佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 三、貪婪

<<   作成日時 : 2016/05/11 00:00   >>

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アルカディア本部内の病院で、ルナは眠っていた。
「んん・・・ん。」
「ルナ?」
「ふぁ〜あ、リュウ、おはよ。」
「食べたいものはあるか?」
「みかんが欲しいな。」
「持ってくる。」
リュウが部屋を出て行くと、入れ違いにレックスが見舞いに来た。
「よう、ルナ。」
「あ、レックス。」
ルナの表情が和らぐ。
「調子はどうだ。」
「もちろん元気よ。」
そう言いながら、いつもほどの元気さは無い。顔色もあまり良くない。
「ま、思ってたよりは元気そうだ。」
「レックスは、その・・・こういうのって、どう思う? 気持ち悪くない?」
「んー、見ず知らずの人間だったらオレもそう思ってたかもな。でも、よく知ってる人間だったから、驚きはしたけど気持ち悪いとかは思わなかった。それにさ、クレアにとっては子供と孫が同じ年に生まれるんだぜ。面白いだろ。そう思った方が得だって。」
「あはは、確かにそうだね。」
ルナが鈴を鳴らすような声で笑うのを見ると、レックスはホッとした。
「そうそう、クレアの赤ちゃん、どうなったの?」
「ああ、未熟児だから保育器に入れてるらしい。名前もまだ決まってないって。まったく。」
「予知能力者なのにねー。」
「ところでリュウは?」
「みかん買いに行ってる。」


食堂の売り場でみかんを10個買ったリュウは、思わぬトラブルに巻き込まれていた。
「よう、“インシスト”。」
年はリュウより10くらい年上の、20代後半の男。
砕組第四分隊の副隊長、リック・ビッグマンだった。
「・・・・・・。」
リュウは無視して立ち去ろうとしたが、リックが行く手を阻んだ。
「シカトすんなよ。おれはお前らのこと応援してんだぜ。」
「何か用?」
「いや何、姉の具合ってイイらしいじゃん。ちょっと教えてくれ・・」
リュウの拳が飛んだ。
リックはそれを軽く受け止めて笑う。
「おっと、危ねえなあ。」
リュウが全力を出しても、びくともしない。体格差が違いすぎる。
「まったくよう、ちょっとからかったくらいでキレんなよ。辛抱足りねえやつだな。もしかしてアレのときも早いのか?」
そこへリュウの蹴りが飛んだが、軽くいなされて、すっ転ばされてしまった。
「おいおい大丈夫かよ。これだから“半端者”は・・・。新月らへん以外では丸っきり普通の人なんだからよォ、もちっと我慢ってものを覚えろや、な。」
「・・・・・・。」
リュウは無言のまま立ち上がった。
「何か言いたいことあるって顔だな。言ってみろよ。」
「・・・別に、応援も祝福もいらないけど、侮辱と迫害は許せない。」
「はあ〜、許すとか許さないとか、お前らにそんな権利あると思ってんの? あ〜? 勘違い君1人めっけ〜。」
「恥知らずよりマシだ。」
「何だと?」
リックは顔を歪めて拳を振り上げた。

「そこまで!」

白組隊長X・Q・ジョナルがサイコガンの狙いを定めていた。
「うっ!」
「それ以上やるなら殺しますよ、リックさん。」
「や、やだなあ、ちょっと冗談が過ぎただけっスよ。可愛いから、ついからかってしまうってやつ? それで殺すとか殺さないとか・・・。」
「忘れてるかもしれませんが、俺は重幹部代行“準星”の地位にいます。ある程度は独断で、素行不良のメンバーを処刑する権限を持っています。今回の場合だと、下品な言葉でからかい、反撃を封じ、口ごたえしたら暴力を振るうということですが、リックさんの上司に許可を取り付けるまでもなく、処刑できますよ。」
ジョナルはそう言って笑い、小首をかしげた。
笑いながら人を殺せる笑顔だった。
「わわ、わかった。わかったから、その指を下ろしてくれ。頼む。こんなの、ほんの冗談だろ、な?」
「ええ。リックさんが“冗談”で振り上げている、その拳を下ろしていただければ、俺もこの冗談で狙いを定めている人差し指を下ろすのですが。」
「あ、あああ!」
リックは慌てて手を下ろした。
ジョナルも笑顔のまま指を下ろす。
「・・・。」
リュウはジョナルに軽く一礼して、病室へ戻った。


「よう、リュウ。お前もやつれてるな。」
「レックス。」
リュウの顔が明るくなった。
「それじゃ、オレはクレアんとこ戻るよ。」
去り際にルナが呟いた。
「ありがと。」


クレアの部屋に来たレックスは、サムと交代した。
「いいところに来た。今の状況を説明しておこう。」
「おう。」
「差し当たって問題となってるのは、ディバウア・ネイバー。あの10人の中の、手足が長くて痩せた男だ。」
「“反十戒”の“隣人を貪る”だあ? まんまじゃねーか。本名かよ?」
「奴ら10人は、全員が通称名で呼び合っている。その方が互いにも覚えやすいだろうからな。」
「なるほどね。」
「そのディバウアが暴れている。10人の中では最も下位だが、それでもA級の出力だ。」
「超能力の5つの基礎能力を全て備えてるんだろ。サイコキネシス、テレポート、テレパシー、クレアボヤンス、予知。」
「それに加えて、奴はエネルギードレインの能力を得ている。近くの生物から見境なく生命力を吸収していってる。」
「くそっ! それも“神酒”のせいかよ!」
「そこで誰を向かわせるべきか思案中なんだが・・・。生半可な連中だとエネルギーを吸い取られて終わりだから、強力なカードを使うしかないんだがね・・・。」
「命令に従わないとか?」
「いや、今回に限ってそれはない。最高幹部シュシュ・オーディナークが全面的に味方しているからな。我々月組系列と、シュシュの砕組系列に限っては万全だろう。」
「じゃあ何が問題なんだ。」
「“アンティローグ”はA級10名、B級も着実に増えてる・・・。今使える戦力で考えれば、圧倒的に不足なんだ。」
「シュシュ・オーディナークはS級のサイコキネシス使いだと聞いてるが、それでも勝てないのか?」
「勝てるさ。口の中に爆弾を放り込めば、虫歯は吹っ飛ぶだろう。」
「ああ・・・。」
レックスはその意味を理解して嘆息した。
シュシュ・オーディナークの力は強大すぎて、戦えば甚大な被害が出るのは避けられない。
破壊活動を止める為に、より大きな破壊をもたらすのでは、本末転倒だ。
日頃からアルカディアでは、B級戦力が大事だと言われているが、その意味を痛感した。
「現在使えるカードを全て失えば、シュシュとハヌマンの出番だ。北米の大地はズタズタになり、しばらくは人が住めなくなる。ミチルドが直してくれるとも思えないし、死者は100万や200万ではきかない。こっちに使えるテレポーターがいれば、そもそも苦労する局面でもないんだが、スカーレットは不安定だし・・・いや、愚痴は良くないな。」
「構わん。強力なカードは何枚だ?」
「あの10人相手に、1対1以上の戦果を挙げられそうなのは、4人しかいない。カタストロ、コムザイン、デュース、夜果里だ。」
「4人で10人を相手にするのか。キツいな。」
「だろ・・・。キアラとサイ子がいれば随分違ったんだが、生憎2人とも出かけている。連絡はついてない。」
「ついてねえな、こんなときに・・・。やっぱオレが前線に出向くわけにはいかねえか。4人の力を2倍にすれば・・」
「相手の力も2倍になることを忘れるな。お前の能力は範囲を絞れないんだ。」
「くっそ・・・何とか上手い使い方できねえかな・・・。」
「今やってるだろ。私の能力を2倍にしている。」
「あんまり役に立ってる気がしねえんだけどなあ・・・。」
「そんなことはない。随分楽だ。」
そこへ電話が入った。
「何だあ全く・・・鈍ってる上に忙しいと、こんな簡単な予知も出来な・・」
最初はその調子で面倒そうなクレアだったが、電話を取った瞬間、血相を変えた。
「ばっ、馬鹿っ! 何で止めなかった!?」


砕組の、第二十、二十二、二十四分隊が、ディバウア討伐に向かっていた。
第二十分隊長マイヤ。
第二十二分隊長ロティエル。
第二十四分隊長バーシュ。
それぞれB1級中位のサイコキノと、砕組では実力者だ。
砕組の分隊は8名1セット。24人のB級エスパーの戦力は、相当なものになる。
個々バラバラの烏合の衆ではなく、訓練によって統制された部隊。
「フォーメーションβ!」
マイヤの高い声で24名が散開し、ディバウアを囲んだ。
ディバウア・ネイバーは相変わらず痩せこけてはいるものの、身長が3メートルにまで膨れている。
あの長い両手は、地面につくまでになっていて、異様な光景だった。
「切り刻め、デモンズ・カッター!」
「壊しなさい、キリア・ストライク!」
「突き殺せ、ロケット・ドリル!」
マイヤ隊の切り裂く念力、ロティエル隊の叩き壊す念力、バーシュ隊の貫く念力が、一斉にディバウアを強襲。
「はははははははは!」
しかし念力は全て、笑い狂うディバウアに吸収された。
「げっぷ。なかなか上等な念力だ。」
「こいつ・・・!」
「念力を吸収するのか?」
「“神酒”は五基だけじゃないのかよ?」
予想外の事態に、狼狽で陣形が崩れる。
「はははははははは!」
ディバウアがサイコキネシスで激しい突風を巻き起こし、あたりを薙ぎ払う。
念力で防御した瞬間に、彼はテレポートでマイヤの背後へ回り、羽交い絞めにした。
「嫌ァアアアッ!?」
「美味い! やはり女の精気は格別だ!」
「アアアアアアアッ!!」
「ぷはあ。」
干からびたマイヤを捨てて、ディバウアは再びサイコキネシスで突風を巻き起こした。
ロティエルとバーシュを残して、21人は吹き飛ばされる。
「残りは男だけか・・。何となく面白くないが、とりあえず貪るか。」
「ほざきなさい。サイコ爆拳!」
ロティエルの拳がヒットし、爆発を巻き起こす。
「ぐわっ・・?」
「食らえェ、猪突ドリルクラッシャー!」
バーシュの渾身の体当たりが、ディバウアの体を貫いた。
「ぐわわわわわわわ!」
叫びながらディバウアは、テレポートとサイコキネシスで自らの肉片を回収する。
強引にサイコキネシスで肉体を修復するつもりなのだ。
そして、その為に使うのは自分ばかりではない。
「ぐわははは!」
ディバウアはテレポートを駆使して、他の隊員たちへ襲いかかる。
次々とエネルギーを吸収し、みるみるディバウアの体が元に戻っていく。
「くそっ!」
「待ちなさい!」
しかしバーシュもロティエルも追いつけない。
テレポートに加えて、予知も備えているディバウアは、隊員たちを食らっていく。
「貪る! 貪る! 全てのものは、このディバウアが貪る為に存在しているのだァー!」
「サイコ爆拳!」
「猪突ドリルクラッシャー!」

「・・・それ飽きた。」

今度は予知で見切られて、サイコキネシスで強引に叩き潰された。
24名は全てエネルギーを吸い取られ、干からびた肉塊になった。
ここに砕組の、第二十、二十二、二十四分隊は壊滅したのである。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/05/11 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「子供と孫が同じ年に生まれる?」
火剣「エスパーの世界では今さら驚かない」
コング「それに比べたら僕が26歳下の女子と年の差婚しても不思議ではない」
ゴリーレッド「意味が違う」
コング「我輩は赤ちゃんである。名前はまだない」
火剣「リックの侮辱と暴力未遂で処刑の対象。素晴らしい自浄能力」
コング「ディバウア・ネイバーはやはり貪りたいのは女か」
ゴリーレッド「最悪だ」
火剣「シュシュにしろレックスにしろピンポイントなどコントロールが難しいところは魔法とは違うんだな」
コング「女の弱点もピンポイントで責めないと」
ゴリーレッド「膝へのドロップキックも」
コング「待ちましょう」
火剣「カタストロ、コムザイン、デュース、夜果里・・・足りないか」
コング「連絡はついてないとついてねえと掛けたわけか」
ゴリーレッド「偶然だ、駄洒落ではない」
コング「レックスの味噌汁」
火剣「身長3メートルとなるとドエス魔人級のデカさ」
ゴリーレッド「誰が指示を出した? クレアは勝てないとわかっていた」
コング「マイヤああああああ! 逝ってしまわれた。むごいいい」
火剣「本当にむごいな」
ゴリーレッド「神邪の指摘通り女子の死のほうが重く感じるか」
コング「それが世の中」

火剣獣三郎
2016/05/11 16:30
>火剣さん
アルカディア内部も一筋縄ではない状況で、討伐へ向かった部隊は、あえなくディバウアの餌食に・・・。
これからも犠牲者は出ることになります。

山田「なんてこった。こうも簡単に死んでしまうのか。」
八武「まままマイヤが貪られた!?」
佐久間「やはり女の死を重く感じるか。」
山田「マイヤだけでなく、ロティエルもバーシュも、ひとかどのエスパーだったのに。」
八武「だが何だ、この背徳的な興奮は!?」
山田「おい・・。」
神邪「誰が出撃命令なんか出したんでしょうね。」
維澄「功を焦ったのでなければ、これは・・」
佐久間「マイヤたちは功を焦ったとも言える。市民が貪られているのを止めようとして、自分たちが全滅してしまった。」
山田「それは功を焦ったわけではない。助けたいという意志だ。」
佐久間「まあ言い方は何でもいいんだが、決して勝てない戦いじゃなかったんだよ。」
神邪「相手もA級の予知能力を持ってるせいで、後手に回ってしまうのは手痛いですね。」
維澄「やはりA級戦力4人に頼ることになるかな・・。」
アッキー
2016/05/11 21:47

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