佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS うろおぼえ「オペラ座の怪人」

<<   作成日時 : 2016/02/06 00:05   >>

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昔々あるところに、カルロッタという実力派の歌姫がいました。
勝気な彼女は、並々ならぬ歌唱力を備えており、オペラ座の主役を張っていました。

カルロッタ 「ピアンジ、しっかりしなさいよ! ほら、身なりを整えて。」
ピアンジ 「ああ、わかったよカルロッタ。そんなに急かすな。」

小太りの中年男ピアンジは、やはり実力派のテノールです。言葉だけ聞けば鬱陶しがっているようですが、若い恋人に世話を焼かれるのが嬉しくてたまりません。
そしてカルロッタも、本当はピアンジのことが大好きなのですが、劇団という場では甘さ控えめのツンデレです。



オペラ座には、あるときから恐ろしい怪人が住み着いていました。
容貌が醜い彼は、見世物小屋で奇術を学び、やがてオペラ座に引き寄せられたのです。

ファントム (おれは醜い。だから美しいものが好きだ。オペラは美しいから好きだ。)
ファントム (声だけでも美しくしようと、たくさん練習して今の声を手に入れた。)

怪人は秘密の部屋から、歌姫たちを物色するのが日課でした。

ファントム (カルロッタは気が強いから好みじゃない。おれの好みは、従順で可憐な色白美人だ。)
ファントム (そう、クリスティーヌのような北欧美少女と結ばれたい!)



やがてファントムからオペラ座へ脅迫状が届きました。
とうのたったカルロッタを主役から降ろして、代わりに若くて可愛いクリスティーヌを主役にしろというのです。

カルロッタ 「酷いわ! これはクリスティーヌの陰謀よ!」
ピアンジ 「待て慌てるなカルロッタ、これはファントムの罠だ。」

ラウル 「優しい心のクリスティーヌが、こんな脅迫状を書けるはずがない。」
クリスティーヌ 「ラウル・・・。」

恋人のラウルに庇われて、クリスティーヌは顔を紅くしました。

ちなみに脅迫状には、ピアンジに痩せろとも書いてありました。

ピアンジ 「・・・・・・・・・」
カルロッタ 「酷いわ!」(ピアンジのふくよかさも好きなのに、許せないわ!)

支配人 「我々は屈しない! 舞台はカルロッタが主役!」



そして舞台は幕を開けました。
カルロッタは堂々たる歌唱力で、観客たちの心を鷲掴みにします。

ところが、ファントムは怒りに燃えていました。

ファントム (おのれ、おれの脅迫を無視したな! 許さん! カルロッタの咽めがけて水銀を発射!)

カルロッタ 「うっ・・・声が・・・!?」(出ない・・・そんな・・・・)
カルロッタ (もう・・・歌えないのね・・・さよなら・・・・・・愛しのオペラ座・・・・・・)



それからカルロッタの声が戻るまでに、半年の時間を要しました。
悲嘆、不安、絶望・・・そして、自分の一部を失ったという、喪失感。
この半年、カルロッタは喪失感から逃れられた日はありませんでした。

カルロッタ 「戻った・・・・・・私の・・・!」(声・・・歌・・・これは・・・


        私の神だ


欠けてはならないもの―――それがカルロッタにとっては、声であり、歌でした。
“表現したい”という思いを可能にした、筋肉を伴った真理と言っていいでしょう。

唐突ですが私(筆者)にも、欠けてはならないものを失った経験があります。読者の皆さんにも無いでしょうか。
私は18歳の頃に精神病を患い、それまで普通に出来ていた様々なことが出来なくなってしまいました。大学に入学した直後のことでした。激しい不安と苦痛、喪失感に襲われました。

人とは違う道を歩いてきたが、未だに欠けた能力は戻っていません。
周囲の助けもあり、今こうして小説を書いていますが、未だに喪失感からは逃れられていない―――

さながらファントムの住み着いたオペラ座のように、心の中には常に危機が存在しているのです。



ファントム (カルロッタが復活したか・・・!)

復活したカルロッタは、苦難を乗り越えて歌唱力に深みが増していました。
しかしファントムは、その歌声に興味を感じることなく、再びクリスティーヌを主役に推します。

脅迫状が送られてきました。

支配人 「我々は屈しない!」

しかしカルロッタは、怯えていました。
また歌えなくなったらと思うと、身が竦んでしまいます。

カルロッタ 「悔しい・・・!」
ピアンジ 「カルロッタを守る為だ、仕方ないでしょう。」

いつもは抜けたところもあるドン・ディエゴのようなピアンジですが、このときは堂々たる態度でした。
逞しい腕でカルロッタを抱き寄せ、脅迫に屈したのは決してカルロッタが劣っていたわけではないと、どこかで見ている出あろう怪人に示しました。

支配人 「仕方あるまい。主役はクリスティーヌだ。」



そして舞台は始まりました。
ところが、怪人の今度の狙いは、カルロッタではなかったのです。
舞台裏で、ピアンジはファントムと対決していました。

ピアンジ 「貴様がファントムか!」
ファントム 「お前は、おれにとって大きな障害になりそうだ。ここで殺す!」
ピアンジ 「殺されてたまるか!」
ファントム 「ふふふ、遅い・・・遅いよ、君・・・」
ピアンジ 「ぐああああ!!」(カルロッタ・・・逃げ・・・・)

ピアンジから役を物理的に奪い取ったファントムは、クリスティーヌに接近します。

クリスティーヌ 「・・・あなた、誰?」
ファントム 「今さら気付いても遅い!」

舞台に降り立ったファントムは、クリスティーヌを攫っていきました。
そして後に残されたのは、ピアンジの無残な姿でした。

カルロッタ 「ウバルド!? 嫌ああああ!!」

公私の区別をつけるカルロッタも、このときばかりは恋人を下の名前で呼んでしまいました。
しかし誰が、それを責められるというのでしょう。恋人の無残な姿を目の前にして、それでも自分を律していられるほど、カルロッタは冷たい女ではありません。
すぐにでも駆け寄って呼びかけますが、既に冷たくなっていく途中でした。
ウバルド・ピアンジがカルロッタの声を聞くことは、もう永遠に無いのです。



その頃、クリスティーヌはオペラ座の地下でファントムと対決していました。
やや遅れてラウルも駆けつけます。

ファントム 「おれは醜い・・・だから、美しいものが好きだ。クリスティーヌ、止まれ、そなたは美しい。」
クリスティーヌ 『醜いのは姿かたちではなく、心です。だけど、その醜さ・・・嫌いじゃないわ。』
ラウル (何故ここでイイ台詞を!?)

よくわからない心理状態で、3人は対決していました。

ファントム 「おれを選ばないなら、オペラ座を爆薬で吹き飛ばす!」
クリスティーヌ 「ラウルと結ばれたい・・・オペラ座も守りたい・・・両方やらなければならないのが、メインヒロインの辛いところだわ・・・。」

そこでクリスティーヌは、まずはファントムにキスをしました。

ファントム 「―――!!?」
クリスティーヌ 「ファントム、今までに女性とキスをしたことは? 無いわよね? 貴方の初めての相手は、このクリスティーヌよ! そしてッ、これで私は、“あなたを選んだ”ことになるッ!!」
ファントム 「何・・・・・・だと・・・・・・!」

クリスティーヌ 「ファントム・・・念のために確認しますが、貴方は“嘘をつかない”人ですよね・・・?」(ゴゴゴ・・・
ラウル 「この威圧感ッ・・・! 今のクリスティーヌには、10年も主役を張ってきたような“スゴ味”があるッ!!」
クリスティーヌ 「オペラ座の“3つのU”は、“歌が上手い”、“疑うまい”、そして、“嘘をつかない”―――」
ラウル (何故ここで日本語を!? しかし何だ、この話術は? あまりにもデタラメすぎる!)

クリスティーヌ 「“爆破”は封じた・・・そしてラウルが私を攫っていくことで、この劇は終幕よ!」

その言葉通り、ラウルは颯爽とクリスティーヌを攫っていきました。
後に残されたファントムは、がっくりと膝をついて呟きました。

ファントム 「負けた・・・完全、敗北だ・・・!」



カルロッタ 「それでイイハナシみたく終わるわけがないわよね?」
ファントム 「カルロッタ!?」

そこにいたのは、全身から“殺意の波動”を放つカルロッタでした。

カルロッタ 『負けて膝をつけば終わりだと思った?』
カルロッタ 『反省すれば何もかも許されると思った?』
カルロッタ 『醜ければ、人を踏み躙っていいと思った?』


カルロッタ 『甘ぇよ』



- - - - - -



それから、オペラ座に脅迫状が届くことはありませんでした。
カルロッタは、心に折り重なる悲しみを糧に、歌い続けます。
唇を噛み締め、微笑みを浮かべて、高らかに。
その歌声は、観客の胸を打ち、のみならず共演者も高揚させ、オペラの出来を何倍にも高めました。

怪人ファントムがどうなったのかは、誰にもわかりません。
今もどこかで、オペラを観ているのでしょうか。





      Fin

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