佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クラメーションあるいは蔵目翔 1

<<   作成日時 : 2016/02/12 00:00   >>

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後に“X・クラメーション”あるいは“蔵目翔”と呼ばれる男の話だが、彼は生まれたときから10年以上も名前が無かった。親から名前を貰えなかったのだ。
母親からは「おい」とか「お前」とか呼ばれていて、それで事足りた。
父親は誰ともわからず、街の男たちを父親と見立てて育った。
街の人々は彼を好きな名で呼んだ。「チビ」とか「ポチ」とか、まるで犬にでも付けるような名前から、「バカ」とか「デクノボー」などの明らかに悪口と思えるもの、そしてとてもここには書けないような、下品な言葉の数々。
そのどれもが彼の本当の名前ではなかった。
彼を好き勝手に呼ぶのは、一種の娯楽だった。悪口や下品な言葉で呼ぶのは、ストレス解消になり、他の人が呼ばないような珍しい呼び名を考えることは、知的欲求を僅かにでも満たした。
困難な発音が多用されたり、長ったらしくなるブームがあったり、歴史上の人物の逆さ読みなんてのもあった。
彼は怒りもしないし泣きもしない。
しかし心から笑うこともない。
そんな少年時代を過ごしたこの街は、石泥地区の第三区。
日本にスラム街があるなどと、見たこともない人は鼻で笑うかもしれないが、そういう街は確かにあるのだ。
空の色さえ澱んで見えるような雰囲気。それを作り出しているのは、酸っぱく生臭い匂い。人々の陰気な表情。
たとえ清潔な身なりをしていても、その表情だけで人から露骨に避けられるような、そんな顔をした住民たち。
臭くて汚い身なりの方が、まだバランスが取れているくらいだ。そういう、街。
何年も何年も陰鬱な空気は晴れない。お役所の連中は、汚物でも扱うかのように街の人々を扱う。よほど訓練してない限り、心の内は表情に、態度に、必ず出てくるのだ。
感情を出さない冷淡な態度も、そうする理由を考えれば、心の内は自然とわかる。
汚いもの扱いされ続けると、本当に自分が汚いもののように思えてくる。その中からは犯罪に走る者も少なくない。
石泥地区の中でも最も貧しく、最も荒れた第三区は、第一区、第二区からも下に見られていた。罵られ、因縁をつけられ、理由なき暴力を振るわれる毎日だ。きつい仕事、汚い仕事、危険な仕事を押し付けられる日々だ。
そんな底辺中の底辺に位置する街の中で、彼は最底辺の1人だった。気まぐれに歯を折られたこともあるし、後ろを犯されたこともある。それ以上のことも何度もあった。
無法と暴力の支配する街で、彼は壊れた笑顔を浮かべて生き延びていた。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「深刻な話だ」
コング「明るく行こう。♪あっかるーいナショナール!」
ゴリーレッド「無関心が生んだ街か」
火剣「日本にもスラム街は存在する。無法と暴力の支配する街。でも一日でできたわけじゃねえ。結局無関心が生んだんだ」
ゴリーレッド「それにしても生まれてから10年もそんな状況の中で生きていたなんて」
火剣「まともを求めるほうが無理だ」
ゴリーレッド「国会議員や首長はとてつもない大金持ち。テレビに出てくる評論家も弁護士もタレントも自分を『庶民』の側において喋っている」
火剣「どさくさ紛れにな。テレビのコメンテーターなんかみんな大金持ちだということを考慮して話を聞かなきゃいけねえ」
コング「蔵目翔は悪くないが、子どもに対して娯楽で遊んだ大人どもに同情の余地はない」
ゴリーレッド「急にどうした?」
コング「美少女を弄ぶならまだ話はわかるが」
火剣「いつものコングに戻った」
ゴリーレッド「普通に生きて来れなかった人にとっては普通が特別」
火剣「嘘をつかなくて済む人生。自分の生活をオープンにできる人生。それは幸せも幸せだが、それが当たり前の人間には幸せとは感じない」
ゴリーレッド「賢吾の言うようにチャイムやノックの音で心臓が止まるような思いの人もいる」
火剣「ハガキ一枚が心を引き裂く凶器に」
コング「僕は幸せだ。何の悩みもない」
ゴリーレッド「世捨て人だからな」
コング「捨ててない、捨ててない。研究に忙しくて余計なことを考えている暇がない」
火剣「蔵目翔は今後どういう青春を歩むのだろう? 名前はいつから付いたのか」
火剣獣三郎
2016/02/12 17:03
>火剣さん
「サトリン」第十六話の前に、蔵目翔の話を発表することになりました。まだ名前の無かった頃の彼は、いかにして名前を得たのか。そんな話です。

佐久間「明るく楽しくがクラメーションのモットーでもある。」
神邪「ノットー?」
山田「やめい。」
維澄「家を失い、公園で暮らす人々。しかし中学生がマラソンするからと、学校の教師とPTAが厳戒態勢。子供たちの安全と引き換えに、不審者として扱われた人々の心に傷が蓄積する。」
八武「心の傷は恐ろしいものだからねぃ。私が医者になって良かったと思う理由のひとつは、自分が受けた痛みを、患者を理解する道具として使えるということだ。」
山田「なるほどな。理想的だ。」
八武「もちろん性犯罪に有利だからという理由が大きいが。」
山田「余計なことを言うなよ! せっかく感動してたのに!」
八武「理想ではない。これは妥協の変更なのだよ。」
神邪「理想は傷が治ることですからね。」
山田「うーむ、そうか。」
佐久間「金持ちでも自分を庶民とする人間には2種類ある。庶民の味方と、庶民を隠れ蓑にしている奴だ。」
山田「白茶熊さんは味方だな。それ以前に、庶民アピールしたこともないが。」
維澄「わざわざアピールしなくても、言葉と行動が庶民の味方だからね。これも実情を知っていることが大きい。」
八武「知っていなければ出来ないことは多いねぃ。知らないことに対して無関心なのは、仕方ないことかもしれない。」
佐久間「しかし悪質なのは、関心を装った無関心だ。無関心でないというアピールの為に、首を突っ込んで引っ掻き回し、都合が悪くなったらさっさと逃げて知らん顔。庶民気取りのコメンテーターと同じだ。」
神邪「ちなみに彼は、このとき超能力はあったんでしょうか?」
佐久間「それは次で語られる。」
アッキー
2016/02/12 22:46

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