佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 6

<<   作成日時 : 2015/11/22 00:00   >>

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ビラを配っていた男―――小林が、その大学における左翼的なグループのメンバーだということは、容易に想像できた。振り返ってみれば、よくアジテーション(演説)をしていた顔だ。
九古鈍郎は、高校時代から、先輩の三角と共に反戦平和活動をしていた人物だが、かといって大学の左翼グループに共鳴していたわけではなかった。むしろ毛嫌いしていたと言ってもいい。
というのも、2年前に彼が受験で、この大学に二次試験を受けに来たとき、よりにもよって試験中にアジテーションをかましてくれたからだ。
言ってる内容が何であれ、試験中の人間にとっては騒音でしかない。大学には受かったから、恨んではいないものの、よろしくない記憶として刻まれていた。

小林に誘われて、しばらく話をして、その左翼グループの一員になったのは、ゆえに複雑な心理が絡んでいた。
ひとつは単純に小林が丁寧な話し方をしたからだったが、それ以外にも理由は3つある。
よく誤解されているが、反戦平和を唱えているからといって左翼と限ったわけではなく、左翼だからマルクス主義・共産主義者であるとも限らない。反戦論者の右翼だっているくらいだ。
鈍郎、そして三角は、子供の頃から反戦平和を志していたものの、いわゆる左翼ではなく、マルクス主義などは名前を聞いたことがある程度のものだった。
思想的にも実践的にも、右も左もわからない2人は、いわゆる“活動家”に憧れを抱いていた。例えば大杉栄とかに。
自分たちの貧しい実践を恥じる気持ちは、そのまま活動家への尊敬に転じ、それは現代の活動家へも向けられた。
大学で出会った活動家たちを、毛嫌いする一方で、その行動力には素直に尊敬を抱いていたのだ。
また、マルクス主義について興味を抱いたのも、大学に入ってからだった。
伊達に子供の頃から反戦平和を考えてきたわけではない。自分の中で様々なことを考え、構築してきたものが、19世紀に既に考えられていたのだと知って、驚きと尊敬を禁じえなかった。

しかし、最たる理由は、いよいよ左翼が落ち目になるからだったかもしれない。
言い方を変えれば、勝ち馬に乗りたくない。軽々しく活動したくない。付和雷同を良しとしない。
大学へ入ってからの2年間は、吟味の時間であり、様子見の時間だった。
落ち目になった途端に離れていく奴は、賢いのかもしれないが、しかし卑しい。
それも卑しいというだけで悪ではないのだが、鈍郎は気に食わなかった。気に食わないと文句を垂れるだけでなく、自分は逆を行ってやろうと思ったのだ。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「90年代も大学ではそういう活動が盛んだったのか」
ゴリーレッド「大学にもよると思う」
コング「僕は小学校も出ていないから、大学の風景はドラマなどで見る想像の世界だ。♪下駄を鳴らしてヤツが来るー!」
ゴリーレッド「歌はいい」
火剣「戦争反対と世界平和を願う人間は多いから、当然イコール左翼と狭めて考える必要はない」
ゴリーレッド「庶民の共感を勝ち取るという難しい課題を避けると独善に陥る危険性がある。たとえば試験日は演説は控えようなどなど」
火剣「その時は嫌悪感を抱いても丁寧な話し方で興味を持ったか」
コング「きょうはいい夫婦の日か。奥さんがいるのは八武院長、賢吾、山田太郎」
ゴリーレッド「山田太郎殿は独身だって・・・何の話をしている?」
火剣「あとは活動家への憧れか」
コング「かわいい女子でもいたのか」
ゴリーレッド「そんな軽い理由ではない」
コング「軽くない。人生における最重要課題だ」
火剣「なるほど、自分が考えていたことが、とっくに本になっていたりしたら衝撃的な感動か」
コング「確かに自分の厳しく狭い趣味趣向にはまるドストライクな動画を見た日にゃ、興奮の前に喜びが大きい」
ゴリーレッド「喋るな」
コング「♪生まれーたまーまの姿で、愛しー合い、夜明けまで」
火剣「それはシャネルズ」
ゴリーレッド「まじめに語る気がない者が約一名いるので終了」
コング「思想は難しいんだ。思想のために戦争まで始まってしまうからな」
火剣「九古鈍郎の思想遍歴か」





火剣獣三郎
2015/11/22 13:53
>火剣さん
80年代には下火になっていた学生運動ですが、一部では細々と続いていました。新たな人員を獲得しようと、焦る気持ちは強かったと思います。
しかし焦る気持ちを抑えて、丁寧な勧誘を心がけたことが、鈍郎を引き入れる成果へ繋がりました。

維澄「大学によるね。殆どの大学は、90年代ともなれば、運動自体が壊滅してたと思う。」
佐久間「学生運動やってた中には、暴れたいだけの奴も多かったと言ってたな?」
維澄「うん。憂さ晴らしが目的で、主義も思想もあったもんじゃない・・・そういう意味では、21世紀の反戦平和運動は、だいぶ洗練されているね。」
八武「骨折した患者でもデモ行進に参加できるようになった。」
山田「俺も平和主義者だが、左翼ってわけでもないな。」
佐久間「平和主義者・・・?」
山田「そこ、首をかしげない。」
佐久間「山田に私という美人妻がいることは確かだが。」
山田「だから捏造するな。」
神邪「え、事実婚ですよね?」
佐久間「これが客観的目線だ。」
山田「違う。」
神邪「それはさておき、自分と同じ考えの人がいると、独りじゃないって思えてきますよね。あるいは、独り善がりじゃないと。」
維澄「マイノリティーは、絶えず独善に陥る危機と戦っているからね。その戦いを放棄したら、マイノリティーは名乗れない。だけど、戦い続けるのは苦痛だ。」
佐久間「私は戦うのが楽しい。」
山田「稀有な例だがな。」
アッキー
2015/11/22 21:43

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