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zoom RSS 「サトリン」 第十六話 十戦士集結! 9

<<   作成日時 : 2016/03/21 00:00   >>

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サトリンシリーズは基本的に“電脳回遊”(ネットウェイ)を備えている。“θ−サトリン”(入流小松)は自分の肉体を持っている代わりに、チャットへ接続するくらいしか出来ないが、他の7体は行動範囲が広い。中でも“β”と“ε”は、自らの能力を“電脳海遊”(マルチサイバー)として進化させ、プログラムの一部を他者に課すことが可能となった。
“β”のプログラムを治療薬だとすれば、“ε”のプログラムはウイルスのようなもの。助けになるものと害になるものという関係だけでなく、安定した作用を目的とする医薬品と違ってウイルスは不安定だ。当初と同じように動いているプログラムなど、今や1つも無い。そして今も、変化と増殖を続けている。


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三日月千里が電脳戦士をアルカディアに集めるより、遡ること10日前。
「うふふ♪くすくすくす♪」
40歳前後に見える男が、手術着を赤く染めて笑っていた。
彼の、知的好奇心を満たせて楽しい―――という顔とは対照的に、手術台に縛りつけられている少女は苦痛に顔を歪めている。
「あぎ・・・ぐ・・・も・・・・・やだ・・・・・たすけて・・・・・おと・・・さん・・・・」
死んだ父を呼ぶ少女は、邑甘守名実。邑甘三姉妹の1人で、“イヴィル・パニック”邑甘恵須実とは超能力の半分を交換できる間柄である。
邑甘一家の事件(第十話)以降、行方を晦ましていたが、こうして変態の狂科学者に捕まっていたのだった。
「試みに問う。もしも地球上の生物がすべて同じ大きさだとすれば、何が最強だと思うね?」
様々なチューブや機械と一体化した少女は、麻酔も打たれない覚醒した意識のまま、地獄を味わい続けている。
暗がりの中で少女の耳には、ハカセの講釈が聞こえてくるばかりだ。
「単純な答えは、昆虫だ。彼らは、その大きさに比して、極めて高い性能を持っている。自分の体重の何倍もの重量を持ち上げ、自分の大きさの何十倍も跳躍する。そんな動物がいるか?」
「あぐ・・・ぎゅ・・・・・ぐ・・・・・・」
「しかしながら昆虫の体構造は、大きくなるには適していない。大きな体では重量を支えきれず、へし折れてしまう。十分な強度を得ようと思えば、今度は内臓を収めるスペースが無くなる。」
「ぐきゅ・・・・・・き・・・・・・」
「これが昆虫のジレンマだよ、才場くん。」
「・・・・・・。」
そこへ手元の携帯電話が鳴った。
「私だ。」
《サイキッカーです。公安に感付かれました。》
若い男の声だった。
「はん、思ったより早かったな。このウイルスをモノにしたいと躍起になっているのか・・・」
そうだとすれば、大した敵ではない。しかしハカセの頭には、もうひとつの可能性が浮かんでいた。
(ムウ=ミサが動いているとすれば、それなりに警戒しておく必要があるな。あの男がチャチなイデオロギーで動くとも思えないし、もしも・・・)
「・・・まあいいや。何であれ演習の機会だ、君たち3人と、ファングとターキーも連れて・・・・・皆殺しにしてきたまえ。」
《了解しました。》
通話を終えて、ハカセは再び作業へ戻る。
はっきりと意識を残したまま、泣き叫ぶ守名実の頭蓋を切り開く。
「ひぎっ・・・・・ひぐうううううっっ!!」
柔らかい脳髄がプルンと輝いて、それを見るハカセは「うふうふ、うひあは」と笑う。
「ほら、わかるかい。デビル=ウイルスが君の脳髄を冒し、つくりかえていってるんだ。これから君という人格は消えて無くなるが、新たなる超生物として生まれ変わるのだよ・・・くすくすくす。」
「ひ・・・・いやあああ・・・・・!!」
その悲鳴を聞いて、流石に黙っているのも気が引けるのか、“イヴィル・ヴァイラス”才場静輝は「悪趣味ですね」と笑った。
「先程のは、“同業者”で?」
「いいや、公安だそうだ。ミートソースになるのは同じことだがね?」
そう言いながらハカセは、ビーカーに緑茶を注いで才場の前へ置いた。
守名実が変質の苦痛で泣き叫ぶのを聞きながら、才場は二重の意味で苦笑いする。
しかしハカセはマイペースだ。
「科学者に必要なことは2つある。同じ成功を繰り返すことと、同じ失敗を繰り返さぬことだ。」
「・・・・・・。」
彼の言う“失敗”とは、かつて作り上げた“最高傑作”が、赤子同然に打ち破られたことを意味していた。
しかし才場は、今年敗北した5名の邪戦士のことも言ってるのだろうと思っていた。
(この人は天才だ。)
才場は、他者の才能を引き出すことにかけては一定の自信を持っている。しかし目の前の男は、その能力において自分を上回っていると思った。
エスパーも基本的には生身の人間であり、しばしばサイボーグなどの強化人間に後れを取ることがある。ならば、エスパーに強力な肉体を与えることが出来れば、両方の長所を持つ理想の戦士が完成すると思われた。
しかし実際、改造手術というものは成功率が高いわけでなく、一定の犠牲を払うことを前提とする。貴重なエスパーを失う危険性のある改造手術よりは、超能力を訓練する方が現実的なのだ。
20年以上も前のソネット=バージが、未だサイボーグエスパーの最高傑作と言われていることからも、よほどの事情が無い限りはエスパーを改造などしない。
しかし“イヴィル”の能力でエスパーを量産できるなら、話は違ってくる。
「あの5名は、EVTLとDEVTL、両方の適格者だよ。ダッシャーは高い俊敏性と、それに耐えうるだけの筋力を持つ。フィーバーは燃やすほどに出力を加算し、サイキッカーは鉄骨だろうと粉みじんにする。ファングは小柄な体で敵を食いちぎる、生きた弾丸だ。そしてターキーは、彼らの中でも出来が違う。」
モニターに映し出される非加熱のミートソースと絶叫は、公安部隊が殲滅されていく光景だった。
「ターキーの能力は生存本能に根ざしている。生きようと足掻く狂おしい思いは何よりも強く美しい。・・・そう思わないかね、才場くん?」
「ハカセ・・・あなたは、恐ろしい人だ。」
ただの人間に恐れを抱いたのは、彼が初めてだった。才場はゴクリと唾を飲み込んだ。



つづく

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内 容 ニックネーム/日時
火剣「こういう容赦を知らない人間に捕まってしまうと困ってしまう」
コング「少女かあ。むごいい」
ゴリーレッド「麻酔なしなんて人間ではない」
コング「ハードリョナだ。佐久間んレベルか」
火剣「変態狂科学者か。八武医者が紳士に見える」
コング「もともと紳士だ」
ゴリーレッド「虫は走る、飛ぶ、怪力、三拍子揃っているか」
コング「大きさで言ったら、もしも猫が犬と同じ大きさになったら、たちまち街は大パニック」
火剣「才場は苦笑してるが内心はどうなのか」
ゴリーレッド「止められるような状況ではないのだろうけど、悲惨過ぎる」
火剣「人格を消され、別の生物になる。これは激痛以上の恐怖だ」
コング「M子の皆さん。パートナー選びには慎重に。全裸で手足を縛られたあとに変態狂科学者とわかっても手遅れ」
火剣「このハカセは何者だ?」
コング「40歳前後? ジャスティスもここまでむごくない」
ゴリーレッド「サイボーグエスパー」
コング「そう、七瀬も生身の体だから何度か犯される危機に直面した」
火剣「守名実を助けなければ。これはどう見ても悪だ」
コング「どういう縛り方をしているんだ?」
ゴリーレッド「そこか?」
コング「そこはダメ!」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「10日前の出来事か。詰みか?」



火剣獣三郎
2016/03/21 16:29
>火剣さん
突如として出てきました、恐ろしい変態科学者。大暮維人の「魔人」に登場する、本名不明の“ハカセ”とだけ呼ばれている男です。第三部でゲストとして出てもらう予定でしたが、滑り込みで第十六話にフライングしてきました。

佐久間「飛んできたな。」
八武「とんでもない男だねぃ。」
山田「くだらんダジャレ言ってる場合か!」
神邪「しかし、富良実さんを虐めていた人でもありますが。」
山田「それはそうだが、この光景を見たら人として助けねばと思う。」
八武「ぐふふふ、私は人でなし。」
佐久間「死根也も負けてはいられないぞ。」
八武「血が騒ぐねぃ。」
山田「やめろ張り合うな。」
維澄「昆虫のジレンマは、この改造手術と何か関係があるのかな。」
佐久間「おおアリ。」
八武「食い。」
神邪「食いアリ。」
山田「ええい、俺が助ける!」
佐久間「物語に乱入するのはやめようねー。」
八武「やめようねー。」
山田「放せ!」
維澄「10日前となると、もう今頃は・・」
神邪「改造されて、昆虫人間になるのでしょうか?」
八武「可愛くなるといいな。」
佐久間「死根也の考える可愛らしさとは違うかもしれない。」
アッキー
2016/03/21 22:49

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