佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 二十一、虚栄

<<   作成日時 : 2016/06/13 00:00   >>

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「ウオオオオォオオォオオオオオオ・・・!」
ベインは念力を全開にした。
周囲の全てが吹き飛んでいく中、デュースは炎で結界を張って防いでいた。
「かあああ・・・。どうしたクソ兄、防ぐだけで精一杯か。まあ仕方ない。オレは全てにおいて上回っていた。30年経とうが、その優劣は変わらない。環境がお前を選ぼうが、1対1になったときは個の力の戦いだ。オレが負けるはずもない。」
そしてベインは大きく息を吸い込んで、掌から火炎弾を放った。
「はあっ!」
「くっ・・・」
デュースは防ぎきれないと判断してかわし、少し火傷を負った。
「・・・確かに、お前は優れた才能を持っている。だがそんなお前が持ってない才能を、わたしは持っている。」
「クヒッ、何だそりゃ。」
「それはな、他人の強さを認めるって才能だ。」
「はあ? はあ? だっはははは、クヒヒヒヒ、負け犬の自己満足を才能と言い換えてんの? だっせえ!」
卑しい笑みを浮かべるベイン。
「謙虚になる必要なんか無えんだよ。教えてやろう、オレのパイロキネシスは虚栄心を媒介にしている! つまりさあ、オレって凄え、自分最強と思う心が、そのまま火力になるってことだ! “虚”が“実”になるんだよ! これからはもうベインじゃねえ・・・あらためましてえ、“栄光”のグロリィ・ディーバー! よろしくうっ!」
もはやデュースも眼中に無いのか、ベインは1人で得意になっていた。

「超・栄光! オレ、凄え! オレって凄え! 千年に1人の天才! 愚民どもに名を知らしめるのが遅すぎたが、これからは、新・時代! アンティローグが歴史を変える! 革・命! 時代の変遷! オレたちがもう一度この世界を引っくり返してやる! ルール無用! 実力主義! 世の中がメチャクチャになれば、真の強者が生き残る! 平和ボケした連中も、目を醒まさずにはおれなくなる! 誰が本当に優れてるのか、嫌でも思い知る! 混乱! 破壊! 生きてる価値の無えゴミどもは、さっさとくたばれ! オレがヒーロー! オレが正義! クヒヒヒヒヒッ! オレ・オレ・最強! オレ・最強! オレ・オレ・最強! オレ・最強! オレ・オレ・最強! オレ・最強っ!」

「・・・だよ。」
「あ〜? 何か言ったか〜?」
わざとらしく聞き耳を立てて、ベインは口をひん曲げる。
それに対しデュースは、きっぱりと告げる。
「お前はその程度だよ。そう言ったんだ。」
「は〜? 聞・こ・え・ま・せ〜ん!」
ベインは自分がどれだけ卑しい顔つきをしているのかわかっていない。
デュースは悲しみも憐れみも通り越して、怒りが湧いてきた。
「こういう言葉を聞いたことはないか。“強さだけが全てでもないし、戦いだけが全てでもない”。」
「知らんな、そんな負け犬の遠吠えは。人生ってのは強さが全てだ! 生きるってのは戦うことだ! その本質から目を背ける奴は、いつまで経ってもゴミのままだ!」
「・・・本質? お前こそ自分で言ってることの本質を理解しているのか。他人の強さを認められない程度の“強さ”など、たかが知れている。そのことを今から証明してやろう。」
デュースは一瞬で念を集中し、両眼をカッと開いた。
「かあっ!」
凄まじい火力。
ベインと同等か、それ以上。
「獄炎!」
「何を!」
デュースの炎に対抗して、ベインも火角咆を撃つ。
その力は互角。行き場を失ったエネルギーは大爆発へと転化する。
2人とも殆ど無傷だったが、わずかにデュースが競り負けた。

「クヒヒヒヒヒヒ! やっぱりオレの方が上! 上! 上! 自分を称える意思がオレに力を与える! 虚栄結構! まことに結構! 無駄な努力をしてきたゴミ虫を相手にすると、かつてない力が出せる! 120パーセント・・・130パーセント・・・150パーセント! もっとだ! もっとオレに力を! もっとオレに光を! オレ・オレ・最強! オレ・最強! オレ・オレ・最強! オレ・最強! 超最強必殺技―――――ウルトラ・メガ・フレア!!」

集約された炎は1万8千度にも達し、総熱量は2千メガジュールにもなる。
それが一気にデュースめがけて押し寄せたのだ。

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

音だけでも人を薙ぎ倒せるほどに、轟く爆音。
「クヒヒヒヒ―――っ、今度こそ跡形もなく消えて無くなったァ!」
しかし、マグレでないなら二度続く。
黒い炎を纏った掌が、ベインの視界の真ん中に映った。
「ク!?」
「自分に出来ることは他人も出来ると考えたことはないのか、ベイン。お前に出来ることは、わたしにも出来るのだ。」
「黒い・・・炎・・・?」
ベインはこの戦いで初めて恐怖を感じた。
「“溜めが利く”という意味をイマイチ理解してないだろう。わたしがB1級の力で何故“帝”を名乗っていられるか・・・。1時間溜めたのを1秒で使えば3600倍、瞬間的にはS級に達する!」
「S級だと!?」
「所詮、虚栄の炎など、この程度・・・。地獄の業火の前には、焚き火ほどの力も無い。」
ベインはデュースの表情を、はっきりと見た。
「ク・・・」
(こいつは、こんな目をする奴だったか?)(オドオドしてたクソ兄)(知らない)(こんな奴は知らない)
(知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知ら・・・)
ベインの意識が飛んだ。
「かっ!?」
一瞬の後に覚醒したとき、彼の胴体は左半分を吹き飛ばされていた。
「ぐぎいいい・・・!?」
「逢魔ヶ刻に、雨が降る・・・地獄の業火の雨が降る・・・!」
デュースの瞳は、周囲の炎熱とは真逆に、八寒地獄を思わせるほど冷たかった。

「・・炎・・・装・・闘衣・・・降魔・・太陽・・・・・・」

白く輝く真円が、天空ごと禍々しく染まったように感じた。
赤いヴェールを帯びた黒い炎がデュースに降り注いだ瞬間、ベインの精神は肉体と共に消滅した。
最期にデュースの奇妙な笑い声らしきものを聞きながら、ベインは灰燼となって散った。
(オレが・・・負ける?)
(オレが・・・消える?)
(冗談じゃねえ!)
(クソ兄ごときにオレが・・・)
(何かの間違い・・・!)
(これは夢・・・!)
(このオレが、超絶天才のオレが、グズでバカなゴミ虫に負けるはずがないんだよォ!)
(早く目が醒めろ・・・!)
(くだらん悪夢など振り払え・・・!)
(オレ凄え!)
(オレ天才!)
(オレ最高!)
(オレ最強!)
(オレ無敵!)
(オレ超人!)
(栄光!)
(超・栄光!)
(だから・・・これは夢なんだ・・・)
(夢に違いない・・・)
(夢・・・)
(・・・夢・・・)


- - - - - -


綺麗さっぱり大地のみになった中で、デュースはぐったりと座り込んでいた。
「・・・呆気ない。」
終わってみれば、デュースは僅かに火傷を負い、少しばかり服が焦げただけ。
かつては覆りようもない実力差があったはずなのに、それが今では逆転していた。
「子供の頃・・ずっと・・・お前と比べられてきて・・・味わい続けた劣等感を、完全に払拭したはずなのに・・・。」
澱んだ目から涙が流れた。
「何でだろ、ちっとも嬉しくない・・・。」
煤けた服で頬を拭い、デュースはゆっくりと立ち上がった。
(ベインは過去に囚われたままだった。過去の栄光に囚われたままだった。しかしその実・・・過去に囚われていたのは、わたしも同じだったのだ。)
力を使い果たしたデュースは、よろけながら本部へ向かって歩き出した。
「・・・わたしだって結構、やるじゃないか。」

等間隔で零れ落ちる雫は、まだ熱い地面に、一瞬だけ染みを作っていった。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/06/13 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「超・栄光! オレ・凄え! オレって凄え! 千年に1人の天才!」
火剣「ラップなのか?」
ゴリーレッド「自己暗示まではいい。東京ドームで5万人相手にコンサートをする歌手は『みんなオレに惚れてる』と思うらしい。でないと上がってしまう」
コング「オレがヒーロー! オレが正義!」
火剣「他人の強さを認める才能か。総合格闘技の試合でたいがい試合前は罵り合戦なんだが、ヒクソンとヒョードルのコメントは『相手を尊敬している』『戦えることが嬉しい』というものだったな」
ゴリーレッド「結局ヒクソンとヒョードルが最強だった」
コング「オレ・オレ・最強! オレ最強!」
ゴリーレッド「グロリイ・ディーバー?」
火剣「名乗った日が命日か」
コング「自分が上昇するために自分を賛嘆するまでは良かった。でもくたばれ、ゴミ、負け犬と罵るのはスポーツ科学としてもマイナスだ」
ゴリーレッド「ほう・・・れんそう」
コング「賢者コングー降臨」
火剣「デュースは複雑な心境だろうがこれで良かったんだ。生きていれば殺人の罪を重ねる。改心は無理そうなノリだった」
コング「でも弟の歌は兄が継承するべきだ。オレ・オレ・最強! オレ・最強!」
火剣「顔が似てるから間違えられて攻撃される」
 
火剣獣三郎
2016/06/13 17:15
>火剣さん
虚栄の男、ベイン・ディーバー。このノリは書いていて非常に楽しいキャラでした・・・。他者を罵るのではなく、自分を高める方向を追及していれば、もっと強くなれていましたね。

佐久間「さらばベイン、虚栄の男よ。」
山田「性格は悪いが、思わず口ずさみたくなるラップだな。」
神邪「これで罵りが無ければ、強くて愉快な人間でした。」
維澄「なるほど自己暗示。大勢の前で演説するとき、演劇、格闘技。そのときは自分を特別だと思う。謙虚のリミッターを外す。」
八武「私も手術をするときは神の気分になる。神ならば人を救えて当然だと思うと、失敗しない。」
山田「やはり自分を高めるのはプラスだな。その過程で他人を尊敬することを覚えるのが難しいのか。」
佐久間「オレ・オレ・最強! オレ・最強!」
山田「みんなが・最強! これ・最高!」
神邪「踊りたくなりますよね。」
山田「なるなる。」
佐久間「ベインは死んだが、ベインの遺したラップは生き続ける。」
維澄「ラプソディアと同じシチュエーションだけど、なんだかなぁ。」
八武「オレ・オレ・変態! オレ・変態!」
佐久間「改変が容易くていいな。」
アッキー
2016/06/13 21:45

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