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zoom RSS 「サトリン」 第十六話 十戦士集結! 5

<<   作成日時 : 2016/03/17 00:00   >>

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“神化系能力”という単語を聞いたことはあるか? 模倣も無効化も通じない、干渉を受けぬ超能力だ。今までに14名しか発生を確認されておらず、既に半数が死んでいる。首領は3番目で、No.2(アモン・ガゴルグ)は4番目、私は9番目。ユイファの父であるヘルファイスは10番目で、ミル・ネヴィーは12番目だ。
5番目の神化系能力者を、ダンツォルティ・アビリュステロスという。・・・そう気を揉むなよカタストロ。我々にとっては因縁深い名前であっても、それを伏せたまま語るのは公平な態度とは言えまい。過去をないがしろにしていいはずもないが、優先されるべきは現在だろう。心配せずとも、不必要なことは語らない。
ダンツォルティの神化系能力を“神酒”(ソーマ)という。彼の血液など、肉体の一部を服用した者は、超能力を得るというものだ。しかも、わずかな量で強大な力が得られるというのだから、“シャングリラ”の計画にとって実に好都合。彼の肉体を資源とするならば、それは生き続ける限り人体の再生と同じペースで供給される。
しかし人類の大半が未だ普通人のままなのは、ご存知の通りだ。“神酒”は確かに服用者に強大な力を与えるが、その力を制御できるだけの精神力まで与えるわけではない。扱えるかどうかは本人次第、廃人で済めば良い方だったと言える。暴走した超能力者が巻き起こす災害は、街ひとつ地上から消してしまうことも珍しくなかった。石油ではなく、ウラニウムだったというわけさ。
同じ理由で、No.2(アモン・ガゴルグ)の神化系能力“与神”(ギフト)も、使えなかった。全人類を超能力者にするという発想に、首領は早くから辿り着いていた。だからこそアモンとの出会いが重要だったわけさ。結局それは実現しないという結論に落ち着いてから、シャングリラは結成された。こんなアンポンタンだが、頭はキレるんだ。信じられないくらいにな・・・いやまったく、信じられない・・・信じたくない・・・こんなに頭が悪そうなのに・・・どうされましたか首領、涙目になっておられますが? これでも私は、貴女の知性を高く評価しているのですよ? ただ全人類を超能力者にしただけでは、超能力者が迫害されてきた問題が解決するわけではないと、17世紀の時点で理解していたことは、素直に尊敬します。現代人にとっては息をするように容易いことですけどね。
そもそも“アルカディア”の目的は、人類の自立的な世界平和だ。今の世の中で、誰もが超能力を得たら、平和とは逆の方向へ突き進むのは目に見えている。それは千里眼でなくてもわかるだろう? “神酒”も本当に危険なのは、服用すれば二度と元には戻れないという点なのだ。悪用される危険はもちろんだが、綿密に選んだ者にだけ服用させるという方式でも、その者が変質しないとも限らない。力に溺れるというのは、ありふれた現実だ。19世紀の話だけではない。私が生まれた頃、アルカディア幹部の1人が“神酒”を持ち出して、大勢を力に溺れさせた。
そいつこそ“邪神”(デビルズ)ノットー。史上7番目の神化系能力者にして悪意の集積者、そして遺伝子的には私の祖父でもある。祖母が若い頃に人工授精で産んだのが私の父だが、その種を提供したのが、当時は最高幹部を務めていたノットー・リ・アースのものだった。ノットーの血族は私を含め、強力なエスパーが多い。10番目の神化系能力者ヘルファイスに、11番目の神化系能力者T2。No.6のスカーレットに、No.7のフィラデル。もちろんユイファも入るし、ノットーを討伐したのは彼の息子だった。
当時のアルカディアはノットーによって壊滅寸前にまで追い込まれ、ノットーは死んでも世界戦争は止められなかった。それはアルカディアの敗北としか言いようがない。犠牲者を出した時点で、勝っても負け。少なくとも、勝利の価値は犠牲者に反比例する。“神酒計画”は封印され、それを超える新たな計画が求められた。
私がアルカディアの最高幹部になったのは1955年のことだが、コンピューターの発達とインターネットの普及を予知したときから“電脳計画”は始まっていた。当初の目的は、アルカディアにおける私の仕事のスペア、すなわち国民の健康状態をチェックし、生活を守ることだった。これを「フェイズT」と呼ぶ。1980年から導入され、今まで順調に稼動し続けている。しかし“神酒計画”の後継となるのは、「フェイズU」なのだ。
ああ、ことわっておくが、“電脳計画”は私のオリジナルであって、シンファの計画を引き継ぐ形でなくとも、フェイズUには移行していた。功績も責任も私にある。だから聡子、お前に罪など無い。“イヴィル”が生まれることを予知しておきながらフェイズを進めた、私の罪だ。今の事態は大半、1970年代には予見していたことなのさ。
フェイズUは“神酒計画”の上位互換として、付与した超能力をサーバーである“サトリン”によってON・OFFできるようにするものだが、その技術は未来から拾ってきた。流水と克之にとっては忘れられぬ、“ルナ=ウイルス”を巡る惨劇の物語からな。

流水:あたしと流風の運命を分けた、あのウイルスの話ってわけ。
克之:流水!
流水:・・・大丈夫よ。そんなヤワな女じゃないわ。
千里:続けようか。
流水:続けて。

恐竜の絶滅において、巨大隕石の衝突は“とどめの一撃”であった。それ以前から植物は毒を帯び、あるいは硬さを増していたし、動物は小さな体を駆使して恐竜の卵を食い荒らしていた。火山活動は活発になり、気候も変動していた。繁栄した種の大絶滅は、単一のカタストロフィーのみではなく、複合的な要因によってもたらされるものだ。
その数ある要因の1つが、“絶滅遺伝子”。繁殖本能を取り込んで変質していき、ある程度まで世代が経過したときに発現する、レトロウイルスの一種だ。それが発現した世代は、繁殖本能を失ってしまう。そして、その遺伝子は人間の中にも発見されたのだ。

R:・・・もしかして、それは“マザー”が?
千里:その通り。“マザー”はオーパ人に、レトロウイルスをバラ撒いた。その呪いは未だに解かれていない。
レックス:恐竜を滅ぼしたのと全く同じってわけでもないだろうが、同類のもんだ。しつこい呪いだぜ。
千里:彼女の恨みの深さが窺い知れるね。
レックス:厄介な奴は死んでも厄介。10年や20年の話じゃねえが、このままでは人類は滅亡するんだ。
千里:その遺伝子を発見したのが、ジーン・ジョンソン。彼はルナ=ウイルスの発見者でもある。
イワン:ジーン!?
流水:あなた、ジーンを知ってるの?
イワン:・・・同じ思いを抱えた、仲間だった。
克之:まさか、ソビエトからの・・
イワン:そうさ・・・。おれとジーンはソビエトに目を付けられ、逃亡生活の中で家族を失った者同士だ。

いつだったか、おれはジーンと話したことがある。
ジーンは、故郷に帰りたいわけじゃなかった。待つ人のいない故郷は、ただの不毛の大地だ。ソビエトが崩壊したところで、失った幸せは戻ってこない。
ジーンにとって、故郷に帰るということは、誰からも強制や束縛を受けない世界を作ることだった。信じてもらえないかもしれないが、確かにそう言っていたんだ。
・・・許してやってくれとは、とても言えないけどな。

流水:許しはしない。・・・でも、信じるわ。ジーンは確かに、そう思ってた。
克之:・・・・・・
流水:大丈夫よ、続けていいわ。
千里:続けよう。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
コング「全人類を美女・美少女にする計画か。賛成!」
ゴリーレッド「そんなこと千里は一言も言ってない」
火剣「言ったのは八武医者だ」
ゴリーレッド「カタストロが気を揉む者」
コング「僕は茶倉のモモを揉みたい。内腿スレスレ」
火剣「ダンツォルティ・アビリュステロス」
コング「因縁深い名前か」
火剣「超能力を得て暴走するのは危険だ。止められない。力を得たら同時に精神も鍛えなきゃ危ない」
ゴリーレッド「目的は自立的世界平和」
火剣「しかし能力を得たら世界平和のためではなく悪用しそうだ」
コング「僕なら西尾の能力がほしい。毎日街に繰り出し、美女・美少女の全てを見る」
ゴリーレッド「そうなる前に葬ろう」
コング「待て」
火剣「ユイファは結構凄いのか」
ゴリーレッド「一人の犠牲者も出したくないという心を持った者が真の指導者。大義のためたら多少の犠牲は仕方ないという者は、何十人何百人も『多少』と数えてしまう危険性がある」
火剣「巨大隕石は本当に地球に突入したのか」
コング「クレオパトラは本当に全裸だったのか?」
ゴリーレッド「それしかないのか?」
コング「なああああああああああい!」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「なぜえええ!」
火剣「誰からも強制や束縛を受けない世界?」
コング「アカン。拘束されて強制昇天を求めるM子はどうなる?」
ゴリーレッド「隕石を頭に落とそうか?」
コング「待ちましょう」
火剣「ところで人類は滅亡するのか?」
ゴリーレッド「人類を滅ぼすのも人間。食い止めるのも人間」

火剣獣三郎
2016/03/17 09:57
>火剣さん
普通の力なら、普通の精神でコントロールできますが、大きな力は普通の精神を軽く歪めてしまいます。そこで電脳計画は、手にした力を練習できるようになっているのですが・・・しかしイヴィルは練習で済ませるつもりはありませんでした。

佐久間「ま、電脳戦士たちは実験体ってわけなんだよ。」
山田「人聞きが悪すぎる。被験者と呼ぼう。」
佐久間「どっちでも同じだと思うが・・・。」
維澄「いきなり世界的に行えば大混乱だから、まずは小規模にやろうとしたわけだ。」
八武「ふむ、全国展開の前の1号店か。」
山田「しかしイヴィルの出現で、計画は狂ってしまった。」
八武「・・・そうは思わないねぃ。」
山田「え?」
八武「むしろ計画に重要なのは、邪戦士なのかもしれないよ。」
神邪「なるほど、つまり“悪用する者”のデータも必要というわけですか。」
山田「そうか・・・世の中、電脳戦士たちのような善人ばかりじゃないからな。」
八武「善人の存在のみを考えた計画は、だいたい破綻する。性悪説を唱える気は無いのだが、計画とは最悪を想定するものだ。」
維澄「そして千里が、それを想定してないはずはない、か・・・。言われてみれば、これまでの話、邪戦士との戦いで死者は出ていない。」
神邪「あ・・!」
維澄「それ以外のところで死者は出ているけれどもね。」
神邪「千里さんにとっては、それも敗北ですか・・。」
維澄「ソビエトが腐敗した最大の理由は、少数民族への抑圧だと思っている。イワンやジーンのことも、その延長にある。少数者を犠牲にすれば、滅びは免れない。」
佐久間「願望も入ってるだろ。」
維澄「まあね・・。多少の犠牲は仕方ないという未来に、何ら希望を抱けない程度には、私もスレてるのよ。」
アッキー
2016/03/17 22:57

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