佐久間闇子と奇妙な世界

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<<   作成日時 : 2016/05/13 00:00   >>

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わたしはヴェネシン・ホーネット。
アルカディア準幹部“準星”の1人で、B1級の念力使い。43歳になる。
20年前に妹を失い、2年前に姪を失った。

何度考えてもわからない。
どうしてイブは死んだのよ?
どうしてキャンディナは死んだのよ?
なんで。
なんで。
経緯ではなく理由が知りたい。
しかし。
しかし。
そんなものが見つかるわけない。
そんなものがあっていいはずがない。
イブもキャンディナも死んでいいはずはなかったのに。
なのに。
なのに。
ああ、わからない。
わからないことだらけよ。

わからないといえば、ネイル。
わたしと同じく砕組の分隊長から“準星”になった男、ネイル・グレイ。
彼もB1級の念力使いで、“巨槌”(スレッジハンマー)の異名を持つ。
どうしてだろう。彼は2年前の“魔犬”襲来時に、どさくさに紛れて逃げ出したのだ・・。
何が彼をそうさせたのだろう。
あの状況での逃亡は裏切りにも等しい。
ネイルがいたら死なずに済んだ人間が、どれほどいるだろう。
きゃ、キャンディナも・・・死なずに済んだ、かも・・・。
・・・ネイルは無責任な男ではない。その彼が脱走・・そう、敵前逃亡でなく、脱走。
“魔犬”よりもアルカディアを恐れていたというのか。
・・・恐れていた?
いったい何に?

わたしは調べてみることにした。
考えてみれば、アルカディアの上層は謎に包まれている。そこにネイルを怯えさせるに十分な・・・もしくは別の理由かもしれないが、脱走させるに十分な“何か”があるのだろう。
この2年間に、わたしは“準星”の立場を利用して、内部の調査を行っていた。もちろん成果は何も無い。
ギガマイル・クレッセントに全てを見透かされているからか。ならばネイルはどうやって知った?
ああ、よそう。“何か”があるということから仮定の話だ。
グレイのことなら何もかもわかってる程の付き合いでもなかった。
案外あの男は、ろくでもない人間だったのかもしれない。
だってそうだろう。いったいどんな理由があれば、部下や市民を“魔犬”の巣に置き去りに出来るというのだ?

はあ、キャンディナが死んでからというものの、わたしは相当に参っている。
実の父親であるアトラトが、もう吹っ切れてるというのにな。
アトラトにとってキャンディナは厄介者だったから、さもありなん。

最近は何だか、死に場所を探している気がする。気が付けば華々しく散ってしまいたいと考えている。
様々なシチュエーションを具体的に想像している。
そこへ今回の事件だ。
もはや想像は止まらない。
妄想と言ってもいい。
自ら死を選ぶのは気分が悪いから、自殺はしないが、あの10人の誰かでも道連れにしてやろう。
そうやって逝けたら、さぞかし気持ちいいだろうな・・・。

ああ!
こうやって死に様を考えて恍惚としてしまうのも、キャンディナが死んだからだ。
イブが死んでも、キャンディナが残っていた。
キャンディナが死んだら、何も残っていない。
死にたくなくても無駄死にするのがいる一方で、わたしのように死にたくても死ねずにいるのもいる。
でも今度の相手はA級エスパー。誰かの為でもなく、何かの為でもなく、わたしの満足の為に死ぬ。

万が一にでも生き残ったならば、調査の続きでもやるか。
どうせ残りの空虚な人生の暇潰しだ。ひとりの人生は長いほど退屈だ。
まあ、そんなことは今考えることでもない。
そうだ、少しでも前向きな理由がもう1つあったな。
未来に希望を持つ人間が死んでいくなどあってはならないこと。代わりにわたしが死ぬなら本望だ。
わたしは準幹部だ。戦争で死ぬとしたら、上の者からが筋だろう?

少なくとも前線には出る。最も危険な最前線へ。
だからこそ真っ先に出撃を志願したのだ。
もうすぐ会えるかな、イブ、キャンディナ。
死後の世界は“無”だって言われているけれど、実際に死ぬまでは本当のところはわかんないさ。
そうさな、今際の際に見る幻覚でもいい。もう一度2人の笑顔を見たいわね。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/05/13 00:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「ヴェネシン・ホーネット43歳」
火剣「魔犬は最悪の悲劇だった」
コング「あれはむご過ぎる」
ゴリーレッド「死ぬまで忘れられないどころか、死に場所を探しているのか」
火剣「死にたがっている者は怖いもの知らずだ。あともう一つある。死んだら会えるという思いが恐怖感を打ち消す。これが大切な人を失った人間の強さかもしれない」
ゴリーレッド「上層部は謎に包まれている。これは組織として良くない」
火剣「上層部は絶対的に信頼できるというのが望ましいだろう。命を懸けた戦いなのだから」
コング「首領のせいか?」
ゴリーレッド「でも死ぬなら上の者からという考え方が素晴らしい。ヴェネシン・ホーネットは本物の幹部だ」
火剣「権力者は自分のために民や若者を犠牲にする。指導者は民衆のために自分が命を削る」
コング「まじめか。僕の出番がない」
ゴリーレッド「出なくていい」
コング「何てことを」
火剣「調査は気になる。ネイル・グレイの秘密。クレアは知っているのだろうか」
コング「何でもお見通し。お見通し・・・お見透視。西尾ならクレアの服の下もおm」
ゴリーレッド「踵落とし!」
コング「NO!」
火剣「9人の誰かを道連れにできればいいが。犬死だけはしちゃいけねえ」
ゴリーレッド「夜果里たちも心配だ」
コング「囮作戦はどうなった?」
ゴリーレッド「その笑顔を蹴ろう」
コング「待て」

火剣獣三郎
2016/05/13 21:26
>火剣さん
妹も姪も魔犬に殺され、もはやヴェネシンに自分を大事にする感覚は残っていません。敵を道連れにしてでも人民を守ろうという意思が光ります。

山田「嘆きではなく、悲劇の中にも光明を見出している決意なのか。」
佐久間「嘆きは誰も守れないからな。嘆くのは、先へ進む為の儀式であり、過程だ。」
八武「死に場所を探す気持ちはわからなくもない。いずれ死ぬのだから、どのように死ぬかは自分で選びたいものだ。」
維澄「いつになく八武も真面目だね。」
八武「惚れてもいいよ?」
神邪「惚れました!」
佐久間「上層部が謎なのは、そんな大した理由があるわけじゃないんだが、人によってはやる気を削ぐからなァ。」
神邪「それは、上層部が出てくれば何でも出来てしまうからですか?」
八武「ふむ、機械化された未来想像図みたいなものか。何でもかんでも上層部に任せてしまえば、自分たちの存在意義が危うくなる。」
山田「しかし悲劇を防ぐこともしないのか?」
佐久間「神の感覚とは愚鈍なものさ。逆に鋭敏であれば、あらゆる判断を人類に任せなくなる。」
神邪「ジレンマですね。ネイル・グレイが逃げ出したのも、それに耐えられなかったのでしょうか。」
維澄「案外そんなところかもしれないね。謎あるところに陰謀を感じるのは人間の性だけど、事実はシンプルなことが多い。」
八武「ちなみに夜果里とレンファは?」
佐久間「もう少し後で明かされる。」
アッキー
2016/05/13 22:06

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