佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS ユイファあるいは火頭結花 1

<<   作成日時 : 2016/02/22 00:00   >>

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「あああ〜! 熱いィよ、燃えるよォ、気持ちイイよォ〜!!」
1人の少女が悶え苦しんでいた。いや、この場合“苦しんでいた”と表現すべきだろうか?
彼女は明らかに悦んでいた。苦しみながら恍惚としていた。燃え盛る炎のような、真っ赤な髪が、ざわざわと蠢いている。丸っこく可愛らしい顔の中央で、悦楽の涙を流す緑色の双眸は、同時に狂気を孕んでいた。
折れそうなくらい華奢な手足は、頑丈な鎖で縛られている。融点3400度以上のタングステン製の手錠だが、既に熱で変形している。
だが、それよりも驚くべきは、そのような高熱を発しながらも彼女の体には火傷ひとつ無いということだ。
彼女の名は、ユイファ・テスタロッサ。1年前―――1991年の末に、水組(みずぐみ)によって捕獲された、出力A級の発火能力者である。
なお、当然の帰結として彼女は、下着ひとつ身につけていない。
「電脳回線。」
「はい。」
特殊強化壁を隔てたコンピュータールーム。車椅子に座っているシュートヘアの女が、慣れた様子で指示を出し、傍らの青年が素早く手先を動かして機械を操作する。
するとユイファの周囲に光の粒が集まり、彼女を落ち着かせた。
「いつもながら頼りになるわね、あなたのところの“姫君”は。」
車椅子の女―――三日月海月(みかづき・くらげ)は、ホッとした顔で言った。
その組んだ手の甲には、振るい傷跡が見受けられる。額から左頬にかけても隠せないほどの傷跡があり、車椅子に乗っている最たる理由として、右足が途中から無い。アルカディアの技術なら元通りにすることは可能なはずだが、彼女は敢えて傷を残している。それは25年前、少女の頃に、自分が戦った証であるからだ。
「それはもう、姫様ですから。」
青年―――二葉蒼志は、少し照れた様子で頭を掻く。
1959年生まれの日本人男性としては、背が高い方で、足も長い。顔立ちは平凡だが、少なくとも人に不愉快な印象を与える類のものではないだろう。彼は傷だらけの海月を見ても、特に変わった反応を示さない。
やや広いコンピュータールームに、今いるスタッフは2人だけだ。
「かといって、いつまでも“姫君”に頼ってるわけにもいかないわね。ワタシとしては、あと2年以内には自立させたいわ。」
「え、出来ますかね。」
蒼志は振り向いて海月を見る。
茶色のシュートヘアとワンピースが眩しい。彼女が夫を亡くしてから、密かに狙っている男は多い。
もちろん蒼志も、憎からず海月のことを想っているが、年下の負い目か、告白は出来ないでいる。彼女の亡くなった夫は40も年上で、そこからしても落ち着いた年上の男が趣味だというのがわかるのだ。
そこを押し切るほどの情熱は、蒼志には無い。彼の情熱、第一の関心は、例の“姫君”に向いている。
「反対派を抑えておけるのは、それくらいが限界だと思うわ。」
「そうですか・・・。」
その発言は、予知能力者の海月から発せられたものであるだけに、小さくない危機感を蒼志に抱かせた。


- - - - - -


その少女がユイファ・テスタロッサと名付けられたのは、彼女が12歳を迎える直前の冬だった。彼女には名前が無く、倫理道徳も無かった。“人間の姿をした獣”という呼称などでは、とても足りない。“形だけ人間の何か”だ。
赤みがかった茶色のショートヘア、折れそうなくらいに華奢な手足、紅潮した丸っこい顔に、大きな緑色の瞳が哀しげに潤んでいる。吐く息は熱く、甘い。男を振るいつかせるような造詣と雰囲気を併せ持っている。
しかし、その濡れた眼の奥には、底知れぬ炎の狂気があった。
極めて特異なタイプの、念力発火能力者(パイロキネシスト)―――アルカディアの水組によって捕獲されたとき、彼女は既にA1級の出力、53万PKPを記録していた。
彼女の人格的欠陥と能力の危険性、その能力の犠牲となった人間の多さは、アルカディアの法曹界が満場一致で死刑を求めるほどのものだった。
それにも関わらず彼女が生き残れたのは、十幹部ナンバー4によるものだった。人格的欠損、能力の危険性、殺した人間の数を理由に挙げるなら、ますは十幹部を、特に首領から自分まで4名を殺すのが先だろうと。
人格的な面を省いても、確かに十幹部の力は強大極まりない。喩えるなら、核兵器を野放しにしておきながら、銃やナイフの危険性を殊更に取り沙汰するのかということだ。
それからというもの、アルカディア法曹界の意見は割れた。十幹部の殺人は基本的に仕事によるものだから、殺人とは別だという意見が出れば、それに対して、仕事であっても殺人には違いないという意見が出た。
十幹部を処刑したりすれば、アルカディアの運営が成り立たなくなるという意見が出れば、だったら運営に支障を来たさなければ殺してもいいのかという意見が出た。千里眼であるナンバー4に追従すべしという意見があれば、能力や地位で追従すべきかどうかを判断すべきではないという意見もあった。
具体的なものから抽象的なものまで、様々な意見が出た。処刑に賛成か反対かだけではなく、人格的欠損、能力の危険性、殺害人数、どれに重きを置くかでも割れた。
このような事態の中で、強行的に処刑など出来るはずもなく、ユイファ・テスタロッサは“囚人”として生かされ続けている。




つづく

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2016/03/06 21:13

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内 容 ニックネーム/日時
コング「ユイファ・テスタロッサを死刑にしてはいけない。処刑プレイにとどめるべきだ」
ゴリーレッド「部外者が何を語っている?」
コング「磔にして火炙りの刑で責め、見ている者は同情し、本人は快感」
ゴリーレッド「火炎殺法!」
コング「NO!」
火剣「捕獲されてしまったのか、ユイファ」
コング「捕獲の二文字に限りなき夢とロマンを感じるのは私だけではあるまい。しかも全裸! スッポンポン、素っ裸、真っ裸、マッパ、一糸まとわぬ姿、生まれたままの姿、裸!」
火剣「三日月海月。少女時代に戦った証か」
コング「わが夫となる者はもっとおぞましきものを見るだろう」
火剣「人に不愉快な印象を与える顔って、ヒデー」
コング「確かに笑顔がかわいくない女子はいる。笑顔が素敵な女子と同じ青春を味わえない。世の中は不公平なのだ」
ゴリーレッド「だから顔じゃないハートという考えを広めることが大事」
火剣「炎の狂気か。ユイファは逃げられるけど逃げないとかはないか」
コング「水責めされたらどうなる?」
ゴリーレッド「小学生がテレビの生放送で『え、アメリカも持ってるの?』と目を丸くして『何でほかの国はダメって言うの?』これに即答できない周囲の大人も情けないが」
火剣「どの国も持っちゃいけないって言えばいいんだ」
コング「千里の意見に賛成。しかしイカされ続けるとは」
ゴリーレッド「生かされ、だ」
火剣獣三郎
2016/02/22 17:13
>火剣さん
捕獲された頃のユイファは、アルカディアでも手の付けられない状態でした。“姫君”ことサトリンの力で何とか制御していますが、いつまでも獣のままでは放置できません。海月の考えとは・・?

八武「ユイファを解き放て! あの子は人間だぞ!」
山田「待て、解き放ったら止められないぞ。」
佐久間「アルカディアの外には逃げられなくても、檻の外へ逃げたら大惨事だ。」
山田「その笑顔は何だ?」
八武「人間の尊厳、と君は言うのかね山田くん?」
山田「今度はジェーンか。しかしユイファは狼少女と違って、矯正しなければ危険すぎる。」
八武「裸の少女を矯正する・・・う〜ん、良い響きだ!」
維澄「服を着せるのは物理的に難しいね。」
八武「裸のままでいい・・・生まれたときは、みんな裸だったじゃないか・・・それでいい、それでいいんだ・・・!」
神邪「ドクターが感動の涙を流している!」
山田「・・・狂った光景だ。」
佐久間「アメリカの核兵器保有数ほどには狂っていまい。」
山田「北朝鮮の核保有はもちろん駄目だと思うが、その前にアメリカやロシアから核を撤廃。話はそれからだ。」
維澄「大量破壊兵器を有しているという理由で空爆するなら、真っ先にアメリカが空爆されなくてはなるまい。」
八武「どうどう。」
維澄「千里は我が身を天秤に乗せた。それも人の心を打つ。」
佐久間「あながちイかされ続けているというのも間違っていない。」
山田「殴るぞ。」
アッキー
2016/02/22 22:55

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