佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 38

<<   作成日時 : 2015/12/26 00:00   >>

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旅行では性交渉は無かった。
そのことを鈍郎も茶倉も、態度にこそ出さなかったものの、残念に思っていた。
この問題は根が深い。沖縄旅行のときだけの話ではない。
結婚してから茶倉と鈍郎は、一度もセックスをしていなかった。
したくないわけじゃない。肉体的に不備があるわけでもない。精神的な鎖ゆえ―――それは双方の内心に深く絡みつき、こびりついている呪いなのだ。
茶倉にとっては、セックス―――子供を作ることは、無駄で、害悪で、不幸なことだと、子供時代の経験から心に染み付いていた。男に捨てられ、貧困の中で自分を育て、発狂し、今も入院している母親。その姿を思うほどに、そして周囲からの嫌な声を思い出すほどに、子供を作るのが嫌で嫌で仕方なかった。わずかでも子供が出来る可能性があることは、したくなかった。
「子供は欲しくありません。子供は嫌いです。」
鈍郎に向かって述べたのは、思考過程をスッ飛ばした結論のみだった。
社会や学問のこととなると順序だてて話せるのに、この手のことは、いつもこうだ。
奥手とか、照れくさいというより。
過去を語りたくないのだ。
「そうか。」
素っ気なく返事した鈍郎だったが、内心では悶々としたエネルギーが蓄積していた。率直に言えば、犯したい。
しかし同時に、どこか安堵したのも事実だったのだ。
『おまえなんかに子供を育てる資格なんか無いからな! おぼえとけよ!』
舜平に言われたセリフがリフレインする。
覚えているとも。
しっかり覚えているとも。
『・・・・・・死ねよ、恥知らず。』
自分の言った、このセリフも。
(ガキは嫌いだ)(死ね)(ゴミが)
今でも思っている。
(茶倉も)(子供は嫌いだと)(良かった)
鈍郎は、いわゆる“子供好きな女性”が気に食わない。子供を可愛いものだと、目を輝かせて語る人間が好きではない。
子供に嫌な思いをさせられている人間に対して、「子供なんだから大目に見てあげて」と、無神経な暴言を吐き散らすゴミには、心底ヘドが出る。
意識の高い子供を“子ども扱い”して見下し、可愛がっているつもりになっている大馬鹿者は殺してやりたい。
そして同時に、自分は幸せ者なのだと思った。
茶倉とセックスできないのは、つらいことだが。
それでも、今まで散々の散々に味わってきた下卑た吐き気を味わうことのない、良きパートナーに巡り会えたことは、幸運であり、幸福だ。
美しい妻を間近で眺めていられるのは幸せだ。トータルで考えて、これは何かの罠と思うほど幸せだった。
(やっぱり夢か?)
ほっぺたを思いっきりつねってみた。
幸せな痛みだった。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「旅行では性交渉は無かった!? 何ですと」
ゴリーレッド「騒ぐな」
火剣「でも二人とも残念に思っているならいいのではないか」
コング「愛する妻が浴衣姿で布団に寝ている。しかも犯しても犯罪にならない唯一の男。自然に抱きたくなるはずではないか!」
ゴリーレッド「人の話は最後まで聞こう」
火剣「茶倉と鈍郎は結婚以来一度もSEXをしていない?」
コング「何ぬねのはひふへほそれにつけても女は瑠璃子!」
ゴリーレッド「うるさい」
火剣「呪いか」
ゴリーレッド「子どもは欲しくない。良いではないか。二人で決めることで周囲や世間が決めることではない」
コング「子どもはいいが、でも犯したいだろう」
火剣「鈍郎はもちろん犯したい」
コング「茶倉も犯されたいはず」
ゴリーレッド「抱かれたいだろ?」
火剣「100%の避妊法はないからな」
ゴリーレッド「こういう夫婦もいる。孫の顔が見たいだの、お子さんはまだだの、無意識に人を傷つける言葉がある」
火剣「ニュースも少子化少子化って、まるで子を持っていない人間が悪いみたいに言うな」
コング「僕も子はいらない。僕が子育てをしている場面は思い浮かばない」
ゴリーレッド「確かに恐ろしい」
コング「恐ろしいまで言うか」
火剣「でも抱きたいだろうな」
コング「SMプレイを楽しめばいい」
ゴリーレッド「黙れ不謹慎男」
コング「茶倉をスッポンポンにして手足を拘束し、媚薬を全身に塗ってサボテン電マで全身の性感帯を責めまくr」
ゴリーレッド「バックドロップ!」
コング「がっ・・・」
火剣「鈍郎が嫌がる言葉は世間で日常的に言われている言葉だけに、苦労しそうだが」

火剣獣三郎
2015/12/26 17:55
>火剣さん
完全なるセックスレス夫婦です、鈍郎と茶倉。世間的には異端ですが、これはこれで幸せな本人たち。
しかし意思疎通が上手くいってないあたりが、後々・・・?

八武「本当にセックスレスなのだねぃ。」
維澄「らしいと言えば、らしい。」
佐久間「毎日のように妻を犯している死根也には、理解できないだろう。」
八武「そうでもない。子供を嫌う感覚が、私の中にも無いではないからね。」
山田「死根也の病院にも小児科はあるが。」
八武「いやまあ、嫌う感覚が皆無ではないというだけで、茶倉や鈍郎ほどではない。仕事なら全然平気だ。」
山田「俺は『子供かわいい』とか言ってしまいそうだな。」
佐久間「ロリコンだからな。」
山田「だから違うと。」
佐久間「真面目な話だ。ロリコンやショタコン、ペドフィリアというのは、子育てに必要な資質でもある。」
神邪「わかる気はします。犯罪方面で取り沙汰されるせいで変な印象が強いですが、その資質が薄いほど子供嫌いになる。」
維澄「性的な行為があれば犯罪者、無ければ良き親。そういう部分はあるかもしれない。」
八武「娘がいたら、私は犯罪者になる。」
山田「確定かっ!」
八武「それはさておき、昔は青少年と子供の交流の機会が多かった。しかし“不審者対策”の影響で減っている。鈍郎も茶倉も、子育てに嫌な思い出しか持つ機会が無かった。」
神邪「学校で迫害されたことも、それと無関係ではないですよね。」
佐久間「迫害されてない大多数を、世間と言う。世間と乖離した感覚の持ち主は、死ぬまで苦しみ続ける。・・・だが、大多数にはわからん幸福を味わうことも出来る。」
アッキー
2015/12/26 23:16

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