佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 25

<<   作成日時 : 2015/12/12 00:00   >>

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人間、10年以上も生きていれば、いろいろなことを学ぶものだ。
例えば、世の中には不幸な偶然が溢れかえっているとか。
例えば、渡る世間に鬼は無いが、鬼よりも厄介な人間がいるとか。
例えば、きっかけは些細なことであるとか。
公的には17歳、実際には13歳の茶倉は、唄を聞いていた。彼女の人生を左右する決断は、その唄を聞いたことが、きっかけだった。

自衛隊に入ろう 入ろう 入ろう
自衛隊に入れば この世は天国
男の中の 男はみんな
自衛隊に入って鼻閉じる

皆さん方の中に 自衛隊に入りたい人はいませんか
一旗あげたい人はいませんか
自衛隊じゃ 人材 求めてます

それは自衛隊員の募集だった。
本来は自衛隊を皮肉った反戦歌であるはずの唄が、こうして自衛隊の宣伝に使われていることは、それこそ皮肉なことと言うべきだろうか。
それは自衛隊の広報が、皮肉も理解できない間抜け揃いというよりは、左派・左翼の凋落が深刻であることを示しているのだ。
自衛隊が鼻閉じる(華と散る)ことを誉れだと開き直れば、この唄は皮肉としての効力を失う。自衛隊が「軍隊ではないですよ」「平和の為ですよ」という欺瞞に基づいている限りにおいて、それを皮肉れているのである。
もし、自衛隊の広報が、そうしたことまで考えて、敢えて敵方の唄を取り込んだのだとすれば、間抜けどころか大した返し技だ―――しかし、そんなことは別に、どちらでもいい。茶倉にとっては、どうでもいいことだった。
カネを稼げるなら上々。
華々しく散るなら、それも良し。
どうしたって今よりマシだ。
うざったい軍国主義などに頭を垂れる気は無いが、さりとて実体の見えない反戦平和など唱えるのは下の下。
仮に4番目があるとすれば―――実際それが茶倉の行き着いた道ではあったのだが―――それは今まで無駄だと切り捨ててきた中にあったと言えるかもしれない。
ヤスパースのいうところの、限界状況を突破する手段と同じ。すなわち、他者と交わること。
渡る世間に鬼は無く、鬼より冷たい人だらけだが、それだけでなく、妖怪がいると知った。
世話になっていた塾で、自衛官になる為の試験対策をした講師に出会ったとき、そう思った。
「はじめまして、九古です。」
彼の双眸は、ぽっかりと開いた、底知れない闇のように思えた。
真面目で謙遜ぎみの、優しい雰囲気の裏側に、ひたすら虚無が広がっているようだった。
「はじめまして、咲村茶倉です。」
寒気と安心感を半々くらいで覚えながら、茶倉は自己紹介をした。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「不幸な偶然か」
火剣「運命の悪戯と言うにはあまりにも悲惨な事件や事故はある」
コング「テレビは海外で起こった昔の惨殺事件を面白がって再現する場合があるが」
火剣「渡る世間は鬼だらけ。鬼や悪魔や妖怪というのは、要するに人間のことだ」
コング「僕のような善良な市民は困る」
ゴリーレッド「ついに九古鈍郎と出会ったか。まだ13歳の茶倉」
火剣「13歳でもここまで真剣に人生を考えている少女がいる。だから中学生は子供だからと舐めたらいけない」
コング「13歳を舐めたらダメだろう」
ゴリーレッド「確信犯には延髄斬りしか待っていない」
コング「待て」
火剣「20歳前後の頃はよく『自衛隊入りませんか』と道端で誘われた。ビートたけしがギャグでやっていたが、本当に歩行中に突然『自衛隊入りませんか?』と言ってくるんだ」
コング「僕は駅前でビラを配っていた隊員と面白半分に議論したらアパートまでついて来てしまった。もっと話したいと。全体は知らないが、少なくともあの男は真剣な人間だと思った」
ゴリーレッド「やはり組織を集団で見ては誤る。一人ひとりの顔を見ないと」
火剣「悪い人間もいれば良い人間もいるか。警察でも教師でも役人でも政治家でも」
コング「色魔界は人間界に比べたら善良だ」
ゴリーレッド「善良ではない」
火剣「そうだな。未成年は犯す、体は傷つける、平気で人を殺す」
コング「むごいい」
ゴリーレッド「話がズレてる。茶倉のように波乱万丈の青春を生きて来た人間が、底知れない闇のように深いと感じる鈍郎の眼。どんなだ」
コング「何人か逝かしたな」
ゴリーレッド「意味がわからない」


火剣獣三郎
2015/12/12 23:26
>火剣さん
孔子は10代の頃から高い志を持っていたそうですが、それは決して特異なことではなかったと思っています。真剣に人生を考えるのに、早すぎるということはない。
茶倉は、その真面目さを保ちながら、自衛隊員を志しました。そして鈍郎との出会い・・・あのシーンは、茶倉の側からは、このように見えています。

維澄「懐かしい唄だね。」
八武「最近あんまり聞かないが、そう言えば勧誘の方も下火だねぃ。革命運動もパッとしないし、日本全体に元気が無い。」
山田「東日本大震災からの復旧も、まだまだ終わってないしな。」
佐久間「13歳。私が山田と出会ったのも、同じ頃だった。誕生日が来てないから12歳だったが。」
山田「その頃の佐久間と似ているな。」
佐久間「カネと戦いが好きで人嫌い、軍国主義も平和主義も嫌い・・・うん、今でも変わってない。」
維澄「私と佐久間は最初、敵同士だったけれど、テニス対決の後で議論してから、今まで付き合いが続いている。これこそ運命の出会い。」
佐久間「面白半分だったが、意外と話が合った。いじめ問題に真剣なのが、決め手だったかな。」
維澄「同じく。私の周囲では、いじめ問題に関心の高い左翼なんか1人もいなかった。」
神邪「茶倉さんと鈍郎さんが惹かれあったのも、その点は重要だったでしょうね。」
佐久間「迫害され続けた人間は、戦い続けるほど虚無的な目になる。」
アッキー
2015/12/12 23:59

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