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zoom RSS 「NEKTAR」 五、偽証

<<   作成日時 : 2016/05/15 00:00   >>

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「はーい、ジョナル。」
20代前半の若い女性が白組隊長X・Q・ジョナルに話しかけている。
彼女も白組のメンバーであり、ジョナルの良きパートナーだ。
白組副隊長イウィー・ディークィル。ショートカットの銀髪がキラキラ光る。
「や、イウィー。機嫌いいな。」
「ふふーん、聞いたわよ。かっこよかったじゃなーい。」
イウィーはジョナルの背中をバシッと叩いた。
「ごへっ?」
「“準星”になってから2年。随分と風格が出てきたじゃないの。何でも“処刑人”(エクゼキューター)とか呼ばれて、みんなから恐れられてるとか?」
「その呼び名は苦手だな。」
「どうしてよ。」
「何か恐そうで。」
「自分のことじゃないのよ。」
「いや、何だかね。こうしてイウィーと話している自分と、幹部としての自分は別人って感じがするんだ。」
「そうね。言葉遣いとか。わたしはどっちのジョナルも・・・その、好きだけど。」
イウィーが顔を赤らめて言い、ジョナルも照れて赤くなった。
「ところでそのちょっかい出してた奴って、砕組第四分隊のリックだっけ?」
「ああ、分隊長ハービスの副官だけど。」
「またあの男・・。ジョナルが“準星”になる前は、よくうちのメンバーにちょっかい出してたけど、まだ同じ事やってんのね。」
イウィーは嫌悪を込めた目で宙を睨んだ。
「弱い犬ほどよく吠えるってことだよ。彼は超能力のピークをちょっと過ぎてしまってるから・・。まだ20代なのにね。」
「焦ってるわけ?」
「多分ね。」
「だとしても同情の余地は無いわね。胸触られたことあるし。」
「うん。彼がリュウを殴ってたら、頭を吹っ飛ばしていた。」
ジョナルは笑顔のまま言う。
イウィーはそれが恐かったけれど、頼もしく、心惹かれるのだった。


- - - - - -


リック・ビッグマンは、独断で第四分隊の半分を連れて、敵情視察へ出かけていた。
(あれが“神殿”か・・・。)
不用意に近付くと察知されてしまうので、5キロメートル以上離れた場所から望遠鏡で見ている。
4年前に任務でギリシャに行ったときのパルテノン神殿に似ていると思った。
神殿の“巫女”たちはB1級のトップクラスだという。遠隔透視で5キロ先でも見通せるが、それでもリックたちを見つけるのは、まず不可能なはずだった。
元は素人で、ろくな訓練も受けていない。5キロ先の、ある一点を見通すことは出来ても、広範囲をサーチすることは出来ない。それ以前に透視の遠隔応用すらままならないかもしれない。

・・・そう高を括ってたから、襲撃への対応が遅れた。

ドカッと音がして、隊員の1人が殺された。
「おイタは駄目よ、覗き屋さん。」
その服装は、今まで見ていた“神殿”の巫女のものだった。
「ちっ!?」
すぐさま、もう1人の隊員が頭を吹き飛ばされる。
残るはリックと隊員1人だけになった。
「私はホーティネ。神殿の巫女の最高位、“七罪”の1人。“傲慢”のホーティネ!」
彼女だけではない。下位の巫女たちが次々とテレポートしてくる。
その数は8人。それら全てB2級。リックも隊員もB3級である。
こうなったときの砕組マニュアルでは、1人を囮にして、もう1人が逃げることになっている。全滅を防ぐ為だ。
リックは間髪入れず逃げ出した。
「あ!」
もう1人の隊員は、その言葉が最後になった。
「私が行くまでもないわ。」
ホーティネは早々に神殿に戻り、8人がリックを追った。
リックは歯を食いしばって逃げる。
想定外だった。この短期間で“巫女”と呼ばれる連中は確かな訓練を受けている。
熟練度こそリックに及ばないが、スペックと人数で遥かに勝る。
リックは建物を利用して逃げ続けるが、8人は半分が建物を吹き飛ばし、もう半分がリックを攻撃する。
テレポートも併用したフォーメーションで、リックを追い詰めた。
「ひいい!」
リックは死を覚悟した。
普通なら、ここで彼は死んでいた。
クレアは妨害念波のせいで細かい状況までは掴み切れてないし、リックの危機を知っていても助けたかどうか。
「・・・?」
リックを助けたのは、意外な人物だった。
8人の“巫女”は、サイコキネシスで粉々に吹っ飛んだ。
「あ、あんたは・・!」
「しっ!」
その人物は口に指を当て、もう片方で手招きした。
わけもわからず付いていくと、その人物の事務所へ辿り着いた。
「早く中へ!」
「あ、ああ・・」
その人物は扉を閉めて厳重に鍵をかけると、大きく息を吐いてソファーに腰を下ろした。
“偽証”のパージャ・フォールス。本名ジェフリー・コンダクター。
勝訴率99パーセントを誇る弁護士で、法曹界のゴルゴ13と呼ばれている男だ。
その勝訴率の異常なまでの高さから、証拠の捏造や、偽の証言者を雇っているとの噂を聞く。
「安心したまえ。この事務所はESP結界を張ってある。透視も盗聴も出来ないさ。」
「あんたは・・“アンティローグ”の一員じゃないのか?」
「そうだ。ただしスパイだがね。」
「何?」
「奴らが私に仲間の誘いをかけてきたのは半年前のことだ。“神酒”なんて突拍子もない話だと思ったが、直感で本当だとわかった。先程、君も直感で私が味方だと判断してくれたように、普通の人間にも超能力めいたものはある。ここまではいいかな。」
「あ、ああ。」
リックは先程の自分が取った行動を思い返して納得した。
追っ手を斃してくれたから味方だと冷静に考えていたわけではない。反射的に「味方だ!」と思ったのだ。
「世間じゃ私は捏造弁護士などと呼ばれているが・・・連中もそう思ったんだろう。しかし私は神に誓って真実を捻じ曲げたりはしていない。勝訴率99パーセントというのは・・・私はね、弁護の依頼を受けたときに、依頼人の人柄を見て、調査も行う。そして正当だと判断したものしか受けない。だから、いつも勝つ。こっちは絶対に正しいという確信があるからブレない。余計なことを考えずに、全力で仕事に尽くせる。・・それでも、負けたことはあったが・・・。」
パージャはうなだれた。
「なるほどな・・。人の噂はアテにならねえな。」
「問題は奴らがテレパシー能力を持ってるので、考えを読まれてるのじゃないかということでした。しかしそれも実は問題なかったのです。“神酒”というのは服用しただけでは超能力が目覚めるだけで、上手く使えず、ある程度の訓練が要るのです。それも出力が高ければ高いほどに。」
「そうだろうな。」
自分の受けてきた厳しい訓練を思い返して、リックは頷いた。
「私も未だに上手くは使いこなせていませんが、他の連中も似たり寄ったりでした。A級エスパーといっても素人集団。私は3ヶ月前から既に“アルカディア”の存在を確認していました。ここと手を組めば勝てると思いました。しかし・・・」
「しかし?」
「ここ最近、巫女連中の訓練度が急激に高まっているのです。」
「!」
リックは再び先程を思い返してみた。
一糸乱れぬ連係プレーもそうだが、そもそも自分たちを発見できたのは、訓練度が低いエスパーではない。
「リック君。君を信用して話します。」
「ん?」
「私の調査では、アルカディア内部に裏切り者がいます。」
「そんっ・・」
そんな馬鹿な。
そう言いかけて言葉を詰まらせた。
(あの動きは・・)
そう。リックはあの8人の動きをよく知っている。
彼が日常的に知っているフォーメーション。
「裏切り者の名はヴェネシン・ホーネット。準幹部の1人で、“大雀蜂”と呼ばれている女です。」
パージャはリックの目を真正面から見据えて、きっぱりと言い放った。


本部へ戻ったリックは、上官のハービスに事の次第を報告した。
「何を馬鹿な・・。」
小柄なハービスは天然パーマの髪を掻き揚げて握り締めた。
眉間には縦皺が刻まれている。
「私が裏切ってもヴェネシンが裏切ることはない。お前は私が裏切ると思うのか?」
彼女は溜息をついて目を閉じる。
「いや、しかし、これはおれが命がけで得た情報で・・!」
「パージャが嘘をついてないという保証はどこにある。仲間よりもそいつを信じるのか?」
「う・・・。」
「リック。吊り橋効果というのを知っているか。精神的に追い込まれた人間は、錯覚を起こしやすくなる。もう一度冷静に思い返してみろ。」
「・・・はい。」
(あの“巫女”8人の動きは、第十二分隊のフォーメーションそのものだった。その指摘のことが抜け落ちている。)
リックはこれ以上言っても無駄だと思い、部屋を後にした。
(無理ねえか。ハービス分隊長にとって、ヴェネシンは旧くからの仲間だ。だが、おれは惑わされないからな。仇は必ず・・・!)

部屋に残ったハービスも、リックにはああ言ったものの、胸の内では疑念が膨らんでいた。
(ヴェネシンは何を調べていた?)
およそ2年前、魔犬騒動の後から、ヴェネシンは熱心に調べものをするようになっていた。
(姪が死んだという話だが、20年前に妹が死んだときも冷静だった女だ。)
2年前といえば、ネイル・グレイが脱走したのも魔犬騒動のときだった。
(ネイルの脱走は不可解な事件だった。ヴェネシンと同じく“準星”の地位まで登りつめた男が・・・いや、それ以前に彼は、無責任な逃亡をするような人間ではない。)
ハービスの脳裏に、消そうとしても拭いきれない疑念が浮かんでいく。
(パージャ・フォールスは信用に値しないが、リックの見たことまでは疑えない。八の字の隊列を基本形に、4人が障害物を破壊し、残る4人が攻撃する、それらが入れ替わり立ち代る変幻自在のフォーメーション。ヴェネシン率いる第十二分隊固有のものだ。もしもヴェネシンが真の黒幕なら・・!)
彼女はヴェネシンの強さを思って戦慄した。
ただでさえB1級トップクラスで、確かな訓練を積んでいる実力者だ。“神酒”でA級になった日には・・・。
「・・・・・・。」
ヴェネシンの妙に虚ろな目が頭をよぎった。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「20代前半? 脱げ!」
火剣「イウィー・ディークィル」
コング「ショートカットの銀髪はMだ」
ゴリーレッド「関係ない」
火剣「処刑人はジョナルか」
コング「どっちも好き。これは告白か」
火剣「両思いに見える」
コング「すでにプレイ済みのカップルに興味はない」
ゴリーレッド「意味がわからない」
火剣「問題児でもハービスの副官か」
コング「いろいろと団結に問題あり。ぐひひひ」
ゴリーレッド「胸を触ったら痴漢だ。国法は適応されるのか」
火剣「レイプならたぶん頭を吹っ飛ばしていた。つまり国法以上の厳しい掟」
コング「リック・ビッグマンは英雄になれる資質がある」
ゴリーレッド「頭を吹っ飛ばされたいか?」
コング「待ちたまえ」
火剣「巫女を甘く見たか。訓練は急速に進んでいる」
コング「急速もいたな」
ゴリーレッド「休息だ」
火剣「傲慢のホーティネ」
コング「巫女の一糸まとわぬフォーメーション。これは心が乱れるのも無理はない」
火剣「偽証パージャはスパイ? それが偽証だったりは考えられるか」
コング「法曹界のゴルゴ13か。凄い代名詞だ」
火剣「アルカディア内部の裏切者がヴェネシン? どうなんだ」
ゴリーレッド「冷静沈着に考えないといけない。仲間割れ作戦は三国志でもよく出てきた兵法だ」
火剣「疑念を膨らませて内部から破壊する作戦か、それとも真実か」
コング「ハービスも一糸まとわぬ姿でシャワーを浴びながら思索」
ゴリーレッド「もともと訓練を受けている玄人エスパーが神酒でA級になったら」
コング「巫女は生け捕りにするべきだった」
ゴリーレッド「頭と別れを告げたか?」
コング「お慈悲を」

火剣獣三郎
2016/05/15 15:19
>火剣さん
ディバウアを斃し、十戒の一角を崩しましたが、次なる相手は“偽証”のパージャ。その名の通り騙しに来ているのか、それとも本当に裏切り者がいるのか。
砕組には問題児が多く、アルカディアも一枚岩ではありません。ヴェネシンは精神的に不安定な状態が続いていますが・・・。

山田「まさかヴェネシンが裏切るわけがないと思いたいが。」
八武「だが人間わからないものだよ。」
山田「いや、これは仲間割れ作戦と見た。」
神邪「しかしリックのような問題児を見ていると、砕組への信頼が揺らぎますね。ハービスさんは何故こんな奴を副官にしてるんですか?」
佐久間「馬鹿な子ほど可愛いって心理。」
神邪「正直それは気に食わないですね。」
佐久間「それなりに有能ではあるんだ。英雄にはなれないが。」
山田「あんまり有能には見えない。」
維澄「それよりヴェネシンだ。彼女が裏切ってるのではないにしろ、パージャが敵と決まったわけでもないね。」
神邪「裏切り者はいるけれども、それがヴェネシンさんだと誤解している可能性もあるということですか。」
佐久間「訓練度の件は事実。情に流されず判断しよう。」
山田「ヴェネシンはモノローグで十戒を道連れにしてやると決意していたから、やはり違うだろう。裏切り者がいるとすれば、気になるのは誰がマイヤたちを出撃させたかだが。」
神邪「砕組への出撃命令を出せるのは限られてきますが、リックのように独断で動いたとしても、そうするように仕向けた誰かがいるのでしょうか?」
八武「巫女の色仕掛けの可能性も考えよう。」
山田「お前は真面目に考えろ。」
八武「真面目だよ! 色仕掛けは馬鹿に出来ないのだよ?」
アッキー
2016/05/15 21:36

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