佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十六話 十戦士集結! 3

<<   作成日時 : 2016/03/15 00:00   >>

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超能力者の歴史は、迫害の歴史だ。
中でも“魔女狩り”は有名だが、自分たちと異なる優れた者を迫害するときの団結力は、地上で最も強固だと言ってもいい。それを、古代超人類を根絶やしにしたときからの宿命と断じるのは簡単だが、私に言わせれば、多数派の未熟さに過ぎない。民主主義は現代でも、ファシズムと変わらない程度の成熟度しか持っていない。
多数派というのは、未熟だからこそ多数なのだ。成熟した豊かな個性を持っていなければ、似たようなものにしかならない。多数と同じであることに安心すれば、意思は薄まり、人と違うことをしようとしても、ありきたりのことしか出来ない。そんな有象無象に宿るほど、宿命というものは軽くない。
未熟な多数者は、いとも容易く扇動される。多くの者が同じことをしているから、自分も正しいと思い込み、そのことを意識すらしない。自分たちの正しさを疑うこともなく、殺戮するほど高揚し、反発されるほど自分たちの正しさを確信する。おびただしい屍を踏みつけながら、ひたすら前を向いて暴走し続ける。さながら地走りの如くにな。

真由:はーはは、今も昔も人間のやることに大差は無い。
ファイバー:世の中も随分と変わったものだけれども、変わらない部分の中に迫害があることは否めないわね。
イワン:マンディアルグの言ったことが正しいとは思わないが。人間は獣じゃない。
キートン:ええ。人間のやることは変わらないのかもしれないですが、それは流れに抗う方も同じなはずです。
千里:アルカディアの前身も、迫害への抵抗から始まった。大体は逃げ隠れるという、消極的な対抗だけどね。

迫害された者たちは手を取り合い、共同体を成していった。アルカディアの前身は、そうした動きのひとつだった。
組織としてのアルカディアは1915年に発足したが、その源流は7世紀まで遡る。パレグルという超能力者が世界中を巡って、迫害されている者たちを助けていったのが始まりだ。それから3百年ほどが経過して、西暦1000年に日本の超能力者たちを集めて“ミレニアム・A”が結成された。その目的は、超能力者と普通人が共生する社会であり、アルカディアの理念の源流でもある。無論それは世界平和を前提としている。
それだけ聞くと綺麗だが、超能力者というのは自意識の塊みたいな存在でね。私も例に漏れず、使命感と優越意識、孤独感と劣等意識に塗れて生きている。倫理道徳や社会法規よりも、自我と探究心、理想と信念を優先する、美意識の奴隷のような生き物さ。三日月家を主導に多くの一族が非人道的な実験を繰り返し、強力な超能力者を作り出していった。砂神のような例外を除いて、ほぼ全ての一族が当てはまる。
日本に強力な超能力者が多いのは、そのせいさ。アルカディアのナンバー20までを数えても、私と、No.5、No.6、No.7、No.13と、人口比で考えれば十数倍も日系がいるが、別に大和民族主義ってわけじゃない。強力な超能力者が生まれるように薬物実験と交配を繰り返した結果さ。そこには千里眼も大いに役に立った。
ついでに言えば、超能力者に女が多いのも、オーパ人の末裔だからだ。バウフェーク研究の成果が入り込んだからか、若王子や鳴沢など、男の方が出力は高い傾向があるが、全体的には微々たるものだな。
“ミレニアム・A”の実験は、おそらくオーパでの試行錯誤に匹敵する悪行だろう。三日月家の初代は80近い老人の身で、年端もいかない少女を犯して子供を産ませた。それが平常であると言えば、少しは理解できるかな。六道さんや黒月さんは、その一端を知っている。

トランジスター:黒月も!?
真由:はーはは、驚いた?
トランジスター:驚くよ・・・。
千里:黒月という苗字は、三日月家の分家の1つだ。六道さんは気付いていましたね。
ファイバー:ま、薄々は。千里ちゃんでなくても、知らない間柄じゃないもの。
真由:すっかり若い頃の口調に戻っちゃって・・・ふふっ。
トランジスター:・・・え、黒月いくつ?
真由:101歳。
トランジスター:えっ・・・え?
千里:それも一族の研究成果さ。アルカディアの“光兎計画”は、黒月繭里(真由)の成果を基盤にしている。

アルカディア三大計画の中で、最も古くからあるのは、No.7(フィラデル・フィーア)を生み出した“鉄鬼計画”だが、No.6(スカーレット・マーチ)を生み出した“光兎計画”も、No.5(サトリン)を生み出した“電脳計画”も、基本は変わらない。優れたエスパーを生み出して、世界の指導者たらしめんってな。
人格者であっても、強くなければ意味が無い。圧倒的な強さを持つ能力者を生み出すべく、物理的に可能なことは何でもやった。超能力が発現しない子供の脳を切り開き、サイコキネシスの的、ヒュプノシスの実験体にするとか・・・まともな人間なら目を背けずにはいられない、人間の尊厳を踏み躙る所業の数々が繰り広げられた。イワンの憎むタロンと、何も違わない。世界平和の為と称しつつ、平和から最も遠い闇の領域を突き進む。アルカディアの抱える負の歴史であり、“昔の話”でもない。“電脳計画”で生み出された“イヴィル・サトリン”は、混沌の申し子だ・・・。
そうした暗部の侵食を受けなかったのは、先も述べたが、日本では砂神一族くらいだ。超能力に人為的な手を加えて強化する“意志”は、砂神一族の“自然の力”と真っ向から反するものだからな。“ゲシュペンスト”や“眠る蛇”などが“自然の力”のマイナスの側面だとすれば、明日香や一也の持っているのはプラスの力だ。自然の理を捻じ曲げる“意志の力”ではなく、自然の力に沿った能力であり、精霊や妖精とも呼ばれる。
さて電脳戦士諸君、今すぐにでも頭を下げたいところだが、わけもわからず謝罪の言葉だけ告げられても、謝られたことにはなるまい。それを踏まえて説明を続けるが、君たちの超能力は“自然の力”とも“意志の力”とも違う、第三の力なのだ。それを“願いの力”と言う・・・あァ、勘の良い何人かは気付いたようだな。そうさ、電脳戦士たちは超能力を“持っている”わけじゃない。“使っている”だけなんだ。真に“願いの力”を持っているのは、全ての超能力者のうち8体―――アルカディア製・電脳エスパー“サトリン”シリーズのみ。中でも他者に能力を“課す”ことの出来るのは、君らの知る“サトリン”と“イヴィル”、すなわち“β”と“ε”の2体だけだ。
あァ、その通り。電脳十戦士それぞれの能力は、“β−サトリン”の端末であり、“ε−サトリン”も同じ能力と性能を備えている。“ε”が電脳戦士の技や能力をコピーして使っていたのではなく、その逆なんだ。・・・いや、ショックを受けるなよ。落ち込むことなんてない。おしなべて能力というものは、持ってるだけの奴より使いこなせる奴の方が偉いのだし、この形態こそが“電脳計画”の目的でもあるのだから。
いや、計画の概要を隠すつもりはないさ。じれったいのは、それだけ語るべきことが多いってことよ。話をはじめる前に言ったはずだ、全てを語ると。ククク、これでも見た目の5倍も生きてる年寄りなのでね、話が長くなるのは摂理だと思って受け入れてくれたまえよ。もどかしいだけで退屈してないなら幸いだ。
話は9百年ほど前に遡る―――



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「迫害の歴史か。七瀬も理不尽に追われていたし、魔女狩りも残酷だ」
コング「エロス要素のない魔女狩り映画はつまんない。おばあさんを拷問してもただ残酷なだけだ。美女が磔にされ、私は違う!と泣き叫ぶからエキサイティング」
ゴリーレッド「不謹慎ここに極まれり」
火剣「脅威、恐れから迫害は起きる」
ゴリーレッド「民主主義は難しい。真の民主主義にはまだほど遠い日本」
火剣「戦時中の軍国主義と比べたら民主主義は素晴らしいが、実は民衆が成熟していないと成り立たない高度な主義だった」
ゴリーレッド「だから優れた人物が指導者として立ち上がり、民衆をリードする形が一番理想的だと思う」
火剣「千里の考えに近いか」
コング「レイプマンもリイドコミックだし」
ゴリーレッド「貴様は魔か?」
火剣「多数派と同じであることに安心するような大衆なら簡単に扇動されるな」
ゴリーレッド「民衆が強く賢明になるしかないが、だからこそ指導者が優れていないとアウトだ」
火剣「ヒトラーがまっとうな手続きを踏んで権力の座を手にしたことが不思議だったが今のどっかの大統領戦を見ればわかる」
コング「黒月真由! しかも裸?」
ゴリーレッド「そんなに話の腰を折るのが楽しいか?」
コング「美女を逆エビ固めするのは楽しい」
ゴリーレッド「コングがいなければ800文字以内に収まったが、大事なことなのでもう少し語ろう」
コング「ぐひひのひ」
火剣獣三郎
2016/03/15 11:11
ゴリーレッド「日本も多くの国も権力者が民衆を従えている状況で、真の民主主義は完成していない」
火剣「アルカディアは1915年か」
コング「界隈ではやはりゴリーレッドしか生まれていない」
ゴリーレッド「超能力者は自意識の塊か」
コング「美意識の奴隷? わかる気がする。ぐひひひ」
ゴリーレッド「ふと、千里の小学生時代を思い起こす話だ」
火剣「六道さん、黒月さんとさん付けだ」
コング「瑠璃子のピンクのビキニも似合っている」
ゴリーレッド「私服だバカ」
火剣「混沌の申し子。凄い代名詞」
コング「賢者コングー」
ゴリーレッド「どこも賢くない」
火剣「自然の力、意志の力、そして第三の力は願いの力か」
コング「今度は900年前? 壮大過ぎる」
ゴリーレッド「千里の脳内は相当なものなんだろう」
火剣「将棋の名人の脳内に将棋盤と駒が映っているように、千里の中にもありとあらゆる画面が動画で流れているのだろう」
コング「僕の脳内にも女スパイがくすぐりの刑で責められて悶え苦しむ様子が常に」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO! 暴力は民主主義を破壊する」

ゴリーレッド
2016/03/15 11:28
>火剣さん
迫害の根底にあるのは、“みんなが同じなら安心する”という心理だと考えています。多数者と異なる属性や行動に対して不安になり、恐怖が迫害へ繋がるのでしょう。それは未熟以外の何物でもありません。
考えていくと七瀬の本質は、“超能力者”ではなく“少数者”なのかもしれないです。

佐久間「よく“みんな同じ人間なんだから仲良くしなさい”と言われるが、なんて杜撰な言葉なんだろうな。」
神邪「同じだから仲良くということは、違えば迫害してもいいという思考に繋がってしまうんですね。」
山田「それが未熟さか・・。普通に考えれば、同じであるのは基本的人権だとわかりそうなものだが。」
八武「普通や凡人というのは、未熟とは異なるからねぃ。社会常識や倫理道徳を身につけて、初めて“普通”と呼ぶ。」
維澄「未熟な社会に対して、普通の神経を持っている人が心を病むというのは、よく目にしてきたよ。」
山田「魔女狩りもホロコーストも普通の神経とは思えないですね。」
八武「だが、美女が審問を受ける光景や、アンネの日記に、どうしても心の奥底で邪悪な興奮を覚えずにはいられない。」
山田「貴様は・・・貴様という奴は・・・」
佐久間「待て山田、拳を収めろ。死根也やコングの言ってるのは、そういう意味じゃない。」
神邪「魔女狩りやホロコーストを正義として行う連中と、あくまで邪悪として捉えて興奮するのとでは、本質的に違いますからね。」
山田「そういうことか・・。」
佐久間「邪悪を知る為政者は善政を行えるが、邪悪に無知な為政者は弾圧を行う。」
アッキー
2016/03/15 12:42
>ゴリーレッドさん
七瀬も使命感や優越意識を持っていますが、強い自意識は孤独感や劣等感に打ち勝つ武器だと思っています。
人と違う生き方は苦しいですが、それを支えるだけの自我があれば、人とは違う喜びも見えてきますね。

山田「思えば指導者も、人と違う視点が必要だ。大勢と同じものしか見えてないようでは、民主主義は未熟なままだな。」
佐久間「過剰な自意識はパラノイアと呼ばれるが、結構なことだ。少数者が意識薄弱では、迫害に潰されてしまう。そんな人生で納得できるものか。」
維澄「しかしヒトラーのようなパラノイアもいる。自意識は時として独裁者を生み出してしまう。」
佐久間「多数者に属する中にも、人と違う付加価値を自分に課したがる奴もいるからな。ヒトラーの境遇には同情しないでもないが、奴も所詮は凡人ということよ。」
八武「ふぅむ。」
佐久間「むしろヒトラーをネタに遊んでいる連中の方が、天才的だと思うことはあるな。」
神邪「スプリガンやドリフターズですか。」
山田「総統閣下シリーズとかな。」
維澄「何を置いてもチャップリン。」
八武「ちなみにメンバーの服装は?」
神邪「そういえば加速状態で、精神世界ですが・・・こういう場合、確か裸になるのがお約束ですよね?」
佐久間「ところが服もイメージされているんだな、これが。」
八武「諦めるな! イマジネーションの世界では、妄想力が勝負を決するのだよ! 眼力・発動! うおおお、見える、見えるぞ女性陣の素肌が〜!」
山田「自分で妄想って言ってるじゃねえか!」
佐久間「死根也は人生楽しそうだな。」
神邪「見習いたいものです。」
アッキー
2016/03/15 13:04

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