佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「NEKTAR」 三十、悪魔

<<   作成日時 : 2016/07/08 00:00   >>

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真夜中の空。

パラメーツォルティは、ふらふらと飛んでいた。
「はァ・・・はァ・・・ぐぞォ・・・いくら何でも、やられすぎた・・・。」
カタストロとコムザインに攻撃され続けただけではない。時間が経つごとに自分の力が減少していくのがわかる。
少しずつだが確実に、パラメーツォルティは弱体化していた。
「アンティソーマとか・・・計算外だし・・・。とんでもないもん作りやがってェ・・・。ギガマイル・クレッセントめ、予知していたのか? それとも幸運な偶然か? いいよなァ、“女神”に救われて・・・。わたしを救ったのは“悪魔”だった。」
彼女は6年前のことを思い出していた。
(あの頃、わたしは死にかけていた。肉体的には言うに及ばず、精神的にも・・・。)


- - - - - -


『やあ、君が(4)に選ばれた女の子かい。』
『・・・誰?』
『僕はティム。君を奴隷にしていた連中は、とりあえず殺してみたんだけど・・。』
『・・・え?』
『いけなかったかな。』
『ウソ、嬉しい・・・!』
『ホントだよ。君は、これから何をしたい?』
『・・・・・・せに・・・』
『ん?』
『・・幸せになりたい。わたし幸せになりたい! 幸せになりたいよォ!』
『それでこそ(4)が選んだ人間だ。ククククク、君に“神酒”をプレゼントしよう。』
『ソーマ・・・?』
『超能力と再生力を与え、人の性質を増幅する、不思議な飲み物さ。君は自分の心を知りたくないかい?』
『欲しい!』
『ククク、そう言ってくれると思ってたよ。アビリュステロスの血族の中で、最高の邪心を孕む者・・・。“不規則”と“変性”の名を持つ少女よ!』

(わたしは“神酒”を飲んだ。数百倍に薄めたのを数滴だったけれど、それだけでも様々なことがわかった。)
(わたしがどれだけ不幸だったのかを理解した。)
(わたしがどれだけ弱かったのかを理解した。)
(これからは幸せになるべきなのだと理解した。)
(人の運命を弄んでいる間は、おぞましい過去を忘れられた。)

『美味しかったかい、パラメッタ。』
『その名で呼ばないで。“不規則”(パラ)と“変性”(メタ)だけでは駄目なの。幸せになる為には、人と違ってるだけでは駄目なの。そこに“正当性”(オルト)が無いといけないの。』
『こいつは失礼。それでは、あらためて呼ばせてもらうよ・・・パラメーツォルティ・アビリュステロス。』
『良いいい名前、良い名前。もっと呼んで、もっと呼んでよォ!』
『何度でも呼んであげるよ、パラメーツォルティ・アビリュステロス。ダンツォルティの後継者・・・。』


- - - - - -


「・・・そうだ。」
パラメーツォルティの瞳が、ひときわドロッと濁った。
「そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、ハァハァハァ、ヒアハハハ、まだ終わらない。終わらないぞォ・・・“神酒”のある限り・・・。」
肉体の修復も9割がた完了し、彼女はESPの索敵範囲を全開にした。
「手元にある分は全て使ってしまった。ならば、また貰えばいい。アンティソーマも追いつかないくらい、エスパーを増やせばいい。ハハハハハァ! どこにいるの? わたしに幸せをプレゼントしてくれた悪魔は!」
暗闇の中でパラメーツォルティの目が光る。
「今度は失敗しない・・・。もっとたくさん、もっと広くバラ撒いて・・・。クスクスクス、また幸せになっちゃうな〜!」
星空を仰ぎ、両手を目一杯伸ばして、彼女は目を大きく見開いた。

「わたしは幸せになりたいのォ! たとえ何物を踏み躙ってでも! ・・・誠意、良心、倫理、美徳、そんなもの全てクソっくらえだァ! みんなを不幸にしてやるのォ! それが喜びなァの! アヒャ、アヒャ、アヒャヒャ、数え切れない苦難を乗り越えて今を幸せに生きる者たちを不幸のドン底へ叩き落すのは何て面白いのかしら!? 笑いあり、涙あり、一日一日を、一年一年を、人生を積み重ねてきた人々。かけがえのない、たったひとつの命。それこそが世界で最も尊いものじゃないかしら!? それを踏み躙る快感といったら、も・う・極・上!」

くるくると、狂う狂うと踊り出す。
パラメーツォルティは踊り出す。
至極まともな知能と、ドロドロに腐りきった精神。
誰にも名を知られずに朽ちていくはずだった少女。不幸で救いようのない少女。
彼女は悪魔の誘いに乗り、自らも悪魔と化した。

「ちょっとあっちでつまみ食い? あらあらこっちで人殺し。嘘を吐け、憎め、殺し合え。馬鹿が利口で利巧が馬鹿よ。美しいものが醜くて、醜いものが美しい。善人は地獄へ、悪人は天国へ。どちらも現世に存在するから、みんな笑って死んでいく。わたしが生きやすい世の中になれ。わたしが生きやすい世の中に。そうでなければ生まれてきた意味が無い。神様がいるのかいないのか知らないけれど、わたしが生まれてきたってことは、それが正しいってことだろう? だったら、わたしのやることは全て正しいことなんだ。この世に悪いことなんて何ひとつ無い。あるのは幸せか不幸かだけさ。わたしは不幸だったから、幸せになる権利がある。またやり直そう。またやり直そう。何度でもやり直せばいい。自分を信じて前に進もう!」

そこへ遠くの空から、何かが音速を超えて飛来してきた。
「むっ!」
第一撃は予知して回避する。
ソニックブームの轟音と共に、カタストロとコムザインが現れた。
「もう追いついたか。空間のブレ具合からテレポート先の位置を割り出したわけ?」
「ここが行き止まりだぜ、小娘。」
コムザインが念力のフィールドを展開する。
「ふふん。」
パラメーツォルティも同じく念力場を張って対抗する。
「“クイン・ハンマー”!」
「ふふん。」
カタストロの攻撃も、念力場に阻まれる。
「さっきみたいにはいかないよォ。ボロボロに痛めつけられて気付いたんだ。こちらから攻撃すればカウンターで念爆だの何だのってやられるわけだけど、こうして“待ち”の防御に徹すれば、まだまだ互角に戦えるってわけ。」
「なるほど、少しは考えたな。」
カタストロが呟いた。
「クク、その言い方だと、その先は考えてないように聞こえてしまうじゃないかァ。念力量のことも、援軍のことも、きっちり考えてあるさァ・・・。」
「その表情だとハッタリとも思えないが。」
「クヒヒヒヒ、わたしは幸せになるって決めちゃったから! だから、お前らは勝てないよ! 根拠の無い戯言だというのなら、この状況をどう説明するのかな〜!?」
力が勝る相手でも、攻撃してくれば勝つ術はある。しかし防御のみに集中されては、付け入る隙が見出せない。
並みの相手ならともかく、パラメーツォルティは確かな訓練を積んだエスパーだ。“二重奏”でも崩せない。
「どうしたのォ!? 二重奏で十分じゃなかったの〜!?」
「・・・さっきまでならそうだった。この1時間足らずで何があった?」
「短時間でも人は成長するよォ。わたしは成長したの〜。不規則に変わるのがわたしの持ち味だし。臨機応変に戦法を変更するのが戦場での正解だし。」
ケタケタ笑いながら話すパラメーツォルティは、その中で更に表情を変えた。
「あ・・・・・・見つけた・・・。見つけちゃったァ。」
彼女はニタリと笑って、カタストロとコムザインを見つめた。
「・・・勝っ・た。」
その瞬間、またしてもフラッシュバック・ペイン。
「「ぐっ!」」
苦痛をシンクロさせるテレパシー攻撃には、カタストロもコムザインも念力を緩めてしまう。
またしてもパラメーツォルティはテレポートで逃亡する。

「ヒアハハハ! 見つけたよォ、ティム・タロニスを見つけたよォ!」
真っ直ぐ飛行するパラメーツォルティ。
こうなるとカタストロもコムザインも追いつけるものではない。
ぐんぐんと距離が開いていった。


- - - - - -


男が星空を眺めていた。
「すっかり真夜中だなー。この夜が明ける頃には、アンティローグも壊滅か。」
その体は少年のように幼く、その体躯は少女のように華奢で、紫で統一された服装をしている。
目を見れば、その狂気で輝く目を見れば、彼が他の誰でもなく、“涙の悪魔”ティム・タロニスだとわかる。
涙を流しているのは、決して悲しいからではない。
「さてと。」
ティムは手元の紙束に目をやった。
アルカディア本部へ侵入して手に入れた、“神酒”の資料である。
「いーらないっと。」
ためらいもなく切り刻み、パイロキネシスで灰にした。
「はあ、さっぱりした。」
そして彼は爽やかな笑顔で体操を始めた。
「おいっちい、さんし・・・。そろそろ時間かな。」

超音速で掌が飛んできた。
皺だらけの老人の手だが、まるで空間を多い尽くすように巨大に感じた。
実際、その人物の念力は、アンティローグの全てを合わせたよりも強大な、S級の出力を持っている。
「ひゅっ!」
空間干渉でバリアを張っていなければ、即死だった。
「やっと来たか、“要塞”(サイキックフォートレス)シュシュ・オーディナ〜ク!」
「・・・・・・。」
黒いフードから覗く双眸と、皺だらけの両手。アルカディア最高幹部の末席、シュシュ・オーディナーク。
直径300メートルの空間に高密度の念力が充填され、それが少しずつ狭まっていく。
「う・え?」
空間干渉のバリアも、少しずつ圧縮されていく。
(んんん、んな馬鹿な? サイコキネシスで空間干渉を制圧するってか? マジ化物だ。)
通常、どれほどの出力があったとしても、サイコキネシスは空間干渉に競り負ける。それは性質の差であり、越えられない壁のはずだ。すり抜けるなどの搦め手ではなく、力ずくで捻じ伏せるなど、埒外としか言いようがない。
皺だらけの双手が左右から、ゆっくりと、ゆっくりと、近付いてくる。
「てのひらの中の、駒鳥は、このまま永遠に闇の中・・・。」
「流石S級。ゾッとするね。逃げることも抗うことも許さず、少しずつ潰していく。恐ろしい技だ。」
空間干渉のバリアとて無力ではない。だからこそ即座には潰れない。
しかし空間を圧縮されている以上、それを歪めてテレポートすることは出来ない。
「・・・でも僕は、逃げるけどね。」
「!」

次の瞬間にはティムは消えていた。


- - - - - -


「よっと。」
ティムは数千キロ先までテレポートしていた。
「・・・あれがシュシュの“掌の中の小鳥”(クックロビン・イン・ザ・パーム)か。見れて良かったな。僕のテレポートは特別だから、しばらくは追ってこれないと思うけど、早めに後始末を済ませておいた方がいいな。」
10秒ほど念を集中させて、彼は更に数千キロをジャンプした。

「やっほー、パラメッタ。6年ぶりだね!」
「ティム! 丁度よかった、そっちへ行こうとしてたのよ!」
「そうだったの?」
ティムは少し意外そうな顔をした。

そこへカタストロとコムザインの2人が追いついてきた。
「来た、来た、やっと来た。ちょっと戦ってみたい気もするけど、今は用事があるからなー。」
「念爆崩拳!」
見えない攻撃を、ティムは絶妙のタイミングで防御するが、念爆崩拳はすり抜ける技だ。
「くっ!」
ティムは右腕を負傷した。
「・・・やるね。よけようと思えばよけられたのに、食らってしまった。派手なモーション、見え見えの攻撃、おまけに技の名前を叫ぶ。一見すると戦いに不利な要素ばかりなのに、それによって場の空気というか、雰囲気や間といったものをコントロールしている。僕ともあろう者が、つい防御してしまった。」
「それは、お前も達人クラスだろいうことさ。」
今度は喋ってる最中にノーモーションで“クイン・ハンマー”が来た。
「わっ!」
「!」
予知能力を持つパラメーツォルティは事前に相殺の準備をしていたが、ティムは“クイン・ハンマー”の発動後に反応したのに回避できていた。
「あっぶな。その緩急自在の戦術、それがお前の強さか、フィー・カタストロ。面白いよ、もっと戦いた・・」
“クイン・ハンマー”が飛んできた。
「・・くなった。」
今度は余裕でかわす。
「いち・いち・いちおう・訊いとくけれど、僕が一般人だったらどうする気・な・の。」
「・・・空を飛んで、パラメーツォルティと親しげに話す一般人がどこにいる。」
「なるほど。まあ今のは訊いてみただけだ。」
「ふざけた野郎だ。」
コムザインが舌打ちした。
「“壊帝”コムザインか・・。お前には興味が湧かないな。」
「勝手に言っとけ。」
「もっと怒ってもいいのに。」
ティムは溜息をついた。
「挑発のつもりだとしたら下手すぎる。何考えてんだ、お前は。」
「何考えてるか・・・。さあね。」
ティムは首をかしげて目を細くした。その表情は、コムザインをしてゾッとさせた。
その瞬間、カタストロが念爆崩拳を放つが、今度は完全に防御されてしまった。
「もう食らわないって。サヨナラ。」
ティムとパラメッタが同時に姿を消した。
「!」
「テレポートは封じてるはずなのに・・・どこ行きやがった?」
「私にもわからない。・・・ただ、1つ言えることは、あのまま戦っていたら負けていた。」
カタストロの脳裏に、ティムとよく似た人物の顔が浮かんでいた。
ノットー・リ・アースと、マルチプル・タロニス。
(そうだ、ノットーとマルチを足して2で割ると、あんな感じになる。あの顔で、あれほどのエスパーが他にいるとは考えられない。行方不明になっているマルチの、息子、か・・・。)


- - - - - -


ティムがパラメーツォルティを連れてテレポートしたのは、アメリカ西部アリゾナ州。
ここに、長さ400キロ、深さは1600メートルに達する峡谷がある。
「ここは・・」
「そう、大峡谷(グランドキャニオン)さ。」
にこりと笑うティム。
「それは知ってるけど、どうして国内? ティムの能力なら、地球上どこへでも跳べるはずじゃ・・。」
「・・・・・・。」
ティムは無言で笑顔。
「いや、それはいいわ。それよりも、それよりも、“神酒”を頂戴! もっと頂戴!」
「・・・やっぱり、そう来るか。だから、わざわざ君を連れて国外へ跳ぶこともなかったんだ。だって・・」
「あるのね! まだあるのね! 頂戴! もっと頂戴! “神酒”さえあれば、わたしは強くなれる! やり直せる! いくらでも、いくらでも、やり直せるんだァアア!」
「・・そうなるよなー。(4)の言う通りの展開になった・・・。どこまで見通しているんだよ、まったく。」
「早くゥ、早く出してェ! いっぱい“神酒”出してえ!」

「無い。」

「へえっっ?」
パラメーツォルティは、口を開けて顔を歪めたまま固まった。
「無い、無い、もう一滴も無い。みんな君にあげちゃったもの。」
「嘘よォ! まだあるはずだ、よこせよこせよこせえ! わたしは幸せになるんだ。わたしは幸せになる権利があるんだ。不幸を振り撒き、屍の山を築き、その頂上に立つの。この世界を果てしない混沌の渦に沈めたとき、初めてわたしは満たされるの! 潰してェ・・・幸せ潰してえ・・・。一切の幸福を毟り取り、わたしが幸福を手にするるるるる!」
「1秒ずつ人間じゃなくなっていくね。もう人間の顔じゃないよ、それ。」
「殺し、てでも、奪い取るるるらら!」
「ほら、やっぱり(4)は正しいや。君が“神酒”を再び求めてくることも、ここで僕に殺されることも、みんな最初から知っていた。ククク、十戒が揃っていた頃ならいざ知らず、今の君なら僕でも殺せるんだよ?」
ティムの顔は人間のものだったが、その瞳の輝きは別の生物のようだった。
犬や猫でもないし、熊や虎でもない。もっと何か別の・・・地球上に存在しないような生物。

パラメーツォルティが感じた恐怖は、生まれて初めて味わう種類のものだった。
異星人と出会ったときに、地球人が恐怖を感じるとしたら、それと同じものだろう。
背筋が冷たくなって、感覚が無くなった。
パラメーツォルティは粉々になった。

(幸せ幸せ幸せ幸せ幸せになりたい幸せになる不幸を振り撒く不幸を振り撒きたい世の中を悪く悪く悪く悪くして幸せ幸せ幸せ)
(わたしは不幸だったから幸せになるの幸せになる権利があるの幸せにならなくてはならないの絶対そうだ絶対に絶対に絶対に)
(食いたい食いたい人の命を貪り食って幸せになりたい幸せ幸せ命は美しい命は美味しい元気で長生き食う食う命を食う)
(もっと強くなりたい誰よりも強くなりたいソーマが足りないソーマをよこせソーマをよこせソーマをソーマをソーマを飲んで飲んで飲んで)
(殺したい殺したい極上の快楽もっと極上の快楽がほしい快楽この上ない快楽を貪り喜びを喜びを快楽かけがえのない命を奪う快楽)
(悲痛の声を憎悪の声を怒りの声を貪り聞きたい何度でも何度でも絶叫を聞きたい耳にこびりついて夢にも出るまで声を声を悲鳴を)
(目に映る一切を血の色で染めあげたい黒く白く赤く青く緑にも何にでもなる液果を潰し尽くし世界を血で血で血で)
(友人も仲間も同胞も血を分けた全ての人間も消し去って消し去って消し去って孤独の支配者となり全てを破壊)
(心の支えを踏み躙り生きる糧を破壊し勇気を砕き希望を絶望に変え欲望と殺戮が欲しい痛みも骨も食らい)
(崩れる崩れる血の管が千切れる肉が解ける臓腑が溶けて涙になる骨が折れて砕けて粉になって全身が痛い嫌だ死ぬ死にたくない痛い痛い痛い痛い痛)
(脳が灰になる髄から嫌な汁が零れていく落ちる落ちる全ての苦痛に襲われる苦痛の死が苦痛の死が逆転する地獄の時計が時間が逆に回る苦痛が累ねて累なって痛い痛い何もかも混ざって憎い憎い憎い思考が消えていく憎悪に純化する世界が憎い世界わたしを生んだ世界が憎い全ての世界には憎悪しかない憎悪が全て憎しみが全てのわたしに食い憎い恨み恨み憎悪が憎悪が憎悪わたしの憎悪わたしは生まれなければよかった失敗作なのに生まれてきた死ぬ死ぬ死が苦しい死は苦しい頭の天辺から爪先まで体の表面から心の奥底まで煮え滾る不快で苦しい痛い辛い憎悪こそが全てで憎悪が憎い憎い憎い誰か許して誰か助けて憎悪が支配する全てを絡め取って肥え太り粉々になって誰か誰か救済を何処にいるの早く助けて憎悪に潰される回る回る苦しい苦しい何もかも死んでいく消えていく消えていく憎い憎い憎い何よりも自分が憎い死にたい早く死にたい早く早く早く早く死に死に死に憎悪が来る憎悪が来るよ早くしないと憎しみが何もかも食らい尽くすよ嫌だ嫌だ痛いよ苦しいよ嫌だ嫌だ嫌こんなのは嫌わたしを早く死なせて全て無かったことにして早く死にたい無になりたい)
(無限の苦しみ)
(永遠の憎悪)
(悪魔ァ!)

「・・・くかあ・・・頭がどうにかなりそう。なかなかいいね。」
度の強い酒を一気飲みしたときのように、顔を歪めるティム。
彼の眼前に、パラメーツォルティだったものが浮かんでいた。
「死んでなお残る悪想念か・・・。(4)は、こんなもの集めて何しようってんだろ。まあ、言われたからにはやるけどさ。」
血管、骨、肉、内臓、全てがグチャグチャに混ざり合った赤黒い塊と共に、ティムはテレポートで消え去った。


- - - - - -


世界に不幸を振り撒き、混沌の渦に沈める。そうして幸せになる。
パラメッタ、それが君の持論かい。

わかってないなあ。

この世界が既に、悪意と混沌に満ち溢れた地獄なんだよ。
そして、そこで生きていることが最高に幸せなんだ。
僕がいつでも笑っているのは、いつでも幸せだからだよ。

最後まで君には理解できなかったね。
善として生きるには酷い目に遭いすぎたし、悪として生きるには少しばかり心が脆かった。

悪に理由なんて要らないんだよ。
悪であることの言い訳をした時点で、破綻をきたしてしまうんだ。

それなのに君は、よく頑張ったよ。
破綻をきたしているのに頑張ったよ。

でも、もういいんだ。

おやすみ、パラメッタ。
願わくば、再び会うときは陽の光の届かぬ冥府の暗闇にて・・・。




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エスパー奇譚』長編小説 「千里」 NEKTAR 目録
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2016/07/08 00:01

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
火剣「わたしを救ったのは悪魔?」
コング「(4)の正体はいったい?」
ゴリーレッド「6年前、(4)に選ばれた少女か」
コング「フォー!」
火剣「『殺してみたんだけど』のセリフから売春に関わる男どもなど殺してもいいという固い信念にも似たものを感じたが、要するに自分の行動に言い訳を考えているうちは善人にも悪人にもなれないのか」
コング「その域に達しているのが佐久間んと八武院長か」
ゴリーレッド「最高の邪心を孕んだ者が条件」
コング「犯されて子供と一緒に邪心も孕まされたんだ」
ゴリーレッド「パラメーツォルティの思考は完全に悪魔化している」
コング「ヒアハハハ」
火剣「ボクシングでも攻撃してくれる選手のほうが倒しやすい。防御に徹する相手は倒しにくい」
コング「アヒャ、アヒャ、アヒャアヒャ」
ゴリーレッド「ティム・タロニスVSシュシュ・オーディナーク」
火剣「痺れるな。ティムがマジ化物と言うほどだから相当だ」
ゴリーレッド「カタストロの気づき。ティムの実力は異性人クラスか」
コング「地球上に存在しないような生物の目。麒麟か」
火剣「この世界が既に悪意と混沌に満ち溢れた地獄か。そうなのかもなと思えるニュースは多い」
ゴリーレッド「不幸な人ほど幸せになりたいという気持ちは強い」
コング「絶叫の声を聞きたいという思いはわかるな。美女が電気拷問でギャーと絶叫する姿は興奮もの」
ゴリーレッド「あの世へ送る大義名分完了」
コング「待とう」

火剣獣三郎
2016/07/08 21:46
>火剣さん
パラメッタを救ったのが悪魔なら、滅ぼしたのも同じ悪魔でした。
人を殺すのに理由を求めていたパラメッタは、まだ良心が残っていたのかもしれません。真の悪魔に比べれば、ただ幸せを求めるだけの少女でした。

佐久間「世の中の矛盾を突くのは、正義を振りかざす相手には効果的だが、それを自分の信念にするのは善人なんだ。」
八武「善人が悪党の真似事をしても、所詮は先無き道か・・・。悲しいのう。」
佐久間「急に歳を取ったか?」
神邪「僕にはパラメッタさんの苦しみがわかります。酷い目に遭って心が脆くなれば、どの道を進んでも破滅しか待っていない。」
山田「よく、善人として生きても破滅しかないなら悪人として生きる者がいるが、恐ろしい破滅が待っていることには変わりないんだ・・・。」
佐久間「だから善人として生きる方がマシか?」
山田「俺はそう思う。」
佐久間「同じだけ不正解だと思うがなァ。」
維澄「やはりシュシュ・オーディナークは桁が違うね。どの道パラメッタの敗北は決まっていた。」
八武「コムザインとカタストロでも及ばなかった相手だが、これがS級の実力か。」
神邪「パラメッタさんは、どうやっても幸せになれなかったのでしょうか?」
佐久間「レックスが思い出していれば展開は変わっていたかもしれないが、クレアが気付かせないだろう。見た目の十倍は嫉妬深い。」
維澄「・・・クレアが、パラメッタの不幸を蜜として啜っていたらと思うと、ゾッとするね。」
佐久間「ククク、案外それは正鵠を射てるかもよ?」
アッキー
2016/07/08 22:28

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「NEKTAR」 三十、悪魔 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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