佐久間闇子と奇妙な世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 「NEKTAR」 二十九、重奏

<<   作成日時 : 2016/07/07 00:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 2

太陽の輝きが赤みを増していく。

血のような光球を背にして、パラメーツォルティは笑っていた。
不幸な少女パラメッタの面影は微塵もなく、紫色に変化した髪の毛は風に振り乱されて空に広がり、その隙間から赤い光が差している。瞳の色も紫になり、肌の色も死人のように青白くなっていく。
「ぐひィひィひィ、“挽念化生”カタストロ! “壊滅大帝”コムザイン! お前たちの最後の戦いを始めようよォ!」
コムザインの力を100万とすると、カタストロは45万。対するパラメーツォルティは355万。
しかもアンティローグの殆どが念力を絞ることや複数の能力を同時に使うことが出来ないのに、パラメーツォルティはその全てが出来る上に、念力量も十分にある。
だが、コムザインもカタストロも負ける気はしない。
「・・・確かに、お前は強いな。1対1ずつで戦えば、私もコムザインも敵うまい。しかし、偶然なのか狙ったのか知らないが、我々を一箇所に集めたのが敗因と知れ。」
「戦う前から勝利宣言か? そうゆーのは勝てる戦いのときに言うもんだ。ハッハァ!」
高速回転する念力の刃が連続で放たれる。
カタストロとコムザインは連携して斜めに弾くが、それぞれ数箇所に傷を負った。
「どうだね。わたしは“神酒”を飲んだ者の能力を全て使えるんだ。アンティソーマなどという、くだらないものを用意してくれたようだが、それでも900人以上残っている。それら全てを合わせれば、出力はコムザインをも上回る。わたし自身の力、多くの人間から吸って得た力を合わせれば、今や超A級の出力。うふ、うふ、あははァ!」
「手傷を負わせたくらいで、そんなに嬉しいか?」
カタストロが珍しく挑発的なことを言う。
「はァん?」
「今ので感覚が掴めたってことだ、小娘。俺とフィー姉の“二重奏”・・・聞き惚れて泣きわめくなよ!」
2人の念力が交じり合って重なった。
「連携したって無駄無駄ァ! 聞いて驚け、見て嘆け、すり抜け切り刻む痛烈な打撃! “クイン・ハンマー”!」
「・・・。」
カタストロは無言で念爆崩拳。

そして、相殺。
「!?」
驚いたのはパラメーツォルティだった。
いくら練度が足りないといっても、超A級出力の“クイン・ハンマー”を、A2級の念爆崩拳で相殺できるはずはない。
「私の技をよく真似れているものだ・・。」
「皮肉か?」
パラメーツォルティは初めて歯を軋り、カタストロを睨みつけた。
「とんでもない。私の技は容易く真似られるものではないのだ。よほどの天才か努力家か。やはり1対1なら勝てそうもない。」
「・・・2対1になったことで何か変わったとでもいうの?」
「今しがた、お前の“クイン・ハンマー”を相殺してみせた結果が示す通りだ。“連携”ではなく“複合”。念力をミックスして、質的に変化させる技法だ。こればかりは真似できまい。」
「ぬう・・・。なるほど、確かにな。そればっかりは長年の修行で息を合わせねばなるまいよ。独りぼっちのわたしには真似できないな。ククク、クククク、こんな謙虚な気分になるのは生まれて初めてかもしれない。」
「手遅れだろ。」
コムザインが冷ややかに言うと同時に、戦闘は再開された。
「Queen-Hammer!」
「念爆崩拳・・・。」
サイコキネシスの重合技の撃ち合い。
少しでも手元が狂えば、体のどこかが吹っ飛びかねない。
「きええええいえい!」
「・・・。」
パラメーツォルティがテレポートも駆使して多彩な攻撃を仕掛けるのに対し、カタストロは全て念爆崩拳で相殺。

周囲を粉砕し尽くす戦いは、日没になっても続いていた。
暗闇の中であっても、戦いに不自由していない。
透視能力を使いこなすパラメーツォルティは当然のこと、カタストロとコムザインは耳で聞くだけでなくサイコキネシスの力場を展開して、周囲の状況を触覚的に読み取っているのだ。
「やるねえ。達人でいうところの“肌で感じる”ってやつか。夜間戦闘もお手のものってか?」
「そんなところだ。私やコムザインでなくとも、分隊長クラスなら大概は出来る・・・。」
「“二重奏”とはよく言ったものだよ。攻防はカタストロに任せて、コムザインは徹底的に周囲の空間を圧迫し締め付けている。」
「フィー姉と複合した俺の念力は、密度が高くブレにくい。テレポートも短距離しか跳べまい。」
「察しの通り。このまま長引いたら、わたしの方が不利かなー。だから、この技も使わせてもらおう。」

その瞬間、パラメーツォルティの体が白く光り輝いた。
「「!?」」
信じられないほどの速さで間合いを詰められた。
(爆!)
大爆発が巻き起こり、3人とも吹き飛ばされる。

「・・・驚いた。」
カタストロは目をしばたかせた。
「驚いただァ!? ふざけんじゃねー! 何だ今のは!?」
パラメーツォルティは顔を険しくして、震えながら怒鳴り散らした。
「驚いたって何だよ、驚いたってェ!? お前ら今ので死ぬはずだったんだ! 念力の全エネルギーを破壊に変える、お前でも未完成の必殺技! 今ので寿命何ヶ月削ってると思ってんだ! それなのにィ、お前らが無傷で、わたしが手傷を負ってるなんて、有り得ねーんだよォ!!」
「それだけフィー姉が凄いってことさ。念爆崩拳ばっかり撃ってたのは何の為だと思う。」
「何ィ!?」
「念爆重崩拳。“連撃”ではなく“重撃”。単なる二連撃なら威力は2倍だが、二重撃なら私の場合、45倍の破壊力を持つ。未完成の“闘衣”とならギリギリ相殺して余ったようだな。」
「ちィイ〜、今まで温存してやがったのか!」
「いや・・・。」
カタストロは片目を細めて、自嘲ぎみに唇を曲げた。
「生憎、未熟者でね。何千回も念爆崩拳を撃たないと感じが掴めないのさ。・・・クリエ・ソゥルのときと違って、お前の攻撃は全て念爆崩拳で撃ち落とせる。幸運なことにな。」
「ぐっ!」
「使えないのだろう、“空間の粉砕”は。クリエ・ソゥルは死んだものな。十戒が全員死んでから後に出てきたのが失敗さ。」
「・・・・・・。」
「本来はフィリップも含めた“三重奏”なんだが、今のお前程度なら“二重奏”で十分だ。」
「ほざいたな。今日はよく口が回るな、フィー・カタストロ。怒ってるんだろう、ええおい。コムザインは知らないだろ、クリエ・ソゥルの正体がモース・リーガルだなんてな!」
「何だと・・・!?」
コムザインは目を丸くして息を呑んだ。
「ヒァハハハ、そうさ、クリエの想い人はフィー・カタストロ! モースの想い人はフィー・カタストロ! お前が姉と慕うカタストロを、犯し、殺し、貪る為に、モースはアンティローグを結成したのだ! 40を過ぎた大人が10代半ばの小娘に操られて、取り返しの付かない悪行を犯してしまった! ブッヒャヒャヒャヒャ!」

「・・・・・・安心したぜ。」
「・・ヒャヒャ・・・あ?」
「要するに、お前に操られてたってことだろ。モースは俺が認める数少ない男だ。かつては俺と肩を並べる“叩割空帝”の名を持っていた男が、自分からこんな馬鹿な真似をするはずがない。」
「ハッハハ、何も知らないんだな。それはモース・リーガルが元から持っていた感情だ! わたしはそれを増幅してやったに過ぎない! この災厄は全て、モースが望んで行ったことなんだよォ! ヒャアヒャヒャヒャ!」
「量的変化が質的変化をもたらすって言葉を知らねえのか? モースがフィー姉に並々ならぬ思いを抱いていることなど、とっくに知ってたさ。フィー姉を見るときだけ男の目になるもんな。5,6年くらい前から目つきが嫌な感じに変わってたんだが・・・その頃から操られてたわけか。よかったぜ、お前の心の負の矛盾を増幅されなければ、モース・リーガルは俺の認めた男のままだったということだ。」
「何を・・・妙ちきりんな綺麗事ぬかしやがって! お前もカタストロが好きなんだろ! 愛しちゃってんだろ! モースを認めるだとか、いい子ちゃんぶりやがって・・・殺してやりたいとか思ったこともあるんだろ!」
「はーはっはっは、単純だな小娘。好きとか愛してるっていえば、恋愛以外に無いと思い込んでる。お前も言ってたろ、フィー姉と俺は姉弟だ。無いのは血の繋がりだけさ。長年連れ添った夫婦よりも強い絆がある!」
「アテが外れたか、パラメーツォルティ。私の“弟”は強いだろう。」
「ぎいいいい・・・!」
パラメーツォルティは青筋を立てて怒ったが、すぐに平静を取り戻した。
「小細工に頼ろうとしたのが間違いだった・・・。寿命の10年や20年削ってでも、お前らを殺す。さっきの感じでは、念爆重崩拳は連続では使えまい?」
「!」

「さァいくぜえェ!!」
再び白く輝いたパラメーツォルティが、一瞬で間合いを詰めた。
(ここで弾かれても次で仕留める!)
彼女の予想通り、カタストロは念爆崩拳の重撃を放ってくる。
(ぐ・・・?)
だが、予想以上に威力が強すぎる。
(これは・・・!?)

輝きが衰え、パラメーツォルティはバラバラになって吹っ飛んだ。
「ぎえええええええええええええ!!?」
「正しいよ。未熟さゆえ、重撃は連発できない。この念爆三重崩拳も、一発で体がガタガタになる。」
「三重とか・・・化物め・・・」
パラメーツォルティは、飛び散った体を集めて再生した。
「ほう・・・。」
「まだだァ。わたしの再生能力は、アンティローグの誰よりも上! “再生”の巫女パラメッタの名は伊達じゃなーい。」
「そうか。ならば・・」
再生が終わらないうちに、“クイン・ハンマー”がパラメーツォルティに直撃する。
「ぐぼっ!」
「再生が尽きるまで何度でも切り刻んでやる。」
容赦ない“クイン・ハンマー”の嵐が襲う。
パラメーツォルティは為す術もなく、自らの肉体が破壊と再生を繰り返す痛苦を味わっていた。
「ぐぎィ! げあっ! ごああああ! 何故だァ、何故わたしの邪魔をするゥ!? わたしは不幸だった! ひたすら不幸だった! あらゆる権利を剥奪されてきた! あがあああ、あああああ・・・! わたしは幸せになりたいんだ! わたしには幸せになる権利があるんだ! わたしの幸福の為にはァ、何をしてもいいんだよォ! わたしには全ての権利がある! 貪るも奪うも操るも殺すも、わたしの好きに出来る! 邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するなァーっ!!」
「話にならんなパラメッタ。どんなに御託を並べようとも、人を殺していい権利など発生しない。」
「ぐぎぎぎぎィ、その薄っぺらい綺麗事! 反吐が出る! 殺す権利が無いってんなら、お前らがわたしを殺す権利も無いってことだろ!?」
「その通りだよパラメッタ。だから綺麗事なんかじゃないんだ。権利は無くとも人は殺せる。殺し合いの席で権利を主張するとは、甘ったるいにも程があるぞ。」
連続の“クイン・ハンマー”は、なおもパラメーツォルティをズタズタにしていく。
「ぐぎいいいいいい!」
「正しい者が勝つのではなく、勝った者が正しくなる。あらゆる権利が踏み躙られ、生き残らねば汚名を擦り付けられる。それが戦場だ。暴力が支配する、狂った世界だ!」
「ぐぞおおお、死んでたまるかァ!」
パラメーツォルティの再生能力は凄まじい。
コンマ何秒単位で、血管・神経・筋肉・骨格・内臓を再生する。
「再生力が高いのも不幸だな。楽には死ねんぞパラメッタ。」
「わたしをその名で呼ぶなァ〜!」
「何度でも呼ぶさ、パラメッタ。何万時間でも切り刻んでやる。」
「ふざけやがってェ!」
パラメーツォルティの体が、再び白く輝く。
しかしすぐさま爆発してバラバラに吹き飛んだ。
「ぐぎゃああっ!?」
「馬鹿なことを。万全の状態でさえ寿命を削るほど負荷をかけるのに、そんな体で使えば自爆するのは当然だ。」
喋りながらもカタストロは“クイン・ハンマー”を撃ち続ける。
念爆三重崩拳の反動でカタストロも体が壊れそうだが、顔色ひとつ変えずに何時間も攻撃し続ける。

体表が裂けて血が噴き出し、カタストロの全身が赤く染まっていく。
まるで血のドレスを着ているように見えた。
「わ・た・し・を・見下すなァっ!!」
バラバラになったくらいで死なないのは先刻承知。
強引に再生したパラメーツォルティは、最後の手段に出た。
(これでも食らえよ“フラッシュバック・ペイン”!)
「ぐあっ!?」
「がっ!?」
コムザインとカタストロは、今まで味わったこともないような凄まじい苦痛を感じて、一瞬だけ念力を緩めた。
その一瞬の隙に、パラメーツォルティはテレポートで逃げ去った。

「くそっ!」
「不幸を称するのは伊達じゃないな。あそこまで歪んだ理由も理解できる・・・。」
フラッシュバック・ペイン。パラメーツォルティは自身の苦痛の記憶を、テレパシーでコムザインとカタストロの脳内に送り込んだ。それは2人をして、危うく同情しそうになるほどの凄惨な過去だった。
「追うぞ、コムザイン。」
「ああ。」
同情しそうになっても、しない。
肉体の傷をサイコキネシスで修復し、2人は再び音速に達した。



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
□□□□□□□□□□ ...続きを見る
佐久間闇子と奇妙な世界
2016/07/07 00:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コング「きょうは七夕か。パチンコ店の前にピンクの浴衣姿の女子店員がいたので犯したくなったな。浴衣姿はなぜそそるのだろう。思わずガン見したら何度もこちらを見ていた」
ゴリーレッド「怯えていたのだろう」
火剣「『男の目』になっていたな」
コング「男の目で見られて喜ぶか怯えるかは女子次第。ぐひィひィひィ」
ゴリーレッド「145対355か」
火剣「2対1にしたことがパラメーツォルティの敗因になるか」
コング「わざとパラメッタと呼ぶ作戦か」
ゴリーレッド「100+45=145ではなく、100×45=は4500とも言える」
火剣「コムザインにはまだモース・リーガル=クリエ・ソゥルの情報は届いていなかったか」
コング「ブッヒャヒャヒャヒャ!」
ゴリーレッド「モースがパラメーツォルティに操られていたとは」
コング「モースは恋愛でコムザインは姉弟愛か」
火剣「再生のパラメーツォルティ」
コング「ヒャハハハ! ヒーハー!」
ゴリーレッド「不幸な生い立ちなら何をしてもいいという歪んでしまう人間は多い」
火剣「いかなる理由があれ人を殺していい権利など存在しない。殺人以外でも最近、悪質な事件がニュースで流れる。悪質度が高ければ無期懲役でもいいと思うが、法律は柔軟性がねえ」
ゴリーレッド「ここは殺し合いの席。戦場に人間性は根本的にない」
コング「かわいいは性技」
火剣「危うく同情しそうになるパラメッタの凄惨な過去。わかる」
コング「逃げたか。切り刻むには惜しい女」
ゴリーレッド「多くの人間を惨殺した以上、同情は禁物だ」
火剣「ティム・タロニスが出ないうちに勝負を決したいところだ」







火剣獣三郎
2016/07/07 11:33
>火剣さん
もしも1対1ずつ戦っていれば、パラメーツォルティの勝利は揺るぎないものでした。油断にしろ慢心にしろ、コムザインとカタストロにタッグを組ませてしまったのが失策。されど機転を利かして逃げ去ります。
この延長戦の行方は、次回にて・・・!

佐久間「魔界の測定器を使ったか。掛け算は全く正しい。」
山田「そんなに強いのか。」
神邪「ここで4500といえば、4500万PKP・・・デュースさんでも一瞬しか出せないパワーを普通に出しているということですか?」
佐久間「あくまで総合的な話だが、事実そうだ。真っ向勝負ではパラメーツォルティに勝ち目は無い。」
維澄「たとえパラメーツォルティが5種類の能力を全て355で使えたとしても、単純な合計は1775・・・なるほど。」
八武「こちらは七夕だが、44年前は浴衣では肌寒い季節か。」
山田「お前は何を言ってるんだ。」
八武「いや待てよ、サイコキネシスの力場があれば、浴衣でも!」
佐久間「まあ実際、パラメーツォルティの巫女服は、それに近い。」
八武「そう、その話に繋げようと思っていたのだよ!」
神邪「なるほど!」
山田「また弟子を騙している・・。」
維澄「こうして見ると、コムザインとカタストロは信念でも強いのがわかるね。力ある者が重厚な信念を持っていると安心するよ。」
八武「しかし問題はティムか。パラメーツォルティとティムが組んだら形勢逆転?」
佐久間「そうなるな。」
山田「うーむ・・・。」
アッキー
2016/07/07 21:07

コメントする help

ニックネーム
本 文
「NEKTAR」 二十九、重奏 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる