佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 41

<<   作成日時 : 2015/12/29 00:00   >>

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“マイノリティーの中のマイノリティー問題”は、突き詰めれば少数派だけの話に留まらない。
男である前に商人である者もいれば、女である前に棋士である者もいるだろう。大人とか、子供とか、民族とか、人種とか、そういった“カテゴライズされるもの”全てにおいて、こうした問題は付き纏う。
茶倉にとって、女であることは自分の属性の1つに過ぎない。女だからという理由で見下されるのはヘドが出るが、さりとて“女性の解放”なる胡散臭いものに賛同する気にはなれないし、まして“女らしさ”など肥溜めにでも放り込んでおけと思う。
男尊女卑であれ、女性解放であれ、性別を第一カテゴリに置いている時点で、茶倉にとっては等しく煩わしい。
逆に言えば、茶倉はBLを愛好するが、ただ男同士が絡んでいればいいというものではない。愛好するのもBLだけではない。茶倉からしてみれば、ジャンルだけで好き嫌いを決めるのはナンセンスだと思うし、ジャンルの定義を狭めるような言説も嫌いだ。
字面で言えばBLとはボーイズラブ(少年愛)のことであるが、大人も普通に登場するし、登場していい。また、“ゲイ向け”と“女性向け”を過度に分け隔てするのも考え物だ。見目麗しい男たちの絵を好む男性もいれば、むくつけき男たちの絵を好む女性もいる。
茶倉にとって、その2つは別物であっても、別腹でもある。どちらかだけを愛好し、もう片方は受け付けない、というタイプの人間ではない。
(これ面白い。)
山川純一のコミックスを読んでいると、玄関のチャイムが鳴った。そして鍵を開ける音。夫だ。
「ッ!?」
慌てて本を閉じて棚へ戻し、茶倉は自分の本棚から「真珠夫人」を取り出して、適当なページを開いた。瑠璃子が美奈子に頬ずりしているシーンだった。
そこへ鈍郎が疲労と充実の中間みたいな顔で現れたので、茶倉は微笑を浮かべて挨拶した。
「おかえりなさい、あなた。」
「ただいま。」
鈍郎は本のタイトルに一瞥くれてから、背広を脱ぎつつ自室へ歩いていった。
(ふーっ、何とか知的でクールな妻を演じきれたかしら。)
エロ本を読んでいるところを母親に見つかりそうになった中学生男子の心境とは、こういうものだろうかと思いつつ、茶倉は「真珠夫人」の続きを読み始めた。
しかし、ふと母親のことを思い出して、手が止まった。
(お母さん・・・。)
母親の入院費を稼ぐ為に自衛官になり、同じく家族の為に自衛官になった吉岡と出会った。この手にある「真珠夫人」は、結婚祝いに吉岡からプレゼントされたものだ。そうでなければ一生読む機会は無かったかもしれない。
世の中は、どれだけ偶然の産物で満ちているのだろう。対極的には必然の範疇であっても、人生を辿っていけば偶然の連続だ。あらかじめ起こることを知っていれば、覚悟は出来るが、感動は薄れてしまうのだろうか。
このとき茶倉は、まだ自分の運命を知らない。
20歳を迎えて間もない冬。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「きょうも大いに語ろう。ぐひひのひ」
火剣「性別については本当に無意識のうちに、女らしく、男らしくと口にする者は多い」
コング「女である前に戦士。茶倉のような誇り高きヒロインを逆手に取るのです。『やめろ!』と睨む強気なヒロインに『女の子はやめてだろ?』と脅し『やめて』とその口から言わせる」
火剣「誇り高き女は屈辱も二乗か」
コング「それがSですぜ旦那」
ゴリーレッド「大晦日を命日にするか?」
コング「待とう」
火剣「ジャンルより中身、内容が重要だ」
コング「♪そのとーり! SMなら何でも好きと思ったら大間違いだ。創意工夫を凝らしたストーリー性の高さと何よりヒロインに魅力がないと話にならない」
ゴリーレッド「女性がみんなイケメンが好きと思うのも浅い」
火剣「美しき上品なヒロインが屈強なケダモノに無理やり犯されるシチュエーションを好む女もいる」
コング「真珠夫人・・・瑠璃子?」
ゴリーレッド「あの瑠璃子ではない」
火剣「何で知的でクールな妻を演じないといけないんだ?」
コング「知的でクールな妻を演じ切り、ある時、彼シャツ姿のけだるい格好でギャップ萌えを狙っているのかも」
ゴリーレッド「ないない」
火剣「人生は偶然の産物か。計画通りに行かないのが人生だからな」
コング「ハタチかあ」
ゴリーレッド「目を光らせるな」
火剣「栞んの名言は重要だ。差別されていないのに憤る人こそが迫害の悲劇を阻止できる」
火剣獣三郎
2015/12/29 10:22
>火剣さん
茶倉とは逆に、女らしく見られることを喜ぶ人も多いので、どうしても無意識的に使ってしまう人は多そうです。
ジャンルとストーリー性の話もそうですが、そこに限定された問題ではなく、広く通じる提起を意識したいものです。

維澄「広く通じるといっても、多数者に媚びるわけではないけどね。」
神邪「真剣に考えている人なら誰でも、ってことですね。」
佐久間「山田も私との将来を真剣に考えよう。」
山田「そろそろ佐久間を抹殺しておくべきか、真剣に悩んでいる。」
八武「美しき女戦士が猩々の如きケダモノに後ろから前から・・」
山田「お前は何を考えているんだ。」
八武「悩ましい。」
佐久間「同性愛への偏見は、ゲイとニューハーフを同一のものとして描いて、更にはイロモノ扱いにする作品の多さに顕れている。元はといえばテレビのせいだと思うがな。」
維澄「薔薇にしろBLにしろ、そうしたイメージを払拭する意義を含んでいるね。」
神邪「現実の歪みを、フィクションが増幅することもあれば、整えることもあるわけですね。どちらが優れているかは言うまでもない。」
佐久間「よくSMも作中で、浅薄な描かれ方をしているのが目に付く。作者の理解が浅いのが見え見えだってのが結構ある。」
維澄「それだけに、『ナナとカオル』が出たときは、時代は変わったと思ったよ。」
八武「目指せ、SM21性器!」
佐久間「上手い。」
山田「だが最低だ・・・。」
アッキー
2015/12/29 22:28

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