佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 11

<<   作成日時 : 2015/11/27 00:00   >>

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翌年、1996年の2月に、仲間たちと共に沖縄へ行った。
反戦平和を志す者として、広島と沖縄には是非とも訪れてみたいと思っていた鈍郎は、有志が募られたとき真っ先に手を挙げた。こんな積極性を発揮したのは、中学生のとき以来かもしれない。
全体の目的は米軍基地前でのデモ行進であったが、鈍郎の興味は戦争の資料の方にあった。ひとつは“ガマ”であり、夜の闇も及ばない真の暗闇というものを、そこで初めて知った。
ひめゆりの塔や、当時の体験者の日記など、興味深いものは幾つもあったが、時間に追われてロクに読めなかった。
仲間たちの意識は“現在”に向いており、“過去”のことはあまり興味が無いようだった。それは普段から、鈍郎が戦争被害の補償について語ると煙たがられることにも、顕れていた。
(またいつか来よう。)
それが叶うのは、結婚してからのことになる。
このときは後ろ髪を引かれる思いで、施設を後にした。

反戦平和との関連性は薄いかもしれないが、鈍郎の個人的な興味としては、琉球名物の食べ物があった。
ちんすこうというクッキーに、サーターアンタギーというドーナツ。ちんすこうは紫芋を練り込んだものが特に美味しく、お土産に3パックも買ってしまったほどだ。
ソーキ蕎麦は、あっさりとした麺と汁に、こってりとした豚足とのコラボレーションが絶妙だった。
そして、ヤギの刺身を食べる機会に恵まれた。臭みがあると聞いていたが、それも含めて絶品だった。食べ過ぎると血圧が上がるということで、少ししか食べられなかったが、忘れられない味となった。
こんな呑気に観光などしていていいのかと思ったが、しかし考えてみれば、これも“平和”の要素として欠かせないものだ。守りたい“平和”なくして、反戦も有り得ない。
ふと窓の外を見ると、米軍基地の方角で、別の反戦活動団体が凧揚げで抗議を行っていた。
(危ないなあ。)
その発想は無かったと、そのときは失笑したが、しかし考えてみれば本当に危ないのは基地の存在だ。
例の“琉球民族主義者”の言葉が忘れられない。
『軍備に賛成を唱えている男どもは、まず沖縄の現実を見ろ! 軍隊の男どもが暴力事件や強姦事件を起こしている現実を直視しろ! 話はそれからだ! 日本全土が“オキナワ”になっても同じことが言えるんか!?』
彼女によれば、米軍基地を潰して産業に回せば、沖縄の人々にとっての経済的利益は単位面積あたり数十から数百倍になりという。基地が経済を潤しているという論が、いかに乾いた俗論であるかを語っていた。
その数値が決して大袈裟でないことは、高台から基地を見渡したときに実感した。
広い。あまりにも広い。
戦闘機がプラモデルに見えた。
(無駄に広い。)
ある種の感動と共に、もったいない精神が首をもたげていた。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
ゴリーレッド「難しいテーマだ」
コング「難しく考えることはない。沖縄といえば海。海といえば水着。水着といえばビキニ」
火剣「反戦平和を考えるうえで行ってみたいと地といえば、やはり沖縄、広島、長崎か」
コング「ハンセン? スタンハンセン。ウィー!」
ゴリーレッド「ウエスタンラリアット!」
コング「があああ!」
火剣「1996年か。何やってたかな。鈍郎は物事を深く考えていた青年だったのだ」
コング「決して阪口が何も考えていないから嫌ったわけではない」
ゴリーレッド「何のフォローにもなっていない」
コング「昔、後ろ髪ひかれ隊っていなかったか」
火剣「もったいない精神か」
コング「もったいないオバケ?」
ゴリーレッド「もったいないという言葉を聞くとマータイ博士を思い出す」
火剣「もったいない。いい言葉だ」
ゴリーレッド「沖縄問題を解決できる政治家はいるだろうか」
火剣「難しいだろうな。ただ皆が真剣に考えている時に、変な作家が出てきて暴言を吐くと、余計混乱する。それを止めないほうもいけねえ」
ゴリーレッド「作家は民間人だからというのは寝言で公人だ」
コング「100か」
ゴリーレッド「固有名詞は出さなくていい」
火剣「ひめゆりの塔を知ったのは、恥ずかしながら中学卒業後だ。なぜこんな大事なことを学校で教えねえ。俺が授業に出てなかっただけか?」
コング「経済的に潤うがどうのなんて誤魔化しはいらない。沖縄は日本列島の端だからと本当のことを言うしかない」
ゴリーレッド「率直な意見交換には信頼関係の土壌が必要で、その信頼関係が皆無なところにきつい部分がある」
火剣「しばらく冷静に鈍郎の思想と行動を追おう」
コング「茶倉は?」
ゴリーレッド「あ、」
コング「せ、ろ」
火剣獣三郎
2015/11/27 16:57
>火剣さん
沖縄の運動で感じたのは、粘り強さでした。見た目の派手さは、むしろ東京や大阪の方が活発なのですが、恒常的な活動の大切さを学びました。
なかなか“本土”の人々とは、意識が合わない。その苦しさの裏返しであることが伝わってきます。

八武「青い海、白い水着、眩しい女の子たち。沖縄の海を守らなくてはいけない!」
山田「動機は不純だが、確かにな。俺も基地には反対だ。」
神邪「子供の頃、“スタン反戦”とは、どういう反戦運動だろうと思っていました。」
維澄「あるある。」
佐久間「あるのか。」
維澄「かつてレーニンは、抑圧されてきた人々の要求は、少々過度であっても呑むべきだと主張した。しかし、それを高く評価しながら、沖縄の活動家へ向かって『琉球民族主義がキツすぎ』などと述べるバカ左翼がいる。これも混乱のもとだ。」
神邪「ダブルスタンダードってやつですか。」
維澄「沖縄の中でも、基地の被害が多いところと少ないところがあり、地域で意識の格差がある。沖縄の人々、と一括りにしても良くない。」
八武「戦争経験者でも、戦闘を経験してないと、呑気な意見の人が多かったねぃ。軍事の危険性に対して鈍感なんだよ。」
神邪「そのくせ、軍備反対には、過敏反応を示すんですよね。」
八武「縋りたいのさ。」
山田「そうだろうな。」
佐久間「いじめ問題と同じで、被害者とそれ以外の間に意識の温度差が大きい。いじめ問題に鈍感な奴は、この問題にもピントのズレたことしか言えない。」
神邪「救いは無いんですか?」
佐久間「あったら今頃とっくに解決してる。」
維澄「『“本土”に左翼はいない』って言葉に、ムッとするようでは偽物なんだよね。そんな言葉を言わせてしまう不甲斐なさを反省したい。」
神邪「鈍郎さんも反省する側ですね。」
佐久間「もうすぐ茶倉と再会。」
アッキー
2015/11/27 22:16

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