佐久間闇子と奇妙な世界

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<<   作成日時 : 2016/02/09 00:00   >>

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大人と子供の違いは何だろう?

子供の頃の最高の思い出は、世界の全てを知りたいという夢。それに胸を膨らませていたときのことだ。
科学は自分の世界を何十倍にも広げてくれる。果てしない世界を、自由に漂う知識の旅。心地よかった。
ちっぽけな地球の、ちっぽけな人間の、ちっぽけな頭の中に、宇宙よりも大きなものが詰まっている。
人は小さな体の中に、宇宙の果てを見るだけの眼を持っている。それを超えて、想像力は次元を見る。

いろんなことを知るのが、楽しくて楽しくて仕方なかった。食べることも忘れて、貪るように本を読んだ。
目を輝かせて、小さな体を震わせて、知識を食べた。むしゃむしゃ食べた。自分は知識を食べる葦だ。
いつか科学者になって、世界の全てを解き明かしたい。世界の真理へ、果てへ、辿り着きたい。
そう思うと胸がいっぱいになって、涙が出るほど素敵な気分になるんだ。


- - - - - -


いつから天井が見えるようになったのだろう?

子供の頃は、青空を見ていた。果てしない空を見て、限界なんて知らなかったし、意味も無かった。
幼い自分は、真っ直ぐ未来を見つめていて、目に映る景色が光で溢れているように感じていた。

ふと気が付くと、天井が見える。首を傾けると、殺風景な白色が映る。白・・・。
青かった光景は、いつから白く塗りつぶされてしまったのだろう。モノクロームの景色が苦々しく揺れる。

子供だった自分は、大人になっていき、自分より年下の人間が増えていく。
それと共に、自分の限界が見えてくる。自分が取るに足らない、地味な脇役だと。

地面に足を吸いつけられて、後ろ向きに地面が動いているように、鬱陶しい気分が消えない。
アルコールやニコチンで、いっとき憂鬱を忘れ、重い体を引きずって仕事に行く。

幼い頃に憧れた、科学者という職業には就いた。
それも、世界の真理に辿り着こうという研究の、最前線にいる。
世間的には間違いなく、夢を叶えた側の人間なのだ。

なのに、どうして微塵も幸せを感じないのだろう?

世界は自分に優しくないし、自分も他者へ優しくない。強くもなれない。
つらいことから逃げるように、いっときの快楽を求め、快楽の為にカネを欲した。
どうせ返せる当てがあるからと、借金を重ねた。

もういい。もう疲れた。
この案件が終われば、ひと財産を築ける。
借金を返して、重苦しい生活から逃れて、気楽な余生を過ごそう。

まだ余生を考えるほどの年齢ではないが、子供たちを見ていると、自分が酷く歳を取ったように思えてくる。
20歳にも満たない子供が、華々しく活躍している。悩み苦しみながら、喜び悲しみながら、役に立っている。

自分のやっていることなど、他に出来る人が大勢いる。もっと上手くやれる者だって数多くいる。
替えの利かない存在と、いくらでも取り替えられるものがあるとすれば、自分は後者に違いないのだ。

疲れた・・・。


- - - - - -


大人とは、他人の都合を考えてしまう生き物だ。それと意識せずとも、そうしてしまう。
他者の利益を考えて、双方にメリットがあるように考える。それが大人の生き方だ。

子供は、人の都合など考えない。考えないだけで、必ずしも不利益をもたらすわけではないのだが。
他者の利益を考えない子供は、時として災厄を振りまいてくれる。

自分の行動によって、何が起こるのか。
この実験が失敗したら、どれだけの人間が路頭に迷うのか。
そんなことを考えもせずに、真っ直ぐ暴力を振るう。

家族に愛され、友人に恵まれ、感覚が狂うほどの金銭を有していて。
それでも足りないというのだろうか。世界の全てが思い通りでないと気が済まないのか。
ああ、それが子供というものだ。あの白い少年のように。奴らは本質的に同じ生き物だ。

そのことを理解していたはずだった。
なのに、どうしてこうなった?

どうしてこうなった?

「くっ・・・くそっ!」

くそ!くそ!くそ!
どうしてこうなった!?

実験が失敗した。
借金が返せない。
逃げようとした。
逃げられない。

世界は優しく出来ていない。
逃げるには、相応の対価が要る。
対価を支払えない。
だから逃げられない。

支払わないといけない。
しくじるわけにはいかない。
もう後が無い。

後が―――

「あ」


- - - - - -


「じゃま を するな」

邪魔をするな。
おまえたちは何故、私の邪魔をする?
何の権利があって、私の未来を奪おうとする?

おまえたち子供の未来は、私のような疲れた大人の未来よりも、尊いというのか!?

ふざけるな
邪魔をするな

好き勝手に生きている子供が、私の―――

「邪まをっっっ

するなあァあッッ!!!


- - - - - -


「・・・・・・やった?」

どうして私は生きているのだ?
いや、それよりウイルスは、逃げる為の対価は?

「ち、ちゅうだん・・・・・・再、覚醒、だと・・・?」

おしまいだ

「うォォアァあああああああぁああぁ」

おまえだけでも死ネ

「!!うぎゃア!」

ナゼ起き上がれる!?

「・・・ハッ、それは何をしているつもりなのだ?」

今更、おまえが
ナンで、助ける

そこまでか

「―――言われなくても分かってンだよ、この俺が、誰かを助けようなンてよォ」

そこまで

「・・・・・・まったく、甘すぎだよな。自分でも虫唾が走る。・・・けどよォ、ガキは関係ねェだろ。」

そこまで思い通りでないと気が済まないのか

「“俺達”がどんなに腐っていてもよォ、どうしようもねェ人間のクズだったとしても」

どれほどまでにオマエタチは多くを求めるのか

「このガキが見殺しにされて良い理由にはなンねェだろォが!!」

天上の意思に最も近い、“最強”でありながら、何故?
その代償としてオマエは、助けることを手放したのではなかったのか?

いいさ、一方通行
お前が何かを変えられると思っているのなら

まずは
その巫山戯たヒロイックな幻想を
撃ち殺す


- - - - - -


頭を踏む感触というのは、こんなものか。

ごうつくばりのクソガキが
ようやく大人しくなったか

「ふ―――」

“俺達”と言ったな?
お前が私と同じだというのなら、何も変えられはしないのだ。


「“我々”みたいな人間は、みんなそうだよ。」


夜の空は暗く、青く澄んだ光は、どこにもない。
まるで真っ暗な部屋に独りでいるときの、天井のように。


「そんなものなんだ。」








   とある科学の天井亜雄   完

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