佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 12

<<   作成日時 : 2015/11/28 00:00   >>

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居酒屋というのは、煩わしい子供の騒ぎ声から隔絶された空間で、鈍郎にとって居心地の良い場所であったが、ただひとつ、煙草の煙だけは苦手だった。
左翼の仲間にも喫煙者は多く、公園の集会などでも煙草の煙が漂ってきて咳き込むことが度々あった。
自分の前では吸わないで欲しいと、何度も訴えた。それで気をつけてくれる人はまだいいのだが、喫煙者の理屈を滔々と語られたり、凶暴に怒鳴り散らされることもあった。
そんなことが降り積もって、心に溜まっていた。煙草を吸う人間を誰彼構わず攻撃しようとは思わないが、マナーの悪い連中が自らを社会的弱者の立場に置いているのは許せなかった。
右翼だとか、左翼だとか、そうした思想の方面とは別の、感覚的な部分・・・あるいは、そうした細かなことも含めてこそ生きた思想なのかもしれないが、いずれにしても鈍郎の気分は慢性的に澱んでいた。
沖縄観光で普段になく澄んだ心でいたものの、仲間たちが煙草を吸い始めたので席を立った。
ここで何か言っても互いに気分を害してしまうだろう。せっかくの観光で、そうしたことは避けたかった。
「ふう・・・。」
酒も入って火照っていたので、夜風が気持ちい。室内の喧騒が遠くなる。
(ここで煙草を一服でもすれば、決まるんだろうが・・・。)
よく誤解されるが、鈍郎は煙草の匂いや煙たさが嫌いなのであって、刑事が煙草を吸っている画(シーン)などは、むしろ好きな部類に入る。西部劇でガンマンが、戦いの後に一服遣っている様などは、もうたまらない。
それゆえに、その品格を貶めるような、喫煙マナーの悪い連中が、目障りで仕方ない。
(あーあーあ、決まらんな私は。)
24歳。今年の秋には25歳。
高校時代の同級生には、結婚して子供が生まれている者も少なくない。
鈍郎は、相変わらず非正規雇用。バイト社員のままで、年収は100万円前後。この6年間で500万円も稼いでいない。貯金など殆ど無い。
たとえ結婚しなくても、世界平和の為に人生を捧げられたら悔いは無いと思っていたが、肝心の平和に懸ける情熱が揺らぎ軋んでいる。亀裂が入って約4年。
それでも左翼の側に居続けている理由は、左翼批判をしている連中の愚劣さ低劣さにある。左翼活動から手を引くことで、あんな考え無しの馬鹿どもに同調すると思うと、胸糞悪い。
そんな、後ろ向きな思い。
こんな気持ちで反戦平和なんかやっていていいのか。決まらないというより、心の中で筋が通らない。
(冷えてきたな・・・。)
建物の中に戻ろうとしたときだった。
「九古さん、お久しぶりです。」
妙に澄んだ声が、後ろから響いてきた。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「居酒屋デートはオススメだ。遊園地行っても仕方ない。酔わせて火照ってホテル直行!」
ゴリーレッド「そんな話ではない」
火剣「何かを成し遂げるには同志の鉄の団結が不可欠だ。鈍郎の周囲は到底同志とは呼べない。これではきつい」
ゴリーレッド「リーダーが戦に完勝するための将軍学を体現していない」
火剣「日頃の振る舞いで人は判断するから、右左の前に、人格を磨くほうが運動の共感が広がる気がする」
ゴリーレッド「丁寧な言葉遣いや常識・良識を重んじる姿勢、思想の深さなどなど」
火剣「仲間を凶暴に怒鳴るなどあり得ん」
コング「いきなりラリアットを食らわす約二名よりはいいと思うが」
ゴリーレッド「世界平和のために人生を捧げるなんて素晴らしい大志」
火剣「世界平和のためには金がいるんだ。金がないと何もできねえ世の中だからな」
ゴリーレッド「その情熱や勇気を破壊するのが魔の仕事」
コング「澄んだ声? 瑠璃子か」
ゴリーレッド「茶倉だろう」
コング「茶倉は水着姿か?」
ゴリーレッド「そろそろあの世へ行くか?」
コング「待て」

火剣獣三郎
2015/11/28 11:24
>火剣さん
共に行動する仲間はあれど、実質的に孤独な鈍郎です。周囲の人間も決して悪人ではないのですが、だからこそ強く出られない。何かと気持ちが合わないのは精神的にキツいですね。
しかしそこへ現れたのは・・・?

山田「ここで茶倉と再会か。」
八武「思わぬ再会が喜びであるのは、幸せなことだ。美少女には親切にしておくもものだよ諸君!」
山田「限定するな。」
佐久間「居酒屋といえば、みんなで行くか、栞と2人。これはどういうことだ?」
維澄「何も問題ない。」
神邪「鈍郎さんがいるグループは問題だらけですね。やはり規律と統制なしに団結は難しいのでしょうか。」
佐久間「自主性を尊重という名目のもとに生まれるのは、似たような考えの大勢が幅を利かせるファシズムだからな。」
維澄「鈍郎が感じている居心地の悪さは、私も同じだったからリアリティを感じるよ。やっぱり今が居心地いい。」
神邪「いつから僕は、世界平和の志を失ってしまったのか・・」
佐久間「大多数は平和を望んでいるが、しかし鈍郎や神邪が思い描くレベルの平和までは望んでいない。それを知ってしまったら、どれだけ自分が孤独か実感する。」
山田「だが、その先に真の仲間を見つけられれば、自分は孤独ではないと本当の意味で実感できる。これぞ磨のはたらきだ。」
八武「ところで茶倉の服装は?」
佐久間「水着ではないが、普通の服装でもない。」
アッキー
2015/11/28 20:40

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