佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 十八、白光

<<   作成日時 : 2016/06/07 00:00   >>

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アンティローグ第六位、“殺戮”のマーダ・アタルと戦うは、25名。
アトラト分隊、セト分隊、キム分隊、それに加えて“叩割空”モース・リーガル。
「はっはっは、巫女どもじゃあ駄目か。流石はアルカディアの精鋭部隊。」
マーダは不敵に笑っている。
「言っとくけどな、オレの痛覚増幅能力はMAXで10倍にまで上げられる。ひゃはは、人間ってのは痛みでも死ぬんだぜ?」
モース、アトラト、セトだけは顔色を変えないが、それ以外は青くなった。
「ふん、ふん、ふふん。まずはそこの怯えてるボクちゃんから!」
マーダはキムに狙いを定めた。
「ちっ!」
モースはマーダよりも早い。
「おっほ!」
マーダは避ける。
「ひゃはは、そうそう、お前には気をつけないとな。“叩割空”モース・リーガル。空間干渉能力者。力が衰えて“三帝”の座から転げ落ちたって聞いたけど、この中じゃ一番厄介だな〜。でもよ、逆に言えば、お前を片付ければ残りはゴミじゃね?」
「安い挑発だ。いくらゴミ呼ばわりしても、不利は覆らんぞ。」
「不利? バッカでえ〜。お前も含めて全員合わせたって、オレの半分にしかならねえくせに。」
「それは単純な力の合計だろ? 本当に有利ならオレを恐れる必要は無い。」
「ひゃっは、バッカでえ〜。リップサービスもわかんないの? “叩割空帝”とか呼ばれてた頃ならともかく、今のお前に負ける気はしないな〜。」
「ははは、それは錯覚だ。」
モースは全く挑発に乗らず、逆に余裕めいた表情をしている。
「ひゃっは、錯覚してんのはそっちだろ。言っとくけどな、オレの出力はA2級の中位クラスだ。それって要するに、お前ら1人ずつとは力の差が大きいってこと。ここまで力の差があれば、フォーメーションとかコンビネーションとか役に立たねーよ。つまり合計戦力でオレの半分のお前らに、勝ち目なしってこと。」
「そう思うなら何故攻撃してこない?」
「ひゃはは、それってさあ、これが戦いだと思ってるセリフだろ。違えよ。これは一方的な殺戮だ。どんな風に殺すか考えてんだよ。その気になれば、いつでも殺せる。」
「そう思うなら、とっとと攻撃してきたらどうだ?」
「だから焦るなって。ひゃっははは、お前を最初に殺すか最後まで残すか、今考えてるところだからよ。」
「ふーん。」
モースはニヤリと笑った。
「だそうだ。」
「む・・・?」
マーダは口元を歪めた。
アトラト隊、セト隊、キム隊の24人が、念力を発してひとかたまりの力場を構成している。
「お前も知るまい、マーダ・アタル。これぞフォーメーションΣ・・・組むのに時間がかかるが、その分強いぞ。」
「ひゃは・・」
マーダは臆することなくサイコキネシスの牙を放つ。
力場は一瞬だけ崩れるが、煮え滾るスープの灰汁のように、すぐに元通りになる。
「へえ・・・。こりゃあ、ちょっとした、ものだぜ。“こういうの”を狩るのは初めてだ・・・!」
ニタリと笑うマーダは両手で念力の渦を作って突進した。
しかしすぐに退く。モースの攻撃が飛んできたのだ。
「ちっ、仕切り直しだ。」
マーダはサイコキネシスによる高速移動で、フォーメーションΣをズタズタに引き裂いていく。
しかし人間は引き裂けない。当たり損ねる。掠るだけ。破れ目からモースの攻撃が飛んでくる。
「ひゃっくそ、何だそれ・・・!」
「何だ、もしかして連携は苦手だと思ってるのか。クレア・クレッセントと一芝居打ったのは思ったより効果的だったな。」
「ちっ!」
マーダは初めて悔しそうな顔をした。
「・・・お前の言う通り、俺は力が衰えたさ。だから他のことで努力した。技とかな。」
「ひゃはっ、結局は力だろ。オレの攻撃もクリーンヒットはしてないが、そっちの攻撃は掠ってもいねえ。」
「結局は力だという理屈・・・それは1対1の戦いにおいての話だろう。戦いってのは1対1だけでもないし、人生ってのは戦いだけじゃない。人生の大部分は戦いではない・・・それがわからんお前に負ける気はしないな。」
「ひゃーはっはっは、じゃあ人生ってのは何なんだ? 食って、出して、寝て、起きて、その繰り返しとか言わねえよな? んなもんは動物と同じだ。殺戮だ、殺戮。食う為でもなく、ただ生存する為でもなく、殺したいから殺す。これこそ人間。これこそ人生。殺したくて殺すときが、生きてるって充実感を味わえるときなんだよおっ!」
「幼稚な論理だな。動物がしないことをするから人間? く・だ・ら・な・す・ぎ・る・・・!」
「だーかーらー、そう言うなら人生ってのは何なのか語ってみろよ。」
「生憎尾お前程度に語れるような低劣な人生は持ち合わせていないがね・・・。しかし、ひとつ確かなことを言えば、この戦いが終わったら、俺はフィーを手に入れる。」
「フィー? フィー・カタストロか?」
「そうだ、だから誰にも邪魔はさせない、もちろんお前にも邪魔はさせない、全ての障害物を薙ぎ払う、だからここでは死なないんだ、わ・か・る・か!?」
「・・・・・・!」
モースの異様な迫力に、マーダは圧倒された。
「ぐっ、ぬぐっ・・」
得体の知れない圧倒的なプレッシャーは、モースを巨大に錯覚させた。
空気が水飴のように、ねっとりと重苦しかった。
「理解したか、小僧。人間の優劣を決めるのは、腕力でも知能でもなく、志だってこと・・・。」
「ほざけ・・・!」
「ならば攻撃してこいよ。それとも“もったいなくて”攻撃しづらいか?」
「ぅぐ・・」
思わず声が漏れてしまった。
マーダは慌てて口を塞いだが、かえって確信させた。
「ははは、図星だな・・・。最初から妙だとは思っていた。お前が狂気に支配されてるようなら、俺と挑発合戦ができるはずないんだ・・・十中八九な。」
「だからどうした・・・。」
強がっていても、マーダの声には精彩がない。
「つまりお前は“正気で”人を殺してるってこと。たとえるなら、子供が遊びで虫を殺すのに近いか? だが、そんな子供だって大切なオモチャは壊そうとしない。人を死ぬまでこき使う金持ちだって、名画は大事にする。マーダよ、お前は命の尊さは理解していないが、命の価値はよくわかってんだろ。つまり俺たちの命は価値が高いと思ってくれたわけだ。ははは、光栄だな。」
「・・・・・・。」
「何でそれがわかったのかってツラしてんな。俺も同じだからさ。フィー・カタストロは俺にとって、かけがえのない存在だ。俺の心を吹き抜ける唯一の風だ。・・・はは、それに引き換え・・・お前なんか死んでもいいと思ってる。だ・か・ら・死・ね・よ。」
「びゃっ!」
ゾッとするほど暗い殺気に射竦められて、マーダは思わず飛び退いた。
「ど・う・し・た?」
「ひゅ・・」
力量では勝ってるはずだと思っても、そんなものは何の助けにもならない。
マーダは完全に気合負けしていた。
「・・・ちっ、ケチがついたぜ・・・。」
マーダはテレポートで逃げ去った。
「ふん・・・。馬鹿な奴。まさしくクレア・クレッセントの計算通り・・・。」
モースは夕陽を見つめながら笑った。
「モースさん、追わなくても?」
アトラトが訊くが、モースは頷く。
「その必要はない。これで十分だ。これでな。」
「?」


- - - - - -


マーダは落ち着かない心で、廃墟と化した街を歩いていた。
「くそ・・・。」
自分の性質を敵に理解されてしまう気恥ずかしさで、彼は苛立っていた。
(何モンだ、あいつ。)
ふと空を見上げると、まばゆいばかりの白い光があった。
「・・・・・・。・・・!?」
今は夕方のはずだ。
(ならば、あの光は―――)
白光はマーダを包み込み、その肉体と精神を一瞬にして消し去った。

その光の軌跡を辿れば、西へ、西へ、西へ、乾いた陸地を越え、西海岸を突破し、太平洋の大海原を突っ切って、アルカディアの本部まで至る。
首領ジュエルが空間を歪めて作り出した、半径100キロのエリアの中の、小粒のような一部分。
白組の5人と黒組の3人。合わせて8人。その横にクレアがいる。
「命・中!」
クレアが笑い、8人は湧いた。
「やったぜ!」
「オレたち凄え!」
「十戒の第六位を一撃で!」
「こっちは無傷で!」
「いやっほー!」
歓喜を口にし、手を叩いて飛び上がった。
「俺たち、半端者扱いの俺たちが、力を合わせれば・・・ここまで出来るものなんだな・・・。」
白組隊長X・Q・ジョナルは、喜びと驚きが半々だった。
クレアの千里眼でマーダの位置を捕捉し、黒組隊長ノワールがテレパシーで8人とリンクし、ジョナルが8人の力を結集してサイコガンを放つ。
このことをクレアから説明されたとき、8人が8人とも成功するとは思っていなかった。
本部から北米大陸までは何千キロも離れている。人間にピンポイントで命中させるなど神業。
しかしクレアは言う。
「神ならば、この程度のことは軽くやってのける。神にとって容易いことならば、人間の努力で可能ではないのか?」
それで出来ると思ったわけではないが、やる気にはなれた。
「ククク、名付けてサンライズホワイト・オクタイレイズ!」
クレアの素晴らしきネーミングセンスに、皆は沈黙して渋い顔をした。

サイコガンで疲労したジョナルの回復を待って、9人は朝を迎えた。
「そうれ、朝日だ! これからが最終決戦・・・ここから一気に畳み掛ける・・・!」
もう一息で課題を終えるかのように、クレアは不敵な笑いを浮かべた。


- - - - - -


時間を半日巻き戻して、夕陽を見つめていたモースは突然叫んだ。
「逃げろ!」
「「「えっ!?」」」
その途端、空間の歪む奇怪な音が響き、空中に白く輝く光の玉が現れた。
「サ〜イコキネシス!」
光の玉から、鈴を転がしたような可愛らしい声と共に、強力な念力の塊が放たれた。
既に廃墟と化していた一帯は、その攻撃で紙屑のように吹き飛んでいった。
その場に残ったのは、アトラト、セト、キム、そして数名の隊員だけであった。
(防御が間に合った・・・。)
キムはモースの声に逸早く反応し、全力でバリアを張った。
しかし、そのモースの姿は無かった。
(モースさん! まさか今の攻撃で・・)
アトラトは冷静な態度を取りながら、心の中では動揺していた。
(いや、吹き飛ばされただけだ。そうに違いない。それよりも目の前のことを考えるべきだ。)
目の前の敵、それすなわちアンティローグ第二位、“偶像”のアイド・カルトー。
露出の多いフリルだらけの服を着た少女。
クリーム色の、ふわふわしたポニーテールと、明るく大きな瞳。
筋の通った鼻に、さくらんぼのような可愛らしい唇。
手足も体も、下手に抱き締めたら折れてしまいそうなくらい華奢だ。

「こんばんは〜。出張してきちゃいました〜。」


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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/06/07 00:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「殺戮のマーダ・アタル」
ゴリーレッド「モース・リーガルが迎え撃つ」
コング「痛覚増幅能力は拷問に最適だな。言葉だけで降参させられそうだ。全裸で磔にした美女に降参しないならMAXで責めちゃうけどいいのか?」
ゴリーレッド「遺言状には日時を忘れるな」
コング「遺言状なんか書かない」
火剣「年齢とともにパワーが衰えても技術向上など努力でカバーできる」
ゴリーレッド「努力すれば総合力で若い時よりも勝る場合がある」
コング「何回やったか自慢の若者(バカモノ)よりもメロメロに気持ちいい目にあわせてくれるテクニシャンのほうがいいという女子は多い」
火剣「この戦が終わったらフィーを手に入れる」
コング「千香を手に入れた僕もリーガルの気持ちはわかる」
ゴリーレッド「嘘は良くない」
火剣「ルード同様、マーダも狂人ではなかった」
ゴリーレッド「狂っていたらなりふり構わず攻撃してくる」
火剣「クレア、X・Q・ジャーナル、ノワールら何人もの連携プレイか」
ゴリーレッド「ついに強敵アタル兄弟を倒した」
コング「おおお! アイド! 待ってました。ふれー、ふれー、ア、イ、ド! それ、ふれっふれっ、アイd」
ゴリーレッド「ドロップキック!」
コング「どおおお!」
火剣「何か強そうだな。モース・リーガルは大丈夫か。フィーをこの手に抱くまでは死ねない」




火剣獣三郎
2016/06/07 13:15
>火剣さん
痛覚増幅能力を持つマーダ・アタルに対し、逆に気迫で押してしまうモース・リーガル。ついに逃走にまで追い込みました。
予知を駆使した破壊光線で、マーダを撃破。しかしそこへアンティローグ第二位、アイド・カルトーが迫ります!

八武「ふむぅ、最近は快楽を増幅することばかり考えていたが、やはり痛みを与えるのがリョナの王道か。」
山田「与えなくていいんだ。医者なら逆を考えろ。」
神邪「マーダの能力、もしもサイ子さんの力で逆方向で使えたら、痛みを和らげることも出来そうでしたね。」
維澄「マイナスにマイナスを掛ければプラスだね。」
佐久間「だがサイ子は不在。マーダも死亡。」
八武「もったいない。」
佐久間「なまじパワーがあると雑だ。丁寧に戦おうという気持ちが湧いてこないんだなぁ。」
八武「ふむ、なまじパワーがあると丁寧に愛撫しないのと同じか。」
山田「モースは生きてるだろう。ここで死ぬとは思えない。」
八武「我らがアイドル、アイド登場。可愛い!」
山田「だが恐ろしい。」
八武「可愛い顔して容赦ない、これだよ!」
アッキー
2016/06/07 22:21

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