佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 四、攻撃と防御

<<   作成日時 : 2016/05/12 00:00   >>

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「ひでえことしやがるねえ。」
京狐夜果里がディバウア・ネイバーのところに現れたのは、それから間もなくしてのことだった。
クレアの指示で動いたが、砕組の3部隊が壊滅するまでには間に合わなかった。
「重幹部クラスのお出ましか。だが、このディバウアには勝てない、ぜ。何しろ大勢からエネルギーをたらふく吸い取ってパワーアップしている。元はA3級だが、今はA2級くらいにはなってる、ぜ。」
「まあ、あたし1人では勝てないだろうね。」
夜果里は全く怯んでいない。手にはスコップが握られている。
「そのスコップが相棒か?」
「そんなところね。あたしはアルカディア重幹部・・・星の四。“鉄狐”(メタルフォックス)と呼ばれているがね。裏の名は“墓堀り人”(グレイブディガー)・・・殺された人たちだけでなく、お前の墓穴も掘ってやろう。」
「面白い。貪るに相応しいセリフだァ!」
「墓堀り人・・・参る!」
目をギラギラさせたディバウアと、冷たい炎を燃やす夜果里。
(百鬼斬空!)
最初から夜果里は飛ばす。百の刃がディバウアを襲った。
ディバウアはそれをかわすが、すかさず次の刃が放たれる。
(八岐斬空!)
ディバウアはそれも予知してかわすが、夜果里は当然とばかりに動じない。微塵も。
(朱鳥斬空!)(竜刃斬空!)(虎爪斬空!)
次々と繰り出される見えざる薄刃を、ディバウアはテレパシーと予知を駆使して逃げ続ける。
「はははははははは!」
まるで疲れていない。
夜果里の方が息を切らして、攻撃の手を止めた。
「はあ・・・あたしも年かね。50を過ぎると否応なく体力の衰えを感じ取ってしまう。」
そう言いながら、しかし焦りの色は見られない。
ディバウアは、諦めたのかと思って、せせら笑った。
「何だ、とんだ期待はずれだ。逃げ回らせて疲れさせようって、自分が疲れてりゃ世話ない。本末転倒!」
「・・・なるほど、やはりそうか。」
「あ?」
「思っていた通りだ。30年前とは違うね。」
「はあ?」
30年前といえば、ディバウアは生まれていない。
「サイコキネシス、テレポート、テレパシー、透視、予知。5つの能力をAクラスで備えているのが10人。こう言うと強敵に聞こえるが・・・案外そうでもないかもね。」
「何だと?」
「少なくとも、お前は見掛け倒しだね。」
「ッ!」
ディバウアはキレた。テレポートで夜果里の背後へ回る。
しかし同時に、腹部を深く切り裂かれた。
「ぐわわわ!」
すぐにテレポートで離れ、サイコキネシスで修復する。
夜果里は、この隙に攻撃を行うこともなく、余裕の表情で見ている。
「何でっ・・・だ!」
「つまりお前は素人ってことさね。確かにお前は強いよ。スペックなら、あたしの10倍はある。でも自分の力を1割も活かせてないね。5つの超能力を持っていても、同時に使えるのは2つってとこだろう。それに加えて、単純すぎる背後からの奇襲。あたしは予知能力者じゃないが、予想は出来る。」
「くそう! 馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!」
ディバウアのサイコキネシスが、夜果里に放たれる。
夜果里は涼しい顔でスコップを盾にした。まるでスコップからバリアーが発せられてるように、防ぎきった。
「何だそのスコップわァ!?」
「せっかくのA級テレパシーも宝の持ち腐れだね。ナノサイズで組み合わされた特殊合金だよ。」
「そんなものでA級のサイコキネシスを防げるかあっ!」
「そう、タネはあと2つ。まずはこのスコップに、あたしの細胞を組み込んだ。メタルイーター能力者である、あたしの細胞をね。おかげでよく手に馴染むし、空間干渉の盾も発動できる。アルカディアの技術は素晴らしかろう。」
「くそがっ! だが状況は互角だろうが! 互いに攻撃が通用しない! いや、持久戦ならこっちが有利!」
ディバウアは必死で自分が優勢であることをまくし立てた。
しかし夜果里は余裕で鼻を掻いている。
「あのねえ、あたしが1人で来てると思うの? 出ておいで、レンファ。」
建物の陰から、30代後半の女性が姿を現した。中華系の顔立ちをしている。
彼女は砕組の浮動エージェント、レンファ・アータスティー。A3級の念力使いだが、“攻撃”か“防御”か、どちらか一方しか行えないという性質を持っている。その攻撃力は防御力の半分。これは訓練でどうにかなるものではなく、彼女の超能力の持つ“性質”なのである。
「わたしに気付かなかったんですね。サイコバリアーを張る必要も無かったかしらん。」
「ぐぬう!」
ディバウアのサイコキネシスがレンファを襲ったが、吹き飛んだのは周囲の建物だけだった。
「無駄ですよ。あなたのサイコキネシスは見たとこA2級の出力がありますけど、ろくに訓練していない拡散型。わたしのA級最弱バリアーでも防ぎきれます。」
「うぐぐぐぐ!」
「勝負あったわね。」
「まだだ! 互いに攻撃が通用しないということは変わらん!」
「そう。」

ノーモーション。
そして超高速。
だからよけられなかった。

予知していても間に合わなかった。ディバウアの首は切断された。
(あ?)
それからは猛攻。夜果里の斬空があたり一面を舞う。
「あたしに時間をくれてありがとう。」
舌戦に持ち込んだのは、何も相手を動揺させる為だけではない。この一瞬が欲しかった。
超高速斬空は、ある程度の時間を集中しなければならないのだ。
「あたしが攻撃で、レンファが防御。単純だけど効果的だったわね。」
バラバラになった肉片は、もはや修復する者はいない。
“貪婪”のディバウアは死んだ。
「ふう、まずは1人。」
(“神酒”によってエスパーになっただけで、超能力戦の訓練など、ろくに受けていない。この調子で、あたしがあと1人か2人斃せば勝てる計算だね。)
夜果里とレンファは、いったん本部に戻ることにした。

しかし。

「そうは問屋が卸さないっと。」
「「!」」
空中に現れて着地したのは、30過ぎの男だった。両手の指を頭に当てて、おどけている。
「こんにちは。僕はご存知“アンティローグ”中枢10人の第5位。“双尊”のペック・ペアと申します〜。」
(まずい。)
この事態を恐れていたからこそ、クレアは迂闊にA級のカードを切れなかった。
ペックの力は、夜果里の見るところ、パワーアップしていたディバウアの更に倍はある。
スコップとバリアーで防ぎきるのは難しい。
(こいつも素人に毛が生えた程度だとは思うが・・力の差がでかい。)
素人でもマシンガンを持てば達人を殺せるのと同じ理屈。
たとえ技量で勝っていても、単純なパワーで劣っている。
(サイコキネシスだけなら、どうにかなるんだがね。)
片目で横を見ると、レンファも表情が硬い。
(しかし、やるしかあるまい。)
すると突然、左から衝撃が飛んできた。
「ぐっ!?」
夜果里は地面をでんぐり返って体勢を立て直し、次に備える。
(何だ今のは? 奴は動いていなかった。ノーモーションで攻撃できるなら、思ったより厄介だぞ?)
ディバウア戦とは逆に、夜果里は焦っていて、相手が余裕だ。
闘争か、逃走か。ファイト・オア・フライト。
前者ならば、相討ちを狙うしかない。後者ならば、どちらかが囮になるしかないだろう。
どうするか。
どうするか。
迷いが許される時間も残りわずか。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「京狐夜果里VSディバウア・ネイバー」
コング「スコップにそんな細工が」
ゴリーレッド「墓堀り人。いかにも強そうなニックネーム」
コング「赤い麒麟児」
火剣「斬空連発。こんなに種類が豊富なのか」
ゴリーレッド「普通なら一発で終わるはずが」
コング「見掛け倒しなのか?」
火剣「戦いながら相手の力量、技量を見抜くとはさすが夜果里」
ゴリーレッド「そうか訓練を受けていない素人か」
火剣「姿が消えれば次の瞬間に背後に回るというパターンも読みきられていた」
コング「女を貪るディバウアが消されたのは痛いな」
ゴリーレッド「何を基準に喋っている」
コング「ヒロピン」
火剣「もっと強いのが現れたか。ペック・ペア」
コング「素人でもマシンガンを持てば脅威。なるほどテクがなくても電マがあれば女を落とせる」
ゴリーレッド「ハイレベルなバトルになるとノーモーションで超高速が重要」
火剣「逃走ならどちらかが囮になる?」
コング「レンファにしよう。30代だし。生贄を殺したりしないだろう」
ゴリーレッド「生贄ではない囮だ」
コング「囮を虜にするのがSの責務」
火剣「囮は危険過ぎる」

火剣獣三郎
2016/05/12 12:33
>火剣さん
前回は猛威を振るっていましたが、夜果里とレンファのコンビに敗れましたディバウア。
しかし相手はA級が10人で、予知もテレポートも持っています。早くも上位の厄介なのが現れました。

佐久間「こういう事態が懸念されるから、迂闊にA級戦力を出せない。」
山田「コムザインの歯がゆい顔が目に浮かぶようだ。」
八武「相手は素人集団なのかね?」
維澄「だけど舐めてかかると痛い目に遭う。」
佐久間「そういうことだな。現にペック相手に選択を強いられている。」
神邪「ペックは素人ではないんですか? それとも基礎能力以外に何か持ってるとか。」
佐久間「どっちだと思う?」
八武「重要なのはレンファのヒロピンだと思う。」
山田「不謹慎。」
八武「違う。戦場でもヒロピンを忘れないのが生き抜くコツだ。」
山田「・・・お前が言うと妙な説得力があるが、夜果里の性格からして自分が囮になりそう。」
維澄「夜果里なら勝ちの目もあるんじゃないかな。」
佐久間「戦力としての価値では、夜果里を逃がす選択になる。」
山田「そんな非情な決断はしたくないものだが。」
アッキー
2016/05/12 21:22

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