をかかせてしまうことも。ふふふ。」
山田「何か話がズレたぞ。」
神邪「サトリンが悪とは思えませんが、しかし正体不明の上司というのは不気味なものでしょうね。」
八武「だが、ミステリアスな美少女は魅力的だぁ。」
アッキー
2015/11/19 21:29

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