佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 14

<<   作成日時 : 2015/11/30 00:00   >>

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九古貞主(くこ・ていしゅ)は、6歳のときに終戦を経験した。
生まれたときから今まで、戦争の時代しか知らなかったので、“終戦”が何なのかピンと来なかった。
そんなに喜ぶべきことなのか。
そんなに悲しむべきことなのか。
自分の生活は何ひとつ変わっていないではないか。
ぼんやりと幼心に思っていた、そうした感想は、時と共に意識から薄れていった。
小学校の頃は、取り立てて語るようなことはない。良いことも嫌なこともあったはずだが、夏の日の白昼夢のように意識が遠い。
中学時代に彼は、初恋を経験する。
その少女と同じクラスでないことを、彼は恨めしく思った。
大人になってからもノスタルジックな感傷と共に思い出される彼女は、二年生の夏に行方を晦ました。
それから、友人も出来たり、恋人も出来たりした。
何人目かの恋人と結婚したが、わずか半年で破綻。しかし、その次に結婚した相手とは上手くいった。
その彼女、銀錠志穂(ぎんじょう・しほ)との間に、鋭郎と鈍郎を設ける。
色々あったものの、健やかな家庭を築けたと思っていた。
ところが1974年、鋭郎が9歳、鈍郎が2歳のときに、志穂は自殺してしまう。鋭郎の10歳の誕生日が、間近に迫っていたときだった。
理由は全くわからなかった。
心当たりも無かった。
逆に、とても理由とは思えない、細かな心当たりは多すぎた。
どれが決定打でもなく、日々の生活の中で少しずつ積もり積もったものが溢れたのだろうか。
そう思うしかなかった。
そう思えるまでにも3年かかった。
晴れない気分のまま貞主は、再び“次”を求め始める。付き合っては別れ、その繰り返しで、不実な行いもした。
気が付けば40歳を過ぎていたが、心は惑うばかり。子供たちの方が、よほどしっかりしていると感じた。
1981年。鋭郎は17歳、誕生日が来る前の鈍郎は9歳。兄は名の通り鋭く賢く、弟も年相応より大人びていて、鈍色の頭脳を持っていた。

この世での、自分の役目が終わったと感じるのは、どんなときだろうか。
役目を終えた者たちが、それに気付かず無様な生を晒すことに、いつからか貞主は強い怒りを感じていた。
老人に向けた言葉ではない。20歳で役目を終えた青年もいる。10台で役目を終えた少女もいる。太く短い人生を、精一杯生きた者たちだ。
若いうちに死ぬのを誉れとしているわけでもない。30歳を過ぎてからスタートを切った作家もいれば、50歳を過ぎて役目を半分も終えてない革命家もいる。
年齢ではなく、生き方。
“役目を終えた”とは、“努力を終えた”ということだ。
努力を投げ出した者は自ら死ぬべきだと考えていた九古貞主は、その信念を自らにも適用させ、その年の5月に阿蘇山へ向かった。
そして帰らなかった。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「澄んだ瞳、気高く上品な美女だからこそ、薄汚い連中に汚されそうになると、興奮度MAX」
ゴリーレッド「何の話をしている?」
コング「きのうのおさらい」
ゴリーレッド「しなくていい」
火剣「曇りまくりの眼はヒット」
ゴリーレッド「17歳と9歳。年の離れた兄弟」
火剣「名前は鈍郎でも鈍くない」
コング「イイ男は鈍感なふりをする」
火剣「この世での自分の役目が終わったと感じる時?」
コング「あまり深く考え過ぎるのもどうかと思う」
ゴリーレッド「人生を真剣に考えることは素晴らしいことだが、それで死に向かうというのは避けたい」
火剣「驚くほど有名作家の自殺は多いな」
コング「芸能人も結構自殺している」
ゴリーレッド「そもそも使命など考えたこともない人もいる」
火剣「勘違いしている人間と口論したことがあるな。デッケー夢を語る若者に、『バカ、テレビに出てる連中は選ばれし人なの。我々とは始めから違うの』」
ゴリーレッド「我々と勝手に道ずれにしたがる」
火剣「凶暴なまでに夢なんか実現されてたまるかという勢いだ。人を殺しかねない勢いを感じた」
コング「人を気にし過ぎる人生は良くない。人として大事なことは、女子は美脚美ボディを磨くことであり」
ゴリーレッド「タバスコを一気飲みしたいと?」
コング「殺人未遂だ」
火剣「明日から12月。駅前にはツリーが準備されていた」
コング「ツリーか。紐里の出番だ」
ゴリーレッド「ネックブリーカー!」
コング「NO!」
火剣「とにかく年齢も境遇も関係ねえ。人生のこの先に素晴らしいドラマが待っているかもしれねえじゃねえか」
コング「隣の美女が『お湯が出ないんでシャワー浴びさせてもらえますか?』」
ゴリーレッド「そういうことじゃなくて」


火剣獣三郎
2015/11/30 17:35
>火剣さん
恒常的に希死念慮がある私ですが、自分は役目を終えてないと思うと、まだ生きようと思えます。
しかし鈍郎の周囲は、自ら死ぬ向かう人が多く・・・?

山田「ホラーじみてきた。」
佐久間「だが幽霊と人間、どっちが恐い?」
山田「うーむ。」
佐久間「夢を語る者に反対する理由は、火剣の言う通り、ひとつしかない。心配してるのではなく、実現されたくないだけだ。」
八武「自分より優れた人間が増えてほしくないんだろうねぃ。自分が夢に敗れた過去があるなら猶更。」
神邪「あるいは、その人が気に食わないから。」
佐久間「そんなところだな。」
維澄「本当に心配している人は、具体的に煮詰めていこうとするもの。賛成も反対も、無闇に行うのは思考停止に過ぎない。」
八武「まずは丁寧に話を聞く。相手が美女・美少女なら猶更。」
山田「おい。」
八武「そして丁寧に服を脱がし・・」
山田「佐久間、タバスコあるか?」
佐久間「暴力皇帝たちは今日も元気です。」
山田「暴力は良くないが、まずは肯定から入る。それが基本だな。」
佐久間「どの口で言ってるんだ?」
神邪「それにしてもクリスマスは、どんどん早くなりますね。2004年の作中では12月に入ってからでしたが、今では11月からクリスマスソングですよ。」
八武「クリトリスを弾いてソプラノソングを奏でよう。」
山田「ラリアット!」
八武「ごっ・・」
アッキー
2015/11/30 22:46

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