佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クラメーションあるいは蔵目翔 2

<<   作成日時 : 2016/02/13 00:00   >>

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生きる。生存する。生き延びる。それだけのことが、何故こんなにも難しいのだろう。
それは肉体だけでなく精神も栄養を必要とするからだ。よしんば心を閉ざして―――その閉ざし方は様々であるけれども―――肉体の生存のみに特化したとしても、生き延びるのが難しい街。それが石泥第三区である。
後にクラメーションあるいは蔵目翔の名を得る彼も、誰かの気まぐれで殺されていても不思議ではなかった。
彼が生き延びたのは、超能力の才能があったおかげでもないし、運が良かったわけでもない。毎日のように子供が死んでいく中で、生き残った中に彼がいたというだけの話だ。幸運ではなく、偶然の話である。
それでも、5歳を過ぎる頃からは超能力の才能が、生き延びる為に僅かでも貢献したのは事実だろう。殴られたときの物理的ダメージを和らげるのに、彼の“防御的空間干渉能力”が役に立たなかったはずはない。全盛期の何万分の1の出力、そしてコントロールも殆ど出来ないような超能力でも、少しは彼の命を守ることが出来たのだ。

空間干渉というのは、サイコキネシスとは源流を同じくするが、似て非なる超能力である。サイコキネシスが物体に力を加える能力であるのに対し、空間干渉は空間そのものに力を加える。サイコキネシスが空気を動かすならば、空間干渉は文字通りに空間を動かすのだ。
それは例えば、発砲スチロールと鉄塊を同じだけ変形させるとしたら、サイコキネシスで変形させる場合、鉄塊を変形させる方が強い力を必要とする。が、空間干渉なら殆ど同じ力で事足りる。
有利不利で言えば、出力が同じなら、サイコキネシスは空間干渉に、ほぼ100パーセント押し負ける。ただし、コントロールの力量が同じなら、サイコキネシスの方が複雑で精密なことが出来る。
それゆえに、サイコキネシスを“柔らかいPK”、空間干渉を“固いPK”と呼ぶこともある。
完璧なコントロールがあれば、空間干渉はサイコキネシスよりも複雑で精密な動きが出来るが、そのような域に達している能力者は現時点で皆無と言っていい。通常の超能力者の中には、存在しない。
いわゆる“空間干渉”と呼ばれる能力は、超能力の進化段階において、サイコキネシスとテレポートの共通の祖先であるという。別な言い方をすれば、原始能力。
原始的欲求を満たそうとするのが精一杯である彼に、原始能力なるものが宿ったのは、言葉だけ捉えれば皮肉めいているかもしれないが、実際には救いであった。彼が思っていた以上に。

しかし、しばらくは彼の中で超能力は、サブの中のサブというポジションに甘んじていた。
例えばテレポートは、空間干渉の、転移に特化した進化形態であるが、そのような技術も概念も、このときの彼には存在していなかった。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「生きるだけで難しい。これはスラム街に限らず生きることそれ自体が戦いというサバイバルウォーを余儀なくされている人間はいる」
ゴリーレッド「その環境を嘆くかランボーやコマンドーのようにその環境を楽しむ生命力で勝負するか」
火剣「俺様はウォリアーとして生きていくと決めた。気分は密林の中でのサバイバル」
ゴリーレッド「人は衣食住がないと生きていけない。動物と違って文化的暮らしと人権・尊厳が守られなければ苦悩を感じる」
火剣「人をアニマルに変える危険性のある世の中だ」
コング「なるほど蔵目翔は裕福な家庭で生まれ育ったら超能力が芽生えなかった」
ゴリーレッド「なるほりろ」
火剣「生きる本能から防御的空間干渉能力が生まれたのか?」
コング「原子能力か。恵まれた環境で育つよりも社会の底辺を体験したほうが有利な職業はある。ボクサーや作家、エスパーもそうかも」
火剣「さすがにテレポートとなると魔法レベルだ」
ゴリーレッド「コントロールも大事」
コング「コントロールで思い出した。ヒロインをX字磔にして弓矢を構え、股ギリギリにボーン! きゃあああ!」
ゴリーレッド「弓矢固め!」
コング「NO!」
火剣「気まぐれで人を殺すなんて許されねえ。最低限殺人には理由が必要だ。復讐とか、虐待やDV、迫害から身を守るためとか」
ゴリーレッド「いかなる理由があれ人を殺してはいけないという強い思いは殺人犯になるのを防ぐが正当防衛ということもある」
コング「人を惨殺しても懲役9年とか聞くと命の軽さを感じる」
火剣「クラメーションという名前にも意味があるはず」
コング「あ、せ、ら、な、い」

火剣獣三郎
2016/02/13 13:40
>火剣さん
よく、日本やアメリカの貧困は、尊厳を捨てれば生きていける程度と言われますが、しかし尊厳を捨てた時点で人として生きていると言えるのかどうか。そして本当に、生存だけなら難しくないのか。
実際にスラム街を見てきたことがありますが、そのときの体験は何年経っても忘れられません。

佐久間「動物の世界は生きるだけで難しい。動物に近付くほど、生命の価値は軽くなる。」
山田「よく、動物は遊びで他者を殺さないと言われるが、そうでもないんだよな。」
八武「人間ほど残虐なアニマルはいないというだけで、アニマルワールドが楽園というわけではないんだよねぃ。」
維澄「矢口高雄の描いている世界は、つくづく動物の生き方が甘くないことを教えてくれるよ。」
佐久間「なまじ貧乏でも何とかなってきた経験があると、貧困を甘く見る傾向がある。単なる貧乏と貧困の違いがわかってない奴が、『なんとかなる』『そのうちなんとかなるだろう』とか、緩い発言を撒き散らす。これはポジティブシンキングではなく、思考停止なのだ。」
神邪「あるいは、前向きな絶望。」
山田「そうかもしれない。前向きに見えても、救いになってない。どちらにしても、ウォリアーへの侮辱だと思う。」
佐久間「“そのうち”では手遅れなケースがある。精神病者も生きるだけで難しい。動いていなくても病と戦う大仕事だし、眠っていても悪夢に苛まれる。」
八武「クラメーションの心が心配だねぃ。うむ、私が男の心配をするとは珍しい。」
維澄「別に珍しくはない。本領。」
アッキー
2016/02/13 22:55

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