佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス 69

<<   作成日時 : 2016/01/27 00:00   >>

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「ん〜ん〜んあっ〜ん〜」
イヴィルは眠そうな目をして首を振る。
「完全復活したとはいえ、復活が完全なだけだからなあ。10番台ごときに後れを取るだけでなく、演技を見抜くことも出来ないなんて、自分の情けなさに愛想が尽きそうだよ〜。」
しょげた声と内容だけ聞けば、意気消沈しているようにも思える。
だが、イヴィルを纏う電子たちが、かつてなく盛んに脈打っていることを、5人とも感じていた。
まだ戦いは続く。

そう思っていただけに、次のイヴィルの言葉は意外だった。
「る・ら・ら・ら〜、私の負けだ。降参する。」

「・・・?」
鈍郎は油断なく気を引き締める。
その横でクラメーションと小松が、渋い顔をしていた。
「ん・・・ん・・・んあ・・・ん・・・だいぶ眠くなってきたし、ここいらで“試運転”は終わりにしておくよ。煮るなり焼くなり好きにすればい・・・い・・・・・・・」
そのままイヴィルは、ゆっくりと降下し、アスファルトに体を横たえて目を閉じた。
「“魔道――」
「待って!」
茶倉に殺気が帯びたのと、小松が叫んだのは、殆ど同時だった。
イヴィルの肉体は、クラメーションの“月船”に包まれていた。
「何のつもり?」
「“母さん”の体を、壊さないで・・・。」
「・・・っ」
それは茶倉にとっては、トラウマを呼び覚ます言葉だった。そう言われたら手は出せない。
側で鈍郎も、険しい顔で目を閉じている。
「ねえ、クラメーション。このまま置き去りにする選択肢は無いわよね・・・?」
赤から緑になった双眸で、ユイファが不気味に笑いながら言う。
「そうなるな。“ε”だけでなく、あんたたちの身柄も拘束しなければならねえ。」
「願ったり叶ったりだ。君たちに付いて行けば、我々の知りたいことを知ることが出来るのだろう?」
「どうやら、そうみたいね。ただし、イヴィルから得た力は残ってるみたい。夫と私に危害を加えるようなら、死ぬまで抵抗するわ。」
「わかってる。こちらとしても、あんたらを敵に回したくはない。絶対にな。」
クラメーションの目は、強い輝きで満ちていた。
そして小松は、茶倉と鈍郎の手を握りながら唇を結んだ。
「あの、おふたりは、これから・・・知りたいことだけでなく、知りたくなかったことも知ってしまうかもしれません・・・。ですが、どうか絶望だけは、しないでください!」
聞きようによっては脅しとも取れる言葉だが、要は資格を計っているのだ。
今更、である。
軽んじているわけではないが、耐え難いことなど何度も経験してきた。恐れることはあっても動じることはない。
“知る”ことは“知らない”ことより幸せであるというのは、心の強度を無視した観念遊びでしかないということなど、とっくに知っているのだから。
きっと耐えられないような話が飛び出すのだろう。
それがどうした?
泣き叫び、苦痛で飯も咽を通らずに、何日も過ごすのだろう。
それがどうした?
そんなことなら、何度も何度もあった。
全ては過去の踏襲だ。
未来を見失うほど、楽な生き方はしていない。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「私の負けだ。降参する?」
火剣「試運転?」
コング「惜しい。煮るなり焼くなり好きにすればいい。このセリフが茶倉か瑠璃子だとスリリングだが、イヴィルでは緊張感に乏しい」
ゴリーレッド「黙れ不謹慎男」
火剣「地面に寝るヒロイン」
コング「サトリンに似ているから混乱していたが、そうかイヴィルの敵ということは、正義の味方かもしれない」
ゴリーレッド「クラメーションは真剣だ」
火剣「茶倉のトラウマが蘇る」
コング「茶倉を回したくないか」
ゴリーレッド「一回死ぬ?」
コング「待ちたまえ」
火剣「敵に回したくない鈍郎と茶倉。いろいろな意味でわかる。やはり3人はサトリン側か?」
ゴリーレッド「どうなのか」
コング「世の中には知らないほうが幸せなこといっぱいあるとのことよ。by李朱美」
火剣「誰だ?」
ゴリーレッド「耐え難い経験をしてきた二人は心が鍛えられているから多少のことは大丈夫だと思うが」
火剣「心が鍛え上げられるという意味では、苦労もプラスに働くことがあるな」
コング「絶望が待っているかもしれないと身構えたほうがいい。不意打ちは強者を持も倒す」
火剣「ほう」
ゴリーレッド「れんそう」

火剣獣三郎
2016/01/27 17:28
コング「強者をも倒すと言おうとしたのに、持が削除されていなかった。何たる印刷ミス」
ゴリーレッド「印刷ミスではなく噛んだだけだ」
火剣「心の強度か。こればかりは目に見えないからな」
コング
2016/01/27 17:33
>火剣さん
やや不完全燃焼(ヒロピン的にも)な結末となりましたが、今回は試運転に過ぎません。派手なバトル展開は第三部へ持ち越しです。
とりあえず敵ではない3人。連れられて向かう先は・・・。

八武「降参してしまっただと?」
山田「これは読めなかった。何を企んでいる。」
佐久間「ガーディアンに言ったことは実力的な意味ではない。殺さないという選択をしたからこそ、今のイヴィルがあるのだからな。」
山田「どういう意味だ?」
神邪「よく言われる8年前の時点で、イヴィルさんを殺そうという動きがあったということですか。」
佐久間「それと、24年前にもな。」
維澄「耐え難い経験を乗り越えてきたら、同じようなことに耐性が出来る。さながら免疫のようにね。」
神邪「乗り越えてきた、というほど生易しくはないと思いますが。」
維澄「通過してきたと言う方が正しいかな。」
佐久間「最悪を想定するのは、後ろ向きではない。心の強度を今できるMAXまで高めておくのは、事に臨む準備だ。」
八武「茶倉は夫を寝取られたショックが、まだ残っているはず。」
山田「それどころじゃない事態で、気が紛れているのか。しかし落ち着いたらぶり返すかも。」
八武「そうならない為にも鈍郎が愛撫を・・・もとい、優しく撫でてあげると言おうとしただけだ、山田くん、拳を下ろしたまえ!」
佐久間「知らないことだらけの扉が開いてしまったの〜♪」
アッキー
2016/01/27 22:33
>コングさん
私も危うく消し忘れそうになっていたり。
心の強度は、鍛えても思わぬところから綻びが出たりしますが、壊れない限りは強くなっていくものかもしれません。

佐久間「アッキーは壊れてるから、弱くなるばかり。」
維澄「心の強さは一本線の強弱だけで図れるものではないよ。」
神邪「複線ですか・・。」
山田「伏線?」
アッキー
2016/01/27 22:37

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