佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 39

<<   作成日時 : 2015/12/27 00:00   >>

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自分の考えていることは自分でわかるが、他人の考えていることはわからない。他人が恐い。
こちらの精神的な事情を知らないまま、自分の与り知らぬところで、不利益な行動をしていることを想像してしまい、不安で落ち着かない。刃物で自分の腕を切り刻みたくなる。
そうした恐怖は鈍郎には感じないが、しかし夫といえども他人なのだと、茶倉は痛感する。
子供が欲しくないという言葉に、素っ気なく返事されて、安堵したのは確かだが、同時に不安になっていた。
それほど強い口調で言ったつもりはないが、しかし内容からして既に、夫を、男を傷つけるのに十分ではなかっただろうか?
あくまで「子供が嫌い」というのが主たる思考なのだが、「あなたの子供なんて欲しくない」という意味として捉えられてしまってはいないか。
(というか普通そうよね。)
顔が青くなるが、今更それを蒸し返すのも気が引ける。何と言えばいいのだ。
鈍郎が自分とセックスをしようという気配が無いことを、茶倉は安心すると同時に疑問に思う。たとえ拒絶されたとしても、男という生き物は、そこまで我慢できるものなのか。
そこまで深く傷つけてしまったのだろうか。
(あるいは―――)
茶倉は、鈍郎の本棚を探ってみることにした。
そもそも押しかけ女房の自分が、鈍郎の好みに合致しているとは限らないではないか。
(あなた、ごめんなさい。)
本棚には持ち主の人格が現れるという。こっそりと人の心を覗いているようで、言い知れぬ背徳感に襲われる。
「―――!!」
そこにあったのは、思いもよらぬ本だった。
人に言いにくい趣味と聞いて、どのようなものを思い浮かべるだろうか。
90年代では、SMも市民権を得ていたとは言いがたい。今でも多数者の賛同は得られていないだろう。
怪奇もの、オカルト。妖怪や幽霊、超常現象なども、自分からは進んで言いにくいかもしれない。
ましてグロテスクやスプラッターともなると、なかなか言えない雰囲気がある。
あるいは、幼児性愛。よく槍玉に挙げられるものとしては筆頭だ。
そして世界的に見た場合、幼児性愛よりも迫害の憂き目にあっているものがある。
(“イイ男”!?)
浮気ではない。そういう意味ではない。
その道では有名なフレーズに、「ウホッ、イイ男」というものが存在するのだ。その“イイ男”である。
すなわち、同性愛。
鈍郎が隠し持っていたのは、山川純一の単行本だった。
(あの人、ホモなの?)
しかしそれは、短絡的な考えというものだった。同性愛者ではなく、男も女も好きな両性愛者かもしれないし、更には異性愛者であっても同性愛を扱った作品を愛好することもある。
自身の性指向と、読む分に何を好むかは、不可分ではあっても同一ではない。
そのことを茶倉は思い返し、同時に、そういった話を吉岡一曹としていたWAC時代のことを思い出していた。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「他人の考えていることなんかわからねえな」
コング「夫婦も他人という考えは重要」
ゴリーレッド「よく女性が口にする言葉が「あなたの子を産みたい」
コング「男は我慢できない。満月の夜はなおさらだ。それに一般論として男の浮気を責められる女は、体を許している女だけ。まあ、鈍郎も茶倉も否定すると思うが」
火剣「確かに一般論はそうだ。でも一般論より大事なのは自分のポリシーだ」
コング「ポリシーよりも大事なのが背徳感だ」
ゴリーレッド「意味がわからない」
コング「背徳は文化」
火剣「読む本と性指向が同じと思われたら困る」
コング「SMもリョナもまだまだ変態扱いだ。ヒロピンファンは1000万人いるが」
ゴリーレッド「いないと思う」
火剣「スプラッターは佐久間んに任せよう」
コング「全裸大の字拘束の美女の股に回転式電気ノコギリが迫る。そういうのは好きだが本当に切り刻んでギャーはかわいそ過ぎる」
ゴリーレッド「吉岡一曹と語り合ったことがあるのか」
コング「吉岡一曹に全裸で泊まってもらって茶倉は出かける」
ゴリーレッド「何の実験だ?」
コング「そうえいば牛裂きシーンは見てしまう。やはり見る読むと指向は別だ」
火剣獣三郎
2015/12/27 21:41
>火剣さん
子供の頃から他人に怯えて生きてきましたが、大人になってから、いっそう酷くなりました。しかしその分だけ、心を許した相手への信頼は高いです。
そして、あまり人付き合いをしない代わりに、様々なジャンルの本を読んできました。

佐久間「山田の子を産みたい。」
山田「黙れ。」
佐久間「これだよ。体を許そうにも、男の側が拒否している。」
八武「彼は照れているのだよ。」
山田「嫌がってるんだ。」
佐久間「素晴らしい。」
山田「これだよ。“人の嫌がることは進んでやろう”を、デフォルトで曲解して使っている。」
神邪「背徳感を覚えますね。」
維澄「それとも違うような・・。」
佐久間「本棚を見れば人柄がわかるというのは本当だが、あくまで分析者にとっての話であって、一般論ではない。」
山田「なるほど、大事だな。」
維澄「愛読、願望、創作、実行、全て違う。関係性はあっても、それを殊更に主張すると間違いになる。」
神邪「犯罪者の本棚を漁って報道し、同じ本を持っている人が嫌な思いをするんですよね。」
八武「吉岡一曹に全裸で・・・ふむ。鈍郎の理性が試される。」
山田「そういう実験なのか?」
神邪「鈍郎さんを信じましょう。」
維澄「やらないやらない。・・・やらないよね?」
アッキー
2015/12/27 22:22

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