佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS ユイファあるいは火頭結花 2

<<   作成日時 : 2016/02/23 00:01   >>

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「それで、私に育成を頼みたいわけか。」
「はい。」
蒼志が事情を説明すると、フィー・カタストロは察して結論を先取りした。
十幹部の末席、フィー・カタストロは、戦闘から育成まで幅広くこなすベテランで、マニュアルでは対応しきれない部分を補完する役割を持っている。現在も、A1級の出力を持つ子供の育成を担当しているのだ。
「X・クラメーションの育成で、お忙しいとは思いますが・・」
「いや、引き受けよう。それが私の役目でもあるしな。」
「ありがとうございます!」
カタストロが育成している少年は出力120万PKPで、ユイファは出力78万PKP。それだけ考えれば、決して負担は大きくないように見えるが、蒼志は実情を知っていた。
X・クラメーションは、捕獲された頃に事件こそ起こしているが、それは幼児性から来るものであり、カタストロの指導で人間らしさを学んでいっている。決して安全とは言えないが、素直で意欲的な態度は、やがて無知から来る過ちを克服していくだろうし、現に克服しつつある。
しかしユイファは、どうだろうか。明らかに彼女は、“殺したくて”殺している。念力発火能力で、人間を焼き殺し、その魂を炎に取り込んで、苦痛の叫びを子守唄に、安らかな寝顔。今なお彼女の中では、焼き殺された人々の魂が、苦痛に喘いでいるのである。そんな狂人を育てる方法は、蒼志には思いつかない。
更に、70歳を過ぎたカタストロは、全盛期の半分以下の出力しか持ち合わせていない―――技術的な成長を考えれば、決して衰えたとは言えないが、ひとつ間違えれば粉微塵になる仕事である。
それでもカタストロは、当然とばかりに引き受ける。蒼志は敬意を表さずにはいられなかった。


- - - - - -


「はぁ・・・あはあ・・・」
見回しても地平線以外に何も無い平原で、解き放たれたユイファは虚ろな目で笑っていた。
それが“笑っていた”と形容すべきかもわからない。彼女の精神は、その全容を空の彼方へ置いている。
「私はフィー・カタストロ。」
「あは・・・」
ユイファは緑色の目を紅く染めると、体中あちこちから炎を発し、そのまま火炎となってカタストロを包み込んだ。
これこそユイファのパイロキネシス、火炎同化能力である―――炎の中からは、吸収された魂たちの絶叫が響き渡る、えげつない技だった。
だが、それでもカタストロにとってはイノシシの突進に過ぎない。バリアーで身を包むと同時に、念力の槍で炎を突破し、更にユイファにも念力振動でダメージを与えていた。
「かはっ・・・」
すぐにユイファは人間とは思えぬ姿勢から炎弾を放つが、全て斜めの角度で弾かれる。しかも、それと同時に見えない衝撃がユイファを叩く。
4倍近くの出力があろうとも、同時に1パターン攻撃しか出来ないユイファと、10パターン以上もの攻撃が可能なカタストロとでは、その戦闘能力に決定的な差があるのだ。
「ひ・・・・あは・・・・・・」
だが、ユイファは笑っていた。
いや、悦んでいた。顔を紅くして、息を荒くしていた。
「・・・・」
カタストロは少し様子見に回ったが、すぐに攻撃を再開する。
狂気に恐れを抱く年齢でもない。カタストロは単純に、ユイファの技術に感心していたのだ。
もちろんカタストロのようなエキスパートと比べれば、粗いを通り越して雑であるが、そもそも10代前半の子供が、超能力を用いて“技”を行使している時点で、驚くべきことだった。
少なくとも、知能に欠陥は無い―――欠陥は、あくまで人格の方。人殺しを楽しむ、シリアルキラーであること。
(ならば、育成を放棄する理由は無いな。)
よくジョークで、序列が高いほど人格が破綻している、などと言われるが、それに従えばカタストロは、アルカディアでもトップクラスの人格破綻者ということになる。
そこまでの評価は言い過ぎとしても、彼女は自分の技術を伝承するにあたって、あまり人格を重視しないのは確かだった。素質があり、努力が出来れば、後は考慮しない。
それゆえに“七逆帝”のような連中も出てしまうのだが、そのことでカタストロは自分を曲げない。
伝統芸能を伝えるように、彼女は超能力の“技”を伝える―――その先にある“進化”を目指して。




つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「Xクラメーションは事件を起こしていたか」
コング「食事を運んできた女子をいきなり全裸にしたらしい」
ゴリーレッド「捏造はやめなさい」
火剣「人間らしさを学ぶか。人間らしさを学び直したほうがいい人間も世の中には一杯いるけどな。あの弁護士やあの物知り博士気取りや何人かの国会議員」
コング「ドウドウ」
ゴリーレッド「無知から来る過ちは危ない」
コング「女子なら鞭打ちの刑にするが」
火剣「ユイファはシリアルキラーか。良くないな。『百舌』シリーズの殺し屋も人を殺したい衝動を抑えられない妹が無差別テロに走るのを避けるために兄が理由のある殺しを請け負った」
ゴリーレッド「いかなる理由があれ殺しが良いわけがない」
コング「千里も殺しを簡単に考えていないな。ユイファの気持ちも少しわかるが。炎で責められて断末魔の哀願をするヒロインは興奮する。しかし殺してはいけない」
ゴリーレッド「焼き尽くす時点で葬ろうとしている」
火剣「猪の突進?」
コング「美しきヒロインを磔にしてイノシシが下腹部めがけて猛然と突進! やめて!」
ゴリーレッド「ショルダータックル!」
コング「だあああ!」
火剣「人格破綻者とは激村のことか?」
ゴリーレッド「全然破綻していない」
火剣「大相撲は心技体を重んじる。強ければ何でもいいじゃないんだ」
ゴリーレッド「武芸も同じ。礼節を重んじる」
コング「官能小説発展のために文芸を磨こう」
火剣「目覚めたか賢者コングー」




火剣獣三郎
2016/02/23 20:42
>火剣さん
スラム街から出てきたときに暴走していた蔵目も、今では人間らしくなりつつありますが、ユイファは更に危険な状態からのスタートです。いきなり教師を焼き殺そうとするあたり、カタストロくらいの実力が無いと指導できません。

八武「なにっ、朋萌ちゃんが全裸にされた?」
佐久間「されてない。」
八武「夢を見させてくれ!」
山田「お前のは悪夢だよ。」
八武「違う、淫夢だ!」
山田「威張って言うことか。」
神邪「厚顔無恥な連中が不快な言動を撒き散らしている世の中、もっとドクターみたいな人に威張ってもらわないと・・。」
山田「・・・まあな。」
佐久間「ゼロから学ぶのは、実は難しくない。ゼロというのは柔軟でもあるのだから。」
八武「ユイファの体も柔軟。」
維澄「柔軟性を失ってから学び直すのは不可能に近い。だから子供の頃から真剣に生きなければならないし、教育が大事。」
佐久間「無恥な奴は殺してもいい。」
山田「殺してはいけない。」
神邪「僕としては無知に対しても殺意が湧きます。」
八武「無知な女の子には鞭で教育してあげる。」
山田「とにかく殺しは良くない。カタストロの役目は重要だ。」
アッキー
2016/02/23 21:27

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