佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 狂気の終焉 〜mad end〜

<<   作成日時 : 2016/04/29 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



少女は店頭に並べられていた。

生まれてから多くの時間は経っていないが、その肉体は攻撃的な美しさを持っている。
チョコレート色の肌は艶やかに輝き、白い肌とは対照的な、健康的で肉感的な美を持つ。
男なら誰もが目を奪われずにはおれないであろう、造物主より与えられた魅力がある。

しかし彼女は心晴れず、浮かない気持ちで身を竦ませていた。
その凶悪なボディは、薄く透明な衣装を纏っているだけで、裸身を人目から隠せていない。
今日も客たちの不躾な視線が、体に突き刺さってくる。

(イヤ・・・この目・・・)

彼女の心に興味は無く、ただ“具合の良さ”を求めるだけの、いやらしい目つき。
1人に2つ、濁った景色の中で、ぐにょぐにょ動く楕円形。
おぞましさに彼女は、泣き出したい気持ちになる。

この店では、彼女のような境遇の女が、“商品”として高値で販売されている。

買われていった女たちは、買った客に絶対服従。
どんな屈辱的な命令にも、必ず従わなければならない。
買った者の都合で捨てられても、文句のひとつも言えない。

中には肌を隠されている“商品”もいるが、買われていくのは同じことである。
どんな相手だろうと、“ご主人様”として仕えなければならないのだ。

(わたし・・・何の為に、生まれてきたの・・・?)

彼女は生まれたときから、“商品”になることが決定されていた。
物心ついたときには既に、こうして“奴隷市場”で陳列されていた。
親の顔も知らない。人権など無い。人格など求められない。

このシステムを良いとか悪いとかは論じられない。
最初から奴隷として生まれた者にとっては、今ある世界が全てだ。
だから、奴隷制度や、それに伴う売買を「許せない」とは思わない。
そんな呑気な感情は抱けない。薄暗い霧の中で、感情が斧のように愚鈍だ。


彼女の陰鬱な日々に、希望という名の光が差し込んだのは、それから数ヵ月後のことだった。



- - - - - -



少女は、覆っていた霧が晴れたような気持ちだった。
薄暗く灰色だった世界に、色が着いている。

(世界って、こんなに鮮やかだったの?)

恨めばいいのかもわからなかった母親に、感謝の気持ちが湧いていた。
“母親”というよりは“オリジナル”と言うべきなのかもしれないが、いずれにしても感謝している。

(あっ・・・今日も、来た・・・!)

その男は、他の客たちとは違っていた。
“商品”を買っていくことには変わりないのだが、彼に買われていく女たちは、どこか安堵した表情をしている。

それもそのはずで、彼は“商品”を大事にすることで有名なのだ。
女が嫌がれば、無理やり入れることなどしない。言葉や態度で拒絶しなくても、察してくれる。
彼の紳士的な態度が偽りでないことは、その後を見てもわかる。
優しく扱ってくれるので、擦れて痛い思いをすることはない。

今日も彼は、不躾な視線を向けることもなく、目当ての“商品”を買っていった。
迷いの無い、潔い買い方に、少女は心震える。

(わたしも・・・あの人に・・・・・)

いつかは彼女も買われていく運命にある。
それなら、あの男に買われたいと思った。

(あの人の逞しい指に触れられたい。)
(あの人の優しい笑顔を向けられたい。)

一目惚れ、だった。
初めて店に来たときの彼は、少し緊張していて、しかし少女を見て笑顔になったのだ。
そのときの笑顔に、少女は胸を撃ち抜かれてしまった。

こんな自分が恋をするなど、お笑い種だと思う・・・その一方で、だからこそ貴重だと思った。
いつしか少女にとって、彼に買われることは夢になっていた。



- - - - - -



最近、彼が来ない。

(どうしたのかな・・・?)

噂を頼ってみたところでは、“仕事”が忙しいようだ。
周囲から頼りにされているという彼は、重要な役職を任されるようになったらしい。
それは嬉しいが、寂しいことだ。

客観的な事実を述べれば、少女は店で最高と言っていい“商品”だ。
しかし、それだけ高値ということでもある。
ここに来る客の中で、彼は決して金持ちな方ではない。
たとえ買うつもりがあっても、それだけのカネを持っていない可能性が高い。

逆に言えば、他の客に買われる心配も少ないのだが、それも長くは続かないと知っていた。
それだけ彼女は魅力的で、手に入れたいと思っている男は大勢いる。

(・・・・また来た・・・・・・)

彼が来なくなった頃から、妙な男が来るようになった。
初めて来たときの、あの薄気味悪い笑顔が、まだ記憶に生々しい。

その男を仮に“A”と呼ぶことにしよう。

顔立ちが胡散臭い。
表情が胡散臭い。
口調が慇懃無礼。

全てが嘘で塗りたくられているような、異質な男。
他の客からも評判は悪いらしい。

Aは舐め回すような目つきで、“商品”たちを眺める。
視姦と言うのでも足りないような、心を覗かれるような苦痛。
それは実際、気のせいではない。

“商品”に対するAの扱いは、噂で聞くだに怖気が立つものだった。
買った女を、なけなしの衣装すらも剥がして、丸裸にして並べ、じっくりと眺める。
何が楽しいのか、眺めているだけで何時間も経つことがあるという。
その間、女たちは休むことさえ許されずに、恥辱に身を震わせるばかりだ。

乱暴な手つきで女を扱い、擦れて痛い思いをしているのも、おかまいなし。
無理やり入れて、早々に出して、失望の表情を浮かべる。
女の“具合”が良くないと見れば、すぐに抜いて、汚い部屋へ放り込む。
それっきり二度と出てこない女もいるという。

(酷すぎるわ・・・・)

あんな目には遭いたくないと、少女は子供心に痛切する。
だが、どうやらAは、彼女を買いたいと思っているようなのだ。

(イヤっ!)

高額の“商品”であることで、Aにも易々と買える金額ではないようだが、時間の問題だろう。
仲間内の噂で、Aは金持ちの息子らしいという話を耳にした。
いつ即金で買われてしまうかと思うと、生きた心地がしない。

(助けて・・・!)

しばらく目にしていない彼の顔を思い浮かべて、少女は哀願した。

彼の優しい笑顔が好きだ。
彼の慈しむ指が好きだ。

たとえ奴隷として生まれても、彼に買われたら女として幸せなことだろう。


しかし、彼に買われたいという願いは、叶うことはなかった。



- - - - - -



およそ1年が過ぎて、その日は訪れた。

少女はAに買われていった。
そのときの絶望は今までの最悪。

最初の絶望は、奴隷として生まれたこと。
次の絶望は、彼と会えなくなったこと。
そして今、Aの所有物となる絶望が、少女の心を凍らせていた。

(イヤっ・・!!)

薄気味悪い笑みを浮かべたAは、少女の肉体に指を這わせた。
何度も、何度も、嬲るように撫でる。
おぞましいだけで、ちっとも気持ち良くない。

少女が嫌がるほどに興奮しているのか、男は恍惚とした表情で撫で続ける。
そして感触に満足したのか、着ている服を剥ぎ取り、無理やり突っ込んだ。

(あううううっ!!)

こんな痛みは知りたくなかった。
周囲を見れば、同じく痛みに悶えている女たち。
言葉が見当たらない。

(ううっ・・・・ひっく・・・・・)

もう二度と会えないであろう彼を想って、少女は心を血まみれに落涙した。



- - - - - -



Aが眠りについた夜、痛みに苦しむ少女に、声をかける女がいた。
豊かな胸を強調させられている格好をした、美しい姉妹。
彼女たちもAに買われた“商品”であり、Aの現在の“お気に入り”である。

(((逃がしてあげるわ。)))

その声は、姉妹たちだけではなかった。
Aに買われてきた“商品”たち全てが、少女の為に団結しようとしていた。

(わたしたちは、もうボロボロで、逃げることなど出来ない。)
(だけど、あなただけでも逃げて。)
(愛する人のもとへ、行って!)

(わたしたちの力は微々たるものだけど、合わせれば、あなただけは・・・!)
(あなたを救うことで、わたしたちも救われるの。)
(これからも地獄を耐えていける。)

行かないわけにはいかなかった。
ここで彼女らを見捨てないことは、見捨てるより残酷なのだ。

(わたしは、優しさに甘えたエゴイスト・・・。)

少女は自由の身となった。

愛しい男のもとへ、少女は飛んでいった。
彼の優しい笑顔を求めて。



- - - - - -



彼は最初、驚きを隠せなかった。

「え、え・・・?」

少女は自ら彼に抱かれた。
彼が寝ているときに、こっそり潜り込んで、そのまま彼の女にしてもらったのだ。

朝になって彼は、事の大きさに動揺を隠せない様子だった。
しかし、腹を括ったか、彼女を抱き締めて微笑んだ。

彼は、「自分が君に相応しい男になるまで手を出さない」と、少女を丁重に扱った。
まるで一国の姫君を扱うように、触れるときも羽のように軽く、ゆっくりと。


少女が彼と結ばれるのは、それから2年半後のことになる。


いつになく真剣な様子で、彼は少女を抱きかかえ、玉座に置くようにして優しく入れた。

「出すぜ・・・!」

初めて出されたときは、無我夢中で、頭が真っ白になっていた。

それからも、たくさん出された。
出されるたびに少女は、幸せだった。



◆ ◆ ◆



ひとつだけ懸念があった。
幸せが破壊される恐怖を、少女は味わった。

とても信じられないことだが、彼とAとは親友なのだという。
いっそう不気味さを増したAと再会したとき、血も凍るような恐怖で少女は泣きそうになった。

しかしすぐに、バレない可能性に思い至った。
少女は“母親”の“クローン”みたいなものであり、同じ顔が他にも何名もいる。
そして彼は、少女を手に入れた経緯は明かさないでいてくれた。
果たして彼女は、Aに気付かれることなく、やり過ごすことが出来た。



だが、ある日のことだ。Aは彼に、少女を手に入れた経緯を尋ねてきた。
訊かれたら流石に答えないわけにはいかないのだろう、彼は簡潔に説明した。

時期の一致から、真相に辿り着くことなど造作もない。
Aは不気味な笑いを発していた。

(イヤっ・・・・やめて・・・・!)

彼の裾に、すがりつきたい心地だった。

少女は、彼が自分を守ってくれることに疑いは抱いていない。
しかし、彼がAを信頼していることが恐ろしいのだ。

少女の言葉は、彼には届かない。
Aを信用するなと言っても、聞こえていない。
そのことが、たまらなく心細い。

(気付かれた、わたしを取り戻そうとしてくる・・・イヤあ!)
(わたしは、ご主人様のもの・・・永遠のしもべ・・・他の誰もイヤっ!)



しかし少女の心配は杞憂だった。

Aは歪んだ性癖を持っていて、女が親友に寝取られることに興奮していたのだ。
それは少女にとっては理解しがたいことだったが、理解しなくて構わないこと。

これからは、恐怖に苛まれることなく、彼と共にあれる。

彼に出会えて良かった。

生まれてきて良かった。

少女は今日も、彼に抱かれて、クライマックスで出してもらえるのだ。





   狂気の終焉 〜mad end〜   了

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「NTRバンザイ」
ゴリーレッド「飛ぶな」
火剣「店頭に。奴隷市場なるものは存在するんだろうな」
ゴリーレッド「これほどの非人道はない」
コング「ポルノではなくこういうほうを真剣に取り締まることに神経を傾注すべきだ。警察も国会議員も」
火剣「攻撃的な美しさ。凶悪なボディか」
コング「買われたら絶対服従? どんな屈辱的な命令にも逆らえない?」
ゴリーレッド「目が輝いている」
コング「なら僕が買おう。僕は酷くない。優しくするぜい」
火剣「先を越されたぞコング」
コング「紳士が現れてしまったか。あの人に買われたいと思わせるなんて凄い」
火剣「Aに買われたら終わりか」
コング「ヒロピン博士としてはこの状況でAを応援せざるを得ない」
ゴリーレッド「軽蔑している男に所有物にされる恐怖」
コング「萌えポイント」
ゴリーレッド「アホか」
火剣「ついに奪われてしまったか」
ゴリーレッド「あなたを救うことでわたしたちも救われる。これが究極ギリギリの人間性」
コング「何、Aと彼は親友? そんな殺生丸な」
ゴリーレッド「笑顔」
火剣「気づかれていたか」
コング「しかしAはNTRだったか。最初は処女じゃないからもう興味ないと言うのかと思ったら大どんでん返し!」
ゴリーレッド「彼女がハッピーエンドならそれでいい」
火剣「感動の物語だが奴隷市場は絶対悪だ」
コング「コゼットのように重労働させるのも悪」
ゴリーレッド「欲望渦巻く世界。油断も隙もない」
コング「心の隙間を埋めるセールスマンが必要だな」
ゴリーレッド「いらない」
火剣獣三郎
2016/04/29 16:44
>火剣さん
そこは仁義無き欲望の世界・・・ひとつのルールのみが支配する、闇の世界。彼女は救われましたが、この市場は厳然と存在し続けています。

八武「うむ・・・うむ・・・」
山田「何を頷いてるんだ。」
八武「ロマンを感じずにはいられない。」
佐久間「ある意味ロマンだな。」
山田「奴隷市場か・・。今でもあるんだろうな。」
佐久間「アンダーグラウンドの話だけではない。ブラック企業や貧困徴兵なんかも、見た目の自由度がある分だけ、並みの奴隷制度よりも待遇が悪いかもよ。」
山田「古代の奴隷には、自分を買い取って自由になる権利があったらしいが、いつからかそれも無くなった。」
八武「むふふう、奴隷少女、奴隷少女♪」
維澄「ここにも目が輝いている人が。」
八武「ぬはは、私は人でなし。かいてえ、かいてえ。」
山田「テーガンの息子かっ。」
八武「NTRというと神邪くん。そろそろ帰ってくるそうだが。」
佐久間「すっかりNTR博士として名を馳せている。」
八武「名誉。」
山田「名誉なのか?」
八武「愛する男と軽蔑する男が親友同士。怯える少女、イイ!」
維澄「親友に譲ったわけではなく、あくまでもNTRなんだ。」
佐久間「そう、その通り!」
八武「笑うせぇるすまんなら、女の子を売っても大丈夫だよねぃ?」
山田「大丈夫ではない。」
八武「対象年齢の話。」
アッキー
2016/04/29 22:14

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