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zoom RSS 【とある】 第一位・御坂美琴 (T) 【パラレル】

<<   作成日時 : 2016/04/30 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



ゴーグルを装着した少女が、その華奢な体躯に似合わぬ無骨な狙撃銃を構える。
スコープ越しに目標を確認し、射撃―――
―――が、次の瞬間、被弾したのは彼女自身だった。
ゴーグルは吹き飛び、彼女自身の左腕も木っ端微塵。
何が起きたかもわからず、狼狽と激痛が思考を阻害する。
それも束の間、即座に撤退しようとする彼女の耳に、自らと同じ声が響いてきていた。
今の今まで遥か遠くにいたはずの標的は、自分の背後で薄ら笑いを浮かべていた。

「“超電磁砲”は、果たして何をやっているでしょうか?」

視界がブラックアウトする。
ざらつく景色が最期の光景となった。



◆ ◆ ◆



学園都市、八月。
爽やかな夏の日差しの中で、少年は叫んでいた。

上条 「不幸だーーーーー!!」

一方 「なーンなーンでーすかー? 往来で素っ頓狂な叫び声あげてる馬鹿は。」

上条 「おお、鈴科! この自販機が、俺のなけなしの二千円札を吸い取ったまま、返してくれないんだ!」

一方 「・・・・・・そりゃまた、随分と愉快なメに遭ってらっしゃいませすね、ヒーローさンは。」

上条 「頼む鈴科! お前のベクトル操作で、俺の二千円札を取り戻してくれ!」

一方 「ハァ、俺の能力も、安くなったもンだぜ・・・。」

そう言いながら一方通行は、自販機に手を触れる。
すぐさま二千円札が吐き出され、ついでにジュースも出てきた。(濃厚ひやしあめ)

上条 「あれ、これって窃盗じゃないでせうか・・・?」

一方 「気にすンなァ、俺を誰だと思ってやがる。学園都市第三位“一方通行”だ。カネなら幾らでもあンだよ。」

一方 「苦情が来りゃ、まとめてテキトーなカネでも渡してやればイイ。」

上条 「これがレベル5の感覚・・・。小市民な上条さんにはついていけませんことよ。」

上条 「・・・っと、言い忘れてた。」

上条 「ありがとな、鈴科!」

一方 「オォ・・・。」

無愛想に返事をする一方通行だったが、悪い気はしない。
感謝されることもそうだが、こうした平和ボケしたやり取りが幸せだ。


- - - - - -


“一方通行”。
そう呼ばれる前は、まだ人間らしい名前があった。

苗字は二文字で、名前は三文字。
大して珍しくもない名前だったはずだ。

ある時、つっかかってきた子供が、触れただけで骨を折った。

災いは、雪だるま式に膨らんでいった。


レベル5の第三位まで到達した一方通行は、
能力を開発した研究者の勧めで、長点上機学園に在籍することになった。

教科書は要らない。
全部覚えたから。

ノートは要らない。
覚えたことは忘れないから。

コミュニケーション能力は要らない。
クラスメイトなど、いないから。


街を歩けば、能力者を倒して名を挙げようとする輩や、能力者に恨みを持つ連中が襲ってくる。

面白半分に腕試しを挑んでくる格下能力者や、第三位の顔も知らないモグリども。
自分たちの劣等感を払拭したいが為に、能力者狩りを正当化するスキルアウト。
それらが“反射”によって、勝手に自滅していく様子は、愚かで哀れで、そして心が乾く。

うんざりする毎日は、心を弛緩させていく。
ささくれた心は、他人への興味や関心を薄れさせていく。

このまま孤独な人生を送っていくのだろう。
あらゆる悪意を反射できても、輪の中に混ざることは出来ない。



―――“偽善使い”上条当麻に出会うまでは、そう思っていた。



『こんなトコにいたのか―――』
『ダメだろ、勝手にはぐれちゃ』

『はァ?』

『いやー、連れがお世話になりました。はい通してー。』

『ちょっと待て』
『誰だよオマエ』


- - - - - -


上条 「いやー、上条さんは鈴科に助けられてばっかりですよ。」

上条 「インデックスのときだって、鈴科がいなければ今頃どうなってたか・・・。」

一方 「そォだな。あの羽が当たってりゃ、今頃オマエの頭はオシャカになってたかもしれねェな。」ククク

上条 「笑い事じゃないですよ鈴科さーん。あのときは自分でもヤバいって後悔してたんですからね?」

一方 「そォか? あのガキを助けられて満足だっていう顔してたぜ?」

上条 「ないない。いくら“偽善使い”でも、自分の命は大事なんですよ?」

一方 「・・・・・・」

しかし一方通行は知っている。
たとえ今は本気で保身を考えていたとしても、そのときになれば彼は、自分の命を投げ出してしまう。
きっと地獄の底までついていって、そして地獄の底からでも助け出す。たとえ自分が戻れなくても。

地獄というには生温いが、一方通行も助けられた一人である。
デフォルトで“反射”状態なので、チンピラに絡まれたところで物理的には傷ひとつ無いが、それでも。
あのとき確かに、上条は自分を泥沼から救い出してくれたのだ。

どれだけ感謝しても足りない。
笑顔が癪だから、この気持ちは教えてなんかやらないが。

上条 「あ、甘っ!?」

一方 「コーヒーうめえ。」

“濃厚ひやしあめ”の甘ったるさが、渇いた咽に絡みつく。
上条は物欲しそうな顔でコーヒーを見たが、一方通行は意地悪に笑って飲み干した。

上条 「あー、鈴科、これ・・」

一方 「いらねェ。」

能力演算を自動設定にしてある部分が多い一方通行は、あまり糖分を必要としない。
どちらかというと、複雑な演算式の副作用たる、眠気の方が深刻である。
ゆえに甘いものは別に好きではなく、ブラックコーヒーを好んでいるのだ。
それでも慢性的な眠気で目つきは悪く、上条以外にはよく誤解される。

もっとも最近は、一方通行を理解する者も増えてきていた。

「上や〜ん、それに鈴科。」

「奇遇だにゃー。」

背の高い、青い髪のピアス男。
金髪にサングラスのチャラそうな男。

ともすればチンピラが絡んできたみたいだが、そうではない。
上条と一方通行にとっての数少ない友達だ。

一方 「よォ、土御門に藍花。」

上条 「何してんだ?」

青ピ 「ナンパや、ナンパ。」

土御門 「しかし未だに成功率はゼロなんだにゃー。」

青ピ 「あー、空から可愛い女の子とか降ってけえへんかな?」

土御門 「運命的な出会いが欲しいぜよ!」

一方 「相変わらずだなァ、オマエら・・・。」ハァ

上条 「わかるわかる。上条さんも素敵なフラグが欲しいですよ。」

青ピ、土御門 「「死刑。」」

上条 「何故!?」

青髪ピアスと土御門の目は笑っていなかった。
まるで記憶でも失っているかのように、上条は鈍感なセリフを吐く。
その罪深さは、女子に苛立ちや諦観を、男子に嫉妬を与えてしまう。

青ピ 「つっちー、そっち押さえといて!」

土御門 「食らえ上やん、モテない男子の恨みが籠もった関節技を!」

上条 「ギブ、ギブギブ!」

一方 「ご愁傷サマ。」

上条 「助けてくれーーー!」

しかし一方通行は、助ける気など無い。
鈍感な男は、少しは痛い目に遭うべきなのだ。

一方 (あァ、微笑ましィ。)ケラケラ

故郷での陰湿な虐めと違って、青髪ピアスと土御門のそれは、子犬がじゃれているようなものだ。
上条を本気で羨ましいと思いこそすれ、“不幸が感染る”とか“疫病神”などと思ったりなんかしない。
むしろ“上条病”に感染したいくらいだと思っている―――これも冗談ではなく、本気で。


- - - - - -


一方 「ククク、あいつらといると飽きねェな。」

ゲームセンターで遊んだりした後、上条と土御門は同居人の待つ家へ。
青髪ピアスは、落下型ヒロインを探しに街の雑踏へ消えていった。
一方通行はコンビニで缶コーヒーを買ってから、適当に街をブラついているところだ。

一方 「ン・・・?」

一方 「ありゃあ・・・」

木を眺めて立っている少女に、一方通行は見覚えがあった。
常盤台の制服に、短い髪、スラッとしているが未成熟な体型。

一方 (御坂美琴・・・学園都市の第一位サマが何故こンなトコに?)

御坂? 「ミャーと鳴く四足歩行生物がピンチです。」

一方 「・・・ハァ?」

一方 「それは俺に言ってンのか?」

御坂? 「あなた以外に誰がいますかと、ミサカはセロリの物分りの悪さに落胆します。」

一方 「オイ待て、誰がセロリだ。」

御坂? 「モヤシの方が良かったでしょうか。」

一方 「誰がモヤシだ、殺すぞ。」

御坂? 「いやん、とミサカは身を竦めながら上目遣いで一方通行を見つめます。」

一方 「イヤ、そンな無表情で見られても」

御坂? 「やはりロリコンという噂は本当だったのですねと、ミサカは美少女たる自分の上目遣いが効かないことに対して若干のショックを覚えます。」

一方 「自分で美少女とか言っちゃってるよコイツ・・・。あと俺はロリコンじゃねェ。」

一方 (第一位の顔と名前は知ってたが、それがコレかァ・・・。)

一方 (なンかイメージと違うっつーか・・・もっとこォ、お嬢様って感じの令嬢だと思ってたが・・・)

御坂? 「というわけで一方通行、木の上から子猫を下ろすのを手伝ってください。」

一方 「あァ? 何で俺がそンなことしなくちゃならねえンだ?」

御坂? 「協力してくれないのであれば、あなたのロリコン疑惑を学園都市に拡散しますと、ミサカは脅します。」

一方 「オイ!」

御坂? 「・・・・・・」ウワメヅカイ

一方 「・・・あー、わかったよ。ったく、今日はレベル5の無駄遣い―――」

一方 「・・・!」

そこまで言って、一方通行は気付いた。
その胸に落ちてきた子猫をベクトルクッションで抱きとめながら、一方通行は少女に向き直った。

一方 「オマエ・・・何者?」

レベル5なら、第一位なら、木の上の子猫を助けるくらい、自分ひとりで出来そうなものだ。
そういえば、装着しているゴーグルには見覚えがある。
電子線や磁力線を追う機能の道具だが、そんなものは第一位には必要ないはず。

御坂? 「ミサカはミサカですと、ミサカは胸を張って答えます。」

一方 「まさかオマエ、第一位のクローンとか言うンじゃねェだろうな?」

最近、学生の間で噂になっている都市伝説に、軍事用クローンが作られているというものがあった。
その素体が、常盤台の御坂美琴だというのだ。

御坂? 「その通りです、とミサカはセロリの質問に素直に答えます。」

一方 「・・・木原くンは、例の計画は凍結したって言ってたけどな。」

御坂? 「ZXC741ASD852QWE963´」

一方 「・・・何言ってンだ、オマエ。」

御坂? 「やはり一方通行は実験の関係者ではないのですねと、ミサカは黙秘権を行使します。」

一方 「実験?」

御坂? 「ちなみにミサカの検体番号は8251号ですと、ミサカはようやく自分の名前を明かします。」

一方 「そりゃ名前っていうより・・・」

8251号 「何ですか?と、ミサカは苦い顔をしている一方通行の心理を図りかねます。」

一方 「・・・」

それは一方通行にとっても説明しにくい感情だった。
本名ではなく能力名で呼ばれるようになったことを、不幸だとは思っていない。恥じることなどない。
名前が無いことで、他人から勝手に可哀想だと思われることは、胸糞悪い。
しかし、上条に「鈴科」と呼ばれたとき、心の奥底が温かい気持ちになった。

一方 「・・・ナナ、でどォだ?」

8251号 「それはミサカに名前をつけてくれるのですか?と、ミサカは驚きと喜びを隠せません。」

8251号 「だけど実験については教えませんよ、とミサカは自分が安い女ではないことを主張します。」

一方 「そンなつもりじゃねェよ。8251号じゃ、長ったらしいだろ。」

8251号 「なるほど、これがツンデレというものですね、とミサカは親指を立てて賞賛を示します。」

一方 「誰がツンデレだ。」

しかし考えてみれば、以前の自分なら声をかけようとすら思わなかったし、声をかけられても無視しただろう。
それが猫を助けたり話し込んだり、あまつさえ名前をつけるなど、自分でも驚くばかりの積極性だ。
これも上条たちの影響なのだろうか。
考えたら恥ずかしくなってきた一方通行は、ばつが悪い顔でよそを向いた。

8251号 「ナナ・・・上から読んでも下から読んでもナナ・・・」

一方 「くだらねェ。」

そう言いつつも、こんなに喜んでくれるなら、もっと考えた名前にすれば良かったと一方通行は思った。
名無しだから、ナナ。ただそれだけの発想なのに、申し訳ない。

会ったときは、いかにもクローンなイメージの無表情だった彼女が、今では柔らかい笑顔をしていた。
どこか昔の自分に似ていると、一方通行はシンパシーを覚えていた。

8251号 「ところで一方通行、お腹が空きました、とミサカはさりげなくおねだりをしてみます。」

一方 (・・・イヤ、俺はこんなに図々しくねェな。)

初対面の少女に名前をプレゼントする自分も大概だが、初対面の相手に食事を要求するとは不遜だ。
クールビューティーな印象だが、悪女の素質もありそうだと、一方通行は心配になった。


- - - - - -


近所のファミレスに入って、一方通行はステーキセット、8251号はハンバークランチを注文した。
もちろん一方通行の奢りである。

8251号 「実は温かい食事というものは、これが初めてです、とミサカは感動しています。」

一方 「あァ、栄養剤や点滴ばっかだったのかァ?」

自分も研究所ではそうだった。
便利だが、味気ない。

8251号 「あーん、とミサカは一方通行の口へハンバーグを運んでいます。」

一方 「いらねェよ!」///

8251号 「そう照れずともよいではありませんか、とミサカはウブな一方通行をからかいます。」

一方 「テメエ・・・。」

8251号 「誰かと食事をするのも初めてでしたので、一度“あーん”をやってみたかったのです。」

一方 「そォかよ。」

同情を誘う話だし、その気持ちはわからなくない。
しかし流石に、そんな恥ずかしいマネをする気はなかった。


- - - - - -


食事を済ませて、一方通行と8251号は適当に街を歩いていた。
凍結していたはずの計画が動き出した理由など、色々と気になることはあるが、あまり詮索するのも失礼だろう。
ただ、素体である御坂美琴は、このことを知っているのかどうかは訊いておきたかった。

一方 (・・・まァ、全く知らねェってこたァねェだろォな。)

第三位である自分はもちろん、一般の学生の間でも噂になっているようなことだ。
ほぼ全てのセキュリティは、第一位の前では役に立たない。少し調べればわかるだろう。

一方 (それ以前に、こンな無造作に出歩いてたら、バッタリ出くわすことだって・・・)

8251号 「ところで一方通行、これはデートというものですよね?とミサカは確認を取ります。」

一方 「ハァア!?」

8251号 「ミサカは乙女らしく、デートというものに憧れているのです。」

8251号 「デートというものは、彼氏が彼女に指輪を贈ると相場が決まっています、とミサカは学習装置で得た知識を述べてみます。」

一方 「誰が彼氏だ。」

学習装置には少女マンガでも搭載されているのだろうか。

一方 「・・・チッ、」

しかし8251号が悲しそうな顔をするので、一方通行は自販機でコーヒーを買って渡した。

一方 「ホラよ、これでも飲んどけ。」

8251号 「いやいや、ねーだろ、とミサカは指輪を缶コーヒーで済まされたことに愕然とします。」

一方 「プルタブでも嵌めとけ、と一方通行はニヤニヤしながら言い放ちまァす。」

8251号 「うわっ、このモヤシ性格わりぃ、とミサカは悪態をつきながら仕方なく缶コーヒーを口にします。」

8251号 「う、苦ぇ、ブラックかよ・・・という本音を胸にしまってミサカは舌を出します。」

一方 「しまえてねェよ。いらねェなら返せ。」

8251号 「いやん、とミサカは首を振ります。う、苦い。」

一方 「だから返せって。」

8251号 「そんなに間接キスがしたいのですかと、ミサカはムッツリスケベな一方通行に呆れます。」

一方 「殴るぞオマエ。」

8251号 「・・・それに、コレは一方通行から初めて貰ったプレゼントですから。」

一方 「・・・」

一方 「・・・初めてじゃねェだろ、“ナナ”。」

そう言う一方通行の顔は、夕日のせいか真っ赤になっていた。
今日は慣れない発言が多すぎる。自分らしくない。

一方 (だが・・・悪くねェ。)

8251号 「そういえば、あなたの名前をまだ聞いてませんでした、とミサカはチャンスを逃さず言葉のキャッチボールを繋げます。」

一方 「・・・鈴科。」

一方 「それが俺の、今の名前だ。」

それは元の平凡な名前ではないが、上条から貰った大切な名前だ。
上条は、ふと浮かんだというが、即興にしては気が利いている。

一方 「じゃあな、ナナ。」

8251号 「ええ、さようなら。・・・とミサカは別れの挨拶を交わします。」

そのときの彼女の顔が、少し寂しそうに見えたのは、気のせいではないだろう。
短い間で、こんなにも別れがつらい。


- - - - - -


一方 (そういや、ZXC741ASD852QWE963´とか言ってたな。)

暮れかけていた日が、妙に不気味に感じた。
胸騒ぎを覚えた一方通行は、明日にしようと思っていた確認作業を、今日中にやってしまうことにした。

おそらくそれは正解だった。

明日では、間に合わないのだから。




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