佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 23

<<   作成日時 : 2015/12/10 00:00   >>

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「・・・・・・。」
意味がわからなかった。
「・・・・・・。」
茶倉は薄汚れた通学鞄の重みで手を下げて、そのまま座り込んでしまった。
血を吐き、泡を吹き、涙と鼻水に塗れた笑顔で、母は失神していた。あちこち皮膚が裂けていて、鉄臭い香りと共に、失禁した匂いが漂っていた。
「・・・・・・。」
何かを思っているはずなのに、思考が動かない。目の前の状況を分析する為の機能が、はたらかない。
ニヒリズムの薄皮に守られた心は、次の行動を決めかねていた。
「そうだ・・・救急車・・・呼ばなきゃ・・・」
ふらふらと立ち上がった茶倉は、119番を押した。
それからのことは、よく覚えていない。
気を失っていたのかもしれない。

茶倉の生活は破綻した。
意識の戻らない母親は、泣きもせず、笑いもせず、カネを稼ぐこともない。
貯金など無い。急いで生活を立て直さなければならなかったが、知識が無い。情報が無い。
(福祉の勉強をするんだった。)
とはいえ、母親と役所のやり取りを見ていると、生半可な知識があったところで、かえって嫌な思いをするだけ、無駄だと感じた。
知識は無くとも、何となく雰囲気は読める。
(どん詰まりだ)(くそっ)(終わるのか)
高校を中退して働くという選択肢はある。しかし、それでは今までの積み重ねが無駄になってしまうのではないかと、ひどく恐い気持ちになった。努力してきたからこそ、恐怖に怯える。何だそれ。
(無駄は嫌い)(無駄は嫌いだ)
無駄を省く生き方は、余裕の無い生活から来る必然だった。
その余裕の無さは、茶倉を追い詰めていた。
学校は頼れない。
役所は頼れない。
祖父母は既に死んでいる。
(あれは)(何だったの)(狂って)(キレてしまったのか)
母親の豹変を常識的な思考で捉えれば、そういうことになるだろう。
そのときの茶倉には、想像もつかないことだった。
“イヴィル”という存在を。
まして自分が、生まれたときから数奇な運命を背負っているなどと―――



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「イヴィルはいったい何がしたいのか?」
コング「あまり悲劇だとギャグを飛ばしにくいな」
ゴリーレッド「飛ばさなければいい」
火剣「賢吾のように極貧のどん底から這い上がって大金持ちになった人間が増えれば、貧しい人間の気持ちがリアルにわかる分、打つ手も語る言葉も違ってくる」
ゴリーレッド「生まれながらに裕福なボンボンがお金で人の心も買えると言うとバカ丸出しに聞こえるが、極貧を経験した人がお金があれば何でもできると言うのは実感なんだ」
火剣「そうだ。金さえあれば! 金さえあれば! と百回千回死ぬ思いをしてきた人間にとっては、お金があれば何でもできるという思いが強い」
ゴリーレッド「金がないと何もできない世の中だからこそ、悲劇が消えない。金なんかなくても皆が心豊かに暮らせる社会を築こうというリーダーが登場しないか」
コング「原始時代に戻り、みんな裸で暮らすのだあ!」
火剣「極端は良くない」
コング「もちろん裸になってもいいのは美女及び美少女に限ることは言わなくてもわかるね?」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「失業率の数字が3%台で改善と見てはいけない。朝から晩まで働いても生活できない薄給が数字に含まれていないんだから」
ゴリーレッド「曇り空は続くか」
コング「茶倉の心を快晴にする方法はMになること。Mは試練に強い」
ゴリーレッド「地獄突き!」
コング「待て! 心理だあ!」

火剣獣三郎
2015/12/10 12:40
>火剣さん
目的が不明なだけに、いっそう不気味なイヴィル。
そして破綻した生活では、それよりもカネのこと・・・。

山田「まさに『夢を叶える診療室』で描かれていた。本来なら最後のセーフティーネットになるはずの役所が、貧困者を追い詰めている。」
神邪「マサキも言ってました。役所の連中は信用ならないと。」
佐久間「まあ、カネで心が買えるタイプの人間だしな。そういう意味で悪徳金融と大差ない。」
山田「真面目な職員もいるんだが、そういう人は“成績”が良くないと評価されることが多い。やってられない。」
八武「茶倉は生粋のSと見る。」
山田「何だ急に。」
維澄「仲矢が空元気で笑っていたように、M的な心理で緊急避難することは出来るけれど、問題解決にはならない。ドクター白茶熊のように、信念とカネの両方を備えている人がいなければ。」
神邪「信念とカネ、広く言えば精神と物質ですか。どちらか一方だけでは、なかなか響かないんですよね。」
佐久間「カネで心が買えるというのは、今でも半分は嘘だ。全くカネに心を動かされない者は少ないが、かといって人格、人柄に惹かれている部分が嘘ということにはならないし、実質それが大きい部分はあるんだなぁ。」
アッキー
2015/12/10 23:10

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