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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 8

<<   作成日時 : 2015/11/24 00:00   >>

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すっかり左翼に嫌気が差していた頃、鈍郎はバイト先の塾で、新たに生徒を受け持つことになった。
その塾には勤めて3年近くになるが、他の教師が手を焼く生徒を回されてくるのが常になっていた。
人を見下す態度の女子生徒に、軍国主義の男子生徒。集中力が拙く成績がボロボロの生徒もいたし、何かと欠席する生徒もいた。
とはいえ、その待遇に鈍郎は不満を抱いているわけではなかった。
(今度は、どんなヤツだ?)
むしろ、自分が会社に役に立っていることが嬉しく、教育者としても遣り甲斐を感じていた。
期待にも近い感情に胸を躍らせる鈍郎に紹介されたのは、目を見開くような美少女だった。
「はじめまして、九古です。」
「はじめまして、咲村茶倉です。」
礼儀正しく挨拶した彼女は、とても自分に回されてくるような問題児には思えなかった。
高校受験のときも塾で指導していた生徒らしく、それから3年後の現在、自衛隊に入りたいから試験の対策をしてくれと言ってきた、というのだ。
この塾が、左翼的な―――少なくとも左派に属する人々が経営していることは、薄々わかっていた鈍郎は、彼女が自分のところへ回されてきた意味がわかった。
(左翼は自衛隊が嫌いな人、多いからな。)
他人事にように思う鈍郎だったが、その実、彼も自衛隊には良くない感情を抱いていた。
憲法違反の、れっきとした日本軍。
軍隊ではないという建前のもとに使われる、おびただしい費用。
それ以外に、実際に自衛隊員から不愉快な目に合わされた、高校の修学旅行。船の中でのこと。あのときのことは苦い記憶として残っている。
ゆえに自衛隊に対する印象に、マイナスはあってもプラスは何ひとつ無かったのだが、このときの鈍郎には別の感覚がはたらいていた。
左翼への期待と憧れが、失望と嫌気に塗りたくられていた頃なのだ。

一言で表現すれば。
ぐらついていた。

それは、今まで自分が嫌っていたものに対しても、再度点検してみようという感覚を生じさせていた。
思えば自分は、自衛隊に関して無知だ。おおまかな歴史的経緯は知っていても、具体的な内実は修学旅行での一件くらいしか知らない。あれが自衛隊の全てではないと思えるほどの頭はあるし、そもそも小学校時代の苛烈ないじめに比べれば、よくある不愉快なだけの記憶のひとつに過ぎないのだ。
ともあれ九古鈍郎は、咲村茶倉の指導を引き受けることにした。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「手を焼く生徒が鈍郎に回されるのか」
コング「人を見下す女子生徒を回すとは何と恐ろしい塾だ」
ゴリーレッド「ちゃんと読もう」
火剣「軍国主義の人間は苦手だ。冷静に対話できればいいのだが、南京の『な』でもう激昂して会話にならなくなる」
コング「目を開くような美少女? おおお! ついに咲村茶倉登場!」
ゴリーレッド「そういう出会いか」
火剣「礼儀正しいと好感が持てるな。自衛官志望か」
コング「鈍郎は嫌な思い出があるのか」
ゴリーレッド「人の噂話で嫌うのは良くないが、自分が体験したことならはっきりとした理由になる」
コング「不愉快な目ってどんなことだ。男子だと想像がつかない」
火剣「女子だと想像がつくのか?」
ゴリーレッド「不謹慎男にふらない」
コング「それはね」
ゴリーレッド「黙らないと海の底だ」
火剣「なるほど再度点検は大事だな」
ゴリーレッド「人間をマス(集団)で見たくない。一人ひとりの顔を見ることが重要だと思う」
コング「顔を見るのは大事でーす! 茶倉は美少女ということは心も美しいはず。その彼女が自衛官を目指しているんだ」
火剣「動機を聞きたいな」
コング「海で茶倉が水着姿の時に屈強な荒くれ男10人に囲まれたら聞ける」
ゴリーレッド「それは動悸」
火剣「鈍郎と茶倉のラブソングが奏でられるか」
コング「♪ガラガラヘービがやって来る!」


火剣獣三郎
2015/11/24 13:37
>火剣さん
このあたりも実体験を元にしていますが、塾における便利屋でした。
生徒の成績は上がらないので、私の評価は低いものでしたが、今でも覚えている面白い生徒もいます。

佐久間「回されて、ボロボロか。」
山田「おい。」
八武「茶倉キターーー!! ようやくお出ましか! むさくるしい男たちの中に美少女! 自衛隊・・・悪くない。」
山田「死根也の頭は悪くなっているな。」
維澄「茶倉自身は、どういう思想なのかは気になるね。」
佐久間「ま、それは後々。」
維澄「南京大虐殺も、無かったと言いたがる人が大勢いる。彼らは昔から、言うことは同じだ。」
神邪「学校でのいじめを隠蔽するのと同じことですね。」
山田「鈍郎は、そんな生徒にも対応してきたのか。」
佐久間「プロだからな。」
維澄「だけどプロ意識の乏しい教員も多いから、少なくとも相対的には優れている。」
八武「真面目な話、このときから知り合いとは思わなかった。自衛官を目指すなら、鈍郎は反対すると思ったが、むしろ協力していたか。茶倉の志望動機は気になるところだねぃ。」
アッキー
2015/11/24 23:29

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