佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 九、アタル兄弟

<<   作成日時 : 2016/05/22 00:00   >>

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暴れているのはノーティだけではない。
大きな被害をもたらしているのは、他にもいる。
“姦淫”のルード・アタル。
“殺戮”のマーダ・アタル。
強姦魔の弟と、殺人鬼の兄。
この2人がそれぞれ同好の士を引き連れて、別々の場所で暴れまわっているのだ。
放ってはおけないが、それでは誰を差し向けるかとなると、皆が沈黙する。
死を覚悟して戦えと言うことは出来ても、死んでこいとは流石にコムザインでも言いづらい。
犯された挙句に殺されるとなると、死の恐怖だけでなく生理的な嫌悪感が凄まじい。
男を向かわせればいいとかいう話ではない。男にも穴はある。
そもそもルードたちはサイコキネシスで人間の体に穴を開けて、そこに突っ込んでいるのだ。
性別だとか年齢だとか容貌だとか、そんなものは何の問題にもならない。
かといってマーダの方がマシというわけでもない。
弟のルードは固有能力を持たないが、兄のマーダは苦痛を何倍にも高める催眠能力を持っているのだ。
皮肉にも、これらの情報はクレアが妨害念波に慣れてきたから得られたものだった。
「最悪な兄弟だよ。」
クレアは口を押さえて言った。
千里眼の能力者である彼女には、前述の惨状が全て視えているのだ。
「かといって、ここでカタストロがコムザインを繰り出すわけにもいかない。A1級4名が無傷で残っているんだ。そいつらと戦う前に消耗させられるわけにはいかない。こっちは余力を残して勝たねばならないが、向こうは相打ちでも万々歳だ。ルードやマーダを囮に、上位陣が揃ってテレポートしてくる危険も大きい。」
「デュースは?」
「同じことだ。彼も上位陣相手に残しておかねばならん。カードだ、強力なカードが不足してるんだ!」
クレアは眉間に皺を寄せて、机をダンッと叩いた。
一同は思わず冷汗が出た。これほど苛立っているクレアなど、今まで見たことがない。
「俺が行く。」
レックスと、もうひとりクレアに怯まなかったモースが前に出た。
「お前じゃ勝てない。」
「見くびるなよ。」
「死にたいのか?」
細目でクレアに睨まれて、流石にモースもたじろいだ。
「自殺願望があるなら、この戦いが終わってから死ね。敵はA級連中だけではないんだ。巫女どもだって厄介・・・お前なら巫女の2,3人は殺せるだろう。第一級でなくとも、お前も重要なカードなんだ。夜果里がノーティを殺しきれるかどうかも五分五分なのに、ここで大事な戦力を無意味に消耗するわけにはいかない。」
「わかった・・。だがそれなら、誰が行くというんだ。」
「・・下策だが、砕組で食い止めるしかあるまい。」
「それなら俺も行く。」
「モース、お前の能力は空間叩割だ。連携には向かない。」
「・・・そうだな。」
モースは苦い顔で引き下がった。
「コムザイン、カタストロ。振り分けを頼む。それと、ヴェネシンとカームは残るように。」
第十二分隊長ヴェネシン・ホーネット。
第十八分隊長カーム・シュミット。
何故この2人を残すのか、多くの者はわからなかったが、本人たちとカタストロは理解していた。
理解していない他の面々も、クレアの憔悴しきった顔を見ると、質問すら出来なかった。
彼女が、多くの権力者がそうであるように、戦場を知らず安穏とした立場から命令だけを下すような人間であったなら、どれだけやつれてようが非難の嵐を受けたであろう。
しかし彼女は、史上最高の千里眼であることで、この戦いにおける情報解析を一手に引き受けている。
暴虐の餌食となっている、何万何十万という人々の苦しみをテレパシーで我が身にフィードバックし、精神の中は黒い糸が何万何十万本も絡み合いながら高速で動き回っている。
3月14日以来、3週間以上も眠らずに情報解析を続けているクレアの顔は、鬼か悪魔のように荒れ果てている。
ストレスと疲労が内臓にダメージを与えていて、室内には吐血した鉄の匂いが漂っていた。
(クレア、もう休め、休んでくれ・・!)
レックスは歯を食いしばりながら願った。口に出そうとするのを何度も堪え、拳を握り締めた。
休めと言って聞く女ではない。どやされて説教されるだけだ。
『休めるかボケえ! 戦場へ行かない司令官がベッドで高いびきか!? 死にもしない、命令下す立場の人間が、疲れたから休みますって話が通るか? この規模の予知能力戦を、私以外に出来る奴がいるか!? 過労死してでも職務を全うするのが最高司令官だ!』
・・・きっと、こう言うのだろう。レックスには手に取るようにわかる。
自己催眠と精神の整理、栄養注射で維持しているクレア。
戦場に出ることもなく、過労死の危険性も無い最高司令官など、アルカディアにはいない。


- - - - - -


カタストロとコムザインは、2人で砕組の振り分けを考えていた。
「何だってヴェネシンとカームを外すんだか・・。」
コムザインはぶつぶつと文句を言いながら、紙にガリガリと書いている。
第十二分隊と第十八分隊の14名を、ノーティ戦で失った部分に補充し、残る分隊の数は20となる。
そのうち強い分隊長は7名。ウロイ第十分隊は夜しか動けず、リッチモンド第十一分隊は上空からの偵察。
よって分隊を9つずつに分けて、強い分隊長を3名ずつに分けることにした。
一〜七までと、九、十三がルードへ。八と十四〜十七、十九、二十一、二十三、二十五がマーダへ。
そう決定したところで、クレアが会議室へ入ってきた。
「どうした。」
「悪い報せだ。夜果里がしくじった。」
「死んだのか?」
カタストロが目を広げる。
「いや。だがしばらくは動けない。ノーティの方へも兵を回す必要が出てきた。」
「想定内の最悪ね。」
「俺が行けばA3級のガキ1人くらい片付けられるが・・・。」
コムザインが暗い声で呟いた。
確かにコムザインなら、ノーティを片付けるのは難しくない。
しかし“十戒”の上位陣が未だ沈黙を保っていることの意味を考えると、それは出来ない。
予知、テレパシー、透視で察知し、テレポートで奇襲をかける。下位陣は、その囮だ。
「奇数分隊を全員ノーティへ差し向ける。」
コムザインの決定に、カタストロもクレアも異議は無かった。


- - - - - -


ルード相手に差し向けられた3つの分隊は、ラプソディア第二分隊、ハービス第四分隊、ラドル第六分隊。
1951年の春に同期で分隊長になってから21年。かつてない厳しい戦いになると3人とも承知していた。
『被害を食い止めることのみに専念しろ。出来るだけ自分たちの命を大事にしろ。』
カタストロ服隊長の言葉が脳裏に浮かぶ。
ルードたちが荒らしまくった街は、胸の悪くなるような光景と臭気に満ちていて、このまま引き返したくなる。
しかしそれは、市民の犠牲を黙認することに他ならない。力の無い者ならそれでもよかろうが、自分たちは守られる側ではない。ルードを殺せなくても、食い止めることは出来るはずだ。
アルカディアは弱者を救うべくして結成されたはずだ。その理念を実践すべく砕組に入ったはずだ。
自分たちの取った道をあらためて確認し、24人は気を引き締めた。
「うげっへへへへへ・・・・・・」
ルードの下品な笑い声が響いている。
見ると、巫女の1人“色欲”のホーニーがルードとドッキングしていて、恍惚の表情を浮かべていた。
「来たか、アルカディアフォース。」
ホーニーはルードの肩を掴んで飛び上がり、空中で一回転して24人の前に下りてきた。
「おい、ホーニー。おではいったん神殿へ帰るからな。そいつらを片付けておけよ。」
「お任せ下さい。」
ホーニーと数十人のB級エスパーたちが、飢えた顔で24人を見た。
(楽な戦いではないが、勝てるかもしれない。)
3人の心に余裕が出てきた。


- - - - - -


神殿へ戻ったルード・アタルは、パラメッタへ一直線に向かった。
「おで、お前、犯す。」
パラメッタの服を無理やり破き、裸にひん剥いて突っ込んだ。
裂けて血が出るのも構わずに、がしがしと乱暴に揺する。
「出る。」
どくどくと音がして、パラメッタの中に欲望が注がれる。
そこへ後ろから気味の悪い声が飛んでくる。
「オレにも貸せよ。」
「おお、兄者。戦場は?」
「こっちにもアルカディアの奴らが来やがってな。ミールディッシュとレイジーナに相手させてる。」
マーダ・アタルは言いながら、パラメッタを自分の方へ引き寄せた。
「ひゃっはあ!」
サイコキネシスでパラメッタの皮膚を引き裂く。
「きゃああああっ!」
マーダのサイコキネシスは、切れ味の鋭い爪である。それで強引に引き裂くのだからたまらない。
しかも彼の固有能力は、痛みを何倍にもするというものだ。
死なない程度にパラメッタの体をズタズタにして、マーダは満足気に体を震わせた。

アタル兄弟が場を離れてから、残る4人の巫女が口々に呟いた。
「なあるほど。どうしてクリエ様がこんなのを巫女にしたかわかったわ〜。」
「欲望の捌け口としてだったのねー。」
「私たちはとても出来ないものね。」
「そうでしょ、ペック様。」
アタル兄弟の代わりに、“双尊”のペック・ペアが来ていた。
「そうですよ〜。」
相変わらず両手を頭に当てて、おどけている。
「ここは僕に任せて、君たちも遊んできなさ〜い。」
3人は待ってましたとばかりにテレポートしたが、“怠惰”のイナトスは動かない。
「君はいいの?」
「めんどくさ〜い。」


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「最悪の兄弟だ」
コング(頑張れルード・アタル)
ゴリーレッド「姦淫と殺戮。殺人鬼と強姦魔」
コング「容貌も関係ないのか?」
火剣「苦痛を何倍にもするって残忍過ぎる」
ゴリーレッド「駒が足りないか。真田昌幸も策はあるが駒が足りないと嘆く場面があった」
火剣「クレア。尊敬するが何とか首脳は考えないと」
コング「首領は考えなさそう。ぐひひひ」
ゴリーレッド「戦争中にパーティーに出る大統領とは違うということか」
火剣「ウロイは夜しか動けない」
ゴリーレッド「囮が強いので飛角金銀で攻めて玉の周りが手薄になったらテレポートか」
コング「ラプソディアとハービス! 最もルード・アタルとバトルするのに相応しい戦士だ!」
ゴリーレッド「貴様だけは」
火剣「ラドル、ウロイ。あれから21年か」
コング「パラメッタは捌け口? レックスには伝えられない」
火剣「救うしかない」
ゴリーレッド「アタル兄弟。何てむごいことを」
コング「女子にとってエッチ拷問よりも怖いのは痛い目に遭わされることだ」
火剣「無慈悲過ぎる。共感ゼロだ」
コング(頑張れルード)



火剣獣三郎
2016/05/22 16:15
>火剣さん
アンティローグ十戒も、中位クラスのお出ましです。クレアもそろそろ限界が近く、追い詰められた状況になってきました。

佐久間「ルードを応援する声が聞こえる。」
山田「幻聴であってほしい。」
八武(ルードへの期待が高まる。)
山田「何か言ったか?」
八武「いいや?」
維澄「これまでの3人よりも、更に恐ろしい。ペックも不気味なコミカルさがあるね。」
八武「アイドちゃんにも期待。」
神邪「クレアさんには策は無いんですか?」
佐久間「無いこともないが。」
山田「夜ならウロイが動けるか。」
佐久間「だが相手も透視能力者の群れだ。夜戦は有利ではないんだなぁ。」
山田「パラメッタをレックスが救う展開はまだか。」
佐久間「救えると思うか?」
山田「助けが来るまで生きていてほしい。」
佐久間「・・・。」
八武「しかしルード相手にラプソディアとハービスとは、何も起こらないわけがない。」
佐久間「まあ、性別も何も関係なしだから、どの分隊を差し向けようと大差ないんだけどな。」
八武「ヒロピンファンにとっては重要。」
アッキー
2016/05/22 21:30

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