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zoom RSS 「NEKTAR」 二十二、偶像

<<   作成日時 : 2016/06/14 00:00   >>

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デュースがベインと戦っていた頃。カンザス州において“嫉妬”のジェラシィを撃破した風組の5人は、アンティローグ第五位“双尊”のペック・ペアと対峙していた。
「さあ、さあ、さあさあさあさあ、は〜ん!」
ペックは掛け声一発、サイコキネシスで軽く5人を吹き飛ばした。
B1級のカルゼッタは何とか防御と受身を取ったが、残りの4人は一撃で気を失った。
「・・・っ!」
「ふむ。やはりこんなものでしょうね。」
ペックは余裕だが、油断していない。付け入る隙が無い。
カルゼッタは真正面に構えたが、真横から蹴りが飛んできた。
「がはっ!?」
「むーん。」
ペックは更に正面からサイコキネシスを放つ。カルゼッタはかわせない。
(殺られる!)
そう思ったとき、カルゼッタは背後から肩を掴まれた。
「どけよ。」
カルゼッタが地面に転がるのと同時に、ペックも吹っ飛ばされた。
「んが!?」
「うわお! お〜!」
小柄な体で強力な念力。40を過ぎたばかりの若き重幹部。
“壊滅大帝”コムザイン・シュトラスツェーベリウムの推参だ。
「まんまとエサに食いついてくれたな、ペック・ペア。ここで死ね。」
「オレら、エサかよ・・・。」
カルゼッタは咽を押さえながら呟いた。
「褒めてるんだ。後は任せろ。」
コムザインはA1級、ペックはA2級。力の差は倍以上ある。
「喝ァ!」
眼光と共にサイコキネシスの渦がペックめがけて放たれる。
「おっと。」
ペックはかわすが、それだけではない。
真横からコムザインに蹴りを入れた。
「!?」
咄嗟に振り払ったが、手ごたえが無い。
「・・妙な手品を使いやがるな。」
「ふふふ、超能力戦闘で言えば、あなたのようなタイプの天敵は僕です。」
「固有能力・・・。」
「正解です。」
単なるテレポートならコムザインの方が早い。
断じてペックの能力、単なるテレポートではない。
「まあ、手品の種は明かしませんがね。」
そう言ってペックは、テレポートで逃げ去った。
「ちっ、逃げられたか。フィー姉からも逃れられただけあるな。」
(だが今ので奴の固有能力は見当がついた。次は殺す。)
コムザインは空を睨んだ。


- - - - - -


同じ頃、ノースカロライナ州で土組5人はアンティローグ第四位“休息”のレスト・プロミネに追い詰められていた。
「さあ言ってもらおう。どうやって我々の先手を打ち、巫女を3人も斃せたのか・・。」
レストのその言葉で、土組は他の組も勝利したことを知ったが、今はそれどころではない。
それに、もしかしたら火組や土組にも十戒の上位陣が差し向けられてるかもしれないと思った。それは事実だった。
しかし火組のところへはデュース、風組にはコムザインが駆けつけていた。
土組には―――
「言わないなら殺す。」
「い、言っても殺すんでしょ!」
耐え切れなくなったサンディが声を張り上げた。

「―――そうだ、言うなよ。」

その声が響く前に、レストは予知して後ろへ飛び退いた。
「フィー・・・カタストロ・・・。」
先月50歳になったばかりの中年女性。顔にも手にも皺が刻まれている。
だが、その眼光は若々しく、活力に溢れ、鷹よりも鋭い。
すらりとした肉体と、長い黒髪から、一言。
「退け。」
「・・・どういうつもりで?」
「ここで戦えば私が勝つが、土組が死ぬ。それは避けたい。」
「おれを・・・敵を見逃すというのは、いかにも正義集団アルカディアらしからぬ行いのように思えるが?」
「は、人名に勝る正義など無い。アルカディアも正義の集団じゃないさ。」
「・・・・・・。」
それから2人は数十秒ほど睨み合った。
静かな状況だが、高次元の駆け引きが繰り広げられている。
「・・・わかった。退こう。」
レストはカタストロから目を逸らさないまま、テレポートした。
「よし。」
「・・・ふう。ありがとうございます。それで、次は?」
圭地が訊く。
「いったん本部へ戻る。“十戒”も残り少なくなってきたから、これからは形振り構わなくなってくる。まずは生き残ることだ。」
「「「了解!」」」


- - - - - -


朝が訪れる頃に、コムザインとカタストロ、火組、風組、土組の面々は、アルカディア本部へ帰還した。
そこで白組と黒組のメンバーが倒れているのを発見したのは、コムザインとカルゼッタだった。
「おい、しっかりしろ。」
カルゼッタが手当たり次第に呼びかけるが、ぴくりとも目を覚まさない。
「員数外の連中が揃って・・・。こいつは、疲れて眠りこけてるわけじゃなさそうだな。」
コムザインはサイコキネシスによる感知で、心音と呼吸を確認してから、歩き出した。
「どこへ?」
「そいつらは何らかの超能力で眠らされている可能性が高い。少なくとも本部に侵入者があったことは間違いない。」
「なっ!?」
「そいつらを見とけ。俺は侵入者を始末しに行く。」
コムザインは早足でザクザクと建物の中を進んだ。
「どうしたコムザイン。何かあったのか?」
「フィー姉、本部に侵入者があった。」
「何・・・。とするとクレアの姿が見えないのは・・・。」
カタストロとコムザインは手分けして捜索を開始した。途中でデュースも加わったが、なかなか発見できなかった。
それもそのはず、資料室のそのまた奥など、盲点。計算外。
クレアが自分でどこかに行くにしろ、何者かに身柄を拘束されているにしろ、この状況下で資料室にいるというのは考えられないのだ。
しかし、その常識をあっさり覆すのがティム・タロニスである。
クレアは白濁と透明に塗れて、資料室の奥の部屋で気を失って倒れていた。

彼女を見つけたのはレックスだった。
「クレア!?」
彼が資料室へ来たのは偶然だった。クレアを探していたわけでもない。
レックスはアルカディアのことを詳しくは知らない。しかし、だからこそ別の視点が持てるのではないかと思い、“神酒”についての資料が無いか探しに来たのである。
そもそも、クレアが“神酒”について色々と隠しているのも気に食わなかった。
それなら自分で調べてやろうじゃないかと、踏み込んだのが資料室。奥へ続く扉が開かれていて、不審に思って入ってみれば、クレアが横たわっていたというわけだ。
何者かと性交していた痕跡・・・それも、おそらくは無理やりに。
(誰がクレアをこんな目に・・・!)
一糸まとわぬクレアの体を抱き上げて、レックスは怒りで目を血走らせた。
「殺してやる・・・。」
クレアの体は温かく、心臓も動いている。
ぐったりとしているが、かすかに息をしている。生きてるとわかれば心配することはない。
レックスの心は怒り一色になった。
「出て来い!」

しかし下手人は既に“神酒”の資料を持って逃亡していた。
代わりにやって来たカタストロに事情を説明し、クレアは病院へ搬送された。
付き添いはレックスに任せて、カタストロ、コムザイン、デュースは、緊急会議を設けた。
「クレアさんを殺さずに去ったのは、どういうことでしょうか・・・?」
早速デュースが疑問を述べた。
「さあな。そいつが何考えてんだかはわからんが、確かな事実は、これで予知能力戦が不利になった。」
「それに、賊が侵入した方法も不明だ。閉空結界の張ってあるアルカディア本部、やたらなことでは突破できない。・・・コムザイン、デュース。正式のゲートを潜らずに、本部結界を突破できるか?」
「無理に決まってんだろ。あれは力でどうにかなる類のもんじゃねえ。」
「ですよね。たとえS級でも力ずくは無理です。」
「だろうな。もちろん私も不可能だ。おそらく犯人は空間干渉能力者で、媒介が尋常じゃない。」
そこでカタストロの顔が険しくなる。
「・・・でなければ、内部に犯人がいるということになるが。」
その言葉にコムザインもデュースも顔が強張った。
裏切りは当初から懸念されていたことであり、クレアが倒れている状況では、最も厄介な問題として立ち塞がる。
「クレアさんは、どうしてこれを予知できなかったんでしょうか。」
「普通に考えれば、それだけ戦況に集中していたということだろう。たとえ千里眼が全てを捉えても、それを受け取る脳には限界がある。」
(しかし・・・)
カタストロの脳裏には、かつてアルカディア最高幹部だったノットー・リ・アースの姿が浮かんでいた。
後の調査・研究で、彼は少なくとも1930年の時点では裏切りを画策していたことがわかっているが、1940年に彼が行動を起こすまで、誰も彼の企みに気付けなかったのだ。(首領だけは気付いていたに違いないが)
(何だ)(この嫌な感じは)(背筋の凍るような)(この感覚は)(馬鹿な)(ノットーは死んだ)(もう生きてはいない)
そう、確かにノットーは死んだ。
しかし、ノットーの意思を継ぐ者はいる。

そして、クレアを欠いたアルカディアフォースは、これより壊滅的な被害を受けることになる。


- - - -  - -


時間を半日ほど戻して、夕方。
アトラトたちは、恐るべき敵と向かい合っていた。
「こんばんは〜。」
可愛らしい声をした少女は、たった今サイコキネシスで大勢を吹き飛ばした。
壊れたビルの壁に叩きつけられて、かろうじて判別できる程度まで潰れている死体の中に、部下の顔がある。
恐怖、悲痛、憎悪。そのどれも感じている暇は無い。B級7人でA1級を相手にしなければならないのだ。
華奢で愛らしいアイドル少女。
それイコール、アンティローグの第二位。
“偶像”のアイド・カルトー。
そのような奇天烈なことが現実となるのが、超能力の世界だ。
「みんなが大好き、みんなを好き好き、アイドちゃんがやって来ました〜。」
魅惑的な笑顔。
「わたしはね、みんなの応援で強くなるの。Twinkle!」
ポーズを取ってウインク。
何もかもが可愛らしい。
ただひとつ、凶悪で強力なエスパーであることを除いては。
(攻撃、しづらい・・・。)
相手が何だろうと戦ってきたアトラトだが、こと彼女相手には手が鈍る。
迂闊に手が出せないのか、攻撃しても無駄だと本能で悟っているからか。
あるいは、可愛らしさに魅了されてしまっているとでもいうのか。
最後の理由であれば、絶対に承服できない。
「それじゃあ、いっくよ〜。」
(来るか!)
アトラトたちは身を固くした。
「呼べば出てくるわたしの僕(しもべ)、レスト・プロミネ! ペック・ペア!」
名を呼ばれると同時に姿を現したのは、アンティローグの第四位と第五位。
「お召しにより参上しました。」
「いつでもどこでも駆けつけますよ〜。」
「On−stage!」
アイドと共にレストとペックはサイコキネシスで地面を加工し、瞬く間に即席のステージを作り上げた。
「Light!」
夕暮れの中で、アイドに赤い光が降り注ぐ。
レストとペックがサイコキネシスで太陽の光を集めているのだ。
「Fire!」
レストが背景に巨大な炎のアーチを作り上げる。
「Music!」
ペックがアカペラでスキャットを始める。
そのメロディーを切り裂くように、アイドの声が響き渡る。
「Shoot the cat! Charm−Up! Let slip the dogs of war!」
白い指が踊る。
大きな瞳が揺れる。
華奢な体が激しく動く。
肩や腰を出した大胆な衣装、フリルが舞う。
綿毛のようにフワフワした、クリーム色のポニーテールに、汗が光る。
さくらんぼの唇は、空気を切り裂く旋律を奏でる。
汗と涙で濡れた顔を袖で拭うと、アイドは片足を挙げて右手でピストルの形を作った。
「Bang!」
アトラトも、セトも、キムも、他の隊員も、アイドに見入ってしまっていた。

「わたしを、崇拝しなさい。」

濡れた瞳が、甘い声で囁いた。


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/06/14 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「コムザイン。頼りになるな」
ゴリーレッド「秒殺かと思ったら手品のようなテレポート」
火剣「逃げられたか」
コング「♪オレオレ変態、オレ変態!」
ゴリーレッド「流行らすな」
コング「♪雨期はウキウキ薄着の季節!」
火剣「ベインから遠ざかっている」
ゴリーレッド「ラプソディアの鎮魂歌と一緒にしてはいけない」
コング「おおおサンディ!」
ゴリーレッド「うるさい」
コング「フィー姉、登場するの早過ぎるう」
火剣「侵入者がいた。この事実は衝撃だろう」
ゴリーレッド「しかもクレアを突破とはその実力は絶望的なレベルと想像してしまう」
火剣「侵入が無理ということは内部の犯行」
ゴリーレッド「内部だとしてもクレアを突破できないはず」
コング「レックスはクレアの一糸まとわぬ姿を見ても怒りが先か」
火剣「性交渉のあと。無理やりならレイプだ」
コング「殺さなかったのは偉い」
ゴリーレッド「アイドの僕なのかレストとペック」
火剣「魅了されたか」
コング「エスパーじゃない普通の女子の小悪魔戦法も効果抜群なのだからエスパーの魅惑光線に魅了されても仕方ない」
ゴリーレッド「でもそれはイコール死」
コング「で、いつハービスはソゥルに貫かれるんだ?」
ゴリーレッド「そんな場面はないと信じている」
コング「全裸で捕まり嬲られ気絶できない絶頂の連続でついに憎き敵にアヘ顔を晒すという女戦士が絶対にやってはいけない・・・」
ゴリーレッド「エルボー!」
コング「がっ・・・」
火剣「一進一退の攻防だ」

火剣獣三郎
2016/06/14 10:22
>火剣さん
火組の救援にはデュースが向かっていましたが、風組、土組にも、それぞれちゃんと助けを向かわせていました。それを指示したクレアは、ティムに犯されて意識を失っていますが・・・。
ついにアイド・カルトーが、その恐るべき力の片鱗を見せます。

山田「コムザインから逃げるとは!」
佐久間「テレポートは強いのさ。」
維澄「転移の隙を突けなかったのは、油断でなければペックの固有能力?」
佐久間「その通り。」
八武「レックスは紳士としか思えない。色っぽいクレアの姿を見て、劣情より憤りが勝るか。」
山田「それだけクレアを大切に思ってるんだ。」
神邪「NTRには目覚めませんでしたか。」
山田「お前は何を言ってるんだ。」
佐久間「クレアと付き合っていくには、NTRに目覚める必要がある。」
山田「目覚めなくていい。」
佐久間「怒りはNTRに欠かせないぞ。」
山田「変態の理屈だ。」
八武「変態結構! まことに結構! オレ・オレ・変態! オレ・変態!」
維澄「ベインも独特だったけれど、アイドのノリはそれ以上に異質だね。しかもレストとペックが側に控えているのか。」
佐久間「アトラトたちの命運は尽きた。」
山田「尽きてないと信じる。」
八武「しかしなるほど、アイドの魅力は超能力か。」
神邪「催眠ですか?」
佐久間「まあ、そんな感じ。」
山田「だが、砕組は対催眠訓練を積んでいるはず。負けるなアトラト!」
佐久間「じきにハービスも来る。」
八武「ほう。」
アッキー
2016/06/14 22:41

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「NEKTAR」 二十二、偶像 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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