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zoom RSS 「NEKTAR」 十一、鳥と竜巻

<<   作成日時 : 2016/05/26 00:00   >>

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カンザス州は米国中部にあり、小麦やトウモロコシの栽培、肉牛飼育が盛んである。
しかし今はアンティローグが暴れまわっていて、畑も牧場も無残に荒らされていた。
その中に1人、オリエンタルな白い服を着た22歳の女がいた。七罪の巫女の1人、“嫉妬”のジェラシィ。
「あたしィに何か用?」
ジェラシィの前に現れたのは、アルカディア風組のベーンとカルゼッタ。
ベーンは40を過ぎた中年で、カルゼッタは20代の若い男。
男2人が敵意を持って女1人を挟み撃ちの状態。普通ならば乙女のピンチだが、今回は逆だ。
「油断するな、カルゼッタ。」
「・・・ああ。」
カルゼッタの目が一瞬うざったそうに動いたのを、ジェラシィは見逃さなかった。
「うふ、お前、嫉妬してるのね〜。」
「何?」
「耳を貸すな。」
ベーンは注意を逸らさないように言ったが、それは逆効果だった。

アルカディア風組は、属性組4つの中で火組の次に強い。6人合わせた戦闘能力は、砕組の偶数分隊を上回る。
中でも副隊長のカルゼッタはB1級の風使いで、分隊長最強のヴェネシン・ホーネットに匹敵する。
しかし風組の発言力は砕組系列の中で皆無に等しかった。
隊長のベーンは自分の意見をろくに出さず、多数の意見に合わせるばかり。
カルゼッタはそのことを苦々しく思っており、自分が隊長だったらと思っていた。
しかしベーンも決して弱くはなく、カルゼッタの倍近く生きている人生経験を活かして、人間関係は円滑。
(オレにベーンの要領の良さがあったら・・・。)
カルゼッタはアルカディアで100位以内の実力を持つが、友達はいない。
孤高の天才を気取るには、上が多すぎる。
自身も人から羨まれる七十七璧の地位にありながら、彼はいつも他者の人徳や幹部の強さが妬ましかった。

「うふふあは、カルゼッタ、アンティローグへ来い。」
「な・・!」
「“神酒”の効能はよくわかったでしょう。」
「・・・・・・。」
カルゼッタは動揺した。それがジェラシィに付け込まれる隙となった。
「あたしィたちの仲間にならない?」
「ならねえよ!」
カルゼッタは血気に逸ってサイコキネシスで攻撃した。
濃密な空気の螺旋がジェラシィを襲う。逃げられない。
「うふ。」
風の固まりはエネルギーを吸い尽くされて四散した。
「何!?」
「焦るな。」
ベーンはそう言うが、カルゼッタの動揺は大きいままだ。
防御されたならわかる。サイコキネシスの出力は互角なのだから。
しかし今のは念力を吸収されたのだ。
「まさかエネルギードレイン・・・“貪婪”のディバウアと同じ・・・?」
「うふあは、その通り。これこそが巫女の固有能力。パラメッタを除く全ての巫女は、エネルギードレインの使い手。あたしィは“嫉妬”のジェラシィ。嫉妬心が混じったエネルギーを全て吸収するの〜。」
「くそっ!」
カルゼッタは完全に向こうのペースに嵌まっている。
しかしベーンは別のことを考えていた。
(おかしい。クレアさんは、これを予知していなかったのか・・・いや、それはない。だとすれば。)
ベーンは即座に結論を導いた。
(なるほど。ならば、わたしのやることは決まった。)
カルゼッタは動転して冷静になれてないが、ジェラシィとて冷静でないという点では同じこと。
得意になって浮かれているところへ、ベーンの攻撃が炸裂した。
「う゛ぇっ!?」
予知能力を持つはずのジェラシィが、この攻撃を予知できずに、まともに食らった。
咄嗟のバリアーで致命傷は免れるが、胸に深い一撃が入った。
「こなくそっ!」
ジェラシィはサイコキネシスで反撃するが、微風でも吹き飛ぶ能力者ベーンは、空へ舞い上がる。
その隙にカルゼッタが空気弾をぶつける。
「ぐふっ・・・!」
ジェラシィは浮かれるのをやめた。
「殺してやる・・・。」
彼女の右手に刃状の念力が渦を巻く。
それが一斉にカルゼッタに放たれた。
「ちっ!」
空中からベーンが間に入った。ざくざくと肉の切れる音と共に鮮血が散った。
「たいちょおお!?」
「だから・・・いつも言ってるだろう・・・集中しろ、冷静になれと・・・。」
ベーンの出血量は致死に近い。
カルゼッタは目の前で、これほどまでに血が噴き出る人間を見たのは初めてだった。
実力こそハービス以上と自負しているが、戦場経験は少ないのだ。
「隊長・・・。」
カルゼッタは一転してベーンの身を案じ、ベーンは大量出血しながらも立ち続けている。
ジェラシィは、それを苦々しい顔で見ていた。
「くだんね〜、くそくだらね〜、なあにが仲間だ、庇ってんじゃねーよボケ! ああ畜生、胸糞ワリー、あー!」
刃状の念力が再び放たれ、ベーンを切り刻んでいく。
「たいちょ・・」
「動くな。」
「あー、あー、あー、命捨ててまで守るとか嘘くせー、偽善! 偽善! その猫かぶりをやめやがれ豚野郎〜!」
ジェラシィは口汚く罵りながら、ベーンを刻み続ける。
「今まで済まなかった、カルゼッタ。風組は、お前に託す・・・。」
それを最期にベーンは倒れた。
前方から無数の刃で切り刻まれながらも、後ろには倒れない。前のめりに倒れ、地面に血肉をぶち撒けた。
「ハァ、ハァ、ハァ〜、バーカバーカ。偽善者! 猫かぶり! 皮かぶり! それでカルゼッタが目覚めるとか!? いいことを教えてやる、こいつは全部計算でやってんだ、若者ナメてんだ、自分の思い通りになると思ってんだ、説教くせえ老害! つまんねえ説教して気持ちいくなってる馬鹿!」
「だろうな。」
「そーだろ! ははははは!」
「確かにベーン隊長は、そういう人間さ。」
「そーだろ〜!」
「命を捨ててなければ、オレの心は動かなかった。」
「そー・・・・・・・・あ?」
ジェラシィの眉間に皺が寄る。
「何かっこつけてんの?」
「だと思うならオレの攻撃を食らってみろ!」
風圧の塊がジェラシィを襲った。
「ぐげえええ吸収できない〜!?」
そのままジェラシィは地面を派手に転がった。
「くっそ〜、馬鹿なバカなクソバカなあ〜!」
「お前、友達いないだろ。」
「なあに〜!?」
「オレもそうだからな。同類はわかる。」
カルゼッタは一文字ずつを噛み締めるように話していく。
「ここで勝敗を決するものがあるとしたら、頼れる仲間がいるかってことだろう。」
「ああ〜? あたしィの仲間は強いの! そこの肉塊よりも!」
「確かに。だがオレは頼れるかどうかって言ったんだぜ。何でお前は1人で戦ってるんだ?」
「ああ〜!?」
もはやジェラシィは感情のままに声を発するだけだった。状況が逆転している。
「なるほど、上から目線で説教するって、ちょっと快感だな。クセになったらどうしよう。」
「くそが〜、勝った気になってんじゃね〜、そこの肉塊がつけた程度の傷など、てめーに貰ったエネルギーで殆ど回復したわあ!」
「・・・ベーン隊長のことを計算計算とか言ってた割には、その計算の内容すらわかってないのな、お前。」
「なに〜!?」
「ふふん。」
カルゼッタは笑いながら、かかとで地面をトントン叩いた。
「何の合図よ!」
「The Wonderful Wizard of OZとか読んでないか? こうすると竜巻が呼べるんだ。」
「そんなフカシ・・・・・ひっ?」
遥か向こうに、凹面レンズのような渦巻きが見えた。
「ベーン隊長もオレも時間を稼いでいたのに気付かなかった?」
竜巻はぐんぐんと迫ってくる。
「風組には四つ子の少年がいる。それぞれの能力はC1級でしかないが、4人揃うと互いが互いを増幅し合って、竜巻を起こせるまでになる。時間がかかるのが難点なんだがね・・・。」
言ってる間に竜巻はカルゼッタとジェラシィを飲み込んだ。
吹き荒れる暴風の中でジェラシィは必死にサイコキネシスで体勢を維持していたが、カルゼッタは同じ出力で涼しい顔をしていた。
「何で〜!?」
「俺は風使いだぜ。そういやこっちからは名乗ってなかったな。アルカディア七十七璧、“大烏”ことカルゼッタ・ブンレイだ!」
この暴風の中でテレポートを使えるほどの修練を、ジェラシィは積んでいない。
風の檻の中、戦わずしてジェラシィは消耗する。そこへカルゼッタの攻撃が来る!
「風鎖凌息(リーシュ・レイブレス)!」
「ぎえええええええええええええええ!!」
あらゆる方向から鎖状の風が、ジェラシィを嬲り殺しにしていく。
なまじっかバリアと再生があるだけに、楽には死ねない。
ジェラシィが勝つ手段は、竜巻を作っている四つ子を探し出して始末することだが、カルゼッタが許さない。
「くそくそくそくそいぎゃああああああ!」
「とどめだ。」
四つ子がカルゼッタの元へ集合した。
「アチャータ!」「アジェスタ!」「アシュ!」「アクウ!」
「「4人揃って!」」
「「竜巻四兄弟!」」
「いっくぞん、いっくぞん、スーパー・トルネード・スプラッター!」
「ぎぐっ・・・・・・」
凄まじく渦巻く風の刃が、ジェラシィを粉々に吹き飛ばした。
四兄弟は竜巻を解除し、カルゼッタと共に地上へ降り立った。
「いえーい!」
「勝利!」
「勝利!」
「あれ、隊長は?」
カルゼッタは浮かない顔をしていた。
「ベーン隊長は・・・」
その先を言おうとして、カルゼッタは歯を食いしばった。
(隊長、今までありがとうございました。)
涙をぐっと堪えて、カルゼッタは頭を下げた。


- - - - - -


カルゼッタと四兄弟が本部へ帰ろうとしたとき、空間がブレた。
「やあ皆さん、感傷に浸ってる暇はありませんよ〜。」
その男は、両手の先を頭につけて、足をわざとらしく蟹股に開いていた。
「「「「お前は!」」」」
「ペック・ペア!」
カルゼッタは恐怖で後ずさった。
「はいはい、“双尊”のペック・ペアと申します〜。竜巻を解除したのは失敗だったんじゃないですかな。」
「くっ・・・。」
「「「「あう・・・」」」」
カルゼッタも四兄弟も、自分たちの迂闊さに怒りが湧いてきた。
「さあさあさ、5人がかりでも僕に勝つのは難しくないですか〜?」
難しいどころではない。不可能だ。
ペックの力はカルゼッタと四兄弟を合わせた20倍。完全に勝ち目は無い。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/05/26 00:01

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「神邪は人妻が好き。シオリンと佐久間んは人妻や奥さんという呼び方に違和感。八武院長も奥さーんが好き。ちなみに僕も若い主婦が好き。カッコ美女に限る」
ゴリーレッド「遺言が終わったようなので切り刻もう」
コング「待ちなさい」
火剣「ジェラシィ22歳」
コング「巫女はみんな美人だ」
ゴリーレッド「レクター博士のように会話してはいけないタイプか」
火剣「友達が少ないと聞くとどうしても親近感を覚えてしまう」
ゴリーレッド「仲間がいる人間は強い」
火剣「カルゼッタは想像以上に強かったというわけか。侮ったかジェラシィ」
コング「むごいいい。女の子を嬲り殺すとは。せめて最後に犯してあげるのが慈悲だが、いきなりあの世行きとは」
ゴリーレッド「そんな余裕はないし、犯すほうが無慈悲だ」
火剣「風使いは怖い」
コング「ペック・ペアはそんなに強いのか?」
ゴリーレッド「恐怖を感じるくらいだからよほどだろう」
火剣「強敵を倒せば一瞬ホッとひと息つきたくなる。気は緩んでないだろうが」
ゴリーレッド「ベーン隊長に別れを告げたい気持ちもわかる」
コング「戦争中は一瞬の油断もできない。厳しい」
ゴリーレッド「その笑顔とセリフがマッチしていない」
コング(アルタ兄弟とハービスたちはマッチしたかな?)
火剣獣三郎
2016/05/26 12:50
コング「アルタではない。アルタは新宿だ。アタルだ。アタル兄弟とハービス、ラプソディアが気になる」
火剣「ハービスたちを心配しているのか?」
コング「もちコース」
コング
2016/05/26 12:53
>火剣さん
エスパーは友達が少ない説がありますが、七瀬シリーズを読むと理由がわかる気がします。
勝利した風組ですが、そこに現れたのはペック・ペア。未だに底を見せていない男です。

山田「俺も友達は少ない。カルゼッタの苛立ちは共感できるな。」
佐久間「お前も目の上の瘤がいるのか?」
山田「そういうわけではない、と思う。」
八武「巫女たちは普通人に戻したかった。惜しい。」
佐久間「殺すしかない局面だったからな。」
維澄「元には戻せないの?」
佐久間「神化系能力は無効化できない。ESPリミッターも効かない。」
神邪「ジェラシィも元々は普通の性格だったのでしょうか。」
佐久間「実はそうなんだ。ちょっと嫉妬深いだけの女子だった。」
八武「ますます悔やまれる!」
山田「女子限定の差別主義者。」
八武「ハハハ、これぞトリアージだよ。アイドちゃんも助けたい。」
佐久間「助けられることを望んでいるかな?」
神邪「独身だと思ってた美女が、実は結婚してたら萌えますね。」
山田「一般的にはショックを受けるところだと思うが、逆なのか。」
佐久間「男でも、結婚してると知れ渡ってモテる現象がある。」
維澄「何の話になってるの?」
神邪「いえ、ペック・ペアの対応する十戒は“両親を敬え”でしたが、もしかしてペックが夫で別に妻がいたりするのかな、と。」
維澄「なるほど、7thのパターンか。」
佐久間「若干掠ってるな。」
八武「ほう。」
アッキー
2016/05/26 20:59
>コングさん
アタル兄弟も暴れていますが、彼らとの戦いはもう少し先になります。現在十一ですが、十四あたりで・・・?

八武「諸星あたる兄弟。」
山田「それが元ネタなのか?」
佐久間「違う。」
維澄「性欲的には合ってるけどね。」
神邪「兄弟揃っているのは、何らかの作為を感じます。」
山田「うーむ。」
アッキー
2016/05/26 21:04

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